『ダディ・ロング・レッグス』(9)

2022.8.29(Mon.) 18:00~20:55
シアタークリエ 16列20番台(センターブロック)

2022年シリーズ、いつもにもましてチケ難で、もう見られないかと諦めかけましたが、何とか譲っていただき2年ぶりのDLL。

2012年が初演で、前回の2020年が7演目。ここまでジルーシャ役は坂本真綾さんが演じられてきましたが、今年は真綾さんが産休のため新ジルーシャとして上白石萌音ちゃんが演じられています。

2020年シリーズは、かの有名な東京建物Brilliaホールの最前列で拝見したものの、真綾ジルーシャが寝そべって書き書きするシーンが全部死角で見えないという、悪夢が昨日のことのように思い出されます(苦笑)。

・・・

萌音ちゃんのジルーシャを見ていると、1幕前半は意外なほどに自分の中にある真綾ジルーシャの歌声を追ってしまっていて。

よくよく考えると萌音ちゃんの舞台より、真綾ジルーシャを見た回数が多いんだし、と思いながらそれぞれの特徴を比較していたりしたのですが、一番最初に「おっ」と思ったのが、萌音ジルーシャがジョン=グリア=ホーム時代に自分の服を結構テキトーに(笑)箱にぶん投げていたところ。

それを見たときに感じたのが、

真綾ジルーシャは「知性」
萌音ジルーシャは「野生」

なんだなと。

真綾ジルーシャは全編にわたって都会的な面がそういえばあったなぁと思いだして、萌音ジルーシャの、野山を駆け回るかのような自由な感じはとても新鮮で。
どことなく、真綾さんが東京生まれ、萌音ちゃんが鹿児島生まれという、「幼いころにどこで育ったかが反映されている」かのような演出の違いに感じました。

真綾さんは声優さんですから、声色の使い分けはお手の物でしたが、実は萌音ちゃんもかなりの声色の使い手。それでいてさすがは女優さんで、表情や演技の高低差で笑いを取るのが抜群に上手。それを考え抜いて自然に見せている感じが流石だなぁと思います。

DLLを見た人ならだれもが知るラストシーンのとある2文字で、あんなに効果的にドス利かせるとか、なかなかできるもんじゃない(笑)。

ラスト近くで井上芳雄さん演じるジャーヴィスが、ジルーシャに対して「愛嬌ある生き物」って言うんですが、真綾ジルーシャに対してだと、へそ曲げてる真綾ジルーシャに対して、「君はそう思っていないかもしれないけど、君は愛嬌があるじゃないか」と宥めるように、機嫌を直してもらおうかとするかのように、今となっては感じるのですが、萌音ジルーシャは、そのものずばり「愛嬌ある生き物」でしかない(笑)

それでいて、「ただで愛玩されるつもりはない生き物」だったりするところが、さすがは「ドSで光る萌音ちゃん」という感じで。
真綾ジルーシャから芳雄ジャーヴィスへのストレートスマッシュ(爆)的なものとまた違った、萌音ジルーシャから芳雄ジャーヴィスへの芸術的な落とし方が流石でした。

ジャーヴィスとジルーシャの関係って、芳雄さんと容赦なく言い合える女優さんじゃないと、ジルーシャとして合わない感じはしていて。
芳雄さんと真綾さんは同学年(昭和54年度生まれ)ということもあって、じゃぁ真綾さんじゃなきゃ誰だろう、と思っていた時に萌音ちゃんの名前が出て、「そりゃぁぴったりでしょう」と思った通り。
芳雄さんへのリスペクトはあった上で、でも隙あらば突っ込もうと思っている感じは、真綾さん以上に萌音ちゃんが持ってる(笑)。

そして、芳雄さんも「自分は台本を読みながらできても(爆)ジルーシャはできない」という言い方でジルーシャ役をされる女優さんに対してその大変さに言及されているわけで。

この作品はジャーヴィスとジルーシャが、直接は会わないままに自分の本心を相手にぶつけていて。
その根底には、自分の本心をぶつけられる相手だという「信頼」があって。
それがあるが故に、初演からの「芳雄さんと真綾さん」の関係はそのままに、新たな関係としての「芳雄さんと萌音ちゃん」の関係性で新たな「ダディ・ロング・レッグス」が作り出されたことに感動させられます。

「滝に身を打たせつつ」に代表されるようにコミカルさからくる軽やかさからのツンデレが特徴的な真綾ジルーシャ。
卒業式に願いが叶わなかった時の、空虚さが真に迫る、シリアスからのマジ切れが特徴的な萌音ジルーシャ。

そのどちらもが、「違った種類の愛嬌ある生き物」であり、女性を前にすると男性はしょうもない生き物なんだなぁ、ということをすっと感じさせてくれる、見終わってすっとした気持ちになれる様は変わらなくて、今回も素敵なひと時になりました。

・・・

追い出し放送が流れても止まない拍手の中、芳雄さん・萌音ちゃんの夫婦漫才はこの日も開演。

萌音ちゃん「日々やってきてどうですか」
芳雄さん「先に言われちゃったよ…とにかくただただ無事に終わってくれることを願っています。どうですか?聞かれたら聞き返しますよ」
萌音ちゃん「とにかくただただ無事に終わってくれることを願っています(←完全同文)」
芳雄さん「時間の無駄????(笑)。でも本当に祈るのみだよね」

芳雄さん「今日マチネ後にジョンが来て『素晴らしかったよ!』と言ってくれて喜んでたら、実は見ていなかったというブリティッシュジョーク…(笑)」
萌音ちゃん「気持ち上がった後、落ちちゃいましたね(笑)」
芳雄さん「初日は幕間に来て『酷い出来だ!』って言われて、ブリティッシュジョークかと思ったら何のフォローもなくて(笑)」
萌音ちゃん「2人で『2幕やりたくない』…って言ってましたよね(笑)」
芳雄さん「終わってからも何のフォローもなかったんですけど(笑)、終演後に『よかった』と言ってくれたんで大丈夫だったんでしょう(笑)」

というノーマルスペシャルカーテンコールで幕となりました。

31日の大千穐楽は生配信(アーカイブあり)もありますので、ご興味ありましたら是非に。

 

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『シュレック・ザ・ミュージカル』

2022.8.27(Sat.) 16:30~18:20
東京建物Brilliaホール 1階N列40番(上手側)

トライアウト公演と銘打ったこの作品、幾度の中止を乗り越え、明日が千穐楽。
個人的にもチケットを取った3回が全部中止となり、この回が「4回目の正直」。ようやく拝見できました。

当初21日(日)の夜を取っており、もう1回見たいという理由で18日(木)夜も取ったものの、両方とも中止。
どうしても見たいと取った23日(火)も取った1時間後に中止が決まり、3度取り直したこの回でようやく拝見できた次第です。

普通、ここまで取り直すようなら見られないのが今までの経験ですが、この作品はトライアウト公演ながら長い2週間の公演期間(15日~28日)であったこと、またシュレック役のspiさんの感染にかかわらず、アンダーが有効に機能し、鎌田誠樹さんがシュレックを演じることで再開に漕ぎつけられたこと、流石のカンパニー力です。

今回、オールキャストオーディションで選ばれた出演者の皆さんですが、オーディション発表時期が異常に遅かったのにも関わらず、6月下旬に発表されたキャストを見て、普段ミュージカルを見ている層が明らかにざわつきまして。

シュレックのspiさんの巧さは勿論、フィオナ姫の福田えりさん、(魔女役の)岡村さやかさん、(ドラゴン役の)須藤香菜さんはじめ、東宝ミュージカルのアンサンブルさん経験者がずらり。しかも中堅どころの安定感たっぷりのメンバーが揃い、そして実際にそれらの皆さん中心に舞台がきゅっと引き締まるさまを見られたのは、感動物でした。

客層もいつもミュージカルを見ている人たち中心ではなく、親子連れも多くみられるのはさすが夏休み期間。
自分の異質さゆえに自分の殻に閉じこもるシュレック、そしてシュレックの周囲の他者との関わりが、だんだん変わっていく様は、ちょうど1週間前に見た『リトル・ゾンビガール』との共通点も感じたりして。

ファミリーミュージカルのようにも見えて、また実は大人にも刺さる作品だったりして。
それをいつもは縁の下の力持ちとして舞台を支えることが多い方たちが、舞台のセンターで堂々と演じ歌われ、それが客席にもしっかり届くさま。

歌の難易度に即したキャスティングとは思えなかったりすることが他作品ではあったりしますが、知名度に引きずられず実力で選んだ結果がこの作品の楽しさを表現できたのかと思うと、いつもいつもそれができないとは思うものの、良かったなぁと感じずにはいられません。

岡村さやかさんは期待通りの万全の存在感。
舞台最初のシュレックのママとしてシュレックを優しく厳しく送り出す時の歌声は、この作品が素敵なものになることを予感させる感情の厚さを纏っていましたし、本役の魔女は見た目の存在感もまんまで、「セーラームーンtheミュージカル」のスノーカグヤの威圧感を思い出させる、無条件の説得力。それでいて、ご本人がブロードウェイ版を見て惚れ込んでオーディションを受けたという、ジンジャーブレッドマンの声は、今までさやかさんでは聞いたこともない突拍子もない声で、2幕に至っては魔女とジンジャーブレッドマンの声を行ったり来たりして、「この2つの声って同じ人がやっているとは」と客席にきづかせる当たりとか、演出もニクいです。

福田えりさんの「およそヒロインらしくない姫」も、キャラクターにぴったりで、衣装は上品なのに中身はそれと落差がある(言い方に気を遣う…笑)とはいえ、それをコメディエンヌ的に見せられる実力あってこその、ひねった存在感が流石です。

須藤香菜さん(すどかなさん)も久しぶりでしたが、一味ひねった役をしっかり見せられるのはその経験あってこそ。素敵でした。

・・・

この日は、ヤングフィオナ役(Wキャスト)の小金花奈ちゃん(こはちゃん)の千穐楽ということで、ご挨拶がありました。
(若干、ニュアンスで書いていますが)

こはちゃん「皆さんがとっても優しくしてくれて、素敵な夏休みになりました

吉田さん「舞台を作っていると辛いこともありますけど、こはちゃんはいつも笑顔でいてくれて、こちらこそ、大人は、こはちゃんにいつも助けてもらっていました。ありがとう(会場拍手)」

という素敵なやり取りの後、

鎌田さん「spiさんの想いとともに、明日しっかりと千穐楽をカンパニーみんなで務めたいと思います。本日はありがとうございました。」

と素敵に前楽の幕が下りました。

明日28日、昼12時30分から千穐楽公演となります。迷われている方、是非に。

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『リトル・ゾンビガール』

2022.8.20(Sat.) 15:00~17:00
日生劇場 2階B列40番台(上手側)

「NHKみんなのうた」の曲を中心としたミュージカル。
2020年に公演が予定されていたところが全公演中止となり、この日が初演初日。
ノノ役熊谷彩春ちゃんの回を拝見です。

ゾンビチームと人間チームに分かれていて、過去にゾンビと人間とで因縁があった関係。

そんな中、好奇心いっぱいのゾンビ・ノノは、人間の世界に降りて行って、人間のショウ(Wキャスト、この回は乃木坂46の伊藤さん)と出会い、正体を明かさないままお互いを理解し始めていく。
折しも、ゾンビが住む森に対して、人間は森を切り開きショッピングモールを作ろうとしていた。ショウの父親は、建設会社の社員として、そのプロジェクトにかかわっていて…という導入部から、「ゾンビの世界と人間の世界」の間の関係性の変化を描いていく物語。

2020年公演では、ゾンビ・ノノは上白石萌音ちゃんと熊谷彩春ちゃんのWキャストでしたが、この公演が2022年にスライドしたことで萌音ちゃんは登板しないことになり(現在は『ダディ・ロング・レッグス』の新ジルーシャとして公演中)、(熊谷)彩春ちゃんは残り、高橋ひかるさんが新たにキャストに加わりました(「高橋」の「高」ははしごだか)。

彩春ちゃんを見たくてチケットを確保した作品でしたが、正直、こんなまで感動させてくれるとは思っていなくていい意味での予想外。
いいホンといい歌と、いいキャストが揃えば、こんなにも素敵な作品ができるんだ!と思いました。
何度も自然に流れた涙。目立つ空席が本当にもったいない、素敵な気持ちにさせてもらえる作品です。

ノノの彩春ちゃんは、天真爛漫を三次元にした感じで、好奇心をエネルギーに、ゾンビの世界でも人間の世界でも自然に中央にいる様がとっても自然。前向きでポジティブなパワーは、最初は引っ込み思案だったショウも前を向かせるパワーにあふれていて。
歌はもともとお上手ですが、芝居がナチュラルでソフトで、作品の居場所にすっと「いる」感じがすごい。
初演でWキャスト予定だった萌音ちゃんと似たような感じを受けます。いい意味で「すぽっ」とはまる感じが。

弱音の吐き方も(役柄的にも)上手で、ゾンビの長老(という設定)のリリィ(大和悠河さん)をお姉さんのように慕う感じもぴったり。
優しさを常に持っていて、進むべき道を直感で理解していて、行動力もあるのに、迷い悩むこともあるという、まさに「ザ・ヒロイン」の居姿で、それが周囲の人たち、舞台でのゾンビチームからも、人間チームからも自然に応援されるような様がとてもよくて。
その上に、ファミリーミュージカルだからこその、「客席からの応援」を自然に導ける彩春ちゃんノノ。

別作品ですが「ピーターパン」より少し大人で、「みんなのうた」のうたのお姉さんの少し若いタイプ、という感じで、なるほど「みんなのうた」ミュージカルのヒロインになった理由がとってもよくわかります。

彩春ちゃんは前回がJさんの作品のヒロインだったので、正直、力を出し切れる場ではなかったことに比べれば、今回は物語をぐいぐい引っ張る若い座長のポジションをしっかり務めていて、チャーミング&パワフルな、彩春ちゃんにぴったりの役どころでした。

この作品は「みんなのうた」の歴代の曲から19曲、オリジナル3曲で構成されており、耳なじみのある曲がたっぷり聞けます。
そのうえ、キャストは百戦錬磨のアンサンブルさん(石田佳名子さん、般若愛実さんをはじめ錚々たる面々)の歌うま揃いで、耳福な時間です。

その中でも何といっても「夜明けを口ずさめたら」の使い方が絶品。物語上ネタバレになってしまうのですが、歌詞の最初にある「誰もがひとりぼっち」という歌詞を彩春ちゃんノノが紡いだ瞬間、そのシーンとのあまりのシンクロぶりに涙が止まりませんでした。

この作品と当初は旅をするはずだった上白石萌音ちゃんがこの曲の歌い手さんだったこともあり、「ここにいられない萌音ちゃんの想いとも一緒に、彩春ちゃんはノノとしてこの歌を紡いでいるんだ」、と聞きながら思ったことも、その感動を増幅した要素だったのかもしれません。

・・・

心構えず見に行って、大人も子供も「あたたかいもの」を持ち帰れるであろうこの作品。
より多くの方に見てもらえる機会があるよう、心から願っています。

 

 

 

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『流星の音色』(2)

2022.8.16(Tue.) 17:00~20:15
新橋演舞場 1階6列20番台(上手側)

4回観劇を予定していた同作、1回は中止(8月4日ソワレ)になり、3回の観劇。
東京前楽のこの回、my楽となりました。

1週間ぶり(8月9日ソワレぶり)ということもあり、新鮮な気持ちで拝見しました。

・・・

前半の2回の観劇と同じく、
今までの作品と違うように見えて、実は今までと変わらなかったお二人の女優の頼もしさが印象的でした。

ヒロイン・シルウァを演じた真彩希帆さん。
宝塚歌劇団在団当時は、歌唱力や存在感ゆえ、インパクトのある役に配されることが多かった真彩さん(きぃちゃん)。
今回のような「娘役らしい娘役」はほぼ初めてに近かったわけですが、およそ着こなすことができる人はいないであろうファンタジーな衣装も、成立し得たところに驚愕します(衣装について褒めるつもりは1ミリもありませんが(笑))。

今回のプロジェクトは、主演の京本氏をいかに素敵に見せるかに比重が置かれていたかと思いますが、それ故に「とことんまでに可愛い」を見せられる技術を持った方として、きぃちゃんが呼ばれたのかもと思います。

「ニュージーズ」の相手役は、きぃちゃんの前の雪組トップ娘役のゆうみちゃん(咲妃みゆさん)で、「カッコいい相手役」だったので、それとの対比で京本氏の役を広げる意味もあったのかと思います。

きぃちゃんはトップ娘役当時、「トップスターを魅力的に見せるために何ができるか」と繰り返し仰っていたことが、今回の舞台でもまさに生かされているものと思え、流石と感じさせられます。

恋する少女のシルウァは、前回見たときは「恋する少女を完璧に演じている」感じがあったのですが、今回見ると「恋する少女になって」いて、その劇的な変化に驚愕。「かわいらしさを究極まで演じている」ところを突き抜けて、「どうみても可愛いでしかない」存在となっていて、少女漫画なら周囲に花が舞っていそう。

名前を知らない、声だけの相手を想像しているさまを楽しそうにうきうきしてやっていて。「可愛いは正義」を体現していました。なんでしょうね、あの「スイッチが入ると誰にも止められない」感じ(笑)

まぁ、お母上も若かりし頃は「エンジンがかかると誰にも止められない」感じ(笑)でしたから、母娘の血は争えないって感じですね(注:血はつながっていません爆)

・・・

そして、シルウァの母親、山の国の王女・フローラーリア役を演じた新妻聖子さん。

今回は作曲された方が複数いらしたということもあり、「物語の統一性を出すのは役者の仕事」と、物凄い発言を制作発表でされていた聖子さんですが、物語を力技で本線に引き戻す圧倒的な存在感と歌唱力。歌うまで知られたきぃちゃんと聖子さんの娘・母の関係は、母娘の説得力を出して余りあるわけですが、それにつけても聖子さんフローラーリアの重厚感が凄い。

『王家の紋章』での王家の血筋の経験、『ボディーガード』でのシングルマザーの経験いずれもが、フローラーリアの重みに繋がっているかと思います。

2人の違いといえば、

歌で物語を語れる聖子さん
歌で空気を動かせるきぃちゃん

の違いという感じがします。

きぃちゃん演じるシルウァの歌声が、リーパの心を動かした。シルウァの彼への想いを受けて戸惑いながらも、フローラーリアは自らの過去を語り、シルウァの成長を認め、誇らしい気持ちで見送る。
寂しいけれども、それでも、自らの過去への後悔を、シルウァの成長が埋めてくれたからこそ、大切な宝物であるシルウァを見送ったことに納得はしていると思っていて。

海の国の父から息子への言葉は、息子にとって「心を失くす」ことのようにも見て取れて。

それに対して、娘の恋への憧れを止める母の思いは、真に娘のことを思ってこその気持ちと思えて。

海の国と同じ王家であっても、「心通い合う」やり取りをしていた母娘。
娘は自分の思いを吐露しようとも、母への感謝は常にあって。
母は自分の思いを押し付けようとも、娘の自立を認めるべき思いは常にあって。

母娘の「思い合い」を知ってこそ、父子の間にも「龍の血」だけでない、気持ちの共有が生まれたのかなと思うわけです。

…と、見終わっては思うのですが、そういうホンとしての意図が読み取れなくはないものの、その物語構造を読み取れる演出になっていたとは思いにくいのも実感で。物語としては「シルウァがあの結末になった意味」をもう少し見せてもらえた方がよかったかな、と思う次第です。

きっと、リーパが海の国の王として「心を持って生きていく」様と、フローラーリアが山の国の女王として「心を持って生きていく」様が、いずれもシルウァの生き様によってもたらされたもの、ということが見せたいエンディングだったと思うのですが、あまりの水しぶきの量故に、感動までも流されてしまったように感じてしまったのが、少し残念に感じられました(苦笑)。

・・・

この日のカーテンコールでは、聖子さんが客席からの拍手にこたえて、両手でお手振りしていてびっくり。
かれこれ20年拝見してきて、両手のお手振りなんてあったろうかと、そのご機嫌さにうれしい限りです。

ともあれ、今日(8月17日)が東京千穐楽。
この後、京都・南座、名古屋・御園座を経て、9月8日の広島公演で大楽となります。
東京・新橋演舞場公演では合計5回の休演となってしまったこの作品、大楽までつつがなく公演が行われることを願っています。

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『流星の音色』(1)

2022.8.8(Mon.) 17:00~20:15
新橋演舞場 1階17列20番台
(センターブロック上手側)

松竹オリジナルミュージカル、この日が5日目です。
当初は8月2日の開幕が予定がされていましたが、公演関係者に陽性者が出たとのことで、2日遅れの8月4日が初日となりました。
(その後、8月9日昼の部も中止になっていますが、8月9日夜の部から再開されています。)

個人的にも8月3日のmy初日が流れたこともあり、なるべく初見までに内容的なネタバレは見ないようにして。とはいえ、ある程度はだいたい分かりつつ、百聞は一見にしかず、ということで数年ぶりの新橋演舞場へ。
新橋演舞場は自身初ではなく、三宅裕司さん主宰のシリーズ物で(笹本)玲奈ちゃんがゲストヒロインで来て(2016年6月)以来となります。

初見の感想としては「演舞場の機構を最大限生かしたエンターテイメント」だなと。話には聞いていましたが、特に2幕ラストのステージパフォーマンスは圧倒されるものがあり、流石と感じさせられました。
ステージの演出に圧倒される反面、芝居の演出に乏しさは否めません。

物語では主演の京本さんと父親役の内海さんが「海の星」、ヒロインの真彩(希帆)ちゃんと母親役の(新妻)聖子さんが「山の星」ということでそれぞれ親子関係にありますが、真彩ちゃん、聖子さんは流石のミュージカル経験もあって、歌、芝居歌、そして芝居の作りに一日の長があります。

聖子さん演じるフローラーリアが娘役の真彩ちゃん演じるシルウァに「王家に生まれし自覚」と諭していると、なんか違う物語を想像したりしますが(笑)、聖子さんが愛情故の強い想いを歌に乗せる様は、圧巻の一言。演舞場の客席に押し寄せる圧が凄いです。親のエゴであることも薄々感じながらも、自分が苦しんだ過去を、愛する娘には味わって欲しくない、その想いがあったことが徐々に分かってきます。

※聖子さんがアイシスやっているうちに真彩ちゃんキャロルで見てみたい。嬉々として呪われ回避しそう(笑)

対するシルウァも、最初は母の存在の大きさを前に言い返すこともできなくて、歌もか細く歌っていますが、恋に出会い、自我に目覚め、より生き生きと歌うようになっていく変化を歌で聞かせるのは流石の技術です。

トップ娘役とはいえ、こんな夢々しい役とはほぼ無縁だった真彩ちゃん。あえて近い役を探しても『はばたけ黄金の翼よ』のクラリーチェぐらいで、今後も今回のような夢々しい役は恐らくないと思われるだけに貴重です。(願わくはドレスがもう少し…何とかならなかったのかなと(苦笑))

自らがこの舞台で求められた「主人公の心を動かす澄んだ、真っ直ぐな歌声、存在」と寸分違わぬ存在として立てたのは、豊富な舞台経験のなせる技。
真彩ちゃんは演出家の求めるものをきっちり体現するタイプと思われるだけに、恐らく今回はそういった羅針盤がなく(薄く)、この役を作り上げられのではと思うと、とても貴重な経験をされたのかと思います。

真彩ちゃんファンの中では有名ですが、真彩ちゃんにとって聖子さんは「舞台を目指すきっかけ」となった方。今回のパンフレットでも念願の再対談を果たされていて、とても濃い、心通じ合う対談をされています。

真彩ちゃんがトップ娘役当時、CS放送「宝塚スカイステージ」の「トークリクエストDX」に聖子さんをゲストにリクエストされ、オンエアされたのは2019年3月(時期的には『ファントム』のクリスティーヌ・ダーエをやっている時です)。

当時は「外部の方をなぜ呼ぶのか」という心ない言葉が聞こえもしましたが、真彩ちゃんはその機会に聖子さんとお話されることで、改めて「娘役としてどう振る舞えばいいか」「自身をどう伸ばしていけばいいか」を会得されたのだと、今見返しても感じます。

聖子さんがその対談の最後に真彩ちゃんにかけた「いつか同じ板の上でご一緒できることを願っています」とお話された言葉が、テレビではわずか4ヶ月(同年7月の「FNS歌謡祭」で「輝く未来」でデュエット)、舞台でもわずか3年足らずで叶ったのは、真彩ちゃんの努力が運を呼び寄せたものと思います。
が、流石に、それ以上を作品に求めるのは、望みすぎだったかもしれません…。

主演の京本さんとの相性もぴったりでしたし、次はベーシックなミュージカルでご一緒する姿を拝見したいと思いますし、もちろん、真彩ちゃんと聖子さんの再共演も心待ちにしています!

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『ミス・サイゴン』(36)

『ミス・サイゴン』(36)

2022.7.29(Fri.) 18:00~20:50
帝国劇場 1階H列10番台(下手側)

『ミス・サイゴン』2022年版、この日が初日です。
2020年公演が全公演休演となり、2022年公演もプレビュー公演が中止となり、この日が2017年1月22日、名古屋での大千穐楽公演の次の回となりました。

当日のblog(こちら)を見返すと、笹本玲奈キム201回目での卒業公演で、その日のことが思い出されます。
(ちなみにこの大楽の翌日、玲奈ちゃんは結婚を発表され、今や一児のママです)

2004年以来見続けてきたサイゴンですが、どんどんと推しの役者さんが卒業されていますが、今回は何といっても青山郁代さんのサイゴン初プリンシパル。
当初とっていたプレビュー公演がなくなって途方に暮れていたところ、観劇友さんにお声がけいただき、無事観劇することができました。

郁代ちゃんは2008年の『ミス・サイゴン』を見てミュージカル女優を目指し上京、当時の東宝ミュージカルアカデミーで学び、初舞台後、2012年の『ミス・サイゴン』でアンサンブルとなった後、今回が実に11年目でのプリンシパル昇格となります。

『ミス・サイゴン』の女性プリンシパルは基本的にアンサンブルからの昇格はなく(男性は今回初クリスの海宝さん、トゥイの西川さんがそうですが)、今回Wの則松さんも宝塚卒業後、サイゴンアンサンブル経験がないままプリンシパルとなっているので、郁代ちゃんの辿った道はかなり細く異例な道。

そういったこともあって「我が心の夢」は真に迫って痺れたし、何といっても「アメリカン・ドリーム」で豪華なキャデラックに、ゴージャスな衣装で出てきた様にうるっとくるものがありました。とはいえ、ジジからキムに推し変(爆)したエンジニアが、ジジを崇めるのは何だかなぁとは思いましたが(笑)。

・・・

2016年-2017年公演とは歌詞、台詞も随所で違いがあって、おそらく違和感を感じた個所が変更点なんだろうなと思いますが、何しろこの日が初日だったので、これから馴染んでいくのだとは思います。

この日のキムはこの日が初役となった高畑充希キム。歴代キムでエポニーヌを経験していない3人のうちの1人(松さん、ソニンさんと充希さん)ということもあるのか、歌よりも佇まいで演じられている感じで、松さんにちょっと近い印象を持ちました。危機を感じた時の鋭い眼光やオーラが魅力的ですが、歌声は特に1幕、少し作った風の歌声に思えてちょっと残念に思いました。演じながら変わっていくと思うので、これからに期待です。

役者さんで大きく印象が変わったのがエレン。この日は知念里奈エレンでしたが、「キムとエレン」のシーンが、従来はほぼ歌で綴られていたものが、かなりのパートが言葉になったことで、エレンの迷い、苦しみがとても伝わるようになって、元々エレンの肩を持たれる印象があるこの場面に、よりエレン寄りの空気を醸し出していたように思います。知念エレンは正直びっくりするぐらい良くて、前回初役のエレンの時に纏っていた「かつては自分もキム」という少しの空気感が完全に振り払われていて、とても好印象でした。

・・・

正直言って、ここのところの状況で、
開場を知るまで落ち着かなくて
開場しても幕が上がるまで落ち着かなくて
初日ということもあり2分開演が押しただけで心配になって
幕が上がっても途中で止まらないか心配になって
2幕が始まっても最後まで行けるか心配になって

最後、無事に(キム的には無事にというのも変だけれども)幕が下りた時に、充実感とともに、違う疲れが押し寄せてきたことは、ここ暫く許容せざるをえないことなんだろうな、と思わされます。

市村さんがご挨拶で仰っていた「11月まで応援よろしくお願いします」が名実ともに叶えられますことを願っています。

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『フリーダ・カーロ』

2022.6.30(Thu.) 19:00~21:00
 東京芸術劇場シアターウェスト E列1桁番台(下手側)

2022.7.2(Sat.) 18:00~20:00
 東京芸術劇場シアターウェスト RA列1桁番台(上手側)

Tiptapさん作品の再演。

初演は2019年の夏の暑い盛り、8月の六本木トリコロールシアターでした。
今回は時期が1か月以上さかのぼったものの、お天道様が梅雨を忘れてしまった酷暑の結果、結局この『フリーダ・カーロ』はメキシコの暑い夏を劇場内外で感じさせる再演になりました。

初演の時は1回しか見ていませんが、とにかく圧迫感が強くて苦しかった記憶が残っています。
が、今回の再演版はその印象はかなり薄くなっています。なんといっても劇場の違いが大きく、初演の六本木トリコロールシアターは傾斜があり狭いということもあり、収容人数以上に狭さや圧迫感を感じました(座席数は200席)。今回の再演は東京芸術劇場シアターウェストになり、座席数も3割以上増え(270席)、それ以上に横幅が広くなったことで、「死」をテーマにしたこの作品を、初演比でだいぶ「生」を語る方向にシフトできているように思えます。

メキシコの実在した女流画家、フリーダ・カーロの生涯をテーマに、彼女を取り巻く人々が語る「フリーダ・カーロ」の姿から、生き様を浮かび上がらせていく物語。

初演から男性陣はほぼ変わらず、女性陣は主演のフリーダ・カーロの彩吹真央さん以外全員変わっているという配役ですが、男性陣のうち変わったお1人は、彼女とは密接にかかわるわけではない医師役(初演は上野聖太さん、再演は鎌田誠樹さん)ということもあり、フリーダ・カーロ演じる彩吹さんと男性役それぞれの関係性がかなりえぐい。

フリーダ・カーロはバスの事故で大怪我をし、手術を繰り返して次第に生きる気力を失っていく女性ですが、それでも、彼女が描く画のパワー同様に、生き様もパワフル全開で、その生き様に憧れるかどうかはともかく、「凄い女性だったんだな」ということが伝わってきます。

20世紀前半に生きた女性なので、女性でも画家として認められ、メキシコで個展も催しているので、壮絶な生き様として描かれた舞台で印象に残っているカミーユ・クローデル(新妻聖子さんが演じられました。オーギュスト・ロダンの弟子にして愛人)のように「芸術家として認められなかった」とはまた違う印象を、特に今回は受けました。

「生」と「死」をテーマにするのはTiptapさんの作品で多く、「死」を通して「生」きる意味を問う、というのは最近よく使われる方向性。
劇中ほぼラストで彩吹さん演じるフリーダ・カーロが呟く「意味ある人生を送るために自らどう生きてきたか」の言葉が印象的。身近な人の死に触れて、「死にたくない」以上に「生きたい」と思い続けたから、に思えの説得力でした。
初演は正直もっと尖っていたというか、過剰に絞り出していた感じの印象の彩吹さんフリーダだったので、再演ではかなり自然な生き様で自由に生きた感じでがしました。

フリーダのもう一つの声を演じたのは再演ではMARIA-Eちゃん。パワフルな歌声が印象的ですが、時にそっと寄り添うような歌声で寄り添われていたのも印象的でした。

一筋縄ではいかない関係性の役が多い綿引さやかさん(びびちゃん)は今回Tiptap初出演。フリーダの妹役ですが、ただ姉を支えるわけでない、でも最後は、清濁併せ呑んで見守る感じが興味深い役どころでした。姉に「前から歳上が好きだったよね?」といたずらっぽく言うシーンが好きです。

「私には姉を支える義務があった」というセリフも興味深いです。このシーンが姉に対して引け目を持つ、あの出来事より前というのも不思議なところ。フリーダの母の話はほとんど出てこないので、姉に支えられて生きてこられた、ような印象はあります。

フリーダ・カーロを取り巻いた人たちにとって、間違いなく自分の人生の中で強い印象を与えられた人物だった、ということがはっきりうかがえる作品。彼女のような生き様を皆ができるわけではないとしても、生きる上での、人生の”目的”の存在の大切さを感じさせる作品でした。

公演は3日までですが、3日から10日まで、6月30日ソワレ公演のアーカイブ配信があります。
DVD・Blu-rayも発売予定です。

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『ファンタジー・オン・アイス2022』

2022.6.19(Sun.) 13:00~16:30
 ライブビューイング(都内映画館)

2022.6.24(Fri.) 17:00~20:25
 静岡エコパスタジアムアイスアリーナ
 Wブロック7列140番台

3年ぶりの開催となるアイスショー「Fantasy On Ice(以下FaOI)」。
今回の開催会場は幕張・名古屋・神戸・静岡の4か所ですが、前半(幕張・名古屋)の公演が始まる頃発表された、後半(神戸・静岡)にアーティストゲストとして新妻聖子さんが出演される!という報に個人的に大きくどよめきました。

フィギュアスケートとミュージカルと言えば、相性の良さはお墨付きで、実際、プログラムにミュージカル曲を組み入れているスケーターも多数。

しかも、大きなホールほどパワフルに弾ける聖子さんのこと、絶対これは合うはず!と、発表直後から日程とにらめっこ、チケット難のFaOIですので、一番競争率が低いと読んだ静岡の初日(平日)を第一希望に置き無事確保しました。

神戸初日も平日だったので、噂で聞こえてくる好感触を聞き及び、神戸楽日のライブビューイングで映像で見て確信し、静岡エコパに来てよかった…と思う結果になったのでした。

選曲とかはまだラストまでご覧になりたくない方は回れ右でお願いします。

※基本的に新妻聖子さんに関連した感想ですのであらかじめご承知おきください。




聖子さんが歌われた曲は、第1部2曲、第2部4曲(うちラスト2曲は全部ではなく一部)。
後半唯一の女性シンガーということもあり、女性ボーカルは全部聖子さんが担当されています。

第1部
「ラ・マンチャの男」withハビエル・フェルナンデスさん
「ひまわり~SUNWARD~」with荒川静香さん

第2部
「Memory/CATS」withジェイソン・ブラウンさん
「I dreamed a dream/レ・ミゼラブル」
  with三原舞依さん/NAOTOさん
「You Raise Me Up」with All Skater
「Nessun Dorma」with All Skater

この6曲、すべての曲を生で聞いたことがあるんですね、私。

第1部で歌われた「ラ・マンチャの男」と第2部の「I dreamed a dream」の2曲は確実に2桁回数は聞いてますし、「Nessun Dorma」は新妻聖子コンサートのアンコールラストの定番でもありました。回数で言うと「ひまわり」と「Memory」が圧倒的に少ないぐらい。

なのに、いつもと受ける印象が違うんです。

明確に、聖子さんはスケーターの方を第一に置かれていることがはっきり伝わってきます。

静岡公演はこの後、26日の日曜日の公演がCSテレ朝チャンネル2で生放送(13時~17時)されますし、BS・CSでも放送予定がありますので、機会があったら是非ご覧になっていただきたいのですが、スケーターの方の演技と明らかに合わせた歌い方と動きをされていて、スケーターの方の背中を力強く押されていることを感じます。

とりわけ、それを強く感じたのが三原舞依さんとのコラボの「I dreamed a dream/レ・ミゼラブル」です。
神戸LVの日は彼女のジャンプの調子が良くなく、2回のジャンプが上手くいってませんでした。そんな彼女を勇気づけるように、聖子さんの歌声はいつもより優しく変わっていましたし、最後、(プログラムで)倒れこむ彼女に、聖子さんが駆け寄って、優しく抱きしめて、その後「ぽんぽん」と背中を優しく撫でていたのです(励ましているように見えました)。

その次の回になった静岡初日。三原さんのジャンプはパーフェクトで、聖子さんが駆け寄っていき、優しく抱きしめた後、三原さんは嬉しそうに2回も頷いていました。恐らくは成功したことへの賛辞だったように感じられましたが、三原さんとに限らず、他のスケーターの皆さまとも、明らかに心通わせている様が強く感じられ、歌い手として幅が出たんだなぁと嬉しく思ったのです。

ともすれば、聖子さんの歌は、自ら突っ走る、その迫力こそが魅力という面が一時はあったと思うんです。
役で言えば『ミス・サイゴン』のキム、『GOLD~カミーユとロダン~』のカミーユ・クローデルと言った役は、パワフルに、また感情的に爆発させることが、聖子さんのミュージカル女優としての魅力に繋がっていた、かと思います。

それからすると、今回のFaOIでの聖子さんの歌声は、決して自らの殻に閉じこもる歌でなく、スケーターの皆さんに寄り添って、いかにして心を一つに歌声とスケートをコラボレーションさせるかを、本当に自然にされていて。そしてそうすることで聖子さんの歌もさらに輝いているという、凄い相乗効果を感じるのです。スケーターと歌を通して共演しているかのような感覚は、本当にこんな相性どこに隠していたんだろうといい意味の驚きです。

コラボレーションする方どなたとも合うのも不思議で、元々ミュージカル曲なんでもござれな方ですが、「ラマンチャの男」のいつもながらの迫力も、荒川静香さんとの「ひまわり」の想いのシンクロも、深く深く伝わってくる歌声も、「I dreamed a dream」の情感も素晴らしいし、「You Raise Me Up」「Nessun Dorma」に至っては、スケーターの皆さまの女神様のような状態になってて、今までの技術を無理なく総動員してる感じが流石です。

寄り添い力と言えば、今回のMCも実はいつもと変わらないのに(笑)むちゃくちゃ好評です。

神戸楽日は
「3日目となり、スケーターの皆さんの素晴らしい演技にすっかり虜です。会場の皆さんだけでなく、今日は全国のライブビューイング会場や、台湾のライブビューイング会場でもご覧いただけているということで、まるっと(会場内笑)お楽しみいただければと思います。本日はよろしくお願いします」
というご挨拶は、ライブビューイング会場の存在に触れたこと、また「台湾」という言葉を出されたことも凄いなと。

静岡初日は
「神戸から参加させていただいていますが、スケーターの皆さまにリスペクトが止まりません。スケーターの皆さまに寄り添って最後まで務めさせていただきます」の言葉に会場内から多くの拍手が贈られ、「やさしい…」と呟かれていたのがとってもキュートでした。

神戸でも噂になってましたが、MCで客席色んな方向に向いていただくのがとっても嬉しい。自分の席はステージからは少し斜め後方だったのですが、「聖子さんはきちんと客席全方向見てくれる」が分かっていたので安心して見ていられました(笑)。

・・・・

公演最後、スケーターの皆さまのジャンプ披露タイムがあるんですが、ジャンプが決まるとむちゃくちゃ飛び上がって喜ぶ聖子さん

静岡初日は羽生選手が4T×2決めてて(!)、それを見たスケーターの皆さんが「ははーっ」と平身低頭リスペクトしたら、羽生さん率先してアーティストの皆さんに平身低頭リスペクトし、アーティストの皆さんが平身低頭リスペクトという、むちゃくちゃ微笑ましい一コマがありました。

聖子さんもドレスでトップ娘役以上の膝折りしてました(爆)

とにかく楽しそうにスケーターの皆さまに寄り添い歌う様は、聖子さんの仕事の幅を広げるのにとっても意味のある機会だったかと思います。またタイミングが合いますように!

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『新妻聖子コンサート2022』

2022.6.10(Fri.) 18:30~20:55
Bunkamuraオーチャードホール 17列1桁番台(下手側)

3年ぶりの東京ソロコン、すでに金沢・大阪公演を経ているので、薄々セットリストは聞こえてきてはいましたが、東京はこの回1回だけの公演。平日の夜というのに、1階はほぼ埋まり、2階・3階もそれなりに埋まる盛況ぶり。聖子さんのホームともいえる、Bunkamuraオーチャードホールでの公演です。

まずはセットリストから。

●第1部
1.ラ・マンチャの男/ラ・マンチャの男
2.新妻聖子持ち歌メドレー
 2-1.夢の翼
 2-2.天地(あめつち)の声
 2-3.愛を止めないで
3.I've never been to me/シャーリーン
4.I will always love you/ボディーガード
5.あの人の手紙/かぐや姫
6.長崎の鐘/藤山一郎
7.ひまわり"SUNWARD"/中島みゆき
8.命をあげよう/ミス・サイゴン

●第2部
9.SWAN LAKE
10.角/スマホゲーム『メメントモリ』
11.オン・マイ・オウン/レ・ミゼラブル
12.Beauty And The Beast/美女と野獣
13.アイドルコーナー
 13-1.Dynamite/BTS
 13-2.クリスティーナ・アギレラメドレー
 (Lady Marmalade~バーレスク)
14.Smile/チャーリー・チャップリン
15.GOLD/GOLD~カミーユとロダン~

●Enc
En1.ダンシング・クイーン/マンマ・ミーア!
En2.Nessun dorma

第1部1曲目はいつもの「ラマンチャの男」でスタート。
歌い終わった聖子さん曰く「私の出囃子のようなもの」という表現に相変わらずの新妻節が(笑)。

1曲目を歌い終わった後のMCで喋りまくり、「初めて来られた方~」に拍手が起きると「いらっしゃいませ、こちらの世界へようこそ(笑)」ですし、「よくしゃべるんですよ私」で「ゆるゆるとついてきてください」と一人MCで歌い継ぐ構成はもはや伝統芸(笑)

「3年ぶりということで皆さんにお会いできたことが本当に嬉しくて」「元気にお会いできたことが何より嬉しいです」と仰りながら、「3年経って皆さま拍手の技量も上がられて(笑)」とMCも絶好調です。

ここ渋谷Bunkamuraオーチャードホールでの新妻聖子コンサートは、2016年10月が初めてで、2017年11月に2days、2019年5月に2daysで、今回が4年目で6回目。それもあって「自分にとってもホームのようなステージで」と仰っており、いつも以上に伸び伸びと歌っていることが感じられます。

とりわけ第1部ラストの「命をあげよう」の感情の憑依した様はいつも以上に響きましたし、「オン・マイ・オウン」を歌い終わって魂が抜けている様や、まさに持ち歌と化した「I will always love you」の完成度、「GOLD」の、まさに”今までの生きざまに後悔はない”と歌い上げるような様、どれも素晴らしかったです。

そんな思い出深いBunkamuraオーチャードホールも、隣接する東急百貨店本店の取り壊しに伴い、閉館する、だから思い出のホールに立てる機会も明日が最後かもしれない、と前日にツイートで仰っていた聖子さん。

ところが・・・・アンコールで聖子さん、言いたいことがあるんです、と仰います。

遡ること1時間ほど前のこと。
第1部ラスト「命をあげよう」を歌い終わって楽屋に入られた聖子さんのもとに、会場のスタッフさんが来られたそうです。

会場スタッフさん「新妻さん、本当に気にしないでいただきたいのですが」
聖子さん「何でしょう」
会場スタッフさん「当ホール、閉館しないんです」
聖子さん「えええええええええええええ!そうなんですか!」
会場スタッフさん「ええ、東急本店建て替え中は休館はいたしますが」
聖子さん「改装はされないんですか」
会場スタッフさん「はい、いたしません。休館のみです」

・・・・その話をアンコール中に話された聖子さん、ちょうどアンコール1曲目でスタンディング状態だったこともあり・・・・会場に爆笑が巻き起こり、会場内が一つになりました(笑)。

あまりのことに、その話をしてステージでへたり込んでしまう聖子さん、めっちゃチャーミングでした(爆)。

が、ただでは起きない聖子さん。

聖子さん「またオーチャードホールでお会いしましょう!」

に満場の拍手をもらうあたり、伊達に20年役者さんやってませんね!(笑)

参考までにプレスリリースこちら
・2023年1月31日限りで東急本店は閉館
・Bunkamuraは大規模改修のため2023年4月から長期休館

新しく会場に来られた方に多く言及されつつも、昔からのファンにも面白さを残しておくところが聖子さんの聖子さんたるところで、2幕1曲目「知る人ぞ知る新妻聖子のオリジナル曲」と言及された『SWAN LAKE』。
自身で歌詞を書くことになったものの、恋愛をテーマにした歌詞はことごとく没になり、困ったときにふと見た「白鳥の湖」のバレエを見て閃いたのだとか。

「白鳥は王子なんか待ってないで自分から外に出ればいいじゃない!」(笑)

という思いで書いたのだそうです(笑)

「攻めの姿勢で生きてた頃です」(笑)とか
「今はもう少し丸くなりました」(笑)とか、いちいち面白くてたまらない(笑)

「思ったことが口にすぐ出ちゃうんですよ」と言い、曲前MCで「ミュージカル『オン・マイ・オウン』」と言ってたのを本人珍しく気付いてなかったけど、周囲の聖子さんファンはみんな気づいてたという(笑)

MCが走りに走り、終演予定をなんと25分もオーバー(うち5分は休憩の延長分)という珍しい事態でしたが、あれほどまでに絶好調な聖子さんの歌声、そしてMCを拝見できたことが、何よりの至福だったのでした。

ミュージカルデビュー20周年(来年です)には間に合わないけど、ぜひ、またここオーチャードホールで新妻聖子コンサートが見られることを願っています!

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『My Story,My Song ~ and You』

2022.5.22(Sun.) 13:00~15:30
シアタークリエ 6列10番台(センターブロック)

4日間6公演限りのトーク&ソングライブ、行ってきました。
山口祐一郎さんをメインホストに、各回替わり2日ずつのゲストが登場する構成。
大塚千弘さん登場は2回、この日と前日の土曜マチネの2回でしたが、
この回のチケットをご用意いただけたので、幸運にも生で見られました。

第1部がトーク、第2部が歌の構成。

第1部、ゲストと言いつつ最初出てくる、ちーちゃん(祐さんは「ちひろりん」と言ってました、慣れない笑)と圭吾さん。「ゲストなのに最初に出てくる(笑)」と笑いを取りつつ、祐さんを迎え入れての、第1部はトークパート。1セクション10分で、30秒前に舞台前方のバーが点灯、15秒前に舞台前方のパトライトが点灯(点滅か点灯かで客席にアンケート…笑)、時間になると盆が回って強制終了(笑)という構成。

この回の進行役は予想通りのちーちゃんでしたが、流石の進行力でばっさばっさと2人をぶった切る(笑)。「先生」って自ら言ってましたが、客席から見てても「そうだよね」な、「先生と、言うこと聞かない生徒2人」という関係性(笑)で、しかもそれを客席もスタッフさんも期待してるというポジションがとっても面白い。

祐さん曰く「出会ったときはセーラー服」なちーちゃん、最初にお父様お母様に「うちの娘をよろしくお願いします」と挨拶されて「僕でいいんですか」と答え、お父様が「祐一郎さん、私と同い年です」と答えられて「あぁ、僕は大塚さんの保護者になるんだな」と思った話とか(笑)、圭吾さんが祐一郎さんに憧れてこの道に入って「兄弟じゃないかってぐらい似てた」と祐さんが仰ってる話とか、それぞれ大切な思い出なんだなぁと。

今回の公演、女性キャストは知寿さんとちーちゃんと2人だけで、知寿さんが祐一郎さんが四季在団時の代表的な共演者として呼ばれたということなら、ちーちゃんは祐一郎さんが東宝に出られるようになってからの代表的な共演者ということなわけで、そのポジション自体が有難い話だなと。

直接的な相手役は『レベッカ』の「わたし」ですが、それ以外にも『ダンス・オブ・ヴァンパイア』のサラ、『モーツァルト!』のコンスタンツェと言った共演作があり、先ほどの話の「保護者と娘」という関係性に、「あまりならない」絶妙な距離感が、祐さんとちーちゃんのいいところなんだろうなと。
ちーちゃんも以前からスカッとサラッと、漢前のサバサバしたところがありますから、「ヒロインとしてそこにいてくれる」安心感で、「濃すぎず薄すぎず」の立ち位置が良かったのだろうなと思うのです。

ちーちゃんと圭吾さんの関係も絶妙ですよね。M4の「フレンドシップ」が、「私たちいい関係だと思わない?」からの導入で、関係性と選曲の組み合わせが流石で、何かボニクラとか合いそうじゃない的な距離感。先日の『笑う男』が実質的にガッツリ組んだ初とのことですが(言われてみればそうですね)、過去『SHIROH』、『モーツァルト!』、『ダンス・オブ・ヴァンパイア』と共演歴は多く。

ちなみに、『笑う男』では2人が初参加組(再演組)だったために、居場所に困り(笑)、稽古場で端っこにいて、役作りについて随分話すことが多くて、より濃い関係性になったという話をされてて納得。

で、ここでセットリストです。

●セットリスト
1.The Music of the Night/The Phantom of Opera(山口)
2.私だけに/エリザベート(大塚)
3.恋をしているのなら/ダンス・オブ・ヴァンパイア(山口・吉野)
4.フレンドシップ/エニシング・ゴーズ(大塚・吉野)
5.夜を越えて/レベッカ(山口・大塚)
6.砂に刻む歌/ラ・カージュ・オ・フォール(吉野)
7.ダンスはやめられない/モーツァルト!(大塚)
8.It All Feads Away/マディソン郡の橋(山口)
9.持ちつ持たれつ/レベッカ(吉野)
10.糸/オトコ・フタリ(山口・大塚・吉野)

セットリストは回替わりで、ソロが2曲ずつということで、この回のちーちゃんは初出しの「私だけに」。
ちーちゃん曰く「無茶苦茶緊張してる」と。「祐一郎さんと一路さんの『エリザベート』を拝見して大感動してた私がこの曲を歌う日が来るとは」と話されていて、その緊張が伝わってくるほどでしたが、そのいっぱいいっぱいさが役とシンクロした感じで新鮮でした。

もう1曲はM7「ダンスはやめられない」。「18年前に演じた役を、今倍の年齢で歌う」とシレっと言っちゃうちーちゃんは、ある意味凄いわけですが、こちらも当時の「いっぱいいっぱいさ」が役とシンクロした(名古屋と博多のみの出演だったので、東京では本役として演じていない)とまた違った魅力。今の年齢になっても若さゆえの危うさを自在に出せるところは、ちーちゃんご自身もあまり意識されていないけれども、実はとっても武器なんじゃないかと思うわけです。

デュエットでのM3が、祐さんアルフレートと吉野さんヘルベルトという、またまた面白い関係性だったわけですが、その後ろで本役サラのちーちゃんがまったり水飲んで苦笑しながら見てる図式が一番面白かったかもです(笑)。

祐一郎さん中心に、ちーちゃん&圭吾さんという絶妙な関係性のトライアングルだったこの回。
お3方が歌ってくださった最後の曲「糸」が、客席や配信の方を思ってくださる優しい歌声で、当時からの積み重ねて来た日々を感じさせるかのような空気感を共有できて、素敵な公演になったのでした。

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