『アイリスオーヤマ スペシャルコンサート2019』

2019.5.20(Mon.) 19:00~21:05
サントリーホール 2階C7列20番台(センターブロック)

「オーケストラ・サウンドと光のスペクトラム 仙台フィル meets 新妻聖子」のサブタイトルが付いたオーケストラコンサート。

サントリーホールに来るのは久しぶり。
直近は3年前の4月、玲奈ちゃんが出た『とっておきアフタヌーン』以来。
学生時代はクラシックを聞きに来たりしたことがあります。大学の恩師がクラシック好きで何度か来たことがあるので、クラシックのイメージが強いホール。

つい先日のコンサートツアーファイナル@オーチャードホールから1週間経っていない状態での聖子さん登場、ということでしたが結果的に曲目は1曲以外は全てお久しぶりに聞く曲、来て良かったです。

聖子さんパートのセットリスト
●第1部
1.Let It Go/アナと雪の女王

●第2部
2.My Heart Will Go On/タイタニック
3.I Dreamed A Dream/レ・ミゼラブル
4.Nessun Dorma/オペラ『トゥーランドット』

まさに歌い上げ系全力。

すべて英語歌詞で、聖子節全開で歌い上げる様で満場の拍手を受けられていました。
アイリスオーヤマさん主催ということで背広姿の男性が多く(つか自分もそうですが笑)、恐らく代理店関係の招待の方も多く見受けられましたが、それでも掛け値なしの満場の拍手を贈られる姿を拝見できるのは嬉しいものです。

サントリーホールということで、英語歌詞がしっくりくる上、当然伸びる声が存分に発揮できるわけで、選曲もコンサートとほぼ被らず(M4のみ被り)。最初はちょっとホールの音響に戸惑っていた感じがあったけど、2幕は微調整をした上での歌唱だったのが流石でした。

フルオケだったので本音では『GOLD』を期待したんですけどね、次に期待です。

ともあれ、歌声全力なのと双璧で売り(爆)になるのがMC。
司会をされていた柴田アナ(元TBSのアナウンス局次長をされた方です)に「MCお上手ですね」と言われるミュージカル界のMC姫(笑)の本領発揮。

2幕2曲の途中のMC、レミゼ「夢やぶれて」の曲紹介はご自身で。

「さきほど司会の柴田さんも『ニューシネマパラダイス』が年齢によって感じることが変わる作品と仰っていましたが、今からお聞きいただく『レ・ミゼラブル』も年齢によって感じることが変わる作品のうちの一つです」

と仰られ、

「ファンテーヌは夢破れていますが、それでも自分の足で立ち上がろうとする。人生はなかなか上手くいくことばかりではないですけど、それでも立ち上がろうとする強さを感じていただければと思います」

というMCからの歌唱。

頭いいなぁと思うのは、1幕での司会の柴田さんの言葉を引用され、共通点を説明しながら「レミゼ」について「年齢によって感じることが変わる作品『のうちの一つ』」と仰っているところ。つまり、そういう作品は「レミゼ」だけじゃない、ということをこの言葉で表現してるんですよね。

「1幕で説明されていたことと、実は同質のもの」ということでお客様の関心を引き、そして「レミゼ」以外にもそういう作品がある、ということでミュージカルへの興味も湧かせる。この日、レミゼは映画音楽の流れで紹介されていたのですが、そこにミュージカル側の説明も加えるのが流石で、更にそれが客席みなの関心を呼ぶように「人生で立ち上がることの大切さ」につなげるのが素晴らしいです。


歌唱後の柴田さんとのMC

柴田さん「お喋りお上手ですね」
聖子さん「すいませんうるさくて(笑)」
柴田さん「(経歴を拝見して)王様のブランチ経験は役立ってますか」
聖子さん「えぇもちろん。天職だと思ってました。1日7軒とかのグルメレポ、女の子はみんな辛そうにしてたのに、私は天国じゃないかと思ってました(笑)」

聖子さん「食レポ褒められたので、職にあぶれたら、食レポに転職しようかと思ってます」からの、歌声で度肝を抜いて満場の拍手をもらうスタイル(笑)

司会の柴田さんのポケットにCD「colors of life」が…

柴田さん「あれ、こんなところにCDが(笑)」
聖子さん「すいません、さっき横から入れちゃいました(笑)」
こちらサントリーホールの上にある、ワーナーミュージックさんからCD出させていただきまして」

…どこまでも澱みない(笑)
確かに、サントリーホールの横、アークヒルズサウスタワーの20階にワーナーミュージックさんの本社があります。姫のMCの情報量ハンパない(笑)

柴田さん「(帯に書いてありますが)関ジャニさんの音楽番組で6回優勝、あの『ラマンチャの男』すごかったですね」
聖子さん「ありがとうございます。このCDには入ってないんですけど(笑)」

…とかいうのまでありました。

聖子さんのMCをよく聞くと、よくプレゼンテーションの本で書かれている「まずは聞き手と共感できるところを共有して、自分に関心を持ってもらうのが大事」ということとかなり共通している部分があるんですよね。

ただ歌を聞いてもらうだけでなく、歌の周りの物語も一緒に持って帰っていただく。
聖子さんが自身のコンサートでも、コンサートのゲストでも常に感じられる哲学。
自分を、音楽を、そしてミュージカルを、理解してもらうための労を惜しまないからこそ、聖子さんは強く光っているのだろうな、という気持ちを再認識できた素敵な時間でした。

仙台フィルさんの演奏も迫力で、特にラストの『スターウォーズ』の「帝国のマーチ」は圧巻でした。
素晴らしかったです。

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『Before After』(13)

2019.5.18(Sat.) 19:00~21:20
渋谷J'z Brat

初めてのコンサートバージョンでの開催となった、
『Before After In Concert Vol.1』。

ミュージカル座さんの作品としては異色の少人数、2人ミュージカル『Before After』のコンサートバージョン。

日本初演は2014年11月で、今年11月で上演5年を迎えることを記念してのコンサートで、この後Vol.2が6月に天王洲で、Vol.3が8月に南青山で開催されていることが決まっています。

この日のペアは、ベンが上野聖太さん、エイミーがRiRiKAさん。
本公演ではBAではお馴染みの吉祥寺・スターパインズカフェで2016年2月にたった2回出演されたペアです。

この作品は2016年夏にクラウドファンディングでCDが製作されていますが、この日のセットリストは基本的にそのCDの収録曲・収録順そのままに構成。

大好きな作品であるBA、そのコンサートバージョンとして拝見して思ったのは、意外な感情で。

この作品はミュージカルで、そして当たり前のことに歌で物語が紡がれていくわけで、そしてどの曲も素敵な曲なのはわかっているのに、でも1幕は正直言ってしまえばかなり混乱したんですね。

思うに、作品ファンであり、またこの日のエイミーを演じたRiRiKAさんのファンでもある自分から見ると、視点が拡散したのが理由かなと。

かつて付き合っていたベンとエイミーが、お互いの気持ちの行き違いによって別れて、思い出の丘で再び出会った2人。でもベンは記憶喪失によりエイミーのことを全く忘れていて、ベンを忘れられないエイミーは再びベンとの物語を紡ぎ始めようとする物語。

この物語は記憶喪失の前(Before)と後(After)を行き来しながらベンの感情、エイミーの感情、そしてお互いの感情の噛み合い・噛み合わなさをあたかもジェットコースターに乗るかのように共有することに醍醐味があるのですが、だからこそ、そこに演じる本人の感情が入ってきてしまうと、見ている方としてはもはや消化しきれなくなっちゃうんですね。

今のシーンが「Before」か「After」かは、本公演同様にバックのセットに表示されるんですが(席によっては見えないことがあったそうですが)、MCに関しては「エイミー」と「RiRiKA」のランプが欲しいぐらいの振れ幅で(笑)。

この日は2回公演で、マチネを踏まえてのソワレだったはずですが、1幕は「(RiRiKAさんが)MCもあくまでエイミーとして回す」ということにきちんと徹しきれてなかったように見えました。(RiRiKAさん本人も、MCで「自分の感想を入れるとエイミー(のあるべきポジション)と違ってしまう」と仰っていたので、意識はされていたようですが)

2幕ではきちんと修正されていて、2幕のエンディングは本編同様に、感動を強く感じられて嬉しかったです。

1幕のMCで「RiRiKAさんとして」仰っていた話として、「コンサートの第1弾がなぜ自分たちなのか(笑)」というセルフのツッコミ(笑)がありましたが、「歌先」で考えたときに、歴代のエイミーで名前が挙がるのはRiRiKAさんか、準レジェンドの岡村さやかさんか、どちらかと思います。

ただ、(岡村)さやかさんはエイミーとしての登場回数・共演したベンともに多いので、BAの世界と強く結びついていて、コンサートとはいえ、この作品との付き合いの長さが自然に見えてしまうのかもしれません。

歌で紡ぐ作品とはいえ、実際に歌だけで(正しくは曲を間引いて)繋いでみると、そこには表現されにくいものが出てしまうというのは、歌にパワーがあるRiRiKAさんのエイミーだったからこそ強く感じさせられて。

埋め切れなかった余白をどう感じていただくのかが、Vol.2以降の課題ではないかと思います。

この日、会場のJ'z Bratおなじみのスペシャルカクテル、そのノンアルコール編として登場していた「Dr.ジョナサン・テート」。

「Dr.ジョナサン・テート」は今回のセットリストではエイミーが頻繁に電話をしていた相手としてしか登場しないので、RiRiKAさん曰く、マチネを見たお知り合いから、「(ジョナサン・テートと)浮気していたんでしょ」と言われて(爆)、ソワレでは弁解MCが加わっていました(笑)。

エイミーがベンと同居するにあたり父と疎遠になっていたものの、父にガンに見つかり、父の主治医であるジョナサン・テートと頻繁に連絡を取っているエイミー。そのエイミーの携帯電話をベンが観て、修羅場に次ぐ修羅場の末の別れになるわけですね。

そこに「他人の携帯電話覗くなんて最低ですよね」とか「やけになって飲酒運転とか最低ですよ」とか”RiRiKAさん”としてMCでぶっ込み、客席を笑わせるというね。客席忙しすぎ(笑)。

何にしろ、BAはやっぱり流れが大事な作品なので、MCを細かく挟むより、長くMCを取って曲をまとめた方がよいように思いました。

2幕では長めにMCを取っていた分、物語パートとMCパートが明確に分離されて入り込みやすかったですが、その中でも印象的だったエピソードが、バンドメンバーのうち初演からの”レジェンドメンバー”の1人であるチェロの石貝さん。

石貝さん曰く「チェロの旋律はエイミーの心情を表現している(エイミーの心情と同期するように弾いている)」という話を、実はRiRiKAさんは知らなくて驚かれていたのですが、その様にこちらもびっくり。
”知らない”ということより、”演出的に知らせることを必要としていない”ことの方に驚きました。

演出の中本さんは役者さんの自由さを優先されるタイプの演出家さんと認識してはいますが、それでも「伝えるべきこと」であれば伝えるはず。それなのに言っていないのは、少なくとも「エイミーを演じるうえで、知らなければならない情報ではない」 わけで、非常に驚きました。

また、MCで興味深かったのは、RiRiKAさんが仰った「エイミーは自分と随分違う」というのはやはりそう意識されているのだなと。
RiRiKAさんのBA愛は随所に溢れんばかりにありましたが、それは「自分と似た役だから」ではなくて、「自分と全く違う役に入り込めるから」こそかと思えて。

・・・

短期間の登板が多い『Before After』。

台詞も歌詞も膨大で、今までの歴代キャストの皆さまは、漏れなく高すぎる壁にぶち当たりながらも、最後は皆さん「またやりたい」と仰っているのは、役者さんが本能的に持っている、「自分と全く違う役に入り込める」渇望を満たしてくれる、”飲んでも飲んでも湧き出る泉”のような作品であるからなのだろうな、と改めて感じて。

この日のベン・エイミーペアである上野聖太ベン&RiRiKAエイミーを本公演でまた拝見できることを夢見つつ、コンサートバージョンで初めてこの作品を見た人が本公演を見るチャンスにつながりますように、コンサートバージョンでも作品の解説を、短くて良いので配布したらいいのでは、と感じたのでした。

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「中井智彦 トーク&ライブ -uta friends! -vol.2」

2019.5.16(Thu.) 19:30~21:10
November Eleventh1111 Part2(赤坂)

何度かライブゲストでお見かけしたことがある中井さん、ソロライブにお伺いするのは初めてです。
会場もお初な赤坂、一ツ木通り沿いのライブハウスですが、いい雰囲気の箱です。

では、セットリストから。

●セットリスト
1.Lullaby of broadway/42nd Street(中井)
2.ラマンチャの男/ラマンチャの男(中井)
3.Another day of the sun/ラ・ラ・ランド(中井)
4.Audition/ラ・ラ・ランド(岡村)
5.手を取り合って/Queen(岡村)
6.エルヴィス・プレスリーメドレー(中井)
7.I'll cover You/RENT(中井・岡村)
7.A Stud and a Babe
 /I LOVE YOU, YOU'RE PERFECT, NOW CHANGE
 (中井・岡村)
8.Follow You Star/A Class Act(中井・岡村)

●アンコール
9.Stars/レ・ミゼラブル(中井)
10.糸/中島みゆき(中井・岡村)

気心知れた方をゲストに、ということで今回のゲストは初舞台が2007レミで同期の岡村さやかさん。
ソロライブと思いきや、岡村さんがほぼ出ずっぱりでびっくり。

レミで初舞台同期ということもあったけれど、久しぶりに共演したのは去年の『A Class Act』。

中井さん「『コーラスライン』の作者にフォーカスを当てた作品ですが、『コーラスライン』ご存知ですか?あの『One』です」
会場「へぇー」
岡村さん「それで通じるって凄いですね(笑)」

という絶品な突っ込みで会場を沸かせ。

岡村さん「文房具屋巡りが趣味で、稽古場が三鷹だった『A Class Act』で、有名な文房具屋が三鷹にあって行きたくて、稽古入り時間ぎりぎりに入ってたダメな私で(笑)」

という暴露をしつつ。

中井さん「岡村さんを掘り下げる中井製Wikipedia、『なかぺでぃあ』からということで『小4まで九九が覚えられなかった』」

岡村さん「(爆沈)。言いましたっけ?よく覚えてますね!

中井さん「覚えてますよー。九九を覚えなきゃと思ったきっかけは?」

岡村さん「父が私のところにやってきて、『お前は職人になりたいのか』と言われて、(これはいかんと)目が覚めた(笑)」

という初聴のエピソードが面白すぎる(笑)

質問コーナーでは
岡村さん「(中井さんに)前向きに取り組む秘訣は何ですか」

中井さん「前向きに見えてるんだね(嬉しそうに)。あえて気にしていることとしては『ディスカッションをする』ことにしてる。お互いが話し合うことで道が開けると思ってる」

中井さん「※アンケートから(岡村さんに)安らげる場所はどこですか」

岡村さん「家ですね。ベランダが好きで、好きすぎて、もっと快適になるように鉢植え持ってきたなんだりしてたら、気持ち良くてそこで寝てしまって(笑)。『さすがにそれはやめて』と、母に言われて止めました(爆)」

中井さん「※アンケートから(岡村さんに)やりたい役は何ですか」

岡村さん「いつも言っているんですが『ダディ・ロング・レッグス』のジルーシャは大好きすぎる役で、やりたい役です。『ボニー&クライド』のカッコよさにも憧れます。あとは天使みたいに振る舞っているのに途中から悪魔に変わるような役もやりたいですね」

中井さん「スイッチ入ることあるよね」

岡村さん「違う自分になることを楽しんでいるところはあるかもしれないです」

…そんな感じの、心の距離がとっても近いトークがとても楽しく。

心の距離は歌の距離でもあって、お互いを信じて委ねて、それでもそれぞれ自身の持ち味は消えることなく並立する、素敵な競演に酔いしれました。

いつかまた、ライブでも舞台でも共演したい、という言葉、信じてます!

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『新妻聖子コンサートツアー2019 See Ya!』(2)

2019.5.14(Tue.) 19:00~21:30
 オーチャードホール 15列1桁番台(下手側)

2019.5.15(Wed.) 19:00~21:10
 オーチャードホール 8列1桁番台(下手側)

新妻聖子コンサートツアー、東京2daysにて、ついにツアーファイナルです。
3月の初日、武蔵村山からほぼ2ヶ月ぶり、色々な変化も聞いていつつの、聖子さんの1年半ぶりのオーチャードホールへ(前回は2017年11月)。

前回もそうでしたが、オーチャードホール2500人を、しかも平日に2days埋められる聖子さんってホントに凄いなと。コンサート会場で以前からのファンの皆さまとお会いすると、懐かしさと同様「われらの聖子さまがこんなになってくれて…」な思いが共有できまして(笑)。

さて、まずはセットリストです。

●Act1
1.ラマンチャの男
2.星に願いを
3.Colors of the wind/ポカホンタス
4.アヴェマリア
5.童神(わらびがみ)/沖縄の子守歌
6.あの人からの手紙/かぐや姫
7.着飾って、輝いて
 (Glitter and be Gay)
  /キャンディード

●Act.2
8.Never Enough/グレーテスト・ショーマン
9.あり、か/中島みゆき
10.ビリー・ジーン/マイケルジャクソン
11.聖子のアイドルコーナー
  USA/DA PUMP(with客席)
12.Sisters(with新妻由佳子さん)
13.いのちの理由/さだまさし
14.On My Own/レ・ミゼラブル

●Encore
15.Nessun dorma
 ~誰も寝てはならぬ~

それにしても、色々な意味で変わらないのが聖子さん。

1幕、「ディズニープリンセス風な衣装で」とご自身を紹介しながら、
初日は客席からの笑いを見て取るや、
「なんで笑うんですか(笑)、ディズニープリンセス『風』って言ったのに」と客席にツッコみ、更なる笑いを誘い
楽は客席がクスリともしないことを見て取るや、
「いつもはここで笑いが起きるんですが、今日は起きないんですね」とわざわざ言及して客席から笑いを吸い上げるところとか、いつもの新妻聖子MCモード(笑)。

動きまわるUSAの前に至っては、「15cmヒールを脱ぎますね」と言って脱ぎ、「ほらちっちゃい」と”わざわざ”言及して客席のどよめきを誘っているという。それまで堂々と歌い上げていた聖子さんが、「小さい」なんて客席のほとんどは知らないからのギャップですよね。「いいんです、(小さいことを)受け入れて生きていきます」ってやるあたりが、いつもの新妻聖子MCモード(リプライズ)

歌声に関しては火曜日(初日)よりは水曜日(千穐楽)の方が喉の調子も、マイクの調子も良さそうに感じました。席としては7列後ろになったのですが、特に2幕「あり、か」は初日はかなりくぐもった感じに聞こえ(元々聖子さんとしては歌わない系統の歌ではありますが)たのに比べれば、千穐楽は流石の出来に感じました。

MCで流石だったのが、1幕ラスト『キャンディード』の作品説明。「哲学的で難しい作品ではあるのですが、”人生の教訓がちりばめられている作品”」と要約した千穐楽での説明は、「あ、上手く説明できてる」と本人が仰る(笑)のが十分なほどに簡にして要。

「最近ミュージカルに出ていないので、”ミュージカルってただ歌い上げる”だけじゃなくてこういうものもあるというのを知っていただきたくて」

「むしろ、『ただ歌う』だけなのは恵まれたことで、私たちミュージカル俳優は”何かをしながら歌う”ことを求められる仕事ということを知っていただきたくて」

という言葉が流石で、ポジション的に”ミュージカル界の女王”となってきたところに相応しいMCで。

「まるで『ミュージカル講座』ですね」と仰っていましたが、ある意味『ミュージカルMC講座』という感じの、見本的な絶品MC。歌の背景をきっちりと説明したうえで、歌声を含めた歌を理解してほしい、そのためには出来得る限りの(必要十分な量の)インフォメーションをする、というのが聖子さんの聖子さんたる、かつ聖子さんらしいMCで素晴らしかったです。

・・・

そしてこの2日間の白眉は、何といってもお姉さま、新妻由佳子さまご登場での姉妹デュエット『Sisters』。
アルバム『アンダンテ』に収録されているオリジナル曲ですが、作詞作曲がお姉さまの由佳子さん。

姉が妹を思って、その時に書いた詞…と聖子さんも思っていたそうですが、実は由佳子さんが明かしたところによれば「聖子が生まれた時(由佳子さんは2歳半)にとても嬉しくて、その時『いもうと』ってタイトルで言葉を書き留めてた。そこからこの曲の歌詞は生まれたんです」と話されていて、実は聖子さん自身も初耳だったそうで、感動されていました。

「私はいつも姉に助けられてきて、姉がいるから私は今ここにいられると本当に思っています。
中学高校時代を過ごしたタイのバンコクから帰国して(上智)大学に入り、歌手になりたくて努力したけど全く上手くいかなくて。当時、渋谷のここから5分ほどのライブハウス『take off 7』で5人ぐらいしかいない客席で歌っていて、『夢を諦めなきゃいけないんだろうか』と思っていたんです。
そんな時、姉が来てくれて。『私には聖子がもっとたくさんの人の前で歌う姿が見えたよ』って言ってくれて、その言葉を支えに頑張って。ひょんなことから『レ・ミゼラブル』のオーディションのお話もいただいて、合格させていただいてから今まで、姉をはじめ本当に多くの皆さまに助けていただいて、今日これだけの皆さまの前で歌を聞いていただけていることに、本当に感謝の気持ちでいっぱいです」

と仰られていて。

この話はFCのお茶会で一度だけ話されたことがあり、前回はお姉さまがゲストではなかったこともあり、同じオーチャードホールとはいえ話されなかった話なのですが、「あのとき諦めていれば、今の自分はない」と言う言葉は、長く拝見しているからこそ胸に迫るものがありました。

ともすれば、”歌える”だけに歌と「戦う」ようなところもあった若き頃の聖子さん。

時を経て、沢山の経験もされて、歌えることへの感謝を言葉にしてくださる頃になったころから、聖子さんの歌はより温かく、深くなったように感じます。

いい曲をリスペクトして、ご自身が歌う意味をよりはっきりと考えられたからこそ、より考え抜かれた、この日へのセットリストの変化につながったのかな、と思えて。
全力で壁を打ち崩そうとしていた頃の曲や姿に懐かしさを感じはしつつも、今回のツアーの意味からすると、東京ラスト2daysのセットリストは、腑に落ちた部分があったのでした。

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『レ・ミゼラブル』(25)

2019.5.12(Sun.) 17:00~20:05
帝国劇場 2階L列1桁番台(下手側)

令和初観劇は『レ・ミゼラブル』。
平成ラスト観劇が先月28日の『笑う男』なので、期せずしてどちらもヴィクトル・ユゴー作品。

観劇をリピートし始めて以来、2週間も間が空くのは初めての経験ですが、GW明けに大きなシステムプロジェクトのリリースがあり、GW期間の状況が読めなかったので、いっそのことと観劇を一切抜いた2週間にしたことで、自分にとっての観劇を改めて見つめ直す時間になりました。

 

・・・・・

まずは、2週間以上空いたレミの感想から。

一番驚いたのは、唯月ふうかエポニーヌのスピード感。

歴代屈指の戦闘力を仄めかす、驚くほどの敏捷さ。新演出になってから、エポニーヌは「盗賊団の中でも一目置かれる存在」というのを強く見せる役になっていますが、目にもとまらぬ速さで動き回り、テナ以外は全く相手にもならないほどのやり手感。

それでいて、海宝マリウスが「彼女と行くか、仲間と行くか」と言ったのを聞いて、「あ。やっぱり私と行く選択肢はないのね」と身体ごと語ってる説得力が凄い(笑)。

ふうかエポからは「諦め力」の強さみたいなものを感じるんです。自分は汚れた人間だから、自分が望む恋なんてかなうはずないという諦め。だからこそ、罪深いマリウスさまの実は思わせぶりと捉えられても仕方ないかのような優しさに、心の底からぱぁっと喜んでしまう、そんなふうかエポに泣かされます。

この日のコゼットはまゆコゼ(小南満佑子コゼット)で、今期一番好きなコゼット。

かつ、まゆコゼとふうかエポが組むこの日の組み合わせが今期イチオシで、

愛されることに自信いっぱい(無意識)のまゆコゼと、
愛されないことに確信いっぱい(意識的)のふうかエポ、

という形になるのが、とっても印象的。

それでいて、この2人が、それそれ自分が「想像もしない形」の「幸せ」を得るのが、まさにレミだなぁ、と思うんですね。
コゼットは愛する父を失う(自分が「父」と思ってきた人が「父」ではなかったことを知る、それでもいいとコゼットは思うのでしょうが)けれど愛する人と生きる道を得るし、エポニーヌも恋は実らなくても、大好きな人に思いが伝わった上で、その人を救うことができたことに、自身の生きる意味を得ることができただろうし。

そういえば、カテコだと結構シングルポジションになることが多いエポだけど、今日はふうかエポに上山アンジョが「Nice Act!」モードで寄って行ってて萌えた。ラストはふうかエポ&まゆコゼがお隣で顔寄せあって笑顔でいてくれて、嬉しかったです。

この日の公演でお初だったのは橋本じゅんテナルディエ。
伊礼ジャベールを煽りまくって怒らせたことに怯み、染谷警官の警棒を自分に寄せて「いっ、いつの間に!?」って小芝居やって客席の笑いを取り、しまいには染谷警官に蹴り入れられてて笑いました(笑)

そしてその伊礼ジャベール。

伊礼ジャベールを見ていると、「逃れたい早く、ジャン・バルジャンの世界」という言葉が深く伝わってきて、「バルジャンの世界」でしか生きられなかった哀しみを感じてしまったのでした。思えばバルジャンは、ジャベールより少しだけ世界が広かったのかも。ジャベールほど自分で自分を縛らず、100%の聖人君子ではないからこそ、罪を償った上で、罪よりも大きい「自らの生きる意味」を産みだそうとしたのかと感じたのでした。

・・・

ここからレミ以外の話も含んだ話になりますが、2週間観劇しなかったことで感じた、自分の中の「観劇」に関する思いを少し。

「なぜ芝居を見るのか」と言うことを改めて考えてみたのですが、こと仕事に追われる日常において、自分が志向せざるを得ないことって、「結果を出すために、いかに行動するかを考えること」であり、「それに対する理由づけを考えること」

常に成果を求められる日常に比べて、芝居を見ること自体、何かの成果を求められるわけではないんですね。むしろ、まずは受け取ればいい。それが心の栄養になるんですね。しかも、以前は自分自身「見に行くからには何かを得なければ」と思っていたけれど、最近は「何も得られないか、得られるものが少ないこともあり得る」と割り切っていて。得られるものの大小は、作品の質だけでなく、見る側のコンディションも大きく影響しますし。

かつては「見に行ったものは必ず感想を書かなきゃいけない」という風に思っていた(実践していた)時期もありましたが、現実的な時間の限界もあって、数年前にその枷も外しましたし。

チケット代を出して時間を費やして見る、という行為は、誤解を恐れずに言えば、何かを言う自由も、何も言わない自由もあると思っていて、願わくば、コンディションとして、常に新鮮な感想を言える自分でいたい、という思いをもちながら、自分なりのペースで観劇していきたいな、と改めて感じたのでした。

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『レ・ミゼラブル』(24)

2019.4.15(Mon.) 18:15~21:10
 2階K列40番台
2019.4.20(Sat.) 12:00~14:55
 2階L列50番台
2019.4.20(Sat.) 17:00~19:55
 2階J列10番台

帝国劇場

2019年レミゼ、始まりました。
プレビュー初日(15日)ではどうもしっくりこなかった自分も、本公演2日目の19日マチソワでようやく、「私の2019レミゼが始まった、そんな感じ♪」になれました。3回の観劇でプリンシパル27人中25人まで見られる効率は我ながら流石です(爆)。

演出面の大きな変更はなく、舞台が多少明るくなったと感じる程度。細かいところでは、結婚式でコゼットに上げる指輪をマリウスが容易く見つけてしまうところと、エポニーヌが撃たれた後に帽子を手放してしまう(その帽子は、天に召された後にガブローシュからマリウスに手渡される)ところぐらいでしょうか。

ただ、個人的に感じた一番大きな変化は、エポニーヌの立ち位置。
制作側の意思として、はっきりと「幼い少女」であることが再設定されたのかと思います。

笹本玲奈ちゃん(1985年生まれ)がエポニーヌをやったのが2003年8月(18歳)、それ以来、2015年8月に30歳で卒業するまで、つまり今回の2期前まで演じていたわけですが、その期間、玲奈エポニーヌの年齢を重ねるごとに、全体的にエポニーヌの年齢設定はだんだんと上がってきて、玲奈ちゃんの1歳下のびびちゃん(綿引さやかさん/1986年生まれ)が2013(27歳)-2015(29歳)で演じられたのもその流れ。2017年の松原凜子さんのエポニーヌもその流れ、つまるところ「きれいなお姉さん」の傾向が一つはあったように思います。(そして私はその路線が大好きでした。)

その松原さんが今回のレミには出られない(はっきりとオーディションで選ばれなかったことをご本人が言及されていました)ことから、違和感を感じていたのですが、プレビュー初日の(屋比久)知奈エポ、my本公演初日の(唯月)ふうかエポ、(昆)夏美エポを見て、「あ、これはもうそういう路線なんだな」と理解することになりました。

マリウスから見て、はっきりと「恋の対象にならない」エポニーヌ。

破れかぶれな面が強い昆エポ、ボーイッシュが一番強いふうかエポ、野性っぽさが特徴的な知奈エポ。
それぞれ「らしく」て魅力的ではあるのですが(特にふうかエポ)、でも、「お姉さん的なエポ」がいなくなった現実は、やはり自分の中でのレミが一つ区切りがついたのだと、そう感じざるを得なかったです。
意図してかわかりませんが、今回、初日の会見写真にもエポはいませんしね。(ディズニー映画のメインヒロインをやった人が2人もいるのにかかわらずです。)

それと対になり、三人三様で素敵なのがコゼット。

とりわけ、2015年からコゼットを演じている小南満佑子コゼットのパパ大好きコゼットの安定感たるや、絶品です。
歴代のパパ大好きコゼット(河野由佳さん→青山郁代さん→清水彩花さん)が大好きな自分にとって、パパに対して愛情たっぷりのまゆコゼの輝きは何物にも代えられません。

2017年に観劇してた時、「生田コゼットは愛のコゼット、彩花コゼットは愛情のコゼット、小南コゼットは愛嬌のコゼット」と評したのですが、2年年齢を重ねた分、まゆちゃんには包容力が加わって、彩花ちゃんの残してくれた空気をしっかりと継いでくれているのが嬉しくて。

そして最大の泣きポイントは、1幕ラスト、バルジャン(パパ)が「明日は」と言ったとたんに悲しそうな顔をするまゆコゼ。

「(パパ以外を)愛することを初めて知ったのに、ようやく(愛する人と)会えたのに、明日の戦いで愛する人と永遠に別れるかもしれない」、そのやるせなさが表情に現れていて素晴らしかったです。

史上最年少、歴代唯一の10代コゼットの熊谷彩春(いろは)コゼット。2003年以降で10代プリンシパルは(笹本)玲奈ちゃんのエポニーヌ(1985年6月生まれ、2003年8月デビュー、18歳1ヶ月)に次いで2人目(2000年3月生まれ、2019年4月デビュー、19歳1ケ月)。
若さに溢れ、逆に言うと、感情に素直な反抗期コゼット(笑)。この日のパパこと吉原バルジャンが娘をどうしていいか分からないおろおろぶりが新鮮です(爆)。

生田コゼットもグレコメ(1月公演)を経て安定感も増して安心してみていられます。アイドルと兼業のハードスケジュールだけが心配で、そろそろ1本に絞られた方がよいのではと気にかかります。

他キャストで印象的なキャストも多々いらっしゃいますが、一番印象的だったのは伊礼ジャベール。
期待以上の存在感で流石でしたが、とりわけ神に祈るさま、そして自分こそが神に愛されていると信じる姿が印象的。

どん底の環境で生まれ、法を守らせることのみが自分のレゾンテール(存在意義)である警部のジャベールが、「絶対的な悪」とみなすバルジャン。バルジャンが、罪を償った後に真心を尽くし、皆に信頼されるようになっていく姿は、自分がなくなってしまうほどの衝撃だったのだと、その感情が伝わってきて圧倒されました。

仕事の都合で、GW中は一切のレミ観劇の予定がなく、次は5月12日になります。結果的に少し時間が空くことで、どういう変化が出てくるのか楽しみです。

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『いつか~one fine day~』(2)

2019.4.19(Fri.) 19:00~21:00
シアタートラム B列10番台(上手側)

どうしてももう一度見たくて、定時退勤日なのになぜか全く帰ろうとしない同僚達の中、退勤。
隣の方を一切気にしない地下鉄(←見た人は分かる話。)、東京メトロ半蔵門線から東急田園都市線で三軒茶屋へ。

劇場受取でチケットを受け取ってみたら、まさかの最前列。
しかもエミの母・和田清香さんが慟哭するポジションが完全に目の前で、その圧に圧倒され涙しました。

さて、今回は前回以上にネタバレです。
これからご覧になりたい方、回れ右をよろしくお願いします。



よろしいですね?

舞台というものは、同じ作品を見ても全く同じ感情を持つとは限らないもの。

というのは、リピートしていると気づくことでもありますが、舞台の上での空気、役者の皆さんの空気そして熱量、客層、そして何より自分の気持ちが舞台を見ている時の感情を左右します。

全て人間が作り出すものなので、全く同じ回はありえないわけで、この「いつか」も、やはり前回と全く違う感情を持って拝見することになりました。

前回、「『いつかできるようになりたい』、人間はそういう思いがあってこそ生きられる」というベクトルを感じて実際にそう書いたのですが、この日感じた感情は全くの真逆。

「『いつかこの苦しみから抜け出せる日は来るだろうか』、人間はそれでも生きていかなければならない」という感情。

最愛の人・マキを喪い、失意の中にいる主人公・テル。生きてはいるけれど、毎日が無事に終わる事だけを祈る日々。何を目標に、何を支えに生きていけばいいかわからない、「死んでるように生きている」ようなさま。

翻って、テルが仕事で関わることになる、植物状態にある女性・エミ。ベットにつながれ、自ら動くことも意思表示もできない。
テルが「気持ちが死んでるように生きている」のなら、
エミは「身体が死んでるように生きている」

そんなエミの姿が、なぜかテルにだけは見えてしまう。
混乱するテルが、エミの奔放さに振り回されながらも、エミの底抜けの明るさの影にある思いに触れて、「仕事」(損害保険会社の担当者として、彼女の代理人に対して当件の示談を獲得することを厳命されている)と全く違うベクトルに引きずられていく。

この作品のフライヤーにある「本当の彼女の笑顔を、まだ知らない」の意味。

植物状態にある彼女の本名、「エミ」

つまり、「本当の彼女の『笑み』」を見せることができない、エミにとっての”心残り”。今このまま死んでは死にきれないという思い。最愛の人・マキの思いを満たせなかったテルは、エミにとって、「自分の気持ちを心から理解してくれる人」。

エミにとっては、自分の進むべき道を照らしてくれる、「テル」が「光」であってほしかったのだろうなと。
仕事の枠をいつのまにか越え、エミの本当の支えになっていくテルの姿。その姿に、最初はけんもほろろだったエミの親友、マドカもその心を開いていく。エミとマドカは同じ児童養護施設で育ち、つまりどちらも親に捨てられた心の傷を持ちながら、エミにとってマドカはいつも姉で、いつも母で、いつも支えだった…という思いで歌われるエミとマドカのデュエットが、まず第一の号泣ポイント。

エミ(皆本麻帆さん)がマドカ(佃井皆美さん)の結婚式に歌う、エミからマドカへの真っ直ぐな気持ち。そしてその感情は一方通行ではなく、マドカにとっても心を許した、大切な親友であることが感じられるその歌の温かさは感動的。

そしてテルの本気は、エミの「母を探したい」という難題もクリアするが、かつてエミを捨てた母は、エミに会うことを拒絶する。
エミの母には母なりの思いがあったから。

かつてとある本で読んだ言葉で好きな言葉があるのですが、

「人には、他人にはどうしようもない事情があるもの」

という言葉。

舞台で客観的に登場人物を眺めると、「こうした方が良いのに!」「こうすればよかったのに!」とつい思ってしまいがちなもの。
でも、人間の心の動きはコントロールできるものでもないし、人間は常に最善の手を選べるわけでもない(感覚的に言って、短期的にはマイナスとなる行動をとるケースが多いように思います)。それぞれの人にはそれぞれの事情があり、属するコミュニティ(家族だったり社会だったり)があり、それは他人が行動を強制できるものでも、他人と共有しきれるものでもない。

でも、「人間はそれぞれの存在として尊重されるべきで、社会的マイノリティーであってもそれは同じ、だからこそ人間は愛おしい」というメッセージに溢れたのが板垣さんの脚本であり演出であり、登場人物に対する視線が感じられて好きです。

事象を俯瞰する「視点」と、事象を表現する「視線」が上手に混じり合うからこその心地よさなのかもしれません。前者が重すぎると大上段な作品に見えて、後者が重すぎると感情過多になる気がするので。

・・・・

前回も今回も、1年分ぐらいの涙を流して、要は2回で2年分ぐらいの涙を流したことになりますが(笑)、「涙」といえば、自分にとって違和感がある歌詞があって、それが「涙の数だけ強くなれるよ」という歌詞(『Tomorrow』)。

自分の感覚としては、「涙の数だけ弱くなれる」方が大事だと思っていて。

世の中で生きていくには、(特に男性である自分にとっては)強く生きていかなきゃいけない、そう思って生きてはいるけれども、それこそ、この作品で小林タカ鹿さん演じる上司・クサナギさんがいみじくも語っているように「夢や未来で生きていけるほど現実は楽じゃない」と言った言葉に強く同調するところがあります。

強く生きていかなきゃいけなければいけないほど、時には弱くなれないと、人間って脆いもので、ポキッと折れてしまう。

私も父を亡くした経験があるので分かる部分もありますが、本当に悲しい時って涙も流れなくなるもので、「感情」というものがなくなってしまうのですね。つまり、「自分が生きているか死んでいるかもわからない感覚」であること自体が自覚できないんです。上司のクサナギ氏が、テルを心から心配して「大丈夫か」と掛ける言葉が、まさに「テルが”生きている”かわからない」危険な状態であることを察知しているから。

だから「涙を流せる」ことが「感情を持って生きている」ことの一つのバロメーターだと自分は思っているので、強がって生きるだけじゃなく、人間にとっては弱くなれるときがあるべきと思っていて、そこに自分は芝居を観る意味の一つがあるように感じています。

物語に戻りますと、テルにとって、最愛の人・マキの思いを遂げさせられずに喪ったことが、自身の生きる意味の喪失につながっていて、その思いがあるからこそ、エミはテルを信頼する。そしてマドカもテルを信頼する。肩ひじ張って頑張ることしかできなかったマドカが、信頼できた数少ない相手。

人生において、「他人にはどうしようもない事情がある」と先ほど書きましたが、逆の面として「自分ではどうにもならないこともある」もこれまた真実で。

人間それぞれ、自分が辿ってきた道というのは、往々にして自分の行動を束縛するもので、よほどの例外的な方でない限り、そうそう自分の既成概念から飛び抜けた行動を出来る人はいないもの。だからこそ人間にとって「他者」と関わる事って大事で、それでこそ世界が広がっていくのだ、と感じられるのでした。

・・・・

登場人物は皆魅力的で、特に女性陣の多士済々さが素晴らしかったです。

エミの母親、和田清香さんの慟哭。この日は最前列で至近距離で拝見したこともあり、より凄まじく伝わってきましたが、「母親の事情」を強く表面に出すことなく、エミを拒絶することにもきちんとした理由があって、でもエミの幸せを誰よりも願っていて、な様がとても素敵。理容室のチャキチャキな感じもエミの(皆本)麻帆ちゃんと母娘らしくて流石でした。先日まで『Tokyo Disney Resort Happiest Celebaration In Concert』で拝見していたのとは全く違う姿で新鮮でした。

エミの皆本麻帆さんのおどけ顔の裏にある本当の気持ち。テルには本心を告げてはいなくても、なんか「のせられてみたい」と思わせるチャーミングさとテンポの良さが観ていてワクワクしました。「ほら、私ってカワイイし」が壮絶にハマってて(爆)。

マドカの佃井皆美ちゃんのエミとの本当の友情。『リンダリンダ』での鴻上さんの目に留まったときから芝居力があることは知ってはいましたが(本業はジャパン・アクション・エンタープライズ所属のアクション女優さん)、外見のカッコよさと内面のカッコよさが両立する彼女の魅力を再認識。テルから告げられた時の、目力の対決からの信認は素晴らしかったです。取って付けたようなアクションシーンに噴きましたが(爆)

そして、テルの気持ちを引き出したのも奥様/マキ役・入来茉里さんのハートがあってこそ。エミと違うキャラクターでの明るさで、テルが本当に惹かれた相手としての説得力が抜群で、テルとマキの空気がきちっと作られていたからこそかと思います。

男性陣は何といってもテル・藤岡正明氏。誠実力を見せるならそうそう右に出る人はいない適役。
この作品には「芝居に嘘がある」人は1人もいないけれども、メンバーの中で群を抜いて嘘がないのがマサ氏。だからこそこの物語は締まったのだと思います。

仕事をする立場からすると、上司・クサナギの小林タカ鹿氏の存在は身に染みます。組織の中で責任ある立場として振る舞う上での、それこそ「弱みを見せられない立場」での人間味って、組織を引っ張る一つの必要要素だったりするんですよね。

テルの後輩、豊役の内海氏。お初に拝見しましたが、百戦錬磨の共演者の中では少し弱いかなと思いつつ、だんだんこなれてきていたので次に期待です。

マキの友人、トモヒコ役の荒田至法氏。ホント芸達者だよなぁと思います。軽く見せながら実は硬派という役回りを自然に見せているのも経験あってこそ。安心して見られました。

・・・

公演は今週末、21日(日)まで。劇場も三軒茶屋、そして大作祭りの4月で集客的には厳しい面もあったかと思いますが、残り2日間、一人でも多くの方にこの作品が届きますことを願い、いつの日か更なる進化を遂げたこの作品が再び拝見できることを願っています。

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『いつか~one fine day』(1)

2019.4.14(Sun.) 16:30~19:00
 シアタートラム F列10番台(下手側)

Conseptさんの新作。
上階の世田谷パブリックシアターは何度も行っていますが、シアタートラムは初めて。入ってみると奥行きこそ違いますが、去年のConseptさんの『In This House~最後の夜、最初の朝~』を上演された池袋・東京芸術劇場シアターイーストとも空気感が似ています。

韓国映画『one day』を元敷きにエンディングを少し変えている作品ということですが、幸か不幸か映画は未見なので、まっさらな気持ちで見られるのはありがたいです。(ちなみに、この回はトークショー付きの回だったため、映画を見たことある方を聞いたらだいたい3割ぐらいだったようです)

まず、ただただ素晴らしかったと、そう申し上げたいです。

昼に日生で『笑う男』を見て涙を流したばかりというのに、『いつか』はスイッチ入ってからずっと涙を流していました。この1日で1年分の涙を流したんじゃないかと思うほど(笑)、間違いなく1回の観劇で流した涙の量は過去最高です。

主人公は藤岡正明氏演じる保険会社社員・テル。少し前に妻・マキ(入来茉里さん)を亡くし、仕事復帰して最初に上司・クサナギ(小林タカ鹿さん)から割り当てられた仕事は、交通事故で植物状態にある盲目の女性・エミ(皆本麻帆さん)の案件で示談を勝ち取ること。ところがエミの友人にして代理人のマドカ(佃井皆美さん)と友人のトモ(荒田至法さん)からは、けんもほろろ。とりつく島もない始末。ところが、八方ふさがりのテルが酔ってエミの病室で一晩過ごし、起きてみると、テルだけはエミと話ができるようになっていた。奔放なエミに振り回されるテルだが、次第にテルにも気持ちの変化が現れ始める。

....という導入部。

えと、なるべくネタバレは避けるようにはしますが、まっさらでご覧になりたい方のために、ここからはネタバレが含まれるパートに入りますので、ご注意くださいませ。



よろしいですね?

この作品の前半部は、比較的予想できる物語の展開というか、「感動の方程式」に則ったような展開になっていて、正直言って、「こことここを組み合わせるようにしてるからあぁなるほど感動するよね」みたいに思っていたんですが、8人の登場人物の人物造形が出終わって、それぞれの人物の心が動き出してから、一気に感情のさざなみが押し寄せます。

テルにとってわだかまっているマキへの後悔、それゆえにどう対応していいかわからないエミへの気持ち。
エミと同じく児童福祉施設育ちで、姉のような存在のマドカの、保険会社社員に対するぴりぴりした反応。

テルにとっては最初は業務命令である「示談を勝ち取る」ことに対しても熱心ではなく、自分からしか見えないエミからの強烈なプッシュにも戸惑うだけで、マドカに対しても形通りの説得をしているだけに過ぎないんですね。

当然、その様をマドカに見透かされてまともに相手をしてもらえない。マドカは大好きなエミが、なんでこんなことになったのか真実が知りたいだけ。でもマドカにしてみても、植物人間状態にあるエミから聞きだせるわけもなく、ただ立ちすくんでいるだけでもある。

閉塞状態を動かすキーが、本来はありえない「エミの意思表示」。これがテルだけには見える。最愛の人を亡くした経験を持つテルだけに。エミはただ自分の思いを知ってほしかった、自分のやりたいことをやれるようにしてほしかった。エミに振り回されるだけのテルだったけれども、ただ、流されている間に、すべてに消極的だったテルの心にも光が宿ってくる様が感動的。エミの願いを聞くことは、自分の願いを整理することでもあって。

今回の作品のタイトルになっている「いつか」という言葉。

「いつかエミは目覚めるかもしれない」とマドカは思い
「いつかマキへの思いは整理できるかもしれない」とテルは思っているけれど、それは他人頼みの願いでしかない。

「いつかこうしたい」
そういう思いを持って、先に進もうと努力することでしか未来は開けない
できないことも、いつかできるようになりたい、それが生きる意味。

死を目の前にしたエミが、「いつか」なんて悠長なことを言っていられないほど追い詰められたとき、助けを求めることができた唯一の存在がテル。

テルは、エミの願いを聞いているうちに、いつしかエミの願いを叶えることこそ自分の生きている意味だと感じるようになる。素直な麻帆ちゃんのエミ、実直な藤岡氏のテルだからこそ、物語が前に進む。

エミの出生の秘密が明らかになることでさらに物語が動く。エミの母親を演じるのは和田清香さん。
かつてエミを捨てた母親だけれども、実年齢は麻帆ちゃんとは4歳違い(爆)。でも堂々とした母親で、むしろ若いからこそエミの母親としていられなかったという風にも思えて、とっても良かったです。清香さんの歌の叫び、とりわけ響きました。

舞台として眺めると「誰が良い、誰が悪い」って言いたくなってしまうけれども、実際はそれは違って、それぞれの人にそれぞれの事情があって、「誰が良い、誰が悪い」ではない。相手を思えば言わないことが正しいこともあるし、言うことが正しいこともある。全員にとっての正解なんてないし、全員にとっての不正解もない。

期せずしてこの日のトークショーでも藤岡さんが仰っていましたが、「答えを提示する作品ではなくて問いかけをする作品」というのがぴったり。

そんなこの作品作りの現場は、演出の板垣さん曰く「みんな小学生かってぐらいにぎやか」で、「通しげいこで初めて静かになった(笑)」そう。でも出演者みんな口々に「こんなに笑いが起きる現場はない」と言っていて、藤岡さん曰く「板(垣)さんは、ある人が出すぎていると上手く収めて、しり込みしていると上手く自信をつけさせる」と褒め、板垣さんは「仕事ですから(笑)」と言いつつ嬉しそう。

今回の作品の出演を決めた決め手は、入来さんが「資料が送られてきてほぼ即決」と言われていて、板垣さんがびっくりされていましたが「去年5月にワークショップ(霞が関ビルでやってた)が楽しかったので板垣さんなら大丈夫だと安心して」と答えていて、同じ場で共演された和田さんも、ほぼ同じことを仰っていました。ちなみに和田さん、出演を依頼するプロデューサーからの連絡が「お母さま役なのですが…」って”とても恐縮そうに”送られてきたことに大層悩まれたそうで(笑)、最終的には麻帆ちゃんと去年同じ役をやっており、気が合ったこともあって今回決断されたと仰っていました。

この作品自体はプロデューサーの宋さんから板垣さんに依頼があった時、「これできないよ」と言われたそうなのですが(笑)、脚本を板垣さんご自身が書かれたということもあり、演出はスムーズに進んだそう。

板垣さん曰く「役者さんには自由に動くことを奨励する演出家なので、毎回毎回感情が変わることも楽しんでほしい」と仰っていたこの作品。

最初から全部余白を埋めきらず、最後のピースを観客に委ねてくれるからこそ、清々しい気持ちで劇場を後に出来るように思えてなりません。

公演は21日まで、三軒茶屋駅前・シアタートラムにて。

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『笑う男』

2019.4.13(Sat.) 13:00~15:50
 日生劇場 2階F列10番台(下手側)

『レ・ミゼラブル』と同じヴィクトル・ユゴーの作品で、音楽はフランク・ワイルドホーン氏。
韓国でミュージカル化されて大ヒット、という基礎知識のみで拝見してまいりました『笑う男』。

TipTap主宰でお馴染み、上田一豪さん(東宝演劇部所属)演出です。音楽監督は小澤時史氏で、2月クリエ・3月全国ツアー公演の『キューティ・ブロンド』と同じコンビですね。(音楽スーパーヴァイザーに塩田氏が入られています)

山口祐一郎氏演じるウルシュスに拾われた子供・グウィンプレン(浦井さん)はその時既に顔に傷を持ち、まるで笑っているかのように見える子供だった。その時、グウィンプレンが抱えていた幼い娘・デア(夢咲ねねさん・衛藤さんのWキャスト)は生まれつき盲目な少女。ウルシュスが指揮を取る見世物小屋で、グウィンプレンは「笑う男」として、デアとともに興行の出し物として人気を博していく。

いつしかグウィンプレンはデアを愛し、デアもグウィンプレンを愛していく。
しかし運命の歯車は2人の間の関係を変えていく…

という物語。

グウィンプレンは見た目で笑われ、見世物になるという時をずっと過ごしてきた。でもデアは盲目なのでグリウィンプレンの見た目の醜さは見えない。でも醜いことを見えないからデアはグウィンプレンを愛せているわけでは決してない。

この日のデアは夢咲ねねさん。
制作発表で「デアは目が見えないけど、目が見える人が見えないものが見えている」と仰っていて、その時点でデアの本質をはっきり見抜いていたからこその素晴らしい佇まい。

脆くて儚くて、でも強い。全く両立しないはずの3つの要素を自然に切り替えられるのが、ねねちゃんの技術であり魅力。

ウルシュスとグウィンプレンの愛情をたっぷり注がれ、一座の仲間、ヴィーナスやフィービーにも大切にされ、周囲からも大切にされる様は、デアの優しさあってこそ。

流石に一度、グウィンプレンが朝夏さん演じるジョシアナに誘惑されてから帰ってきた時のデアは怒りを隠せず(苦笑)。実は、ねねみさとも「最初は許さない」って思ってるけど、演出の(上田)一豪さんは「最初から許そうとしていてほしい」って言ってて、受ける浦井さんは「最初は許さなくていい」って言ってるあたりが、とってもそれぞれ「らしくて」ツボに入りました(爆)。

浦井くんとねねちゃんのペアは『ビック・フィッシュ』で夫婦役として共演して以来2度目ということもあり、抜群の空気感。ねねちゃんは宝塚娘役当時から相手役に委ねるのが上手な方だと思っているのですが、とりわけ浦井くんに対する心からの委ね方が凄くて、疑うことを欠片もしないデア。
でもグウィンプレンが戻って来ないことを一座のみんなが取り繕う様を淋しそうに、でもみんなを慮って「もう無理しなくていいよ」と言う様は、ただただ壮絶でした。

ねねちゃんの役者としての魅力って「邪気がない」ことだと思っていて、心のままありのまま、気持ちをストレートにぶつけるからこそ、相手役にそのハートが突き刺さる。浦井くんのグウィンプレンも、祐一郎さんのウルシュスも、ねねちゃんデアのハートだからこその慟哭の揺れが伝わってきて。

貴族と民衆がはっきり分かれていた時代のイギリスの物語で、金持ちと貧乏人は一生交わらない中、金持ちは貧乏人を笑う自由を謳歌し、それを権利だと思い込んでいる。グウィンプレンは金持ちに「笑われる男」としてその屈辱を表に見せないけれども、黙って耐えることで「笑う男」を嘲笑っているようにも見えて。

自分を「笑う男」を「嗤う男」みたいに思えて印象的でした。

出演者で印象的だったのは、一座の看板娘・ヴィーナスを演じた清水彩花ちゃん。デアととっても気持ちが近い場所にいて、デアとハートが伝わっている感じがとっても良くて。華やかさもあって優しさもあって、先日ねねちゃんが演じてた『ラブ・ネバー・ダイ』のメグ・ジリーを彷彿とさせる華やかさで、是非やって欲しいなぁと思いましたです。

東京・日生劇場公演は4月29日まで。その後、5月いっぱい地方公演となります。
重厚で素敵な作品でした。

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『久田菜美 Birthday Live』

2019.3.25(Mon.) 20:00~21:50
吉祥寺スターパインズカフェ


ミュージカル座などのミュージカル作曲家としてご活躍の久田菜美さん30th Birthday Live。
ご本人初めてのソロライブ、ということで行ってきました。


「ソロライブなんて自分には縁がない」と菜美さん自身思っていたそうですが、この日ドラムを担当された波多野さんのお勧めもあり、今回ソロライブと、初CD「Another Day, Another Start」もリリース。CDは昨日の銀座ボンボンのライブで初お目見えとなりました。「Nami-0001」というIDが興味深いです。


思い返すと、菜美さん作曲の作品を拝見する機会は実はそれほど多くなくて、『野の花』『AWARD』の2作品だけだったりするのですが、逆に言うと、多士済々な顔ぶれとなったこの日のセットリストはとても新鮮で面白かったです。


ゲストも豪華で、中本吉成さん、菊地まさはるさん、伊東えりさん、木村花代さん、綿引さやかさん。
普通、吉祥寺スタパといえば舞台がもっと高い位置にあるのですが(『Before After』の上演時はそう)、実はその時は嵩上げしているのだそうで、本来の高さはこの日の高さなのだそう。


菜美さんメインのライブなので、ピアノがセンターに配置されて、バンドさんが左右に配置された結果、なんと歌い手さんが上手上段から見下ろすという、歌い手さん全員がびっくりする(笑)配置になってまして。「こんな風景初めて」とびびちゃんも仰ってました(笑)。


その歌い手さんの前方にはギターの成尾さんがいらして、その前で歌いたいと仰った某菊地まさはる氏はこの日の主役様からダメと言われたそうです(爆)。


それでは、セットリストから参ります。


●セットリスト
1.プロローグ/野の花
2.始まりの日に/Instrumental
3.Night Express/Instrumental
4.今の私に/AWARD(伊東)
5.ファンレター/スター誕生(綿引)
6.君へ/スター誕生(菊池)
7.パンダのマーチ/スター誕生(全員<メイン:木村>)
8.三世諸仏/ハートスートラ(伊東・中本・木村・綿引)
9.マスターピース/AWARD(菊地・伊東・綿引)
10.君を守るよ/original(木村)
11.空の彼方に/Instrumental
12.Another Day, Another Start/Instrumental


12曲でほぼ110分ということで、演奏時間は1曲平均5曲なはずなのに(笑)な、思った以上のMC祭りなこの日の菜美さんライブ。菜美さんは元々は出身の東京音楽大学ではクラシックをやっていたそうなので、後からミュージカルをやるようになったせいなのか、ミュージカルに対して独特の距離感があるように感じるのですね。
音楽的な面もそうですが、MCについても、どことなく「ミュージカルにどっぷり漬かっていない」心地よさがあるように思うんです。


ミュージカルでずっと歩んできた人ではなかなか出てこない発想というか、例えばいつの間にやら菜美さんの代表曲の様になって本人が多少不本意らしい(笑)「パンダのマーチ」にしても、ミュージカルとちょっとだけ距離を取った末での面白みみたいなものを感じます。そういえばその「パンダのマーチ」はこの日のメインボーカルは必殺飛び道具な(木村)花代さんで、そのおかしみがたまらない(笑)。


ゲストのうち男性のお2人はいずれも演出家と音楽監督という関係ですが、スタッフでもありある意味キャストでもあるからか、制作過程も適度にマニアックでとっても面白い。中本さんとの話で面白かったのは、『野の花』と『スター誕生』がなぜか同じ時期に上演されてばかりだったので、自分はずっと『野の花』の演出やってて、『スター誕生』の演出に縁がなかった、でも今回ようやく『スター誕生』演出やった、という話で…


『野の花』は第二次世界大戦中のドイツでの、ドイツ人の女の子とユダヤ人の女の子の物語で、とにかく静かな作品で、場面転換の音一つにも気を使うのに、隣で『スター誕生』で大音量で稽古してる(笑)
中本氏曰く、めでたく『スター誕生』で大音量で稽古できて嬉しかったとのこと(爆)


女性3人とはそれぞれ、菜美さんとの関係が違ってそれぞれ特徴的。


最初に登場された伊東えりさんは、菜美さん作品に3作出演されているということもあって、「菜美さん作品で演じられた関係」からの『AWARD』からの曲。『AWARD』の「今の私に」は舞台で拝見したこともあって印象的だった曲ですが、”かつての舞台女優が歳をとって地方に帰った、その女性の元に「今のあなたで舞台を作りたい」とやってくるプロデューサー”という舞台設定の中、かつてのパワフルな様を取り戻すかのような(伊東)えりさんの歌声の力強さは圧巻でした。


2番目の登場は綿引さやかさん。最初の出会いは「『BA(Before After)』ですよね!」と断言した菜美さんに自信満々に「違いますっ!」といたずらっぽく反論するびびちゃん。舞台作品ではBAが初(というか唯一)ですが、実は2015年レミ博多座の時に、菊地まさはるさんのライブ(博多)にゲスト出演されたのが初なのだとか。それ以来、最近はびびちゃんライブの演奏でお馴染みですが、びびちゃんライブで今後も恒例にしていきたいあの「即興曲」の話をされていました。「ポジティブからネガティブまで、あらゆるキーワードを曲にしていく菜美ちゃんは天才」とびびちゃんが仰れば、菜美さんも「びびちゃんの即興メロディーラインも凄い」と返される。なんだか「音楽で遊びあえる関係」に感じました。


3番目の登場は木村花代さん。以前はよくご一緒していたこともあるそうですが、実は最近は疎遠になっていたそうで、今回、菜美さんからの出演依頼を機会に「一緒に曲を作ろう」ということで、花代さん作詞で菜美さん作曲で曲を作ることに。でも実は花代さんの歌詞が(ご自身曰く)納得いくものではなくて、菜美さんも曲がそこから作れなかった。それじゃだめだと、花代さんは自身の言葉を見返して、自身の気持ちを見返して、きちんと詞を書こうと思って詞を書いた、と。
お互いを真剣に思い合っていたからこそ、厳しいことも言い合えたし、だからこそ詞も書けたし曲も書けた、と仰って披露された新曲『君を守るよ』。”花代さんの本当の気持ち”を菜美さんがしっかり受け止めた素晴らしい曲で、「音楽で高め合う関係」に感じました。
(なお、本日の演奏曲中、この曲が唯一CD未収録)


なお、花代さんとギターの成尾さんは、この日『キューティブロンド』の移動日。前日の24日(日)が福岡・久留米公演で、翌日の26日(火)が長野入りの日で、成尾さん曰く、スタッフに頼み込んで唯一空けた奇跡の1日がこの日だったそうです。凄い。


・・・


セットリストでは、何といってもM5の『ファンレター』。
びびちゃんは実際に手紙の便せんを持ちながらの歌唱でしたが、ファンからスターへのいじらしさと、見返りを求めない気持ちと、でも自身の存在をちょっとは分かってほしい本音を、少しのお茶目に込めた感じが流石です。


M7『パンダのマーチ』は先述しましたが、花代さんのリードボーカルという名のリードパフォーマンスが絶品すぎです。客席全部が「パンダだよー!」で返す空気、流石(笑)


M9『マスターピース/AWARD』も好きな曲。本編では沼尾さんが歌ったマーガレット・ミッチェル(「風と共に去りぬ」の作家)が伊東さん、そしてヴィヴィアン・リーは「びび」ということでびびちゃん(本当にそういう話になっていた笑)(スカーレット・オハラを演じた女優)ですが、本編で歌っていたのはびびちゃんの高校のミュージカル研究会の後輩、尾川(詩帆)さんなんですよね。そんな縁も感じつつ、「代表作」という意味の「マスターピース」を歌う女優役のびびちゃん、素敵でした。伊東えりさんとの声の相性も絶品でした。


・・・


ジャンルを絞らずに多種多様な菜美さんの曲は次にどう出てくるか予測できないのが楽しくて、そして駆け付けたゲストの皆さん、バンドの皆さんの作り出す空気も温かくて、ほっこりが集まった時間でした。


「30歳になったら楽しいって皆さんいうので楽しみです」という菜美さんの背後から忍び寄り(笑)、「30代は楽しいよー、40代になったらもっと楽しいよー」と仰っていた花代さんが流石すぎたのでした(大笑)。

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