『銀盤カレイドスコープ』

集英社スーパーダッシュ文庫、今回(9月22日)発売分で第5巻。
ライトノベルの世界ではちょっとしたブームになったこの作品、
無名のレーベルとはいえ、もっと知られてもいいのになぁと思いながら読む次第。

主人公はフィギュアスケーターにして口の悪さとマスコミ受けの悪さは天下一品の桜野タズサ。フィギュアスケート界TOP4の一角を占める彼女を中心にしたストーリー。

新人賞受賞作となった1・2巻は彼女が成長するまでのストーリーを、突発的な事件でタズサの中に入り込んでしまった幽霊・ピートとの交流で見せ、3巻でペアパートナー・オスカーとのストーリーでは恋に玉砕。現世の男との心の交流が無理であることに悟りを開く。4巻は一転してタズサの妹・ヨーコから「凄すぎる姉」として仰ぎ見られる立場からタズサの「なんかいい奴」ぷりを表現。

以下、ネタバレ込みです。いつものとおりご注意。


1・2巻はタズサが成長するまでのストーリーだったのに対し、小休止的な3巻を挟んで、4・5巻は成長しきったタズサに周囲が付いていけない雰囲気。
実力は折り紙つき、精神世界は独特でもはや他人が理解できる範囲を超えてる感じがありあり。
いつも進行役となる、マスコミ内でほぼ唯一タズサが心を許す新田さんをしてさえ、「理解できない」哲学がちらほら。

今回の半ば主役となった今期ジュニアグランプリ、キャンディことキャンドル・アカデミア。ジュニアのトップにして芸能界デビューもしており、今やイギリスのトップアイドルと掛け持ちという設定。(現実世界でどっかで見たことがある設定ですね)

正直言っちゃいます。キャンディ、嫌な奴です(笑)。

この作品の主人公のタズサは「口の悪さとマスコミ受けの悪さは天下一品」とは書きましたが、タズサが世界でただ一人勝てない無敵の世界チャンピオン・リアに「あなたは相手が誰でも本音しか言わない」と信頼され、マスコミを通さずに接する周囲の人から一目も二目も置かれて尊敬されているし、いくらその口の悪さに罵倒されようとも、自らの哲学を貫き通す姿勢はある意味清々しさを感じます。
(まぁ、実際にマスコミ相手にガチで喧嘩するような人が実際にいたら、どう思うかは保証の限りではないのですけれど。)

キャンディは観客が審査員という大会・オーディエンスコートに出場し、表彰台を逃します。「人気」というものにことさら敏感な彼女にとって、侮辱に等しい仕打ち。あまつさえ、何をとち狂ったのかタズサに1対1での勝負を挑んだりします。そうすることしか、自分の悔しさを晴らす手段がないと思ったのだろうけれど。
スルーするつもり満々だったタズサが戦闘モードに入る世界でただ一つの言葉、それをいっちゃぁおしまいだよ(苦笑)。

この辺のストーリーがちょうど本の中盤あたりに出てきまして、ここから俄然面白くなります。が、前半は正直だれだれ。何つーかもう、惰性で書いてるのかなこれってぐらい、読み進めるのが辛い。
何より前半はキャンディが主役で、しかもその主役がどことなく好意を持てないと来てます。

この作品は「小生意気な少女」「振り回される男」がいっぱい出てきますので、口の悪い少女は慣れっこになってますが(タズサとかタズサとかヨーコとかヨーコとか・・・・)、性格がひん曲がっちゃった少女をなま温かく見守れるほど人間出来てないからなぁ。

そんなキャンディをことごとく奈落の底に叩き落すタズサも、らしくはないけれど、わざわざ回避しようとしてくれたタズサの地雷を踏んじゃったのはキャンディだし、勝負挑んでおいてあまりの実力差に恐怖に苛まれるといっても、それはキャンディの自業自得だし。

今回、1巻との対比が印象的。
1巻ではタズサが自分自身のことを「大人を喜ばせるようなチンケな存在にはなりたくない」「他人に媚びると自分が自分でなくなってしまう気がする」ことに居候幽霊・ピートに気づかされますが、タズサの「自分にとっては居心地のいい今の性格」と、キャンディの性格には、どことなく過去でつながる、表裏一体な面が見え隠れします。
2巻にも、今回の5巻と対比するようなシーンがいくつも出てきて、5巻を見たあとに1巻・2巻を読むとけっこう新鮮な感動がありました。

とりあえずタズサとキャンディの共通点=トラウマ系

たまたま本屋で手に取ってから見つづけてるこの作品、自分は突っ走り系の本音毒舌系統が嫌いじゃないということを少し実感。「目の離せなさ」ぐあいが何とも言えない。
(ただし、そんな人が周囲にいたら、素で引きますが(苦笑))

この作品、来年の冬季トリノオリンピックを控え、10月からテレビ東京深夜でアニメ化されます。どこまで深夜枠で華麗な演技シーンを作ってもらえるか、何気に楽しみにしていたりします。

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