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2022年8月

『ダディ・ロング・レッグス』(9)

2022.8.29(Mon.) 18:00~20:55
シアタークリエ 16列20番台(センターブロック)

2022年シリーズ、いつもにもましてチケ難で、もう見られないかと諦めかけましたが、何とか譲っていただき2年ぶりのDLL。

2012年が初演で、前回の2020年が7演目。ここまでジルーシャ役は坂本真綾さんが演じられてきましたが、今年は真綾さんが産休のため新ジルーシャとして上白石萌音ちゃんが演じられています。

2020年シリーズは、かの有名な東京建物Brilliaホールの最前列で拝見したものの、真綾ジルーシャが寝そべって書き書きするシーンが全部死角で見えないという、悪夢が昨日のことのように思い出されます(苦笑)。

・・・

萌音ちゃんのジルーシャを見ていると、1幕前半は意外なほどに自分の中にある真綾ジルーシャの歌声を追ってしまっていて。

よくよく考えると萌音ちゃんの舞台より、真綾ジルーシャを見た回数が多いんだし、と思いながらそれぞれの特徴を比較していたりしたのですが、一番最初に「おっ」と思ったのが、萌音ジルーシャがジョン=グリア=ホーム時代に自分の服を結構テキトーに(笑)箱にぶん投げていたところ。

それを見たときに感じたのが、

真綾ジルーシャは「知性」
萌音ジルーシャは「野生」

なんだなと。

真綾ジルーシャは全編にわたって都会的な面がそういえばあったなぁと思いだして、萌音ジルーシャの、野山を駆け回るかのような自由な感じはとても新鮮で。
どことなく、真綾さんが東京生まれ、萌音ちゃんが鹿児島生まれという、「幼いころにどこで育ったかが反映されている」かのような演出の違いに感じました。

真綾さんは声優さんですから、声色の使い分けはお手の物でしたが、実は萌音ちゃんもかなりの声色の使い手。それでいてさすがは女優さんで、表情や演技の高低差で笑いを取るのが抜群に上手。それを考え抜いて自然に見せている感じが流石だなぁと思います。

DLLを見た人ならだれもが知るラストシーンのとある2文字で、あんなに効果的にドス利かせるとか、なかなかできるもんじゃない(笑)。

ラスト近くで井上芳雄さん演じるジャーヴィスが、ジルーシャに対して「愛嬌ある生き物」って言うんですが、真綾ジルーシャに対してだと、へそ曲げてる真綾ジルーシャに対して、「君はそう思っていないかもしれないけど、君は愛嬌があるじゃないか」と宥めるように、機嫌を直してもらおうかとするかのように、今となっては感じるのですが、萌音ジルーシャは、そのものずばり「愛嬌ある生き物」でしかない(笑)

それでいて、「ただで愛玩されるつもりはない生き物」だったりするところが、さすがは「ドSで光る萌音ちゃん」という感じで。
真綾ジルーシャから芳雄ジャーヴィスへのストレートスマッシュ(爆)的なものとまた違った、萌音ジルーシャから芳雄ジャーヴィスへの芸術的な落とし方が流石でした。

ジャーヴィスとジルーシャの関係って、芳雄さんと容赦なく言い合える女優さんじゃないと、ジルーシャとして合わない感じはしていて。
芳雄さんと真綾さんは同学年(昭和54年度生まれ)ということもあって、じゃぁ真綾さんじゃなきゃ誰だろう、と思っていた時に萌音ちゃんの名前が出て、「そりゃぁぴったりでしょう」と思った通り。
芳雄さんへのリスペクトはあった上で、でも隙あらば突っ込もうと思っている感じは、真綾さん以上に萌音ちゃんが持ってる(笑)。

そして、芳雄さんも「自分は台本を読みながらできても(爆)ジルーシャはできない」という言い方でジルーシャ役をされる女優さんに対してその大変さに言及されているわけで。

この作品はジャーヴィスとジルーシャが、直接は会わないままに自分の本心を相手にぶつけていて。
その根底には、自分の本心をぶつけられる相手だという「信頼」があって。
それがあるが故に、初演からの「芳雄さんと真綾さん」の関係はそのままに、新たな関係としての「芳雄さんと萌音ちゃん」の関係性で新たな「ダディ・ロング・レッグス」が作り出されたことに感動させられます。

「滝に身を打たせつつ」に代表されるようにコミカルさからくる軽やかさからのツンデレが特徴的な真綾ジルーシャ。
卒業式に願いが叶わなかった時の、空虚さが真に迫る、シリアスからのマジ切れが特徴的な萌音ジルーシャ。

そのどちらもが、「違った種類の愛嬌ある生き物」であり、女性を前にすると男性はしょうもない生き物なんだなぁ、ということをすっと感じさせてくれる、見終わってすっとした気持ちになれる様は変わらなくて、今回も素敵なひと時になりました。

・・・

追い出し放送が流れても止まない拍手の中、芳雄さん・萌音ちゃんの夫婦漫才はこの日も開演。

萌音ちゃん「日々やってきてどうですか」
芳雄さん「先に言われちゃったよ…とにかくただただ無事に終わってくれることを願っています。どうですか?聞かれたら聞き返しますよ」
萌音ちゃん「とにかくただただ無事に終わってくれることを願っています(←完全同文)」
芳雄さん「時間の無駄????(笑)。でも本当に祈るのみだよね」

芳雄さん「今日マチネ後にジョンが来て『素晴らしかったよ!』と言ってくれて喜んでたら、実は見ていなかったというブリティッシュジョーク…(笑)」
萌音ちゃん「気持ち上がった後、落ちちゃいましたね(笑)」
芳雄さん「初日は幕間に来て『酷い出来だ!』って言われて、ブリティッシュジョークかと思ったら何のフォローもなくて(笑)」
萌音ちゃん「2人で『2幕やりたくない』…って言ってましたよね(笑)」
芳雄さん「終わってからも何のフォローもなかったんですけど(笑)、終演後に『よかった』と言ってくれたんで大丈夫だったんでしょう(笑)」

というノーマルスペシャルカーテンコールで幕となりました。

31日の大千穐楽は生配信(アーカイブあり)もありますので、ご興味ありましたら是非に。

 

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『シュレック・ザ・ミュージカル』

2022.8.27(Sat.) 16:30~18:20
東京建物Brilliaホール 1階N列40番(上手側)

トライアウト公演と銘打ったこの作品、幾度の中止を乗り越え、明日が千穐楽。
個人的にもチケットを取った3回が全部中止となり、この回が「4回目の正直」。ようやく拝見できました。

当初21日(日)の夜を取っており、もう1回見たいという理由で18日(木)夜も取ったものの、両方とも中止。
どうしても見たいと取った23日(火)も取った1時間後に中止が決まり、3度取り直したこの回でようやく拝見できた次第です。

普通、ここまで取り直すようなら見られないのが今までの経験ですが、この作品はトライアウト公演ながら長い2週間の公演期間(15日~28日)であったこと、またシュレック役のspiさんの感染にかかわらず、アンダーが有効に機能し、鎌田誠樹さんがシュレックを演じることで再開に漕ぎつけられたこと、流石のカンパニー力です。

今回、オールキャストオーディションで選ばれた出演者の皆さんですが、オーディション発表時期が異常に遅かったのにも関わらず、6月下旬に発表されたキャストを見て、普段ミュージカルを見ている層が明らかにざわつきまして。

シュレックのspiさんの巧さは勿論、フィオナ姫の福田えりさん、(魔女役の)岡村さやかさん、(ドラゴン役の)須藤香菜さんはじめ、東宝ミュージカルのアンサンブルさん経験者がずらり。しかも中堅どころの安定感たっぷりのメンバーが揃い、そして実際にそれらの皆さん中心に舞台がきゅっと引き締まるさまを見られたのは、感動物でした。

客層もいつもミュージカルを見ている人たち中心ではなく、親子連れも多くみられるのはさすが夏休み期間。
自分の異質さゆえに自分の殻に閉じこもるシュレック、そしてシュレックの周囲の他者との関わりが、だんだん変わっていく様は、ちょうど1週間前に見た『リトル・ゾンビガール』との共通点も感じたりして。

ファミリーミュージカルのようにも見えて、また実は大人にも刺さる作品だったりして。
それをいつもは縁の下の力持ちとして舞台を支えることが多い方たちが、舞台のセンターで堂々と演じ歌われ、それが客席にもしっかり届くさま。

歌の難易度に即したキャスティングとは思えなかったりすることが他作品ではあったりしますが、知名度に引きずられず実力で選んだ結果がこの作品の楽しさを表現できたのかと思うと、いつもいつもそれができないとは思うものの、良かったなぁと感じずにはいられません。

岡村さやかさんは期待通りの万全の存在感。
舞台最初のシュレックのママとしてシュレックを優しく厳しく送り出す時の歌声は、この作品が素敵なものになることを予感させる感情の厚さを纏っていましたし、本役の魔女は見た目の存在感もまんまで、「セーラームーンtheミュージカル」のスノーカグヤの威圧感を思い出させる、無条件の説得力。それでいて、ご本人がブロードウェイ版を見て惚れ込んでオーディションを受けたという、ジンジャーブレッドマンの声は、今までさやかさんでは聞いたこともない突拍子もない声で、2幕に至っては魔女とジンジャーブレッドマンの声を行ったり来たりして、「この2つの声って同じ人がやっているとは」と客席にきづかせる当たりとか、演出もニクいです。

福田えりさんの「およそヒロインらしくない姫」も、キャラクターにぴったりで、衣装は上品なのに中身はそれと落差がある(言い方に気を遣う…笑)とはいえ、それをコメディエンヌ的に見せられる実力あってこその、ひねった存在感が流石です。

須藤香菜さん(すどかなさん)も久しぶりでしたが、一味ひねった役をしっかり見せられるのはその経験あってこそ。素敵でした。

・・・

この日は、ヤングフィオナ役(Wキャスト)の小金花奈ちゃん(こはちゃん)の千穐楽ということで、ご挨拶がありました。
(若干、ニュアンスで書いていますが)

こはちゃん「皆さんがとっても優しくしてくれて、素敵な夏休みになりました

吉田さん「舞台を作っていると辛いこともありますけど、こはちゃんはいつも笑顔でいてくれて、こちらこそ、大人は、こはちゃんにいつも助けてもらっていました。ありがとう(会場拍手)」

という素敵なやり取りの後、

鎌田さん「spiさんの想いとともに、明日しっかりと千穐楽をカンパニーみんなで務めたいと思います。本日はありがとうございました。」

と素敵に前楽の幕が下りました。

明日28日、昼12時30分から千穐楽公演となります。迷われている方、是非に。

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『リトル・ゾンビガール』

2022.8.20(Sat.) 15:00~17:00
日生劇場 2階B列40番台(上手側)

「NHKみんなのうた」の曲を中心としたミュージカル。
2020年に公演が予定されていたところが全公演中止となり、この日が初演初日。
ノノ役熊谷彩春ちゃんの回を拝見です。

ゾンビチームと人間チームに分かれていて、過去にゾンビと人間とで因縁があった関係。

そんな中、好奇心いっぱいのゾンビ・ノノは、人間の世界に降りて行って、人間のショウ(Wキャスト、この回は乃木坂46の伊藤さん)と出会い、正体を明かさないままお互いを理解し始めていく。
折しも、ゾンビが住む森に対して、人間は森を切り開きショッピングモールを作ろうとしていた。ショウの父親は、建設会社の社員として、そのプロジェクトにかかわっていて…という導入部から、「ゾンビの世界と人間の世界」の間の関係性の変化を描いていく物語。

2020年公演では、ゾンビ・ノノは上白石萌音ちゃんと熊谷彩春ちゃんのWキャストでしたが、この公演が2022年にスライドしたことで萌音ちゃんは登板しないことになり(現在は『ダディ・ロング・レッグス』の新ジルーシャとして公演中)、(熊谷)彩春ちゃんは残り、高橋ひかるさんが新たにキャストに加わりました(「高橋」の「高」ははしごだか)。

彩春ちゃんを見たくてチケットを確保した作品でしたが、正直、こんなまで感動させてくれるとは思っていなくていい意味での予想外。
いいホンといい歌と、いいキャストが揃えば、こんなにも素敵な作品ができるんだ!と思いました。
何度も自然に流れた涙。目立つ空席が本当にもったいない、素敵な気持ちにさせてもらえる作品です。

ノノの彩春ちゃんは、天真爛漫を三次元にした感じで、好奇心をエネルギーに、ゾンビの世界でも人間の世界でも自然に中央にいる様がとっても自然。前向きでポジティブなパワーは、最初は引っ込み思案だったショウも前を向かせるパワーにあふれていて。
歌はもともとお上手ですが、芝居がナチュラルでソフトで、作品の居場所にすっと「いる」感じがすごい。
初演でWキャスト予定だった萌音ちゃんと似たような感じを受けます。いい意味で「すぽっ」とはまる感じが。

弱音の吐き方も(役柄的にも)上手で、ゾンビの長老(という設定)のリリィ(大和悠河さん)をお姉さんのように慕う感じもぴったり。
優しさを常に持っていて、進むべき道を直感で理解していて、行動力もあるのに、迷い悩むこともあるという、まさに「ザ・ヒロイン」の居姿で、それが周囲の人たち、舞台でのゾンビチームからも、人間チームからも自然に応援されるような様がとてもよくて。
その上に、ファミリーミュージカルだからこその、「客席からの応援」を自然に導ける彩春ちゃんノノ。

別作品ですが「ピーターパン」より少し大人で、「みんなのうた」のうたのお姉さんの少し若いタイプ、という感じで、なるほど「みんなのうた」ミュージカルのヒロインになった理由がとってもよくわかります。

彩春ちゃんは前回がJさんの作品のヒロインだったので、正直、力を出し切れる場ではなかったことに比べれば、今回は物語をぐいぐい引っ張る若い座長のポジションをしっかり務めていて、チャーミング&パワフルな、彩春ちゃんにぴったりの役どころでした。

この作品は「みんなのうた」の歴代の曲から19曲、オリジナル3曲で構成されており、耳なじみのある曲がたっぷり聞けます。
そのうえ、キャストは百戦錬磨のアンサンブルさん(石田佳名子さん、般若愛実さんをはじめ錚々たる面々)の歌うま揃いで、耳福な時間です。

その中でも何といっても「夜明けを口ずさめたら」の使い方が絶品。物語上ネタバレになってしまうのですが、歌詞の最初にある「誰もがひとりぼっち」という歌詞を彩春ちゃんノノが紡いだ瞬間、そのシーンとのあまりのシンクロぶりに涙が止まりませんでした。

この作品と当初は旅をするはずだった上白石萌音ちゃんがこの曲の歌い手さんだったこともあり、「ここにいられない萌音ちゃんの想いとも一緒に、彩春ちゃんはノノとしてこの歌を紡いでいるんだ」、と聞きながら思ったことも、その感動を増幅した要素だったのかもしれません。

・・・

心構えず見に行って、大人も子供も「あたたかいもの」を持ち帰れるであろうこの作品。
より多くの方に見てもらえる機会があるよう、心から願っています。

 

 

 

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『流星の音色』(2)

2022.8.16(Tue.) 17:00~20:15
新橋演舞場 1階6列20番台(上手側)

4回観劇を予定していた同作、1回は中止(8月4日ソワレ)になり、3回の観劇。
東京前楽のこの回、my楽となりました。

1週間ぶり(8月9日ソワレぶり)ということもあり、新鮮な気持ちで拝見しました。

・・・

前半の2回の観劇と同じく、
今までの作品と違うように見えて、実は今までと変わらなかったお二人の女優の頼もしさが印象的でした。

ヒロイン・シルウァを演じた真彩希帆さん。
宝塚歌劇団在団当時は、歌唱力や存在感ゆえ、インパクトのある役に配されることが多かった真彩さん(きぃちゃん)。
今回のような「娘役らしい娘役」はほぼ初めてに近かったわけですが、およそ着こなすことができる人はいないであろうファンタジーな衣装も、成立し得たところに驚愕します(衣装について褒めるつもりは1ミリもありませんが(笑))。

今回のプロジェクトは、主演の京本氏をいかに素敵に見せるかに比重が置かれていたかと思いますが、それ故に「とことんまでに可愛い」を見せられる技術を持った方として、きぃちゃんが呼ばれたのかもと思います。

「ニュージーズ」の相手役は、きぃちゃんの前の雪組トップ娘役のゆうみちゃん(咲妃みゆさん)で、「カッコいい相手役」だったので、それとの対比で京本氏の役を広げる意味もあったのかと思います。

きぃちゃんはトップ娘役当時、「トップスターを魅力的に見せるために何ができるか」と繰り返し仰っていたことが、今回の舞台でもまさに生かされているものと思え、流石と感じさせられます。

恋する少女のシルウァは、前回見たときは「恋する少女を完璧に演じている」感じがあったのですが、今回見ると「恋する少女になって」いて、その劇的な変化に驚愕。「かわいらしさを究極まで演じている」ところを突き抜けて、「どうみても可愛いでしかない」存在となっていて、少女漫画なら周囲に花が舞っていそう。

名前を知らない、声だけの相手を想像しているさまを楽しそうにうきうきしてやっていて。「可愛いは正義」を体現していました。なんでしょうね、あの「スイッチが入ると誰にも止められない」感じ(笑)

まぁ、お母上も若かりし頃は「エンジンがかかると誰にも止められない」感じ(笑)でしたから、母娘の血は争えないって感じですね(注:血はつながっていません爆)

・・・

そして、シルウァの母親、山の国の王女・フローラーリア役を演じた新妻聖子さん。

今回は作曲された方が複数いらしたということもあり、「物語の統一性を出すのは役者の仕事」と、物凄い発言を制作発表でされていた聖子さんですが、物語を力技で本線に引き戻す圧倒的な存在感と歌唱力。歌うまで知られたきぃちゃんと聖子さんの娘・母の関係は、母娘の説得力を出して余りあるわけですが、それにつけても聖子さんフローラーリアの重厚感が凄い。

『王家の紋章』での王家の血筋の経験、『ボディーガード』でのシングルマザーの経験いずれもが、フローラーリアの重みに繋がっているかと思います。

2人の違いといえば、

歌で物語を語れる聖子さん
歌で空気を動かせるきぃちゃん

の違いという感じがします。

きぃちゃん演じるシルウァの歌声が、リーパの心を動かした。シルウァの彼への想いを受けて戸惑いながらも、フローラーリアは自らの過去を語り、シルウァの成長を認め、誇らしい気持ちで見送る。
寂しいけれども、それでも、自らの過去への後悔を、シルウァの成長が埋めてくれたからこそ、大切な宝物であるシルウァを見送ったことに納得はしていると思っていて。

海の国の父から息子への言葉は、息子にとって「心を失くす」ことのようにも見て取れて。

それに対して、娘の恋への憧れを止める母の思いは、真に娘のことを思ってこその気持ちと思えて。

海の国と同じ王家であっても、「心通い合う」やり取りをしていた母娘。
娘は自分の思いを吐露しようとも、母への感謝は常にあって。
母は自分の思いを押し付けようとも、娘の自立を認めるべき思いは常にあって。

母娘の「思い合い」を知ってこそ、父子の間にも「龍の血」だけでない、気持ちの共有が生まれたのかなと思うわけです。

…と、見終わっては思うのですが、そういうホンとしての意図が読み取れなくはないものの、その物語構造を読み取れる演出になっていたとは思いにくいのも実感で。物語としては「シルウァがあの結末になった意味」をもう少し見せてもらえた方がよかったかな、と思う次第です。

きっと、リーパが海の国の王として「心を持って生きていく」様と、フローラーリアが山の国の女王として「心を持って生きていく」様が、いずれもシルウァの生き様によってもたらされたもの、ということが見せたいエンディングだったと思うのですが、あまりの水しぶきの量故に、感動までも流されてしまったように感じてしまったのが、少し残念に感じられました(苦笑)。

・・・

この日のカーテンコールでは、聖子さんが客席からの拍手にこたえて、両手でお手振りしていてびっくり。
かれこれ20年拝見してきて、両手のお手振りなんてあったろうかと、そのご機嫌さにうれしい限りです。

ともあれ、今日(8月17日)が東京千穐楽。
この後、京都・南座、名古屋・御園座を経て、9月8日の広島公演で大楽となります。
東京・新橋演舞場公演では合計5回の休演となってしまったこの作品、大楽までつつがなく公演が行われることを願っています。

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『流星の音色』(1)

2022.8.8(Mon.) 17:00~20:15
新橋演舞場 1階17列20番台
(センターブロック上手側)

松竹オリジナルミュージカル、この日が5日目です。
当初は8月2日の開幕が予定がされていましたが、公演関係者に陽性者が出たとのことで、2日遅れの8月4日が初日となりました。
(その後、8月9日昼の部も中止になっていますが、8月9日夜の部から再開されています。)

個人的にも8月3日のmy初日が流れたこともあり、なるべく初見までに内容的なネタバレは見ないようにして。とはいえ、ある程度はだいたい分かりつつ、百聞は一見にしかず、ということで数年ぶりの新橋演舞場へ。
新橋演舞場は自身初ではなく、三宅裕司さん主宰のシリーズ物で(笹本)玲奈ちゃんがゲストヒロインで来て(2016年6月)以来となります。

初見の感想としては「演舞場の機構を最大限生かしたエンターテイメント」だなと。話には聞いていましたが、特に2幕ラストのステージパフォーマンスは圧倒されるものがあり、流石と感じさせられました。
ステージの演出に圧倒される反面、芝居の演出に乏しさは否めません。

物語では主演の京本さんと父親役の内海さんが「海の星」、ヒロインの真彩(希帆)ちゃんと母親役の(新妻)聖子さんが「山の星」ということでそれぞれ親子関係にありますが、真彩ちゃん、聖子さんは流石のミュージカル経験もあって、歌、芝居歌、そして芝居の作りに一日の長があります。

聖子さん演じるフローラーリアが娘役の真彩ちゃん演じるシルウァに「王家に生まれし自覚」と諭していると、なんか違う物語を想像したりしますが(笑)、聖子さんが愛情故の強い想いを歌に乗せる様は、圧巻の一言。演舞場の客席に押し寄せる圧が凄いです。親のエゴであることも薄々感じながらも、自分が苦しんだ過去を、愛する娘には味わって欲しくない、その想いがあったことが徐々に分かってきます。

※聖子さんがアイシスやっているうちに真彩ちゃんキャロルで見てみたい。嬉々として呪われ回避しそう(笑)

対するシルウァも、最初は母の存在の大きさを前に言い返すこともできなくて、歌もか細く歌っていますが、恋に出会い、自我に目覚め、より生き生きと歌うようになっていく変化を歌で聞かせるのは流石の技術です。

トップ娘役とはいえ、こんな夢々しい役とはほぼ無縁だった真彩ちゃん。あえて近い役を探しても『はばたけ黄金の翼よ』のクラリーチェぐらいで、今後も今回のような夢々しい役は恐らくないと思われるだけに貴重です。(願わくはドレスがもう少し…何とかならなかったのかなと(苦笑))

自らがこの舞台で求められた「主人公の心を動かす澄んだ、真っ直ぐな歌声、存在」と寸分違わぬ存在として立てたのは、豊富な舞台経験のなせる技。
真彩ちゃんは演出家の求めるものをきっちり体現するタイプと思われるだけに、恐らく今回はそういった羅針盤がなく(薄く)、この役を作り上げられのではと思うと、とても貴重な経験をされたのかと思います。

真彩ちゃんファンの中では有名ですが、真彩ちゃんにとって聖子さんは「舞台を目指すきっかけ」となった方。今回のパンフレットでも念願の再対談を果たされていて、とても濃い、心通じ合う対談をされています。

真彩ちゃんがトップ娘役当時、CS放送「宝塚スカイステージ」の「トークリクエストDX」に聖子さんをゲストにリクエストされ、オンエアされたのは2019年3月(時期的には『ファントム』のクリスティーヌ・ダーエをやっている時です)。

当時は「外部の方をなぜ呼ぶのか」という心ない言葉が聞こえもしましたが、真彩ちゃんはその機会に聖子さんとお話されることで、改めて「娘役としてどう振る舞えばいいか」「自身をどう伸ばしていけばいいか」を会得されたのだと、今見返しても感じます。

聖子さんがその対談の最後に真彩ちゃんにかけた「いつか同じ板の上でご一緒できることを願っています」とお話された言葉が、テレビではわずか4ヶ月(同年7月の「FNS歌謡祭」で「輝く未来」でデュエット)、舞台でもわずか3年足らずで叶ったのは、真彩ちゃんの努力が運を呼び寄せたものと思います。
が、流石に、それ以上を作品に求めるのは、望みすぎだったかもしれません…。

主演の京本さんとの相性もぴったりでしたし、次はベーシックなミュージカルでご一緒する姿を拝見したいと思いますし、もちろん、真彩ちゃんと聖子さんの再共演も心待ちにしています!

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