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『フリーダ・カーロ』

2022.6.30(Thu.) 19:00~21:00
 東京芸術劇場シアターウェスト E列1桁番台(下手側)

2022.7.2(Sat.) 18:00~20:00
 東京芸術劇場シアターウェスト RA列1桁番台(上手側)

Tiptapさん作品の再演。

初演は2019年の夏の暑い盛り、8月の六本木トリコロールシアターでした。
今回は時期が1か月以上さかのぼったものの、お天道様が梅雨を忘れてしまった酷暑の結果、結局この『フリーダ・カーロ』はメキシコの暑い夏を劇場内外で感じさせる再演になりました。

初演の時は1回しか見ていませんが、とにかく圧迫感が強くて苦しかった記憶が残っています。
が、今回の再演版はその印象はかなり薄くなっています。なんといっても劇場の違いが大きく、初演の六本木トリコロールシアターは傾斜があり狭いということもあり、収容人数以上に狭さや圧迫感を感じました(座席数は200席)。今回の再演は東京芸術劇場シアターウェストになり、座席数も3割以上増え(270席)、それ以上に横幅が広くなったことで、「死」をテーマにしたこの作品を、初演比でだいぶ「生」を語る方向にシフトできているように思えます。

メキシコの実在した女流画家、フリーダ・カーロの生涯をテーマに、彼女を取り巻く人々が語る「フリーダ・カーロ」の姿から、生き様を浮かび上がらせていく物語。

初演から男性陣はほぼ変わらず、女性陣は主演のフリーダ・カーロの彩吹真央さん以外全員変わっているという配役ですが、男性陣のうち変わったお1人は、彼女とは密接にかかわるわけではない医師役(初演は上野聖太さん、再演は鎌田誠樹さん)ということもあり、フリーダ・カーロ演じる彩吹さんと男性役それぞれの関係性がかなりえぐい。

フリーダ・カーロはバスの事故で大怪我をし、手術を繰り返して次第に生きる気力を失っていく女性ですが、それでも、彼女が描く画のパワー同様に、生き様もパワフル全開で、その生き様に憧れるかどうかはともかく、「凄い女性だったんだな」ということが伝わってきます。

20世紀前半に生きた女性なので、女性でも画家として認められ、メキシコで個展も催しているので、壮絶な生き様として描かれた舞台で印象に残っているカミーユ・クローデル(新妻聖子さんが演じられました。オーギュスト・ロダンの弟子にして愛人)のように「芸術家として認められなかった」とはまた違う印象を、特に今回は受けました。

「生」と「死」をテーマにするのはTiptapさんの作品で多く、「死」を通して「生」きる意味を問う、というのは最近よく使われる方向性。
劇中ほぼラストで彩吹さん演じるフリーダ・カーロが呟く「意味ある人生を送るために自らどう生きてきたか」の言葉が印象的。身近な人の死に触れて、「死にたくない」以上に「生きたい」と思い続けたから、に思えの説得力でした。
初演は正直もっと尖っていたというか、過剰に絞り出していた感じの印象の彩吹さんフリーダだったので、再演ではかなり自然な生き様で自由に生きた感じでがしました。

フリーダのもう一つの声を演じたのは再演ではMARIA-Eちゃん。パワフルな歌声が印象的ですが、時にそっと寄り添うような歌声で寄り添われていたのも印象的でした。

一筋縄ではいかない関係性の役が多い綿引さやかさん(びびちゃん)は今回Tiptap初出演。フリーダの妹役ですが、ただ姉を支えるわけでない、でも最後は、清濁併せ呑んで見守る感じが興味深い役どころでした。姉に「前から歳上が好きだったよね?」といたずらっぽく言うシーンが好きです。

「私には姉を支える義務があった」というセリフも興味深いです。このシーンが姉に対して引け目を持つ、あの出来事より前というのも不思議なところ。フリーダの母の話はほとんど出てこないので、姉に支えられて生きてこられた、ような印象はあります。

フリーダ・カーロを取り巻いた人たちにとって、間違いなく自分の人生の中で強い印象を与えられた人物だった、ということがはっきりうかがえる作品。彼女のような生き様を皆ができるわけではないとしても、生きる上での、人生の”目的”の存在の大切さを感じさせる作品でした。

公演は3日までですが、3日から10日まで、6月30日ソワレ公演のアーカイブ配信があります。
DVD・Blu-rayも発売予定です。

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