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『考える葦』

2022.4.30(Sat.) 17:00~18:40
ザムザ阿佐ヶ谷 A列1桁番台(センター)

NEM KiT(ネムキット)さんの新作オリジナルミュージカル。
作・演出の隈元梨乃さんと共演経験がある縁で、今回岡村さやかさんが出演ということで久しぶりのザムザ阿佐ヶ谷へ。

かつては『ウレシパモシリ』で通いつめ、岡村さやかさんの歌声の迫力に酔いしれたこの場所も、5年も経てば、だだっ広かった隣の駐車場はアパートに変わり、外側は窮屈になった感じはありますが、劇場に入ってみれば懐かしのサイズ。土足NGになってたのは意外でした。

今回、客席に当日パンフが置かれていますが、今回の作品のモチーフになった「古事記」を読んでいないのであれば、この当日パンフなしで理解するのは中々難儀で、実際、すっと目を通したおかげで、特に後半から「なるほど!」と感じる進行に乗っていけました。

今回の作品の登場人物は、進行役である作家役の春日希さんを除いて、すべての登場「人物」が「神」。
八百万の神が各々言いたい放題言ってる様が面白すぎる(笑)。

「神」と言えば「品行方正」とか「淡々と職務をこなす」というイメージが付いていますが、別にそれは人間が勝手に考えているイメージなわけで、言われてみれば神様が自分たちの立場に愚痴言うとか、あっても不思議じゃないわけですよね。

今回、役設定を聞いたときに、岡村さやかさん演じる神様と、tekkanさん演じる神様が、姉弟と聞いて、「そりゃ鉄板だろう」と確信して、見てもその確信は変わらないわけですが、とりわけ岡村さやかさんが演じた天照大御神(アマテラスオオミカミ)と言えば、皆を照らす神、最高神なわけです(現在の天皇の祖先として伊勢神宮の内宮に祀られています)。

では、偉そうかというと、そこはさやかさんのキャラクターが存分に反映していて、「やり手なんですが表面的には明るいお姉ちゃん」みたいになっててそこもツボで(笑)。ただ決めるところはしっかり決めるところがやっぱりベテランの技で、弟であるtekkanさん演じる神に対して、いつも厳しくしている様を垣間見せつつ、時にはそれを申し訳なく思い詫びる様とか、「神」なのにとっても「人間」ぽい

tekkanさんも姉に対して「姉ちゃんには敵わねぇなぁ」とボヤキつつも、どこか認めてもらえているさまを喜んでいるような、そんな役柄の見せ方が、流石2人は飛び抜けて素晴らしかったです。もちろん歌声もこのサイズの劇場で聞けることがプレゼントと思えるかのような様。tekkanさんの「魂の叫び」も、さやかさんの「深みのある心の声」も、この作品を統べるに相応しい両雄(僚友)でした。

この作品の音楽はオリジナルミュージカルということもあり、というかミュージカルらしくないグルーブ感が特徴で、それは若い方がミュージカルを作ろうとするときの、一つの方向性なのかなと感じます。

隈元さんとさやかさんが出会われたのは3年前に青山DDDクロスシアターで上演された『(愛おしき)ボクの時代』。この時、隈元さんと今回の作家役の春日さんがスウィングキャストとして控えて、さやかさんがキャストとして入られていました。西川大貴さんが旗振りされて、桑原あいさんが音楽を手掛けられたこの作品の体験が、今回の作品を手掛けるにあたって、どことなく通じるところも感じます。また、隈元さんとさやかさんはその後、Youtubeでの『Tokyo Jukebox Musicals』企画で演出と出演という関係にもなり、またさやかさんの一の理解者である、浅井さやかさん演出の『ヨルの真ん中』で隈元さんがオブザーバーで入られたりと、さやかさんへの信頼の厚さを感じます。

それゆえに、今回の作品も岡村さやかさん、tekkanさん、春日希さんというトライアングルが上手くかみ合うことで、若手の出演者を自在に動かせた感じは安定していて、特に物語が動き出してからの後半、皆がある意味力を合わせて前に進んでいくさまはとってもポジティブで、清々しい気持ちになれました。

惜しむらくは前半の物語の構成が少し分かりにくかったかなと感じはしましたが、いい意味で小さくまとまっていない、「どこに行きつくか正解をはっきり見せていない」ところに、意欲的な様を感じる、刺激的なオリジナルミュージカルだったのでした。

期間が短く、わずか3日間(4月29日~5月1日)の公演でしたが、5月後半にはアーカイブ配信(こちら)も行われる予定ですので、ご興味がある方は是非。

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