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2022年5月

『My Story,My Song ~ and You』

2022.5.22(Sun.) 13:00~15:30
シアタークリエ 6列10番台(センターブロック)

4日間6公演限りのトーク&ソングライブ、行ってきました。
山口祐一郎さんをメインホストに、各回替わり2日ずつのゲストが登場する構成。
大塚千弘さん登場は2回、この日と前日の土曜マチネの2回でしたが、
この回のチケットをご用意いただけたので、幸運にも生で見られました。

第1部がトーク、第2部が歌の構成。

第1部、ゲストと言いつつ最初出てくる、ちーちゃん(祐さんは「ちひろりん」と言ってました、慣れない笑)と圭吾さん。「ゲストなのに最初に出てくる(笑)」と笑いを取りつつ、祐さんを迎え入れての、第1部はトークパート。1セクション10分で、30秒前に舞台前方のバーが点灯、15秒前に舞台前方のパトライトが点灯(点滅か点灯かで客席にアンケート…笑)、時間になると盆が回って強制終了(笑)という構成。

この回の進行役は予想通りのちーちゃんでしたが、流石の進行力でばっさばっさと2人をぶった切る(笑)。「先生」って自ら言ってましたが、客席から見てても「そうだよね」な、「先生と、言うこと聞かない生徒2人」という関係性(笑)で、しかもそれを客席もスタッフさんも期待してるというポジションがとっても面白い。

祐さん曰く「出会ったときはセーラー服」なちーちゃん、最初にお父様お母様に「うちの娘をよろしくお願いします」と挨拶されて「僕でいいんですか」と答え、お父様が「祐一郎さん、私と同い年です」と答えられて「あぁ、僕は大塚さんの保護者になるんだな」と思った話とか(笑)、圭吾さんが祐一郎さんに憧れてこの道に入って「兄弟じゃないかってぐらい似てた」と祐さんが仰ってる話とか、それぞれ大切な思い出なんだなぁと。

今回の公演、女性キャストは知寿さんとちーちゃんと2人だけで、知寿さんが祐一郎さんが四季在団時の代表的な共演者として呼ばれたということなら、ちーちゃんは祐一郎さんが東宝に出られるようになってからの代表的な共演者ということなわけで、そのポジション自体が有難い話だなと。

直接的な相手役は『レベッカ』の「わたし」ですが、それ以外にも『ダンス・オブ・ヴァンパイア』のサラ、『モーツァルト!』のコンスタンツェと言った共演作があり、先ほどの話の「保護者と娘」という関係性に、「あまりならない」絶妙な距離感が、祐さんとちーちゃんのいいところなんだろうなと。
ちーちゃんも以前からスカッとサラッと、漢前のサバサバしたところがありますから、「ヒロインとしてそこにいてくれる」安心感で、「濃すぎず薄すぎず」の立ち位置が良かったのだろうなと思うのです。

ちーちゃんと圭吾さんの関係も絶妙ですよね。M4の「フレンドシップ」が、「私たちいい関係だと思わない?」からの導入で、関係性と選曲の組み合わせが流石で、何かボニクラとか合いそうじゃない的な距離感。先日の『笑う男』が実質的にガッツリ組んだ初とのことですが(言われてみればそうですね)、過去『SHIROH』、『モーツァルト!』、『ダンス・オブ・ヴァンパイア』と共演歴は多く。

ちなみに、『笑う男』では2人が初参加組(再演組)だったために、居場所に困り(笑)、稽古場で端っこにいて、役作りについて随分話すことが多くて、より濃い関係性になったという話をされてて納得。

で、ここでセットリストです。

●セットリスト
1.The Music of the Night/The Phantom of Opera(山口)
2.私だけに/エリザベート(大塚)
3.恋をしているのなら/ダンス・オブ・ヴァンパイア(山口・吉野)
4.フレンドシップ/エニシング・ゴーズ(大塚・吉野)
5.夜を越えて/レベッカ(山口・大塚)
6.砂に刻む歌/ラ・カージュ・オ・フォール(吉野)
7.ダンスはやめられない/モーツァルト!(大塚)
8.It All Feads Away/マディソン郡の橋(山口)
9.持ちつ持たれつ/レベッカ(吉野)
10.糸/オトコ・フタリ(山口・大塚・吉野)

セットリストは回替わりで、ソロが2曲ずつということで、この回のちーちゃんは初出しの「私だけに」。
ちーちゃん曰く「無茶苦茶緊張してる」と。「祐一郎さんと一路さんの『エリザベート』を拝見して大感動してた私がこの曲を歌う日が来るとは」と話されていて、その緊張が伝わってくるほどでしたが、そのいっぱいいっぱいさが役とシンクロした感じで新鮮でした。

もう1曲はM7「ダンスはやめられない」。「18年前に演じた役を、今倍の年齢で歌う」とシレっと言っちゃうちーちゃんは、ある意味凄いわけですが、こちらも当時の「いっぱいいっぱいさ」が役とシンクロした(名古屋と博多のみの出演だったので、東京では本役として演じていない)とまた違った魅力。今の年齢になっても若さゆえの危うさを自在に出せるところは、ちーちゃんご自身もあまり意識されていないけれども、実はとっても武器なんじゃないかと思うわけです。

デュエットでのM3が、祐さんアルフレートと吉野さんヘルベルトという、またまた面白い関係性だったわけですが、その後ろで本役サラのちーちゃんがまったり水飲んで苦笑しながら見てる図式が一番面白かったかもです(笑)。

祐一郎さん中心に、ちーちゃん&圭吾さんという絶妙な関係性のトライアングルだったこの回。
お3方が歌ってくださった最後の曲「糸」が、客席や配信の方を思ってくださる優しい歌声で、当時からの積み重ねて来た日々を感じさせるかのような空気感を共有できて、素敵な公演になったのでした。

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『メリー・ポピンズ』(5)

2022.4.24(Sun.) 12:30~15:30
 東急シアターオーブ 1階5列30番台(上手側)

2022.4.26(Tue.) 18:00~21:00
 東急シアターオーブ 1階13列20番台(センター)

2022.4.29(Fri.) 12:30~15:30
 東急シアターオーブ 1階6列30番台(上手側)

2022.5.5(Thu.) 12:30~15:30
 東急シアターオーブ 1階15列20番台(センター)

2022.5.8(Sun.) 12:30~15:40
 東急シアターオーブ 3階1列10番台(下手側)

 メリポピ東京公演、終わってしまいました。

 当初は7回予定だったのが、振り返れば9回。全部玲奈メリーでしたが、ここまで1作品で通い詰めたのは久しぶりで、それだけ魅力的な役、魅力的な作品でした。

 プレビュー初日からずっと見てきましたが、当初は手順の多さに明らかにいっぱいいっぱいだった玲奈メリーも、後半、特にラスト1週間は自信に満ち溢れ、余裕も出てくるほど。東京楽のスパカリで小野田バート相手に、「G」のジェスチャー途中で溜めに溜め、「早く次の文字ちょうだいー」ってジェスチャーで煽られる様とか面白すぎる(笑)。

 いつもどこかしらでやらかしてる(爆)玲奈メリーでしたが、東京楽はまさに「何もかもがパーフェクト」で、流石、楽でこれをやるとは!!と完成度に脱帽です。

 1幕はいつも以上に厳しく、心を開いていなくて。おもちゃのシーンでジェーンに心を閉ざされたときに玲奈メリーの表情から「すっ」と温度が消えたのが特に印象的。

 でも、2幕で戻ってきてからは、厳しさよりも優しさを隠さなくなっている様がとても魅力的。「Step In Time」でマイケルの頭を優しそうに撫でたり、「どんなことでもできる」で自分を真似するジェーンを、同志と認めるかのように明るく受け入れたり。花代ウィニフレッドを促す様もとっても良かった。

 今回はキャストスケジュールの偏りが強くて、玲奈メリーを選ぶと知念ウィニフレッド率が高かった(9回中6回)ので、花代ウィニフレッドの回数は少なかったのが残念なのですが、自己肯定感が低くて背中を押してくれるのを待っている様と、自信しかない玲奈メリーの対照的な様は興味深くて。

 それでいて、バンクス家が自立すればするほど、メリーの存在価値はなくなっていく。その様を誰よりも寂しがる玲奈メリーの様に胸を突かれて。1幕では子供たちの態度を見て自分がいる「意味」がないと感じて去ったけれど、2幕ではバンクス家の様を見て自分がいる「価値」がないと感じて去ることにしたからなのか、「私は子供たちに感情移入しちゃいけない立場なんだ」と思い知らされるかのような、優しさ故に感じさせる悲しみが切ないです。

 星の雨の降る中で、ジェーンとマイケルと手をつなぎながら、玲奈メリーだけは、お別れが近づいていることを知っていて、それを悟られないように必死で繕っている様が、マイケルの「大好きだよ」という言葉で大きく崩れる様は、特に東京後半の印象的だった場面。

 もしかすると、「大好き」と言われたのは、バート以来だったんじゃないか(バートはメリーのかつての教え子)と思わされるかのような動揺と、「どうしたらこのいい子を傷つけないで別れられるだろうか」という、使命との狭間で揺れる様が伝わってきたのが、玲奈メリーの「人間らしさ」だったなと思います。

 今回、メリー・ポピンズという役を、初演ではオーディションで選ばれなかったことをはっきり公言していたのはとても意外で、でも、時を経て、再びチャレンジする機会を得て、メリーを勝ち取ったこと、そしてメリーを東京公演でしっかりと自身の役にされたこと、それこそ「どんなことでもできる、自分で邪魔をしなければ」ということだったのではないかと思います。

 もちろん、幸運もあったでしょうが、努力なしでは到達できなかった場所。「自分はどうせできない」と思っているより、「自分でもできるんじゃないか」と思ったことで得られた役、念願のディズニー作品でのタイトルロール。

 メリーの玲奈ちゃんだけでなく、続投キャストも新規キャストも、「どんなことでもできる、自分で邪魔をしなければ」と思ったからこそ、この作品の一員として輝いている、そう感じさせられる清々しさに満ちた作品でした。

 東京楽は、通常のダブルカーテンコールの後、規制退場のアナウンスが流れても容赦なく拍手を続ける客席に根負けし(爆)、小野田バートと玲奈メリーが幕前にご登壇。

 玲奈メリーがほっぺを突き出してキスを求めたところに、小野田バートがキスしようと身を乗り出したところで、華麗にくるっと身体を躱す玲奈メリーが役柄的にも100点満点で最高すぎました(笑)。
 最後は2人でたっぷりの投げキスを会場中に投げられて、幸せな東京楽となったのでした。

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『らららクラシックコンサート』

2022.5.4(Wed.) 16:00~18:05
東京文化会館大ホール 4階3列1桁番台(下手側)

定期的に開催されている「らららクラシックコンサート」、今回が10回目(Vol.10)。
「ミュージカル特集」と題し、「~ミュージカルの巨匠たち~」のサブタイトルがつけられています。
当初は1年前のGWに実施される予定でしたが、感染拡大により延期となり、今回も出演予定だった上原理生さんが陽性反応が出たことで出演取りやめ、佐藤隆紀さんが代役を務めることになりました。

結果、出演は新妻聖子さん、中川晃教さん、ソニンさん、佐藤隆紀さん、咲妃みゆさんの5人。
この種のコンサートでは珍しく、女性の出演者の方が多いところが興味深いです。
演奏は読売日本交響楽団で、指揮も女性の三ツ橋敬子さんが務められています。

まずはセットリストです。

●セットリスト

<第1部>
1.Overture/『サウンド・オブ・ミュージック』(全員)
2.Somewhere/『ウェスト・サイド・ストーリー』(全員)
3.Music Of The Night/『オペラ座の怪人』(佐藤)
4.メモリー/『キャッツ』(ソニン)
5.Someday/『ノートルダムの鐘』(咲妃)
6.A Whole New World/『アラジン』(新妻・中川)
7.愛せぬならば/『美女と野獣』(佐藤)
8.Can't Take My Off You/『ジャージー・ボーイズ』(中川)
9.その目に/『ジキル&ハイド』(新妻・咲妃)
10.Defying gravity/『ウィキッド』(ソニン)

<第2部>
11.世界が終わる夜のように/『ミス・サイゴン』(中川・ソニン)
12.命をあげよう/『ミス・サイゴン』(新妻)
13.夜のボート/『エリザベート』(佐藤・咲妃)
14.永遠の瞬間/『レベッカ』(咲妃)
15.ダンスはやめられない/『モーツァルト!』(ソニン)
16.Stars/『レ・ミゼラブル』(佐藤)
17.スーパースター/『ジーザス・クライスト・スーパースター』(中川)
18.GOLD/『GOLD~カミーユとロダン~』(新妻)

19.民衆の歌/『レ・ミゼラブル』(全員)

MCがかなり少なく、休憩20分込みで2時間で、曲数も20曲近いということで、歌と演奏に集中した展開。
最初に「代表して」巨匠の音楽の特徴について振られた聖子さん、「若輩者ではございますが…」と前置きしなからも、そつなくこなしておられました。

コンサートホールでフルオケということで、馴れ不馴れはかなりはっきり出た印象。とりわけ凄かったのは、急遽出演となったとは到底信じられないシュガーさん(佐藤さん)。ファントムも野獣も声の伸びが素晴らしくて。普段からボーカルグループでクラシカルクロスオーバーを得意ジャンルとされているだけあって、経験値の高さを感じさせました。

代役ということで、急遽欠席となった上原さんに直前に連絡を取ったことを明かし、体調に大きな問題がないことを披露し、「上原君の分まで歌声を届けてくるから」と伝える様は、素晴らしかったですし、会場に来られた彼のファンもホッとしたことでしょう。

そしてこの5人のセンターを努めたのは何と聖子さん。キャリアからするとあっきーもあり得たかもしれないですが、安定感が凄い。歌っていないときは皆をニコニコ顔で見守り、この日はとりわけ緊張されていたソニンちゃんも、後半にはようやく笑顔が見せられるほどに回復。

久しぶりの表舞台ということもあるのか、とにかく楽しそうで、何しろ普段はまずやることがない「事前のセトリ公開」までやる御機嫌ぶり(笑)。「久しぶりのフルオケ」と楽しみにされてましたが、聖子さんがフルオケをバックに歌うと、不思議にフルオケを従える感じになるのが経験値の高さだなと。フルオケはどうしてもミュージカルの方とは少なからずテンポがずれるところもあるのですが、聖子さんはそのずれを自身で補正して、フルオケと一体に聞かせることで、あたかも自身がフルオケを率いているかのように聞かせていて、流石の一言。

最近は「フルオケでしか歌わない」と半ば公言されている「GOLD」も力まない絶品の歌唱でした。

ソニンちゃんはホールでのフルオケが初なのが要因か、直前に出演舞台が2幕開演前に中止になったのを引きずってか、正直見たこともないほど緊張され、かつ調子を崩されていて心配しましたが、聖子さんの笑顔や、ご自身の「歌いたい曲」のパワーに助けられ、徐々に回復されていてホッとしました。

選曲で割を食っちゃった感じがあったのは咲妃さん(ゆうみちゃん)。フルオケもそんなに経験がないだろう上に、得意のアルト音域はソニンちゃんが被ってそちらに持っていかれた感もあり。聖子さんとのデュエットも、聖子ルーシーの歌のパワーに特にラストは書き消されちゃっていて、あぁ、めぐさんルーシーとの玲奈ちゃんエマが最初の頃こんな感じだったなぁと思わされたり。そもそもが、『千と千尋の神隠し』の博多座公演中の掛け持ちでもありましたからね。次に期待です。

あっきーはあっきーで(笑)、いつもよりはパワーおさえ目かなとも思いましたが、それはシュガーさんがホール得意なところとの対照かなと。あっきーと一緒で誰よりも聖子さんが楽しそう(笑)だったのが何よりでした。
その聖子さん、パンフレットで前回のらららの時の不調をお詫びされていて(サントリーホールでサラ・オレインさんに代役に入っていただいた)、そういうところしっかりされるのは流石だなと。
今回、司会の方をもフォローするほどいつも以上に力が入られていたのは、その時の恩返しという思いもあったのかなと感じさせられました。

むちゃくちゃ面白かったのは、実はレミ経験者2人しかいないこのメンバーでの「民衆の歌」。戦う系女優2人、恋する系女優が男性パートを歌うのが面白すぎました。

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『考える葦』

2022.4.30(Sat.) 17:00~18:40
ザムザ阿佐ヶ谷 A列1桁番台(センター)

NEM KiT(ネムキット)さんの新作オリジナルミュージカル。
作・演出の隈元梨乃さんと共演経験がある縁で、今回岡村さやかさんが出演ということで久しぶりのザムザ阿佐ヶ谷へ。

かつては『ウレシパモシリ』で通いつめ、岡村さやかさんの歌声の迫力に酔いしれたこの場所も、5年も経てば、だだっ広かった隣の駐車場はアパートに変わり、外側は窮屈になった感じはありますが、劇場に入ってみれば懐かしのサイズ。土足NGになってたのは意外でした。

今回、客席に当日パンフが置かれていますが、今回の作品のモチーフになった「古事記」を読んでいないのであれば、この当日パンフなしで理解するのは中々難儀で、実際、すっと目を通したおかげで、特に後半から「なるほど!」と感じる進行に乗っていけました。

今回の作品の登場人物は、進行役である作家役の春日希さんを除いて、すべての登場「人物」が「神」。
八百万の神が各々言いたい放題言ってる様が面白すぎる(笑)。

「神」と言えば「品行方正」とか「淡々と職務をこなす」というイメージが付いていますが、別にそれは人間が勝手に考えているイメージなわけで、言われてみれば神様が自分たちの立場に愚痴言うとか、あっても不思議じゃないわけですよね。

今回、役設定を聞いたときに、岡村さやかさん演じる神様と、tekkanさん演じる神様が、姉弟と聞いて、「そりゃ鉄板だろう」と確信して、見てもその確信は変わらないわけですが、とりわけ岡村さやかさんが演じた天照大御神(アマテラスオオミカミ)と言えば、皆を照らす神、最高神なわけです(現在の天皇の祖先として伊勢神宮の内宮に祀られています)。

では、偉そうかというと、そこはさやかさんのキャラクターが存分に反映していて、「やり手なんですが表面的には明るいお姉ちゃん」みたいになっててそこもツボで(笑)。ただ決めるところはしっかり決めるところがやっぱりベテランの技で、弟であるtekkanさん演じる神に対して、いつも厳しくしている様を垣間見せつつ、時にはそれを申し訳なく思い詫びる様とか、「神」なのにとっても「人間」ぽい

tekkanさんも姉に対して「姉ちゃんには敵わねぇなぁ」とボヤキつつも、どこか認めてもらえているさまを喜んでいるような、そんな役柄の見せ方が、流石2人は飛び抜けて素晴らしかったです。もちろん歌声もこのサイズの劇場で聞けることがプレゼントと思えるかのような様。tekkanさんの「魂の叫び」も、さやかさんの「深みのある心の声」も、この作品を統べるに相応しい両雄(僚友)でした。

この作品の音楽はオリジナルミュージカルということもあり、というかミュージカルらしくないグルーブ感が特徴で、それは若い方がミュージカルを作ろうとするときの、一つの方向性なのかなと感じます。

隈元さんとさやかさんが出会われたのは3年前に青山DDDクロスシアターで上演された『(愛おしき)ボクの時代』。この時、隈元さんと今回の作家役の春日さんがスウィングキャストとして控えて、さやかさんがキャストとして入られていました。西川大貴さんが旗振りされて、桑原あいさんが音楽を手掛けられたこの作品の体験が、今回の作品を手掛けるにあたって、どことなく通じるところも感じます。また、隈元さんとさやかさんはその後、Youtubeでの『Tokyo Jukebox Musicals』企画で演出と出演という関係にもなり、またさやかさんの一の理解者である、浅井さやかさん演出の『ヨルの真ん中』で隈元さんがオブザーバーで入られたりと、さやかさんへの信頼の厚さを感じます。

それゆえに、今回の作品も岡村さやかさん、tekkanさん、春日希さんというトライアングルが上手くかみ合うことで、若手の出演者を自在に動かせた感じは安定していて、特に物語が動き出してからの後半、皆がある意味力を合わせて前に進んでいくさまはとってもポジティブで、清々しい気持ちになれました。

惜しむらくは前半の物語の構成が少し分かりにくかったかなと感じはしましたが、いい意味で小さくまとまっていない、「どこに行きつくか正解をはっきり見せていない」ところに、意欲的な様を感じる、刺激的なオリジナルミュージカルだったのでした。

期間が短く、わずか3日間(4月29日~5月1日)の公演でしたが、5月後半にはアーカイブ配信(こちら)も行われる予定ですので、ご興味がある方は是非。

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