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『新名探偵ポワロ』

2022.4.9(Sat.) 16:30~19:05
 全労災ホール・スペースゼロ 4列1桁番台(下手側)

2022.4.10(Sun.) 12:30~15:05
 全労災ホール・スペースゼロ 15列2桁番台
 (センターブロック)

「こくみん共済COOP文化フェスティバル2022」参加作品、ピュアマリー公演のこの作品。
公演の発表が遅かったこともあり、すでに入れてあった観劇予定を鬼のように調整して2枠確保しましたが、2回見られてよかった、3日間(4月8日~10日)だけでは勿体ない、という素晴らしい作品でした。

この作品はアガサ・クリスティーの処女戯曲「ブラック・コーヒー」の舞台化で、日本では4回目との上演とのこと。舞台セットといい、音楽といい、アガサ・クリスティー作品で唯一見たことがある「マウストラップ」を見たときに感じた、”痺れるほどの心地良い時間”を再び感じました。

推理物の作品はなんといっても初見が一番大変で、かつ一番面白い。謎解きの謎が分からないわけで、目の前の瞬間で起きていることから答えを探そうとする様は本当に楽しくて、それが練られた傑作戯曲であればなおさら。

この作品の舞台となるイギリス貴族の館で起きる当主毒殺事件の犯人を突き止めることに、(結果的に)なったのが名探偵ポワロJr。辻本祐樹さんが演じました。今回の作品の出演者は(高橋)由美子さん以外、誰一人舞台で見たことがないというかなり珍しい事態(多分年に1作あるかないかです、こんなこと)だったのですが、辻本さん筆頭にどなたも役者としてしっかりされていて、作品にしっかり没頭できました。元々は横山結衣さん(元AKB)が務める予定だったバーバラを演じた佐倉(花怜)さんも好演で、無理がありません。

物語を進行するポワロJrの辻本さんのテンポもとても良いのですが、この事件で一等強く容疑者的な存在になる、当主の息子の奥様・ルシアを演じた高橋由美子さん。旦那の目の前に「古い友人」であるという男性が来たこともあって、挙動不審になり、「見るからに怪しい」様を怪しく見せまくるのが上手すぎて上手すぎて(爆)。

脛に傷を持つ故に挙動不審になる結果、事件の容疑者にされそうになることも不思議はなく、見ている人間誰もが「この人が怪しい」と思うがゆえに、つまりそれは真犯人からの謀略を受ける立場にもなるわけで。劇中でポワロJrがいみじくも「一番怪しくない人が本当は怪しいんですよ」と言っていて、最初からルシアは容疑者ではない、とみていた感じがあります。

「秘密を貫き通さねばならない」と思っていた故に不審な行動をとり続けたルシアの心の壁を、策で切り崩すポワロJr。しかしルシアのその「嘘」を、愛する主人に対する真摯な思いである故を感じ取るポワロJr。
ルシアへの周囲の不審を見事に晴らし、真犯人を見出す様は、原作の見事さもさることながら、心地良い舞台作品でした。

ポワロJrの辻本さんとルシアの由美子さんの掛け合いがこの作品のかなりの部分を占めるのですが、2人ともテンポ上手で、上手い演者同士の芝居の掛け合いなので、間延びすることがないんですね。真実を見出すための鋭い攻撃と、愛する人を守るための分厚い守りは見応え十分。

由美子さんもすっかり「マダム」と呼ばれる役が似合うようになりましたが、由美子さんの面白いのは、若い男性と夫婦となっても不自然でないので、「妻」としても「恋人」としてもふるまえる様が、演技の幅を感じさせて興味深いです。今回、いい役もらえたなぁと感謝です。

1回目の謎解きを見たうえで2回目を見られたことで、「伏線はここにあったのか」を感じながら見られたことはとても楽しくて。ポワロJrが導き出す「正解」への道は、正確な状況認識と、バイアスがない判断と展開力なわけですが、根底にあるのは「愛」なのだと思わされます。

正解を見出すことは勿論大事なんだけれども、それは「ゲーム」なのではなくて、「罪を犯した人間が罪を償なわなけれならない」という信念の元、ともすれば心折れてしまうかのような「罪人ではない弱い人間」を救い上げる「愛」が見えて、より感動させられたのでした。

大きな宣伝も見られず、3日間だけの公演というのが本当にもったいない作品。是非、また陽の目を見ますことを願っています。

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