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『GREY』(1)

2021.12.16(Thu.) 19:00~21:05
 俳優座劇場 7列10番台(センターブロック)

2021.12.21(Tue.) 14:00~16:50
 俳優座劇場 9列10番台(センターブロック)

conSeptさんの新作、今回は現代をテーマにした作品です。
ミュージカルではあまり使われる印象の少ない六本木の俳優座劇場ですが、非常にコンパクトな構造でどこからも見やすい。この作品にとても合っている劇場という感じ。

物語の舞台はテレビのあるバラエティ番組。その番組に出演していた新人歌手・shiroが自殺を図る。彼女は登場以来人気はうなぎ登りだったが、最近SNSの誹謗中傷を受けていたという。いつも明るい彼女が自殺を図ったことに、周囲の人々は驚き悲しみ、そしてなぜこうなってしまったのか、それぞれが問いかけていく。
彼女の番組登場以来のストーリーを振り返っていく…という物語。

新人歌手・shiroを演じた佐藤彩香さんは、文学座研究所2年という、ミュージカルとは少し違う経歴を持ちますが、伸びやかな歌声、そして長身で白のドレスがとてもキャラクターを「陽」に見せていてとても聞きごたえあり。番組に出演するきっかけとなった番組の構成作家、藍生とは学生時代の仲良し三人組の仲。もう一人はカメラマン志望の金銀。3人の関係性が1つのグループを構成しているとするなら、もう一つはテレビ番組の関係者。テレビ番組のプロデューサー、アナウンサー、広告代理店の責任者、そして少し離れたようで離れていないポジションにテレビ局の報道局員。その7人で物語は紡がれていきます。

前半はshiroがテレビ番組にかかわり始めてからの時系列の物語ですが、中盤からいたるところで現れるshiro以外の登場人物の過去が、どれも重量級に濃い。大なり小なり、過去と折り合いをつけて生きてきた人たちが、「現在」のshiroとの関りで否応なく自らの矛盾に気づいていくさま。

そんな自らの弱さに向き合って、それぞれが前を向こうとする様がラストの「GREY」の曲に収斂していくさまはとても素敵で、重いテーマなはずなのに、何か清々しい気持ちになれる、「これも一つのハッピーエンド」と思える様がいいなと。

この物語のテーマを聞いたとき、そしてこのテーマに由美子さんが出ることに、実は少なからずの驚きを持っていました。

SNSの誹謗中傷、とは少し違うとはいえ、芸能界に30年以上い続けて、大きなバッシングを2度も受けている彼女。なのにもかかわらず、彼女は舞台に帰ってきて、このテーマの舞台でしっかり大人チームとして生きている。梅ちゃん(梅田彩佳さん)演じる茜が「鋼のメンタル」でいようとしてできなかった、と語っていたけれど、リアルだと由美子さんがまさに「鋼のメンタル」に近い人なんだよなぁ、と思いながら、でも、それこそ「どんなにつらい思いをしてきたかは、本人以外には決して分からない」という思いとオーバーラップしてしまって、「どれだけのものを乗り越えて、由美子さんがこの作品に立っているのだろう」と思ったら、涙が止まらなかったのでした。

そしてもう一つ。

この作品の初見は初日、2回目は火曜日だったのですが、実はこのたった1週間の間に、世界は大きく変わってしまいました。先週の土曜日に、若手ミュージカル女優の代表格の一人だった女優さんが亡くなられました。彼女の舞台でのいきいきとした様が脳裏に焼き付いていて。そして彼女も生まれてからずっと、衆目の環視の中のプレッシャーで35年生きてきた方。今回の作品のテーマと同じなわけはないけれど、この作品におけるshiroの巻き込まれたものと、少なからず似たところも感じずにはいられず。初日には感じるはずもない感情が、火曜日には波のように押し寄せてきて、なんだか別の作品を見ているようにも感じられました。

このことで、実は主催のconSeptさんはTwitterで「無理をしないで、希望される方には払い戻しを検討します」と公表されていますが、その時のツイートを見て驚いたのは、作品の根幹に触れるネタバレを実はしているんです。初日見たときに驚いた演出ポイントを、公表せざるを得ないと判断したのは、間違いなく「制作サイドがお客さんに伝えているメッセージを理解している」ということで、「作品が受け手に寄り添っている」(受け手の印象に対する想像力がある)ことにも、また感動させられたのでした。

21日のマチネの後はアフタートーク。30分たっぷり、楽しい時間を過ごせました。
何しろ演出の板さん(板垣さん)が回すわけですから、楽しくないはずがない。

この日の登壇者は高橋由美子さん、梅田彩佳ちゃん、遠山裕介さん、羽場裕一さん。

板さん「梅ちゃんは元アイドルだし、由美子さんもね」
由美子さん「そういうのいーから!(笑)」と立ち上がって板さん叩くフリ(笑)
…この距離感は「一緒に飲んだことある」からだそうで(笑)

板さん、舞台でご一緒したことがあるのは遠山さんだけで、由美子さんと羽場さんは「一緒に飲んだことある」から今回オファーしたそうで(笑)。きっと人となりが理解できているという意味なんですよね。

それでいて、板さんお得意のあて書き感が半端なく。

由美子さん「『言わなくていいことまで言って嫌がられる』、まんま私だと思った(笑)、頭に(監視)カメラでも付けられてるかと思った」
板さん「由美子さんなら言うかなと想像で(笑)」

その関連で板さんが言われていた、

板さん「大人チームの芝居が凄く良くて、細かく演出付けずに、終わった後に若手チームを呼んで『今の芝居はここがこう良かったんだよ』ってできるのがありがたくて」は凄く嬉しかったです。

遠山くん「梅ちゃんは本当に努力家で台本にノート(指摘)をびっしり書き込んでて」
梅ちゃん「あまりに書きすぎて分からなくなってトンネルに入っちゃったこともありました」

役との似たところというお題で、

梅ちゃん「言いたいこともぐっと我慢して笑顔でいて、とかは昔あったなぁと思って、今回の役柄でもシンクロしましたね。(アイドル)当時も楽しんではいたんですけどね」

というのも興味深かったです。

ミュージカルはほぼ初体験な羽場さんからは興味深い話が。

羽場さん「歌は意外に決まりごとがかっちりしてる。芝居は意外に自由にできる」はすごい名言だと思った。

それぞれ個性を存分に活かして、結構自由にやらせてくれる演出家な板さんの下で、伸び伸びやっているからこその明るさ。

いいチームワークで26日の千穐楽まで、日々進化していくことを願っています。
全公演配信もありますので、興味ある方はぜひ。

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