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『マリーアントワネット』(12)

2021.1.29(Fri.) 17:00~20:10
 東急シアターオーブ 1階7列10番台(センターブロック)
  ※6列が最前列なので、実質2列目

2021.2.7(Sun.) 13:00~16:15
 東急シアターオーブ 3階6列30番台(上手側)

 再演版MAのさらに再演。この時期は帝劇が使えないため、劇場をシアターオーブに移しての再演です。

 本公演初日は1月28日で、実のところ自分の誕生日でもあったので、キャストが合えばと思っていたのですが、(笹本)玲奈さんのマリーは1月29日初日ということで、誕生日翌日観劇になりました。(そして誕生日当日はなんと『パレード』を見ていたという…苦笑)

 緊急事態宣言下の開幕ということで、終演を20時までに納めるために、開演時間も18時から17時に変更となったことで、勤務終了後には間に合わないことになったので、午後休を取って劇場へ。(とはいえ15時まで外せない会議があったので、実際には1時間早退しただけでした…苦笑)

 初日はどうしても緊張が拭えなかったというか、やはりこの事態下での開演であることの空気は否めず、玲奈ちゃん、(マルグリットの)昆ちゃんともにかなり慎重な運転。実はセットのドアが開いてはいけないところで開くといったハプニングも複数あり、ひやひやし通しでしたが、何とか終演。カーテンコールで玲奈ちゃんと昆ちゃんが全身で何度も嬉しそうに抱き合う姿が感動的でした。

 終演後のご挨拶で、玲奈ちゃんから「普段であれば『また、ぜひおいでいただきたい』とお話しするところですが、こういった状態ですので皆さまと、皆さまのご家族の健康が最優先です。ご無理をなさらず、今日の観劇で1つでも心に残っていましたら嬉しいです」と仰られていたのが感動的で、タイトルロールとして本当に安心して任せられる存在になったんだなぁということがとても嬉しかったです。

 それでいてご挨拶中「今日、初日だった人手を挙げて!」と言って手を上げさせる天然さは健在で笑えます(笑)。

 ・・・

 それから1週間強空いた日曜日マチネは、期待していた(笹本)玲奈マリー・ソニンマルグリット・(田代)万里生フェルセンの勢ぞろいの初めての回。

 今期から「孤独のドレス」の歌詞が1か所変わって、マリーの「孤独のドレスを”着て”」という歌詞が「孤独のドレスを”纏い”」になりました。

 この回を見て、この歌詞の変更の意味をようやく理解したのですが「着て」だと、マリーが自らの意思で孤独のドレスを”着た”、かのように思えてしまうのですね。もちろんそうではなく、”運命として”嫁いできたからこその、王室の中の「孤独」な立場。だから「孤独のドレス」は、自分の意志ではない「纏い」という言葉に変わり、そしてだからこそ、「(孤独のドレスを)脱いで」、愛するフェルセンとともに生きたいのだと、そのメッセージの流れがしっかり伝わってきました。

 玲奈ちゃんと万里生さんの関係性は初共演(『ウーマン・イン・ホワイト』)以来長いですが、お互いが信じあっている様が、孤独なマリーと、フェルセンの関係性と完全にシンクロして、泣けてきてしまうぐらいに温かい。

 そんな中に起きた、この日の最大のハプニング。

 プチトリアノンでのお茶会の時、それは起きました。
 マリーがフェルセンにお茶をすすめ、フェルセンが断る。そこまでは同じでした。
 ところが、次にマリーがケーキを取り分けようとして、何とケーキが取り分けられない!
 ホールに5つに切り分けられたパーツを取ろうとしてナイフが入らない!

 玲奈ちゃんの心の中としては
 「ナイフが入らない!なんで?」とひとしきり焦り、
 「(王妃なんだから)手で取るわけにはいかないし」…
 「ど、ど、どうしよう…もう渡さなきゃいけない時間だし」…
 「いいや、もうホールごといったれ!」

 …てな感じ(と想像されます)で、まさかの

 「ケーキをホール丸ごとフェルセンに差し出す」

 という事態が(爆笑)

 そして、フェルセンの万里生氏がどうしたか。

 そこはさすが、百戦錬磨な玲奈マスターにして、ベテランのフェルセンの風格。いつもと違うマリーの行動にも微動だにせず「いつもと同じように断った」ことで、無事に物語はそのまま本線に戻ったのでした。

※この件、ツイートに書いたら、なんと4時間足らずで10000PV以上見ていただき…
 王妃様の秘密を暴露したということで、そろそろ王妃様により監獄に送られることになるのではと心配になってます(笑)

・・・

 そしてもう一つの関係性、玲奈マリーとソニンマルグリット。「憎しみの瞳」でバチバチにぶつかり合う様はさすが同世代の女優同士。玲奈ちゃん×昆ちゃんだと、どうしても姉妹関係を感じてしまうけれど、玲奈ちゃん×ソニンは容赦ないぶつかり合いで、もともと一癖あるソニンちゃんと、「癖を隠す癖のある」玲奈ちゃんの癖が表面に出てくる感じが面白くてしょうがなくて、ワクワクします(爆)。

 ソニンマルグリットは、今期はそう感じるのですが、マリーを王妃として認めてはいるんですよね。貴族がマリーを王妃として認めていないのとは逆に。憎しみの対象であるけれど、それは貧しさといった現実から目を背けていると思っており、マリーの存在や行いが「皆の貧困の唯一の原因である」と信じ込んでいるから。ソニンマルグリットの瞳は、それしか目に入っていないかのような怖さを感じたりします。

 1幕ラストに向けて動き出す世の中で、マルグリットがマリーに放った「余所者の王妃」という言葉に、マリーは心の鉛を射抜かれたかのように、動揺を隠せないほどにショックを受けていて。自分を必死に保とうとしている玲奈マリーの姿は、ソニンマルグリットとの関係性だからこそだなと。玲奈マリーは昆マルグリットに対してはここまで動揺しないのは、どこか「手のうちに入れている」面を見せている印象があるのですが、ソニンマルグリットのパワーはその「仮面」を剥がすほどのマグマがあるんですよね。

 その関係性を見て、改めて感じさせられたのは、国王ルイとマリーアントワネットの立場の違い。過去の作品よりはるかに、両者の関係は良好なゆえに、同じ立場と思い込んで見ていてしまったのですが、実のところ立場は全然違うんですよね。

 国王ルイは、生粋の王族であり、自らの立場が国民によって覆されることがあるなど、露ほどに思ってもいないのに対し、マリーアントワネットは他国から輿入れしてきた「余所者の王妃」。
 旧来の貴族の慣行にことごとく反旗を翻したことから貴族からも敵視され、民衆からは贅沢の象徴として嘲笑の対象となり、限られた味方しかいない中「孤独のドレス」を纏わざるを得なかったマリーアントワネットの立場は、実のところ、脆弱で崖っぷち。

 だからこそ、首飾り事件で軽はずみな行動をしたことで、さらに信望を失い、王家の威信に傷をつけていく、そのさまが、マリーアントワネットが「わがまま」だったからではなく、「攻撃に対して反撃せざるを得なかった」立場だったからと考えると、納得がいくものがあります。それでいて、結構、玲奈ちゃんは過去、勝気な役が多いというのもあって、ドレスを纏っても、戦闘モードになるとやたらと攻撃力強いみたいなところ(笑)がありますから。蛇のシーンからの反撃は何度見てもワクワクします。

 ぶつかり合ったマリーとマルグリットも、マリーの最後のシーンで、倒れ掛かったマリーに、マルグリットは手を差し伸べます。
 再演ではここは、マリーが自らの足で立ち上がるまで、マルグリットは手を差し伸べるだけにとどめていて、再演版の大好きなシーンですが、これは、マルグリットがマリーを王妃として認めていたからこそなのだろうなと。革命は、マリーを王妃としてではなく、ただの人間として葬りたかったけれども、マルグリットにとってそれは違和感でしかなかった。

 マリーが自らの罪を認めながらも、王妃として生きた様は堂々と主張したさまを見たマルグリット。玲奈マリーの裁判のシーンの威厳はいつ見ても圧倒されるのですが、それを目の前で見たからこそ、そして「マリーが王妃として生きるために払った代償」を知っていたからこそ、マリーの、「王妃のまま死なせてほしい」という願いをかなえたマルグリット、ということなのだろうなと。

・・・

 本編で正面からぶつかり合った玲奈マリーとソニンマルグリット、カーテンコールになると、すっきりしたように笑顔な玲奈マリーと、本編引きずってもやもやしてるソニンマルグリット、というのが対照的で、なんだか可笑しかったのでした。

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