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『Play A Life』(5)

2021.1.24(Sun.) 18:30~19:50
渋谷ヒカリエホールA(配信)

配信ではありますが、今年の観劇初めはいろいろな経緯が重なってこの作品になりました。

TipTap再演。
今回は劇場に向かうか配信か迷いましたが、日程上の選択肢が少なかったことと、アーカイブが残らないことの理由で今回は配信を選択。
2チーム制のうち、白猫チームのみを拝見しました。

その大きな理由は、3人芝居の最若手・黒沢ともよちゃん。

かつては『モーツァルト!』の子役・アマデとして絶賛され(素晴らしい存在感でした)、人気声優となってからも最近は舞台にも積極的に出演。残念ながら去年は中止になってしまいましたが、ミュージカル座『ひめゆり』のヒロイン・キミを務めた様(2019年)も素晴らしかったのもあって、今回はぜひ拝見したかったのです。

教師である男性、そしてその奥様(元教師)、男性を指導員として仰ぐことになる教育実習生、という3人芝居ですが、この作品は教育実習生の芝居で大きく左右されると思っていて、とても期待していました。

正直、期待以上の出来で、もう少し日程があれば配信後、劇場にも伺いたかった!(今更の後悔)

配信で見ていて新鮮なのは、「いま何分地点なのか」が分かること。
この作品は80分ですが、まさに「起承転結」を20分単位でやっているんですね。
男性と奥様との今の関係性が見えて、そこに教育実習生が能動的に関わりだす「結」がまさに60分地点。
その「感情の山」の作り出し方が、本当に上手い作品なことを改めて感じました。

期待してたともよちゃんは期待以上。
何といっても教育実習生としての暴走っぷりが凄すぎて、我を忘れて、いや、我が忘れられて(笑)る感じを、わざとでなく感じさせるさまが流石すぎです。でも、一生懸命なのはわかるから、そりゃ中井さん演じる指導員も、「そのままでやって」というしかないという(苦笑)。
ちょうどぴったりな背伸びが愛おしくて、「頑張れ!」と自然に思わせてしまう愛され力は、ともよちゃんさすがです。

奥様役の仙名さん、最初のシーンは(初演の木村)花代さんかと思うぐらいそっくりですが、いい意味で押しが強くなくふんわりしていて、ピンクが似合うあたりが、流石は(宝塚花組元トップ)娘役という感じ。現役当時から芝居心には定評がある娘役の方でしたが、退団後も、そう大きく補正されなくても、女優さんとして演じられる(ように見える)のが凄いです。特に前半の柔らかい曲で醸し出す雰囲気は素敵です。

現役教師を演じる中井さんは、今まで拝見したこの役の他の方より、アウトロー感が低いというか、「役者を目指していた」感を一番感じます。不器用感がちょうどよくて、優しいからこそ自分の道を強く選べないさまに説得力があって。包容力ある同士の仙名さんとの関係がとっても温かくしっくり。

TipTap作品って、色々な作品のテーマはありますが、大きな一つの要素が「男性の弱さ」だと思っているんですね。で、それを決して「悪い」とは言わないけれど、「そのままでいい」とも言わないんです。
男性が悩むことも、立ち止まることも、それも当然にあることで、そして、自分から動けないことが男性である、ということもわかってる。

その「男性だからこそ動けない部分」を、優しく、時に強く背中を押すことが、TipTap作品のヒロインの女性の一つの形だと思っていて、「男性を責めすぎず、でも踏ん張るべきところは『自分で』足を踏み出させる」ことに意味があると感じているのではないか、と思っています。

それなら2人芝居で良いのでは、と思ってしまうところですが、実のところ2人芝居だと、袋小路に入った時の展開が難しくなるので、両方に関係する3人目がいることで物語が動かせるという、この作品の上手な妙味が生きてきます。

今回の白猫チームで教育実習生役を演じた(黒沢)ともよちゃんは、その自分の役の位置を完全に把握してて、指導員である男性と、恩師である「男性の奥様」との距離感を絶妙に詰めていきます。

この作品の面白いのは場面ごとにペアと第三者が入れ代わるところ。
片方の関係では意味を持たないことが、もう片方の関係では大きな意味を持って、しかもそれが別のシーンにつながっていくところ。
何の気になしに話していた男性と教育実習生との会話をもって、男性が奥様との関係を思い出したりするところが実に巧みに組み込まれていて、自然に引き込まれます。

そして、この作品で素敵だなぁと感じるのは、誰もが一方的に教える立場でも、教えられる立場でもないこと。

それぞれが教えて、教わって、心が動かされる。
それが「生きる」意味だと思えるから。

「教師」は教える人というだけでなく、教わる人でもある、どこかで聞いたそんな言葉を反芻させてくれるかのような物語の様が、とても素敵で暖かく感じられたのでした。

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