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『むこうのくに』

2020.7.23(Thu.) 14:00~16:40 配信

2020.7.26(Sun.) 20:00~22:40 配信

 完全配信の「劇団ノーミーツ」の新作公演。といってもこれまでの作品は拝見しておらず、今回青山郁代さんが出演(Wキャスト)ということで、初日公演を拝見しました。

※さきほど千秋楽が終わりましたが、追加公演(8月1日・2日)が決まりましたので、まっさらでごらんになりたい方は回れ右をお願いします!
ネタバレを含んでいます。

 仮想世界「ヘルベチカ」に「友達を見つけたい」という思いで入っていく主人公のマナブ。現実世界で友達がいない彼にとって、仮想世界で友達を見つけるのはそう容易いことではなく。

 そんな彼に人懐っこく絡んでくる女の子・スズ。2人の間には、どことなく仲の良い雰囲気が生まれつつも、突然彼女はヘルベチカから消えてしまう。
 消えた彼女の本意はどこにあったのか、マナブは再びスズを見つけ出せるだろうか。

 主人公のマナブが、ヘルベチカに自ら作ったAIを投入した…という時点で何となく感づいてはいましたが、なるほど、そういうことだったのですね。

 AIというのは言葉だけが先行する典型的なものであったりして、それだけに映画で「AI暴走」みたいな捉えられ方をしますが、基本的には「与えられたデータを解析して方向性を見つけだしていく仕組み」を指すので、この物語のAIの扱われ方を見たときに、あぁ、彼は優秀なAI作者だったんだな、と感じました。

 AIで作られた「女の子」は、主人公の意思をしっかり読みとって、主人公が想像しないような、でも主人公が本当に望んでいた未来を作り出した。

 それは、作者が「本当に望んでいたこと」をAIにインプットできたからこそ得られたものだと思うのです。

 女の子役を演じられた尾崎由香さん、声優をメインに活躍されているそうですが、笑顔もチャーミングで、人懐こく、心閉じていた彼の心を開かせるのも納得です。

・・・

 もう一つの物語が、サイバー空間を現実空間同様にコントロール下に置きたい意思を抑えきれない、政治家・綾小路役をWキャストで青山郁代さんが演じ、その政治家の秘書・氷室という男性がペアで「別世界」の空気を醸し出します。

 現実空間を生きていて、ある意味社会を「支配」する立場からすれば「むこうのくに」である電脳空間は、畏怖する存在でしょうし、そこに対して楔を打ち込まんとする行為というのはあり得そうな物語ですね。

 志高く意思を語る女性政治家・綾小路役の青山郁代さんは今までにない役どころ。今までだと、サイバー犯罪を取り締まる女性刑事の役の方をやりそうな印象がありますが、なかなかはまっていて、それでいて自らの信念に迷い悩む辺り、その繊細さは(意思を実現するという点において)政治家にとっては弱点だったのだな、というのを見せて流石でした。

 オンラインで(自身の)芝居は変わるか、という問いに対して、郁代さんは「あえて全く変えない」と仰っていて、だからこその存在感であったと思うのですが、「オンライン演劇」といえど、「オンラインであることに無用な優位性を(少なくとも)芝居上に持ち込んでいない」のは流石と感じました。

 「舞台に生の迫力は不可欠で、それは劇場でのみ実現できる」、という考え方は今回のコロナ禍の中で価値観が揺らいだ大きなものだったと思うのですが、そこで劇場を否定するのではなく、オンラインの可能性を突き詰めることで、見えてくることは多かったように思えて。

 オンラインの場に、劇場で技術と心を磨かれてきた郁代さん、そしてキャラメルボックスの鍛治本さんといった「芝居のプロ」が入られていたことで、より意味のある試みになったのでは、と感じさせられました。

 役者と脚本、それぞれに「伝えたい思い」と「伝えたい技術」があってこそ、物語は伝わるのだと改めて感じたのでした。


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