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2020年5月

最近思うこと。

すっかりご無沙汰です。

舞台観劇がなくなってからはや2か月。

私の観劇日程上は、2月29日日生劇場『天保十二年のシェイクスピア』から始まった中止。
3月になると本格化し、多くの中止を経て、3月20日池袋BIG GREEN THEATERのミュージカル座『スター誕生』が現時点で最後の観劇となっています。
3月で観劇できたのは4作品。ミュージカル座『ロザリー』(綿引さやかさん)4回、地球ゴージャス『星の大地に降る涙』(笹本玲奈さん)1回、ミュージカル座『スター誕生』(大胡愛恵さん)1回、そしてライブの『one on one Live』(岡村さやかさん)1回。

そして5月15日現在で延期・中止が決まっているものは18作品54公演。

そのうち、宝塚大劇場公演で見られた雪組『ONCE UPON A TIME IN AMERICA』、1度は見られた『天保十二年のシェイクスピア』、『星の大地に降る涙』は何とかなりましたが、以下の作品は見ることができませんでした。

・『ホイッスル・ダウン・ザ・ウィンド』
 (3月、生田絵梨花さん)
・『リトル・ショップ・オブ・ホラーズ』
 (3月、井上小百合さん)
・『ボディガード』(3~4月、新妻聖子さん)
・『CHOICE』(4月、大胡愛恵さん)
・『Violet』(4月、唯月ふうかさん)
・『EDGES』(4~5月、綿引さやかさん)
・『アイ・ハブ・ア・ドリーム』(5月、岡村さやかさん)
・『WEST SIDE STORY Season3』(5~6月、夢咲ねねさん)
・『ミス・サイゴン』
 (5~10月、青山郁代さん、松原凜子さん)

前者3つは1週間以内ではありましたが、3月20日頃から28日頃まで、わずか1週間の間のみ公演で、その期間は仕事の繁忙と諸々の疲れで観劇できず、週末を待ったところ3月20日頃の三連休で一気に環境が悪化し、土曜日から相次いで劇場閉鎖となり、再び見る機会が訪れることはありませんでした。
ちなみに、チケットの払い戻し手続きは大体半分ぐらい完了しましたが、現時点で払い戻し済みの金額合計と、今後払い戻し予定の金額合計が、それぞれで特別定額給付金の金額を超えております(爆)。

ICカードリーダライタまで買ってオンラインで申し込んだんですが、郵送より遅れるそうですね(笑)。

・・・

コロナ禍の中、明るい情報よりも気が滅入る情報が多く、改めて、観劇はじめエンタメは自分にとって大きかったんだなぁと感じます。とはいえ、先行きが見通せない中、あまりまとまった形で見かけない、『観劇する側から見た今後の演劇』に対して、色々感じていることを書いてみたいと、久しぶりにblogを書いています。


■インスタライブほか、配信花盛り

4月下旬あたりから急激に増加したのが、インスタライブをはじめとした動画配信。
インスタライブであれば1時間で強制切断ということもあり、日によっては1日いくつものインスタライブを梯子することになったりして、無茶苦茶忙しくなることも度々(笑)。インスタライブは2人までならコラボ(共同配信)もできるので、交友関係も垣間見れたりしてなかなか面白いです。毎日必ず配信している原田優一氏(15時~、インスタライブ)は凄いですよね。
人によってされない方もいらっしゃいますが、アーカイブ保存していただくとありがたい限り。24時間以内しか見られませんが、実は皆が在宅勤務になっているわけでもなかったりするので、昼間の配信分についてはある程度保存していただいた方が気持ち的には有難く思ったりします。


■動画配信、相次ぐ
普段はネットでは見られない舞台作品の動画配信も相次いでいます。TipTapさん、ミュージカル座さん始め複数の配信がされていますが、気にかかるのは配信が基本的に無料配信であることです。
有料配信だったのはconceptさんで、有料配信プラットフォームの貸し出しもされていたりして、おそらく今後はいかにして広い範囲から課金して収益を上げるか、という段階に入ってきているように思います。

良きにつけ悪しきにつけ、限られた人が見るという演劇の世界に比べれば、例えばアイドルの世界や声優の世界だと、課金ということが少額でラフに行われている傾向があります。SHOWROOMの投げ銭だってそうですし、ゲームの推し関連アイテムとなれば、スマホ連動の課金がかなり容易になっています。
今回のことをきっかけに、今まで舞台を見なかった人に見てもらうような試みをして裾野を広げておき、再開した暁には劇場に新たな層を呼び込むことが必要なのではと感じます。


■動画は見るかというと
ただ、その相次ぐ動画配信を見るかといわれると、実はそのハードルって結構高いんですね。
劇場で舞台を見るのは2時間3時間気にしなかったのに、家で見ると同じ時間集中するには、いろんな雑音(音というより視界に入るもの)が多すぎるんですね。劇場に入れば、その時間はスマホも切れるし、携帯も切れる(切らない人は何でそのメリットを感じないのかよくわからない笑)。もともと物語に没入しようという「意思」を持って行っているから、意識が散逸しない。
それに比べると、家で見るのは存外にハードルが高いんだなぁと思うわけですが、思いつくもう一つの理由が、「舞台映像を見ると、『舞台をやっていない』現実を否が応でも思い知らされる」のが辛いんじゃないかなと感じています。普段は「劇場に行って非現実に浸っていた」のに、今舞台動画を見ると「劇場に行けない現実を知らされる」のではないかな、と思ったりします。


■舞台を再開するには-全国ツアー公演の弱み
空前のミュージカルブームと言われた2020年ですが、どの作品も中止になっているとはいえ、目立つのは、長期間の作品、いわゆる全国ツアー公演を行う作品が、かなり早い段階で中止になっているということです。東宝作品だけでも『エリザベート』『ミス・サイゴン』『ジャージー・ボーイズ』等々。

基本的に東京公演を1か月単位で行い、その演出とセットを基本的に移動させることで行っている全国ツアー公演ですが、今回のコロナでは「都道府県をまたぐ移動を極力避けるよう」が大きなウィークポイントになってしまいました。キャスト、スタッフそしてお客さんの安全をどう担保するか。他地方から公演地に感染者を持ち込んでしまったら、興行元は地方主催者に対して大きな損害を与えてしまいかねず、興行元としてもそのリスクを許容できなかった、ということなのでしょう。


■舞台を再開するには-海外スタッフの存在
今回のコロナは全世界的な感染症であるために、海外が権利を持っている輸入ミュージカルにあたっては、かなり多くのスタッフを海外から招かざるを得ず、これも全国ツアー公演作品の大きな弱点となりました。
海外から持ち込まれた場合、もしくは日本から持ち帰った場合、どちらも大きな問題になることは間違いなく、一国・一興行主・一作品だけの問題ではない、高度な判断が求められたということになります。
公演前2か月の時点で多くの作品が中止になっているのは、具体的な準備に入れないからということが大きいということのようです。


■舞台を再開するには-演者内のリスクとは
当初はあまり言及されていなかったことでようやく認知されだしたのが、稽古や本番における役者同士の空気の共有です。『ミス・サイゴン』の某出演者が「この作品は濃厚接触のミュージカル」と言っていたことは言いえて妙で、他作品の演出家さんですは「今までのように(距離が近い)ラブシーンは難しい」と言及された方もいらっしゃいます。

また、5月14日に公表された業界団体(全国公立文化施設協会(公文協))による「舞台再開ガイドライン」に記載された「(演出上困難な場合を除き)マスク着用が望ましい」という表現は、「そんな姿を見たいと思う人がいるのか」という類の、かなり強めの反発も見られます。

ただ、この表現は「舞台を行うにあたって『必要な対策を講じていた』と説明できるレベルでないと、キャストもスタッフも、もちろんお客も安心して舞台を見ることができない」という前提をきちんととらえる必要があると思います。

舞台好きにとって、大好きな舞台を見られないのは辛いことです。でも、無理矢理に「舞台を開く」ことを目的にし、リスクを見て見ぬふりするのであれば、それは安心して見ていることはできないし、心から応援することはできないように思います。

ただでさえ、コロナに関しては見えていないことが多すぎ、感染すれば、完治しても肺に『舞台の特性上必要な技術』の点で元に戻らない可能性もある(スポーツ選手について言及されていましたが、歌唱や台詞などについて、役者さんも似ている部分があると思います)となれば、一時の焦りで再開を早まるべきではない、と思います。


■舞台を再開するには-客席の座席配置について
もう一点強く反応があったのが、いわゆる客席のソーシャルディスタンス対応という、販売客席の間を空ける手法で、すでに映画館ではこの方法が多く取られてきました。ですが、それを遵守すると収容人員の15%~20%ぐらいしか入れられず、現実には開催するだけ赤字、という状態になります。

この点についての公的補助の要請は今時点では聞いていませんが、「Go To Theater」施策として、販売できない座席について原価ベースでの補助(もしくはそれに相当する会場費用の負担)を働き掛けてもよいのではないかと思います。

舞台・イベント関係は2月末から、他業態に先駆けて自粛をしたものの、その費用は全く補填されていません。「あくまで要請にすぎないので休業補償は行わない」という政府に逃げを打たれてしまうと、それに反駁する有力な理由を出せずにいます。

座席配置の間引きをしたうえで再開するのであれば、前提として補助に類する政策の保証を受けたうえで採算計画を立てるべきと考えます。


■舞台を再開するには-新しい作品を作る余裕があるか
2月末以降の公演の中止に関しては、基本的にすべての作品でチケット代の払い戻し(興行元によっては手数料・送料も含めた払い戻し)を行っており、興行元の損害は甚大なものがあります。生じた損出についてクラウドファンディングを募るケース(ミュージカル座、わらび座さんなど)も出ています。

現実、作品を1つ上演したその収入を持って次の作品の制作費に充てていたケースも少なくないとみられ、次の作品が制作できない、ホールの使用料のキャンセル代が少しでも少ない段階で中止を決断せざるを得ない状態もあると聞きます。

稽古に入れず終わった作品もあれば、稽古はやったが本番ができなかった作品、本番の公演が予定通りに打てず回数を減らした作品、それぞれ様々な事情があります。

ただ、次の作品を作る金銭的な余裕がないことを考えると、現実的にありうるのは、「公演を予定していた作品をスライドして公演する」ではないかなと。権利関係を(この非常時なので)ある程度そのまま引き継げると思いますし。(一部作品では再演の可能性を検討し始めているという話も聞きました。)

スライドの期間は興行主によって違うでしょうし、現時点で知る限り一番短いスライドは6か月(ミュージカル座さんの『アイ・ハブ・ア・ドリーム』が5月中旬から11月上旬へ)。一般的には1年スライドが現実的な線でしょう。

ただ、1年延長された東京オリンピック・パラリンピックが実施できるかどうかはワクチンが開発できるかにかかっている、ということと全く同じ問題点を抱えます。「感染している人かどうかが確認できない」というコロナの特性も、この問題を難しくしています。

各興行主が足並みをそろえてスライドすれば、キャストさん、スタッフさん、劇場もそのままスライドできますが、現実にはすべてそうなるわけではないので、改めての調整となるでしょう。


■舞台を再開するには-ガイドラインは貴重なたたき台
前述した「舞台再開ガイドライン」は原文こちらを読むと、かなり多方向に微にわたり細にわたり記載がされていて、舞台側の立場も、社会側の立場もそれなりに踏まえて書かれています。少なくとも「理由をつけて舞台を止めさせよう」などというものでは決してなく、「いかにしたら舞台をやれるか」ということに対してリスクを抽出した文書に読めますので、その『思い』は大切にすべきではないか、と思います。

・表面上、症状が出ている方は入場不可
 この点については、「払い戻し可」をセットにすべきと考えます。劇場のリスクを減らすためには「調子が悪ければ払い戻しできる」というのはリスクの回避費用として必要なものと思います。

・稽古場、舞台上でのキャスト、スタッフの「三蜜」対策

・入場者のトレース(連絡先の確保)による万が一の時の感染調査ルートの可視化

この3つを最初にやろうとしているのは、今のところ6月下旬から再開予定の劇団四季さん。何作かの新作は断念し、実績のある既存作に限定して作品を間引き、稽古場の蜜を防いでいるとのことですので、それが新しいスタンダードになることを願っています。

東宝さんは海外・全国ツアー公演が多く、おそらく今年内は身動きが取れませんし、宝塚さんは2月~3月に一時的な公演再開が少し早かったという理由だけで最前方でかなりの非難を浴びており、なかなか先陣を切ることは難しいと思いますので、動向を見守っていきたいと思います。

その時に大事にしてほしいのは「なぜこうしなければならないのか」のきちんとした共有です。
興行主の都合だけでなく、キャストとスタッフ、お客さんを守るために、舞台を守るために必要であるという説明と、その理由をきちんと説明すれば、まさに同じ方向を向いて乗り越えようとしてくれるはず

人を動かすのも、舞台を動かすのも、「言葉」「思い」だと信じています。

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