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『(愛おしき)ボクの時代』(1)

2019.11.16(Sat.) 17:30~19:45

DDD青山クロスシアター

D列10番台(センターブロック上手側)

トライアウト的要素を取り入れた企画のプレビュー1期2日目の夜公演。

今回の企画は西川大貴さんが脚本・演出、スーパーバイザーに前期『ミス・サイゴン』の演出補ダレン・ヤップ氏を迎えて、プレビューを経て作品をブラッシュアップしていく、ということで公演前から興味をもって見ていました。

オリジナル作品で、若者たちの感情を描くということでしたが、若者たちと若者以外の世代との対比のバランス感を掴みかけていて、色々考えさせられる作品、というのが初見の感想。

主人公は広告代理店の若手リーダー格で、伊豆のとある街の町おこしを映画祭で行なう企画を持ちかけられるも全く気乗りせず、メンバーも色々思う気持ちはありそうだけれども、リーダーの前では押し黙る。
なぜなら、主人公の父親が社長で何を言っても無駄だと思っているのですね。

まずは町を見なくては、と向かった先でパラレルワールドに巻き込まれ、メンバー含めるとまるで桃太郎のようなグループに…という流れどっかで見ましたな(地球ゴージャス『HUMANITY』にそっくりです)。

若い彼(戸越)が「自分は何者にもなれない」と焦りもがく様が、「ボクの時代」を作るためのプロセス。

私見では「30歳直前になって未来に焦る」という点でTiptapの『Count Down My Life』に似た空気感を感じました。

その物語の中で存在感が大きかったのが、上田亜希子さんと岡村さやかさん。このカンパニーの女性陣でキャリアが飛び抜けたお2方が、説得力抜群の存在感で魅せていました。

上田亜希子さんは主人公の母親役ほか1役ですが、いずれも主人公を「叱咤激励」する役どころで、本当の愛情を役ごとに変えたベクトルで注いでいて印象強かったです。歌のど迫力も流石です。

岡村さやかさんは、1幕板付きで、さやかさんの歌声から舞台が始まりますが、そのままセンターで皆でダンスするので、舞台作品としては初めてといっていいほどのダンスが新鮮です(ダンス公演で踊ったことはありますが)。

2幕後半、とある人物を見初める眼力と、彼に対して黒さを隠さない”いなし”方がさやかさんらしくて(笑)、流石です。

お2人ただ者じゃない上手さを見せるのは正に「経験」の賜物で、お2人の説得力あってこそ、若い役者の皆さんも全力を出し切れたように思えて。

ともすれば、若ければ経験を軽視しがちだし、年をとれば経験を無視する若手を嫌悪しがちだけれども、厳然として、経験でしか出せないものというのは確かに存在するもの。

偉い人がすべて正しいわけじゃないし、若いから何をやってもいいわけじゃない。

個人的な感覚ですが、今の若い世代の感性って鋭いと思っていて、「何となく良い」「何となく悪い」という感覚って、そうそう正解から、ずれていないのではと感じています。

ただ、言語化して説明する力は弱いのかなと感じていて、この主人公をはじめとした若手が「どう感じて考えているかを言葉で表現することができない」というのは分かる気がします。

そんな若手の人たちが、パラレルワールドでの経験を通じて自分で考え、自分の言葉で自分の思いを発信して、自らが囚われていた(と思いこんでいた)糸から抜け出そうとする様は頼もしくて。

日本でのミュージカルはどうしても輸入物がメインで、契約時点でできることがそもそも限られていたりして、だからこそ日本発のミュージカルで作り上げていくということには賛同しますし、劇中で語られる「制約」はそこともリンクしているようにも感じられました。

演出の西川さんとスーパーバイザーのダレン氏への印象だと、それぞれの演者さんにやってもらって、いいものを採用していくイメージがあって(ダレン氏は元々サイゴンのトゥイを演じていた役者出身の方で、玲奈ちゃんも尊敬する演出家さんの筆頭に挙げられています)、それがこの作品の何ともいえないエネルギーの強さに繋がっているように感じます。

何となく、ある程度の年齢に達するとこの作品に対して負の感想を持つ人もいるのかなと感じましたが、経験の中で残していくべきものと、若さから取り入れるべきものとを、より分ける眼力は西川さんは持っていると信じています。

そして、できない言い訳をするより、できるように努力することの方が生産的と信じていますので、若いカンパニーの皆さんが自身の「正しい『と思う』道」に向かって邁進され、皆さんの力と観客からの視点で、この作品が更にブラッシュアップされることを願っています。

この後、プレビュー2期と本公演でそれぞれ1回拝見する予定です。

どんな感じに変化するか、楽しみです。

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