« 『私の頭の中の消しゴム』 | トップページ | 『Before After』(14) »

『はい、丸尾不動産です。~本日、家をシェアします~』

2019.6.29(Sat.) 18:00~19:40
ABCホール(大阪・中之島)F列1桁番台

今年2回目の大阪遠征(1月の『マリー・アントワネット』ぶり)は、こちらの舞台。
青山郁代さん出演です。

関西テレビさん製作で、大阪のみの舞台ということもあり、遠征しようか一瞬だけ迷いましたが、「大阪人の郁代ちゃんがどういうポジションになるのか」めっちゃ楽しみだったので、来て大正解。むっちゃ笑いました。出演者に気づかれるほどに(笑)。

この日の昼は、東京でチケット難だった宝塚雪組『壬生義士伝/music revolution』を初めての宝塚大劇場で観劇してから、G20最終日の大阪の街を突っ切って、これまた初めてのABCホールへ。この2作品をマチソワした人は他にいないだろうな(笑)、な凄まじい振れ幅でしたが、どっちも正にプロの仕事、素晴らしかったです。

・・・

この公演は土曜日初日、月曜日楽という5回公演で、なんでこんなに短いのかと思っていたのですが、W主演の兵頭さんと吉弥さんが平日昼のレギュラー番組をお持ちだからなんですね。こういう感覚が大阪人じゃない人の限界なんですが(爆)、そのW主演のお1方、兵頭さんが不動産屋さん(菅谷さん)で、その不動産屋さんが管理するシェアハウスに入居希望でやってくる元エリートサラリーマンが吉弥さん(林田さん)。ただ、そのシェアハウスの住人はいずれも曲者ぞろい。

自称”ミュージカル女優”の亜美(青山郁代ちゃん)、自称”未来の弁護士”の沢田(三好大貴さん)、菅谷さん曰く”唯一の常識人”の守屋(宮下雄也さん)、そして自称”いい子ちゃん”の薫子(高岡凜花ちゃん)という4人がシェアハウスの住人。

…なんですが、林田さんがそのシェアハウスに見学にやってきて菅谷さん不在、という状態で、それが当たり前の如く歌い出す、自称”ミュージカル女優”な亜美ちゃん。当たり前ですが歌上手いです。知ってますが(笑)。

この作品の演出の木村淳さんは以前『それいゆ』で郁代ちゃんはご一緒されていますが、その時の役の凛としたイメージと一欠けらも一致しない亜美ちゃんの役どころの凄さに笑います。

興味深いのは「ミュージカル女優」という役どころが、数年前に比べて市民権を得ているので、「どういう人?」という説明があんまりいらなくなっているんですよね。昔ほど「変わった人」と見られなくはなっているけど、でも、やっぱり「いきなり歌い出す」を初めとして、多少「変わった人」要素が残っているので、エピソードを作りやすいという。

ピンク一色の派手な衣装で歌い踊りまくる様に圧倒されながらも、役柄上「『自称』ミュージカル女優」となっているところの理由がだんだん見えてくる様が面白いです。歌上手で、売れても不思議はないはずなのに、それでも売れずにスナックで働いて稼がなければどうにもならないのはなぜか。

自信いっぱいに振る舞っているけども、売れない現実と向き合わざるを得なくて。同じ劇団に入ってきた(年下の)凜花ちゃん演じる薫子の(輝いた)存在を受け入れることなんかできなくて、周囲に気づかれるほどに薫子に対して嫉妬して虐める亜美。そんな亜美に対して反発するでもなく、純粋に疑問を投げかける薫子を見ていると、「絶対に敵わない」としか思えないだろうなぁ。

どこまでミュージカル女優あるあるなのか分からないけど(大阪の舞台なので同業の方はほとんど見てないと思うので)、郁代ちゃん、よくこの役を受けたなぁと思いながら見てました(爆)が、逆に言うとこの作品のテーマである「他人を羨むより、自分を上げないと」というポジションに既に辿りついているからこそできる役、見せられる役だと思えて。きっとそれが、大阪からミュージカル女優を目指して上京した郁代ちゃんの10年間の経験がなせる業なのだろうと思えて、嬉しかったです。

一部では有名ですが、郁代ちゃんが就職活動当時、アナウンサー試験を受けたうちの一つがこの関西テレビさんなんですね(アナウンサー試験受けてたのは知ってましたが総合職も受けてたのは初めて知りました)。それを言える立場(&気持ち)になったのって良かったなぁと。

適度に痛々しくて、適度にずれてて、適度に売れてない役どころから、いかにして自分を変えていくか。

自分だけでは抜け出せないトンネルから抜け出すときに、”シェアハウス”という、人と人とが「少しだけ」密着している空間でいることが、”気づき”をくれて。

演出の木村さんも書かれていますが、このシェアハウスの住人は「過去から目を背けたい」「現実からも目を背けたい」「未来からはもっと目を背けたい」人たちばかりなんですね。それは、とある事情でこのシェアハウスにやってきた林田さんでさえ同じ。

「自分は頑張ってる」「周りが認めてくれない」「自分は間違ってない」...

郁代ちゃん演じる亜美の台詞にある「承認欲求」と言う言葉、そして凜花ちゃん演じる薫子の問いかけにある「幸福はどうすれば掴めるか」はリンクしているように思えて。

他人から、社会から自分がどれだけ認められるかは誰かと比べるようなものでもないし、それこそ兵頭さんがいみじくも語っていた「幸福は上を見ればきりがないし、下を見たって仕方がない」、だからこそ「自分なりの幸福を、他人に振り回されすぎずに得ようとしていくしかない」というこの作品のメッセージはすごくしっくりきて。

「家」を舞台にしつつも、実は家に集まる「人生」を紐解くストーリーはとても新鮮で。「家族」だとどうしても物語が縮こまってしまうのに比べて「シェアハウス」を舞台にしたことで、種々多様な人を集めて物語を展開できた、素敵な作品でした。

この作品はシリーズ化ということで、11/30-12/2に第2弾「本日、家に化けて出ます」が公演予定です。
兵頭さん、吉弥さん以外は別メンバーかな。

|

« 『私の頭の中の消しゴム』 | トップページ | 『Before After』(14) »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 『私の頭の中の消しゴム』 | トップページ | 『Before After』(14) »