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『Before After』(13)

2019.5.18(Sat.) 19:00~21:20
渋谷J'z Brat

初めてのコンサートバージョンでの開催となった、
『Before After In Concert Vol.1』。

ミュージカル座さんの作品としては異色の少人数、2人ミュージカル『Before After』のコンサートバージョン。

日本初演は2014年11月で、今年11月で上演5年を迎えることを記念してのコンサートで、この後Vol.2が6月に天王洲で、Vol.3が8月に南青山で開催されていることが決まっています。

この日のペアは、ベンが上野聖太さん、エイミーがRiRiKAさん。
本公演ではBAではお馴染みの吉祥寺・スターパインズカフェで2016年2月にたった2回出演されたペアです。

この作品は2016年夏にクラウドファンディングでCDが製作されていますが、この日のセットリストは基本的にそのCDの収録曲・収録順そのままに構成。

大好きな作品であるBA、そのコンサートバージョンとして拝見して思ったのは、意外な感情で。

この作品はミュージカルで、そして当たり前のことに歌で物語が紡がれていくわけで、そしてどの曲も素敵な曲なのはわかっているのに、でも1幕は正直言ってしまえばかなり混乱したんですね。

思うに、作品ファンであり、またこの日のエイミーを演じたRiRiKAさんのファンでもある自分から見ると、視点が拡散したのが理由かなと。

かつて付き合っていたベンとエイミーが、お互いの気持ちの行き違いによって別れて、思い出の丘で再び出会った2人。でもベンは記憶喪失によりエイミーのことを全く忘れていて、ベンを忘れられないエイミーは再びベンとの物語を紡ぎ始めようとする物語。

この物語は記憶喪失の前(Before)と後(After)を行き来しながらベンの感情、エイミーの感情、そしてお互いの感情の噛み合い・噛み合わなさをあたかもジェットコースターに乗るかのように共有することに醍醐味があるのですが、だからこそ、そこに演じる本人の感情が入ってきてしまうと、見ている方としてはもはや消化しきれなくなっちゃうんですね。

今のシーンが「Before」か「After」かは、本公演同様にバックのセットに表示されるんですが(席によっては見えないことがあったそうですが)、MCに関しては「エイミー」と「RiRiKA」のランプが欲しいぐらいの振れ幅で(笑)。

この日は2回公演で、マチネを踏まえてのソワレだったはずですが、1幕は「(RiRiKAさんが)MCもあくまでエイミーとして回す」ということにきちんと徹しきれてなかったように見えました。(RiRiKAさん本人も、MCで「自分の感想を入れるとエイミー(のあるべきポジション)と違ってしまう」と仰っていたので、意識はされていたようですが)

2幕ではきちんと修正されていて、2幕のエンディングは本編同様に、感動を強く感じられて嬉しかったです。

1幕のMCで「RiRiKAさんとして」仰っていた話として、「コンサートの第1弾がなぜ自分たちなのか(笑)」というセルフのツッコミ(笑)がありましたが、「歌先」で考えたときに、歴代のエイミーで名前が挙がるのはRiRiKAさんか、準レジェンドの岡村さやかさんか、どちらかと思います。

ただ、(岡村)さやかさんはエイミーとしての登場回数・共演したベンともに多いので、BAの世界と強く結びついていて、コンサートとはいえ、この作品との付き合いの長さが自然に見えてしまうのかもしれません。

歌で紡ぐ作品とはいえ、実際に歌だけで(正しくは曲を間引いて)繋いでみると、そこには表現されにくいものが出てしまうというのは、歌にパワーがあるRiRiKAさんのエイミーだったからこそ強く感じさせられて。

埋め切れなかった余白をどう感じていただくのかが、Vol.2以降の課題ではないかと思います。

この日、会場のJ'z Bratおなじみのスペシャルカクテル、そのノンアルコール編として登場していた「Dr.ジョナサン・テート」。

「Dr.ジョナサン・テート」は今回のセットリストではエイミーが頻繁に電話をしていた相手としてしか登場しないので、RiRiKAさん曰く、マチネを見たお知り合いから、「(ジョナサン・テートと)浮気していたんでしょ」と言われて(爆)、ソワレでは弁解MCが加わっていました(笑)。

エイミーがベンと同居するにあたり父と疎遠になっていたものの、父にガンに見つかり、父の主治医であるジョナサン・テートと頻繁に連絡を取っているエイミー。そのエイミーの携帯電話をベンが観て、修羅場に次ぐ修羅場の末の別れになるわけですね。

そこに「他人の携帯電話覗くなんて最低ですよね」とか「やけになって飲酒運転とか最低ですよ」とか”RiRiKAさん”としてMCでぶっ込み、客席を笑わせるというね。客席忙しすぎ(笑)。

何にしろ、BAはやっぱり流れが大事な作品なので、MCを細かく挟むより、長くMCを取って曲をまとめた方がよいように思いました。

2幕では長めにMCを取っていた分、物語パートとMCパートが明確に分離されて入り込みやすかったですが、その中でも印象的だったエピソードが、バンドメンバーのうち初演からの”レジェンドメンバー”の1人であるチェロの石貝さん。

石貝さん曰く「チェロの旋律はエイミーの心情を表現している(エイミーの心情と同期するように弾いている)」という話を、実はRiRiKAさんは知らなくて驚かれていたのですが、その様にこちらもびっくり。
”知らない”ということより、”演出的に知らせることを必要としていない”ことの方に驚きました。

演出の中本さんは役者さんの自由さを優先されるタイプの演出家さんと認識してはいますが、それでも「伝えるべきこと」であれば伝えるはず。それなのに言っていないのは、少なくとも「エイミーを演じるうえで、知らなければならない情報ではない」 わけで、非常に驚きました。

また、MCで興味深かったのは、RiRiKAさんが仰った「エイミーは自分と随分違う」というのはやはりそう意識されているのだなと。
RiRiKAさんのBA愛は随所に溢れんばかりにありましたが、それは「自分と似た役だから」ではなくて、「自分と全く違う役に入り込めるから」こそかと思えて。

・・・

短期間の登板が多い『Before After』。

台詞も歌詞も膨大で、今までの歴代キャストの皆さまは、漏れなく高すぎる壁にぶち当たりながらも、最後は皆さん「またやりたい」と仰っているのは、役者さんが本能的に持っている、「自分と全く違う役に入り込める」渇望を満たしてくれる、”飲んでも飲んでも湧き出る泉”のような作品であるからなのだろうな、と改めて感じて。

この日のベン・エイミーペアである上野聖太ベン&RiRiKAエイミーを本公演でまた拝見できることを夢見つつ、コンサートバージョンで初めてこの作品を見た人が本公演を見るチャンスにつながりますように、コンサートバージョンでも作品の解説を、短くて良いので配布したらいいのでは、と感じたのでした。

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