『レ・ミゼラブル』(25)
2019.5.12(Sun.) 17:00~20:05
帝国劇場 2階L列1桁番台(下手側)
令和初観劇は『レ・ミゼラブル』。
平成ラスト観劇が先月28日の『笑う男』なので、期せずしてどちらもヴィクトル・ユゴー作品。
観劇をリピートし始めて以来、2週間も間が空くのは初めての経験ですが、GW明けに大きなシステムプロジェクトのリリースがあり、GW期間の状況が読めなかったので、いっそのことと観劇を一切抜いた2週間にしたことで、自分にとっての観劇を改めて見つめ直す時間になりました。
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まずは、2週間以上空いたレミの感想から。
一番驚いたのは、唯月ふうかエポニーヌのスピード感。
歴代屈指の戦闘力を仄めかす、驚くほどの敏捷さ。新演出になってから、エポニーヌは「盗賊団の中でも一目置かれる存在」というのを強く見せる役になっていますが、目にもとまらぬ速さで動き回り、テナ以外は全く相手にもならないほどのやり手感。
それでいて、海宝マリウスが「彼女と行くか、仲間と行くか」と言ったのを聞いて、「あ。やっぱり私と行く選択肢はないのね」と身体ごと語ってる説得力が凄い(笑)。
ふうかエポからは「諦め力」の強さみたいなものを感じるんです。自分は汚れた人間だから、自分が望む恋なんてかなうはずないという諦め。だからこそ、罪深いマリウスさまの実は思わせぶりと捉えられても仕方ないかのような優しさに、心の底からぱぁっと喜んでしまう、そんなふうかエポに泣かされます。
この日のコゼットはまゆコゼ(小南満佑子コゼット)で、今期一番好きなコゼット。
かつ、まゆコゼとふうかエポが組むこの日の組み合わせが今期イチオシで、
愛されることに自信いっぱい(無意識)のまゆコゼと、
愛されないことに確信いっぱい(意識的)のふうかエポ、
という形になるのが、とっても印象的。
それでいて、この2人が、それそれ自分が「想像もしない形」の「幸せ」を得るのが、まさにレミだなぁ、と思うんですね。
コゼットは愛する父を失う(自分が「父」と思ってきた人が「父」ではなかったことを知る、それでもいいとコゼットは思うのでしょうが)けれど愛する人と生きる道を得るし、エポニーヌも恋は実らなくても、大好きな人に思いが伝わった上で、その人を救うことができたことに、自身の生きる意味を得ることができただろうし。
そういえば、カテコだと結構シングルポジションになることが多いエポだけど、今日はふうかエポに上山アンジョが「Nice Act!」モードで寄って行ってて萌えた。ラストはふうかエポ&まゆコゼがお隣で顔寄せあって笑顔でいてくれて、嬉しかったです。
この日の公演でお初だったのは橋本じゅんテナルディエ。
伊礼ジャベールを煽りまくって怒らせたことに怯み、染谷警官の警棒を自分に寄せて「いっ、いつの間に!?」って小芝居やって客席の笑いを取り、しまいには染谷警官に蹴り入れられてて笑いました(笑)
そしてその伊礼ジャベール。
伊礼ジャベールを見ていると、「逃れたい早く、ジャン・バルジャンの世界」という言葉が深く伝わってきて、「バルジャンの世界」でしか生きられなかった哀しみを感じてしまったのでした。思えばバルジャンは、ジャベールより少しだけ世界が広かったのかも。ジャベールほど自分で自分を縛らず、100%の聖人君子ではないからこそ、罪を償った上で、罪よりも大きい「自らの生きる意味」を産みだそうとしたのかと感じたのでした。
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ここからレミ以外の話も含んだ話になりますが、2週間観劇しなかったことで感じた、自分の中の「観劇」に関する思いを少し。
「なぜ芝居を見るのか」と言うことを改めて考えてみたのですが、こと仕事に追われる日常において、自分が志向せざるを得ないことって、「結果を出すために、いかに行動するかを考えること」であり、「それに対する理由づけを考えること」。
常に成果を求められる日常に比べて、芝居を見ること自体、何かの成果を求められるわけではないんですね。むしろ、まずは受け取ればいい。それが心の栄養になるんですね。しかも、以前は自分自身「見に行くからには何かを得なければ」と思っていたけれど、最近は「何も得られないか、得られるものが少ないこともあり得る」と割り切っていて。得られるものの大小は、作品の質だけでなく、見る側のコンディションも大きく影響しますし。
かつては「見に行ったものは必ず感想を書かなきゃいけない」という風に思っていた(実践していた)時期もありましたが、現実的な時間の限界もあって、数年前にその枷も外しましたし。
チケット代を出して時間を費やして見る、という行為は、誤解を恐れずに言えば、何かを言う自由も、何も言わない自由もあると思っていて、願わくば、コンディションとして、常に新鮮な感想を言える自分でいたい、という思いをもちながら、自分なりのペースで観劇していきたいな、と改めて感じたのでした。
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