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『おとなのけんか』

2018.11.27(Tue.) 19:00~20:45
2018.12.1(Sat.) 13:00~14:45
渋谷・ギャラリールデコ

渋谷駅新南口にほど近いギャラリースペース。以前One On Oneのリスタート公演『左手を探して』で来たことがありますが、改装されてより小劇場らしくなっており、エレベーターがリニューアルされていました。

今作に出演もされているまどかさん主宰の「まどかselection」旗揚げ公演で、女性2人男性2人の4人芝居です。岡村さやかさんが6月に出演されたアガサ・クリスティ原作の『マウストラップ』で、まどかさんと共演されたのがきっかけで今回出演とのこと。

実のところ、初日は仕事が終わらずに20分遅刻。舞台の途中から入る形になったためご迷惑をおかけしてしまいました。当然、舞台上では話が進んでいるわけで、逆算してどんなシーンからここに結びついていくのか、ある意味推理サスペンス的な要素も勝手に楽しんだりして(苦笑)。もちろん、2回目は最初から見られたので、「あぁ、これはこういうことだったのね」にようやく納得できたりしました。

息子同士の「子供の喧嘩」について話し合うために、”被害者”の両親、バロン家(夫:ミッシェル、妻:ベロニカ)に出向いた、”加害者”の両親、ライリー家(夫:アラン、妻:アネット)。

責める側の母親・ベロニカを演じるのがまどかさん、責められる側の母親・アネットを演じるのが岡村さやかさん(Wキャスト)。責める側の父親・ミッシェルが片岡大和さん(Wキャスト)、責められる側の父親:アランを演じるのが大島宇三郎さん。

ライリー家の一人息子・フェルディナンドが、バロン家の長男・ブルーノを棒でつつき、歯を2本折った、ということでの、親同士の話し合いが持たれたというのが導入部。

当初は主にベロニカのまどかさんが、アネットの(岡村)さやかさんを責める構図で、アネットさやかさんが丁重にお詫びしながら合わせていくのですが、途中からその丁寧さにベロニカなまどかさんがイライラし出すあたりから、物語は動いていきます。話し合いをしている途中にかかってきた携帯電話の対応を止めない弁護士のアラン、娘が大事にしていたハムスターを前日に殺めたことを暴露され、アネットにまで責められるミッシェル。

弁護士という職業柄、あえて気に障るような用語を入れてくるベロニカ(職業は作家)の一言一句にいら立ったり、気が強いベロニカの前では、地味な仕事(自称)をしているミッシェルの立場がなかったり、夫で弁護士であるアランには、家のことをすべて任されているアネットにしてみれば、「外で起きていることにしか関心がない」、つまり「中で起きていることには関心がない」と夫を責めているような状態。

元々が息子同士のいさかいが原因とはいえ、集まった4人が4人、いずれも余裕がなく、ささいなことにいら立つ分、誰かが絶対的に勝者ではない状態で、攻守が頻繁に切り替わる様が面白い。主軸はベロニカなまどかさんとアネットのさやかさんですが、ここがまるで勝負事の様に頻繁に有利不利が入れ替わるんですね。たぶん、観ている側からは「今はこっちが有利」「今度はこっちが有利」とかって考えながら見られるのが面白くて。

そこをちょっと掘り下げると、ベロニカはどちらかというと直接的で、まっすぐに攻撃する型なのに対して、アネットはかなり回りくどく巧妙に攻撃する型。なので、アネットの攻撃は後になってじわじわ効いてきて、相手に攻撃が効いたところで、アネットなさやかさんが、とっても黒い顔(満足そうな笑み)をするのがツボ過ぎてですね(笑)。

もう一点言うと、ベロニカは表面上の利益を求めるのに対して、アネットは実利上の利益を求めているように見えました。「私たち夫婦が子供をきちんと教育できなかったことに謝罪します」という(実際はこれはなかった)アネットからの”謝罪”を求めるベロニカを”表面上”と表現するなら、アネットにとって”自らのすべて”である子育てを否定されたかのような言葉に対して、ベロニカが”自らの大切なもの”としている美術本を汚すことで、”実利上”相手にダメージを与えている、そのように見えて。

いわば「おとなのけんか」というのは、体面上の満足と、実利上の利益と、どちらを勝利と判断するかで勝ち負けが変わる、”勝ち負けがはっきりしない戦い”なのかなと思って。

もともとの「こどものけんか」というのは、手を出す分、はっきりとした始まりも終わりもあるんですよね。手を出したことで納得するようなところがある。
「おとなのけんか」は手を出さない分、終わりさえもあいまいになるところがある、そう思えたのでした。

この作品のほぼ最後、全く交わり合わないような4人が、意外な結末を迎えます。ネタバレになってしまいますが楽を迎えたので…

崩れ落ちたアネットに、メガネケースを渡すミッシェル。夫のアランからはそんなことをしてもらったことがなかったかのようなアネットの反応。それを見てアランは、アネットが巻き散らかしたチューリップを拾い集める。いままで中に関心がなかった人なのに。そんな中、バロン家の娘カミールから電話を受けたベロニカは、「ミッシェルが殺めた」ことを庇うように、”本当のことは言わず”、結果夫をかばう。今まで夫をバカにすることしかなかったろうに。

男同士だからわかること、
男同士だからこそ分かり合えないこと。

女同士だからわかること、
女同士だからこそ分かり合えないこと。

夫婦だからわかること、
夫婦間だからこそ分かり合えないこと。

他人だからわかること、
他人同士だからこそ分かり合えないこと。

…全く混じり合うはずのなかった4人、4つの関係が、別の軸で出会うことで少しだけ変わった、そんな結末は、「おとなのけんか」ならではの、「喧嘩したならではの果実」に思えて、とっても意味深いように感じられました。

出演者の皆さん、魅力的でしたが、何より、岡村さやかさん。
エレガントに溢れた、(女性としての)真っ黒な笑顔が素敵でした(笑)。

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