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『HiGH Fidelity』

2018.12.23(Sun.) 13:30~15:30 青盤
 C列1桁番台(下手側)

2018.12.24(Mon.) 13:30~15:30 赤盤
 B列1桁番台(下手側)

2018.12.24(Mon.) 18:30~20:30 青盤
 B列2桁番台(センター)

TipTapワークショップリーディング公演と銘打たれたこの公演。
公演開始前に主宰・演出の上田一豪さんから趣旨についてのご説明。

「普段はオリジナル作品をやっている劇団だけれど、世界には日本には知られていない面白い作品がたくさんある、それを皆さんに紹介することで、みんなで良い作品を作っていって、いずれは他のカンパニーでやってもらえるような機会にしたい」とのこと。

「リーディングと銘打っているのですが、役者の皆さん素晴らしくて、ほとんど(台)本を持っていなくて(役者席から『えー』とブーイングあり(笑))、まぁ私が台本を持ってたらやれないような演出を付けたからですけど(笑)…もし良かったら”良かったよ”と、良くなかったら”良くない!”と声を上げていただければ(笑)」との由。

実際のところ「リーディング」と言ってますが、ほとんどブロードウェイミュージカルそのものでございまして、初っ端からガンガンに攻めまくります。作曲トム・キットは今回の音楽監督・小澤時史氏も大好きとのことで、かつては『Count Down My Life』作曲の時にインスピレーションを受けたということもあるそうで、ブロードウェイミュージカルにしては、TipTap的な過去の作品の様も感じるという、不思議な作品です。

主人公・ロブはこだわりのレコード屋店主。音楽に一家言あるせいか、ビジネス的な才覚は全くなく、ただ好きな音楽に囲まれて生きている。そんな中、付き合っていた彼女・ローラから突然の別れを告げられ、狼狽える彼。なぜローラが自分の元を去ったのか分からないロブは、かつてローラと自分を引き合わせた親友・リズに縋るが、リズは冷たく突き放す。以前付き合った元彼女との関係を忘れられないロブ。過去の彼女トップ5に、どうしてもローラを入れたくないロブ、それはなぜなのか…

そんな(本人にとっては)シリアスなテーマをポップな曲調で見せていくのですが、とにかくエネルギーに満ちた若いカンパニーで、その熱量が心地よいです。今回は青盤と赤盤という2キャスト(レコードがアイテムなので「盤」という表現)で、メインパートを進めるキャストはWキャスト。

青盤のロブは染谷洸太氏。ローラに捨てられるダメっぷりをリアルに見せていますが、それでいて憎めない感じが濃いです。そんなロブに別れを告げる青盤のローラは清水彩花ちゃん。デキる女な彩花ローラが、なぜあそこまでダメさ満開な染谷ロブと付き合っていたのが、序盤ではとっても不思議なぐらい、染谷ロブのダメさオーラが素晴らしいのですが(褒めてます)、ロブが不幸になっていく様と、ローラから笑顔が失われていく様がシンクロしているようで。特に2回目拝見した時の彩花ローラは、最後になって初めて笑顔になっていて。付き合ってきたロブに感じていた違和感を、一度離れて、そしてロブも進歩することで初めて埋めることができたのだろうなと。

ローラが心の隙がある中に入り込んでくる霊能者のイアンは岸さんがシングルキャストで演じてますが、面白さ極大(笑)、反則過ぎる面白さ。

「ローラの素晴らしさは私が一番知っている」と豪語するイアンだけれども、ローラが感じ続けていた違和感は消せなくて。ローラにとってとても大きなショックがあった時、ローラが寄り添ってほしいと感じた人は、”自分のことばかりを考えなくなった、進歩した”ロブだった…そのストーリーが自然に感じられたのは、染谷ロブと彩花ローラの演技の相性あってこそ。

ラストシーン、彩花ローラが染谷ロブにジャンプして飛びつく様にびっくり。ローラが求めていたのは、”自分のことをきちんと思ってくれる”ロブだったんだなぁ、という様が感じられて感動的でした。

そして、ローラにも増して素晴らしいのが、2人の引き合わせ役、リズの飯野めぐみさん。この作品に登場する女性はもれなくカッコイイのですが、これほどまでに漢前で親友思いな様が素晴らしいです。

青盤はロブ&ローラのペアからして、演技方面の要素が強かった気がします。

赤盤のロブは神田恭兵氏。染谷氏のロブが「ダメだからローラに振られた」方向性に比べ、「ローラに振られたからダメになった」感じの雰囲気を感じます。赤組ローラは実は私は初見な谷口あかりさん。今までチャンスがなく一度も拝見できていなかったのですが、とっても素敵な佇まい。ダメな男性に対して、それを見抜いた上で動かす様が巧みで、劇中のカッコいいローラのシーンの躍動感に度肝を抜かれました。

赤盤は歌方面の要素が強かった感じです。

メインの中で岸さんとともにシングルキャストだったのが、ロブのDIVA的なポジションになるマリーで、三森千愛さんが演じられていました。ロブの心の淋しさを埋めた存在で、自身も彼と別れて淋しさを感じた中で出会った相手…という位置で、ロブによって接し方が違っていたのが印象的。突き放すと本当に壊れそうな染谷ロブには慎重に優しく接していたように見えて、対して神田ロブには突き放しても大丈夫と思っていそうな接し方に見えてみたり、興味深かったです。

・・・・・

ロブの人物像で初見で思ったのが、今回の演出家である上田さんになんだか印象が被ったこと(爆)。

もちろん氏を作品を通してでしか知りませんが、作品作りに対するポリシーの貫き通し方とかは、ある意味ワンマンでないと進まない部分があると思っていて。

特に”やりたい作品”をやろうとするにはエゴがないと進まないと思うわけですが、きっといつでもそれでは通らなくて。

劇中、リズはロブに言うわけです。

「あなたは全てを自分の物語で語ろうとする。でもどのステージでも自分が主役な訳じゃない。この出来事についてはローラの物語である」と。

それに対してロブは答えて曰く
「自分の物語を貫いて何が悪い、そうじゃないと自分が生きている意味がない」と。

Tiptap作品の中で「Life3部作」と言われる作品群がありますが、その3作目である『Play A Life』のテーマが”自分の人生は自分で作っていくしかない”で。

ただ、”だからといって自分の人生を自分だけで作っていけるわけではない”、”ましてや自分の人生のために他人の人生まで自分に従わせていいわけじゃない”ということをアンサー的に言っているように、この作品は思えて。

今回の作品の中で、ローラは「これからもロブと付き合って行って良いのか」という迷いに対して、何か答えを持ってロブと離れたようには見えなくて。

ふと口を突いて出たロブの言葉に持った傲慢さから出た、ローラの中に浮かんだ違和感。

その違和感の正体を見極めるために一旦別れてお互いを見つめ直して見た時に、ロブも変われたし、ローラも変われたし、だからこそ2人は最高の相手としてこれからを歩みだせるようになった、そう思えたのでした。

・・・・

躍動感あふれる作品の後押しを受けて、出演者みんなが笑顔で前を向く姿が素晴らしくて、役によって大きく成長していくキャストの皆さんの姿を見られることが何より嬉しくて。

ワークショップ公演と銘打ったこの作品のパワーが、この後も受け継がれていくことを願ってやみません。
素晴らしい企画でした。

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