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『いつも月夜に米の飯』

2018.9.8(Sat.) 12:30~14:45
新宿シネマカリテ
B列1桁番台(センターブロック)

この日が公開初日、2回目上映で上演前に舞台挨拶があるということで、いそいそと出かけます。

舞台挨拶は1回目終映後と2回目上映前というよくあるパターンですが、終映後だとネタバレ爆発できますが、上映前だとどうしても無難に終始せざるを得ないわけで、かゆいところに手が届かない系ではあるわけですが、日程の都合上、これがどうしても限界でした。

この作品を見ることにしたのは主人公の母親・麗子役に高橋由美子さんが出演されていたから。

諸々あって芸能活動が休止状態な由美子さんにとっては、もしかすると最後の作品になるかもしれない作品。舞台挨拶で加藤綾佳監督が話されていたのですが、撮影自体は2年前に新潟県内で撮られたとのことでしたので、この時期になったのは結果論ということだそうです。

主人公の少女・千代里を演じる山田愛奈さん、撮影時はまだ18歳で、ちょっと前に20歳になったばかり。
物語は母・麗子が経営する小料理屋から失踪し、千代里が帰郷して、店に残った料理人(和田聰宏さん)と店を切り盛りするところから始まります。

ぶっきらぼうで上手く地元の人と溶け合えない千代里が、次第に「料理」というものを通じて心を通わせていく…と思いきや、母・麗子さんがひょいと帰ってきたあたりから、物語は大きく「二回転も三回転も」(舞台挨拶での愛花さん談)動いていきます。

とりわけ娘が最も分かり合えない母、そして表面的に取り繕った母と娘、そして料理人との関係は、最悪の形での結末を迎え…。

シーン自体はネタバレになるので語りませんが、あぁいうシーンを容赦なく描けるのは加藤監督が女性監督であるからこそなのだろうなと思いました。男性監督ではやっぱりどこまで描いていいものなのかもわからないでしょうし、無意識にブレーキをかけるのでしょうし。

娘にとって「母と似ている」なんて言われるのは、少なくとも千代里にとっては心外な言葉ではあるんでしょうが、まぁ正直、「きれいごとを言わない」ってことに関して、母と娘はそっくりですからね(笑)

娘にとっては自由気ままに生きている母が、「本当は自分もしたいのに」羨ましくて、それを裏返せば憎たらしくてしょうがない。母にしてみれば、「母としてどう生きたらいいのか、どう娘と接したらいいのか」が分からないでいる。

母にしても自由気ままに生きていても、「分かっていない」わけじゃない。むしろ「分かってるけどどうにもできない」風を漂わせる由美子さんの立ち位置は流石。

『四月の永い夢』でも一言の重さが凄かったけど、正直このままフェードアウトされていくのはもったいないなぁと感じてしまいます。
いやまぁ、自由気ままに生きた結果なのかもしれないけど(ぼそ)。

閑話休題。

この日、昼間にこの作品を見てから向かったのは日比谷・シアタークリエの『ジャージーボーイズ』。
ここでも同じテーマ、「母と娘のすれ違い」がありまして。

主人公、フランキー・ヴァリが父、そしてその奥さん・メアリー(綿引さやかさん)が母、で2人の娘・フランシーヌ(まりゑさん)。
シンガーとして売れて家にほとんど戻らない父。イタリア系移民として、「家族」として根を下ろしたかったのに、どう家族を作っていけばいいか分からずに、酒に溺れる母。父の贔屓目が含まれているとはいえ歌手を目指す才能を持つ娘。

初演では母と娘の間に心の繋がりがあったように見えたのですが、再演では母と娘の心は繋がっていないように見えたのが強く印象に残って、それは「産んだから母親になれるわけではない」ということでもあるし、「一緒に住んでいるから家族になれるわけじゃない」という冷徹な現実。

・・・

『いつも月夜に米の飯』の話に戻ると、母と娘が直接対話する場面は凄く少なくて、それそのものが問題な気もしてくるけれども、ただただ母を赦していなかった娘が、母がふと漏らした後悔へ、娘が言葉をかけていて、その一言に救われた気がしました。

「家族」を形作るものは、一緒に暮らした時間の長さではないのかもしれない、そう感じさせてくれる作品。
「料理」というキーワードとともに、「分かり合えるもの」「分かり合えないもの」を考えさせてくれます。

男性の視点から見ると、「女性」の”底力”(←言葉選んでます笑)を感じさせられる、ホームドラマぽくて全くホームドラマではない、なかなかスリル溢れる作品でありました(←言葉選んでます笑)

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