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『ひめゆり』(3)

2018.7.15(Sat.) 12:30~15:15 5列10番台前半
2018.7.15(Sat.) 18:00~20:45 8列10番台後半
シアター1010(北千住)

ミュージカル座さんの代表作『ひめゆり』、2013年に初観劇、その後2014・2015年と観劇して以来なので、3年ぶりの観劇になります。2016年はチケットを取っていたものの、blogに感想を書いていないことからすると、どうも仕事で行けなかったようで、(清水)彩花ちゃんのふみの記憶がない理由はこれらしい…。

ということで、何の意識もなく『ひめゆり』マチソワのチケットを取ったわけですが、これは無謀でした(苦笑)。

『ミス・サイゴン』のマチソワに匹敵する、心身ともへのダメージが凄まじく、ソワレ1幕はかなり大変でした。
よくよく考えると今までは片チームしか見ていなかったので、両チーム見ることにしたのが今回そもそも初めて。それに、この作品をマチソワで拝見して心身にダメージが来ない状態自体がよろしくないわけで、次からはしっかり考えようと思います。北千住遠いけど(爆)。

『ひめゆり』は歴代20年以上に亘る作品ですが、歴代キャストがいつ登板されたのかが記憶があいまいなので、自分が観はじめた2013年以降のメインキャストを記載しますと以下の通りです。

   キミ      上原婦長  檜山上等兵
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2013 彩乃かなみ   木村花代  原田優一・阿部よしつぐ
2014 神田沙也加   沼尾みゆき 松原剛志   
2015 はいだしょうこ 木村花代  松原剛志   
2016 はいだしょうこ 保坂知寿  津田英佑   
2017 はいだしょうこ 木村花代  中井智彦   
2018 高垣彩陽    沼尾みゆき 松原剛志   

   ふみ           はる
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2013 保田圭          野田久美子・長谷川ゆうり
2014 岡村さやか        般若愛実・田宮華苗
2015 長谷川ゆうり・岡村さやか 仲里美優・田宮華苗
2016 清水彩花・谷口あかり   般若愛実・ラリソン彩華
2017 河西智美         守屋由貴・井坂茜
2018 田宮華苗・清水彩花    井坂茜・藤倉梓 

   ゆき         滝軍曹
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2013 須藤香菜・浦壁多恵 阿部裕
2014 中村萌子・水野貴以 阿部裕
2015 中村萌子・水野貴以 小野田龍之介
2016 蒔田優香・中村萌子 鎌田誠樹
2017 中村萌子・荒居清香 小野田龍之介
2018 敷村珠夕・蒔田優香 今拓哉

※ダブルキャストは前者が月組、後者が星組

と、歴代キャストを記したうえでこの日のマチソワ。

全体的な印象としては、マチネで見た星組は、個人技に秀でたチーム、ソワレで見た月組が、団体技に秀でたチームというもの。月組はそれぞれの学徒のまとまりが凄くて、全体がまとまった時の勢いが凄い。星組はそれぞれの出演者がいい意味で尖っていて、存在感の見せ方が心地いい、そんな感じ。

どちらの組も本当に熱くて、これぞ『ひめゆり』の作品の持つ力だと感じさせられたわけですが、とりわけ主演を務めたキミ役の高垣彩陽さんは素晴らしかったです。

『ひめゆり』20年以上の歴史で初の、ひめゆり学徒からの主演・キミ役。声優活動を本格的に始められる前の学生時代(声楽をされていたそうです)の2005年に出演されて以来ということで、『ひめゆり』への思い入れがあるからこその主演、それがまっすぐ伝わってくる力演。変な癖がなく、まっすぐに純粋に相手を思う姿がキミにぴったり。私的には初見の2013年・彩乃かなみさんに似た部分を感じて、好きなキミでしたし、その姿に圧倒されました。『ひめゆり』はとりわけ作品世界への想いの強さが、物語の説得力に大きく影響すると思いますし。
(※2005年出演時の写真が今回のパンフレットの過去写真に載っているそうですbyご本人談こちら

キミの親友の準主役・ふみ、星組は清水彩花ちゃん、月組は田宮華苗さん。
キミが純粋すぎる反面、同い年の設定ではあるものの、精神的に大人な様子を彩花ちゃん・田宮さんそれぞれ見せています。キミよりも現実を知っているだけに、「傷ついた人たちを救いたい」とキミに言われても、現実の前に身動きできなくなってしまう。

そんなふみも、「妹を救いたい」という具体的な目標が出来た瞬間に、ぐぐっと存在感がリアルになって
「誰かを救いたい」気持ちはあるけど「何をしていいかわからない」。
でも「守るべき人を見据えたとき」、つまり「妹と一緒に、妹を助けて母の元に戻る」その気持ち一つに集中することを決めたとき、姿がその瞬間に「ぐぐっ」と大きくなったように見えて、本当に頼りがいがありました。

星組の彩花ちゃんは「お姉ちゃん」って感じで妹に接する反面、月組の田宮さんは「お姉さん」って感じでで妹に接する。それぞれの妹(ルリ)との距離感もあるのでしょうが、彩花ちゃんは「一緒に帰る」、田宮さんは「連れて帰る」といった違いを感じました。支え方の違いというか。

ただ、2人とも完全に共通していたのが、家に命からがら帰り着いた後、母にしがみつき泣きじゃくる姿は全く同じで、必死に耐えていた、妹に見せられない弱い部分を、ようやくさらけ出せた安堵に満ちていて、本当に帰れてよかったなと思うのでした。

上原婦長は2014年ぶりの沼尾みゆきさん。大好きな婦長さんですが、とりわけ好きなのが学徒みんなの夢を聞くところのスタンスです。決して夢に対して否定するような立場を取らない。先生たちが「夢を教えるはずだったのに、教え子に戦を教えるとは」と自信を失い、何も言えなくなっている中、生徒の不安を取り除くようにまっすぐ向き合う姿は、婦長にして先生でもあるかのよう。神谷先生、親泊先生が思考停止になっている中での婦長の存在は、奇跡であるかのように輝いていました。

神谷先生は上原婦長にバトンを渡し、上原婦長はキミにバトンを渡す。
悲劇の中でも細い細い糸のように、願いが継がれている姿が強く印象に残ります。

檜山上等兵は松原剛志さん。表向きぶっきらぼうなところを見せながらも、過去の行為を悔いる様が、自身の優しさを垣間見せています。キミの前から杉原が姿を消してからというもの、キミを生きさせた、「(キミにとって)救いたい」存在。キミが最初語っていた「傷ついた人たちを救いたい」という漠然とした目標も、「檜山さんを救いたい」という形になったからこそ、キミは絶望せずに向き合うことができたのかな、と思わされます。

鬼軍曹である滝軍曹は今拓哉さん。軍曹として学徒からは忌み嫌われる存在ですが、徐々に、演出的に「個人の責任」という部分が薄まってきている印象があります。「その行為は指弾されるべきだが、職務としての行為の前提の『戦争』がそもそも指弾されるべきだ」という方向に変わってきているように思います。カーテンコールで皆が「小鳥の歌」を歌う時、軍曹も歌っているのですよね。「あの小鳥になれたら、自由に空を飛べたら」…その姿を見たとき、『ひめゆり』の伝えたいメッセージも少しずつ変わってきているようにも思いました。

他のキャストで印象的だったのが、コメディパートを担う3人組の一人、星組でふみ役を演じた藤倉梓さん。
普段は演出家や歌い手さんとして拝見しているだけですが、今回は演技を初めて拝見。級長としてのリーダーシップもぴったりでしたし、どこか滑稽な、それでいて場を和ませる絶妙なコメディエンヌぶりを見せていて、演出家さんとしてのコメディ演出の才能を役者さんとしても開花されていて、とても良かったです。

今回の『ひめゆり』で印象的だったのは、開始時に流れる映像。いわゆる映画のオープニングロールのように表示されたのですが、この『ひめゆり』の描く状況を簡潔にまとめていて、物語に気持ちを入れやすくなっていてとても良い試みに思いました。

舞台、ミュージカルに対しての敷居をどう低くしていくかを考えたとき、どう新しい層を劇場に引き込むかと同じぐらい、来た人に対して満足して帰ってもらうことが大事だと考えますが、その時に「パンフレットを買わないと内容が分からない、話が事前の勉強や知識を前提としている」というのは程度の程はあれ、今後考えていく必要がある課題と思います。ネタバレにならず、物語の前提情報を重くなく見せる試みはとても良く、今後上手く活用されていくことを願っています。

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