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『モーツァルト!』(32)

2018.5.31(Thu.) 17:45~20:55
帝国劇場 1階補助席中列40番台(上手側)

2018年版M!、この日が初日です。
今回、M!はチケット確保でもずいぶん遅れを取っておりまして、結果、今段階で3回の予定です。
今回はヴォルフも変わったためか、びっくりするぐらいチケット難で初日時点で全日程完売というのがびっくりです。

我がミュージカル観劇履歴の中でも回数でベスト3に入るこの作品。ざっと数えたら50回越えのレミ、40回越えのサイゴンに次いで、このM!が30回台。初演の2002年以来500回以上の上演を数える作品をずっと見続けてきましたが、セット的には今回がいちばんの変化と言えます。

舞台セットを全面的に入れ替え、舞台上全部をピアノに見立てたセットは意表を突かれます。今までのセットに比べて場面展開が早くできるせいか、曲が1曲増えた(『魔笛』の前にヴォルフガングとコロレドの対決ソングが増えています)のに関らず、従来は21時ぎりぎりだった終演がこの日はトリプルカーテンコールの後でさえ20時55分でしたので、全体的に10分弱は短くなっているように思えます。

舞台セットだけでなく演出も色々変わっていて、私見では正直しっくりこない感じを受けます。この作品は以前から玄人好みというか、万人受けしない感じがして、実のところ私はそういうところが好きだったのですが、今回の変更は全体的に「万人受けしよう」と頑張っている感じがして、自分にとっては違和感を感じました。何度か見たら印象は変わるのかもしれませんが。

そして何といっても自分にとってこの作品の軸はナンネールなので、彼女の感情の動きをもってして物語を一緒に生きる感じに慣れてしまっているので、たっちんナンネは物足りないものを感じました。もちろん歌えるのは分かっていますし、実際そうなのですが、この役に関してばかりは、歌えるから伝わるものでもないことを(贔屓目が入っていることは自覚していますが)感じます。というのも、人物像が一貫して伝わってこないように思えて。天才の弟を持った姉が、自ら芸術家としての道を歩めなかった悲愴とか、それ故のもやもやとした感情とか、弟の成功を祝うようで、それにすがってしか生きていけない様とか、そういう狂ったところが見えればよかったなと思います。

そんな思いはありつつも、この日最大の収穫は綾コンスタンツェ。もうびっくりしました。歴代コンスを全員見ていますが、myベストコンスのちーちゃんに匹敵するぐらいのベストな存在感。自分を認めてもらえないことに悲鳴を上げすぎず、自身の素直な思いとしてヴォルフガングを支えるかいがいしさ。それでいて愛するのに、というより愛するからこそ通じ合えない不器用さ、そのどれもがとってもコンスタンツェ

今回の演出変更ではっきり見えた風もありますが、ウェーバー家で完全に孤立しているコンスタンツェだからこそ、実はモーツァルト家で孤立しているヴォルフガングと通じ合う部分があることも見て取れたし。

婚約させておいて連れ去ることで契約違反とさせて年金だけ掠め取る、そんな策に簡単にひっかかり何も得られなかったヴォルフガングの元に戻ってきて、紙なんかでなく、心で通じ合いたいと願うコンスタンツェ。だからこそヴォルフガングの行為が裏切りに感じる…そんな激情さえ率直に納得させられるような、そんなコンスタンツェでした。こんなコンスタンツェだからこそ、アマデも一時はモーツァルトに対する「近づけたくないリスト」からは外して、「モーツァルトに必要な人物」として認められていたんだよね、と感じられる、素敵なコンスタンツェでした。プラター公園の衣装もむっちゃアイドルで可愛い!
コンスタンツェ競演になるレベッカ(ちーちゃんと同役)がとっても楽しみです。

そして絶品中の絶品なのが、たーたんのヴァルトシュテッテン男爵夫人。貴族でありながら純粋にヴォルフガングの才能に惚れる、理想的なパトロン。常に彼の成長を見守り、まるで母親のように振る舞う。ナンネの存在感が薄かったのは、母親的な側面を男爵夫人がになったからということもあるのかなと。星金を最初から見下ろして歌うのではなく、同じ目線で歌い出していく様は素敵でした。歌声に温かさと優しさを纏う様が本当に素敵。それでいて彼が成功してからレオポルトに言う「親は子離れしなくては」の思いは、ヴォルフガングにも向けられて。「息子は親から離れなくてはならない」というヴォルフへの言葉は、「(才能を認めた)親(男爵夫人)が、息子(ヴォルフガング)を手放さなければならない」という風にも感じられ、厳しさの中にある孤独を感じたりもしたかと。

アンサンブルさんもずいぶん層替わりしましたが、やんさん(池谷祐子さん)がウェーバー家の一員・ヨゼファなのが見てて楽しい楽しい(笑)。本領発揮過ぎな存在感が素敵でしたが、何といっても夜の女王が当然やんさんなわけですよね。改めて見てみるととても新鮮でした。

・・・

今までと同じ思いで見続けるわけにはいかなくても、それでもやはり惹きつけられるものがある作品。
どんな形でこれから見ていくのか、少し様子眺めしながら2018のM!を見ていきたいです。

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