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『夢の裂け目』

2018.6.14(Thu.) 18:30~21:30
新国立劇場小劇場 D1列1桁番台(下手側)

こまつ座さんの音楽劇、今回で3演目の作品です。

東京裁判を題材に、市井の人々からの心情から「戦争とはどういうものだったのか」を浮かび出す作品。

主人公は段田さん演じる紙芝居師・田中留吉こと天声。戦前につくった創作紙芝居が、あたかも東京裁判を予言していたかのようなことに気づき、公言していくことで占領下のGHQ支配下では危険な存在となっていく。

自らの気づきに浮かれ、集まる人たちに「師匠」とはやし立てられる中で、その実、もっとも冷静なのが、娘の道子ちゃん。唯月ふうかちゃんが演じています。

彼女は高校卒ということで間違いなく学がある才女で、でも、ただ優しいだけの少女じゃない。
父親のことを心から心配し案じる素直さ、だけではなく、父親はじめ大人たちが目を背けようとしていることに鋭く切り込んでいく。

「戦時中の日本人庶民は、自分で国体を変える力をもたなかった。その状況下での(敗戦という結果で)あったのだから、庶民には責任はない」と一幕で元学者である成田氏は語ります。

でも、この言葉にも彼女は疑問を呈するんですね、本当にそうなのかと。

紙芝居師が戦時中を生きてくるためには通らざるを得なかった、政府のプロパガンダ足らざるを得なかったことを、彼女が見てきただろうことと、それは無縁でなかったようにも感じます。

今まで信じてきた価値観が崩れた中で、学ぶことの意味、学ぶことの無意味、それでもなお学ぼうと自分の意思で踏み出す道子ちゃんは輝いていて、それをいまのふうかちゃんが演じたことは、ふうかちゃん自身にも、とても意味があることに思えました。

成田氏を演じた上山竜司さんとの関係性は、どことなく3月博多座公演の『舞妓はレディ』の春子ちゃんと先生との関係とも被って見えて。自分に気づきをくれる方への、淡い恋心を表現させたらふうかちゃんの右に出る女優さんは、なかなかいないかと。

「人間は自分の責任を回避しようとする生き物」とは演出の栗山氏の言葉ですが、それ故、人間は都合の良い「夢」に逃げようとするのではないか、と見ていて思いました。

だけれども、「夢」は完全な世界ではなくて、”逃げようとして”見る夢はどこか不完全で、ふうかちゃんの存在は「夢」に裂け目を入れて「現実と向き合う覚悟」を求めているように感じました。

ふうかちゃんの演じた道子の存在が、「生きていく『道』を作る覚悟を持った少女」に感じられ、この名作での存在感の確かさに感銘を受けたのでした。

登場人物は多士済々ですが、女性陣のキャラの立ち方がびっくりするぐらい。
元芸者役の吉沢梨絵さんはしなやかにしたたか。
高田聖子さんはにぎやか。
そして進駐軍の女性役人役な保坂知寿さんのツンデレさがむっちゃ魅力的!

軽快な音楽に乗せられて、”むずかしいことをやさしく”な井上ひさし先生の作風の魅力いっぱいの作品を拝見する機会が得られたことは、とっても良かったです。

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