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『ジキル&ハイド』(7)

2018.3.3(Sat.) 17:00~19:55
東京国際フォーラムホールC 6列1桁番台(下手側)

新生ジキハイ初日、見てきました。

ジキル&ハイド役の石丸幹二さんは2012年・2016年から引き続きですが、今回、今までエマを演じていた笹本玲奈さんがルーシー役に、そして新たにエマには宮澤エマちゃんがキャスティング。

普段ならドキドキばかりでの来場になるはずですが、先日幸運にも稽古場を拝見させていただいているので、ちょっとだけ心に余裕を持って入場。

今まで玲奈ちゃんがいたポジションにエマちゃんがいて、今まではめぐさんだったポジションに玲奈ちゃんがいるので、最初は見る側がかなり混乱します(笑)。

玲奈エマがどうしても見る側には印象が残っているので、その観点から見てしまいますが、エマちゃんはいろいろな意味で生真面目。生真面目さが演技に直接出ている感じというのか、少しく感じるぎこちなさ(初日だから当たり前ですが)。とはいえ、聡明さを感じさせる振る舞い、父親をもやりこめる強さといった部分が印象的。今回、父親が福井貴一さんになって年齢が近づいただけに、より父娘感が強くなった感じがあります。福井さん曰く「親が子離れできていない」だそうで納得です(笑)

そして玲奈ちゃん自身が念願だった役、ルーシー。もう10年以上前のアルバムに入っているわけですから10年越しですね。前任のめぐさんはパワフル系のルーシーですが、玲奈ちゃんのルーシーは妖艶にして繊細。1幕の「連れてきて」ではさすがにパワフル系の曲に苦戦されていた感はありましたが、1幕後半のジキルへの来訪あたりから、丁寧な芝居で新たなルーシーを見せてくれてとても素敵でした。

歌は歌い手泣かせのワイルドホーン氏(この日ご来場され、ご挨拶もされていました)の曲ということもあり、今まで培った技術を使いまくっていた感じはありましたが、ルーシーの役設定を新たに作り上げられていて。若いころから不本意ながら娼婦に身を落としていた自分だけど、ジキルに出逢って希望を知って、「自分らしい生活」という「New Life」を夢見る様がとても素敵で、自然に「幸せになって!」と応援したくなる、とにかく細いルーシーでした。

この曲、玲奈ちゃんで聞くと『ミス・サイゴン』のバンコクの一室で歌われる『Please』を思い出しました。めぐさんで聞いて感じたことはなかったので、なるほどなシンクロでした。

とりわけ玲奈ルーシーでインパクトが凄かったのが『デンジャラス・ゲーム』のデンジャラスさ(爆)。
ここ、ハイドとルーシーのシーンですが、ルーシーがハイドに乗っかっている様が凄くて、ある意味ルーシーのハイドが顔を出してる。つまるところ、ハイドとハイドの競演なわけで、その飛翔感、高揚感ったらなかったです。お互いから理性が取り出され、欲望同士がぶつかっている。それでいて石丸さんと玲奈ちゃんという、親子から始まって婚約者になった2人が、夜の関係全開というのが罪深すぎて、さすが『罪な遊戯』そのものずばりでした。

愛を知らずに恋をしたルーシーを、
玲奈ちゃんの役作りで新しく見せれば、
恋を知らずに愛を見つけたエマを、
エマちゃんの役作りで新しく見せた、
新生ジキハイ。

玲奈ちゃんにとってのめぐさん、エマちゃんにとっての玲奈ちゃん、それぞれ大きすぎる存在を感じながらも、玲奈ちゃん、エマちゃんそれぞれが全力を尽くされた、この初日を拝見できたことは何より感動的でした。

実は新キャストが多い今回のジキハイ。その中でもとりわけ田代万里生さんのジョン・アターソンの存在がとても大きく、石丸さんの親友として石丸さんをしっかり支え、物語をダイナミックに動かしていました。アンサンブルさん一人一人の力量が凄く、それだけでも物語は進みはするのですが、それを加速する万里生ジョンの存在はとてもありがたく、玲奈ちゃんにとっても心の支えだったんじゃないかなと思います。カテコでちょっと涙ぐんだ玲奈ちゃんが、いっとう先に顔を見たのは万里生くんでしたね。石丸さんとは勝手知ったる関係とはいえ、今回は「新たな関係」を作ることを意識せざるを得なかったからなのか、玲奈ちゃんは(壁を)意識していたように見えましたので。

今回、玲奈ちゃんは『ミス・サイゴン』大千穐楽以来1年2か月ぶりの舞台復帰となったわけですが、ここのところ語られた言葉の中で印象的だったのが「私はエマを一生やっていくと思っていた」という言葉。
普通に考えれば一生エマをやるということはあり得ないはずなのに、なぜか「そうだよね」と思ってしまう説得力。なんだか「自分は(自分とは違う)エマ(のような芯の強い役)をずっとやっていくと思っていた」という風に聞こえて、それって「他人の人生をずっと生きてきて、自分の人生をどう生きているのか分からなくなりかけていた」という言葉ともリンクしたりして、胸を突かれるものがありました。

それでいて今回、復帰の役がルーシー。社会的には貧困層という立場にいながらも、ピュアな気持ちを持っている女性。ジキルの言葉から自らの足で、自分の道を歩き出そうとする姿は、玲奈ちゃん自身も仰っていますが、今の玲奈ちゃんにぴったりな役どころ。

ファン視点からでも技術的には多々課題はあると思いながらも、今の玲奈ちゃんでしかできない役に今巡り合えた、その奇跡に立ち会えた感動に打ち震えました。

東京公演は18日まで、その後大阪・名古屋公演が予定されています。

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