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『A Class Act』(2)

2018.3.24(Sat.) 13:00~15:25
東京芸術劇場シアターウェスト
J列10番台(上手側)

2018.3.25(Sun.) 13:00~15:25
東京芸術劇場シアターウェスト
H列10番台(センターブロック)

あっという間にこの日が千穐楽公演。
千穐楽にしては笑い声も拍手も控え目で、ちょっと意外です。

千穐楽ということですし、AKA Companyさんは再演は今までされたことがないので、恐らくは再演はないのだろうなと思い、多少のネタバレ込みで参ります。

3回目の観劇ということで、気づいていなかったところがそこここに見えたり。

大のメッツファンだったエドが、ワールドシリーズのスタンドでホームランボールを取れずに、ボビーが取った。そのボールをこの作品のシーンのラストでエドに渡す。そこにエドが「勇気」を出したように思えてじんわり来ました。

エドの思い出を振り返る時にボビーが出してきた写真のネクタイは、実はルーシーがプレゼントしたものだったけど、そのネクタイを「センス悪い」と断言するフェリシア。穏健派に見えるルーシー(さやかさん)も、フェリシア(秋さん)とは実は馬が合わないというのが見ていると興味深いです。だいたいルーシーが引いてましたが。

ルーシーとソフィー(やんさん)の絡みで興味深かったのが、ラストの手紙をルーシー(さやかさん)が読んでいて、実は最後の1枚だけ、ソフィー宛のパートだけをソフィーに渡すんですね。考えてみれば当たり前の話なのですが、そこに慈母的ポジションでありながら、そこにルーシーの女性らしさも感じたり。初見から段々にその辺に黒いエッセンスを入れてきているあたりが、さやかさんらしいと言いますか(爆)、「結局エドが心を開いたのはソフィーだけだった」という言葉を吐き出すルーシーの気持ちを考えると、胸に迫るものがあります。

この作品は最初のパートはBMIワークショップのメンバーがエドを取り巻く形で始まり、最後のパートはそこにソフィーが加わってエドを取り巻く形で終わります。実際にはエドの心にソフィーがいて、皆の心にエドがいて、ルーシーがソフィーを迎え入れるからこそ、エドにとって大切な人がみんな集まってエドのことを思えるラストが実現しています。

エド以外の登場人物の中で、ただ一人「音楽・歌」の外にいたと思えたソフィーでさえ、実はエドの「音楽・歌」のファンであり応援者であり、「音楽・歌」と切り離せないエドの人生にとって、ソフィーはかけがえのない仲間であった、と思えて。ソフィーも「内側」つまり「こちら側」の人だったことに安堵します。
ソフィーにとっては自分がずっと近くにいない『愛』を選び、ルーシーは自分がずっと近くにいる『愛』を選んだのかと思えました。

キャラクター的には、やんさんのソフィーはコンスタンツェ的で、さやかさんのルーシーはナンネール的な面を感じたかも。もちろん石井くんのエドはモーツァルト的な立ち位置で。

完璧を目指しすぎたために行く先を見失い、自分で自分の成功への道を閉ざしてしまったエドは幸せだったのかどうか。

いみじくもこの日、エドを演じた石井一彰くんが、ご挨拶で言及されていました。

「エドは成功したわけじゃなかったかもしれないけど、皆がエドの人生を物語にしようと思ってくれて動いてくれて、それは勝ち組だったんじゃないかと。人は一人では生きられなくて、周囲のみんながいてくれるからこそ生きられる。そんな思いを皆さまが感じていただければ嬉しいです」

そんな素敵な挨拶に、なぜだか、さほどの拍手が起こらない中、
「まばらな拍手ありがとうございます」で舞台上&客席内からの大爆笑を誘っていた石井氏、なかなかやりよります(笑)

今回の作品、AKA Companyの1作目『tick tick..BooM!』と同じく、「作り手の思い」にスポットライトをあてた作品で、とっても『らしい』作品だと思ったのですが、一つ気になったことと言えば、今回、実は会場でのこの作品に関するパンフレットも、観劇フライヤーも存在しないんですね。そこは非常に残念に思いました。

今回の作品はとりわけ「劇場に来てくれたお客様、劇場に立つみんなの力で、歌が物語を作り、歌が心を伝える」というメッセージだったかと思うのにかかわらず、舞台が終わってからの「After The Stage」を振り返るものが何もないんです。開演前、お知り合いからこの作品の元敷きでもある『コーラスライン』の四季版のパンフレットを拝見させていただく機会をいただいたんですが、舞台を拝見していなくてもその時の空気感が伝わってくるんです(若き市村さん、祐一郎さん、芥川さん・・・)。そう思うと、今回、心に温かいものが宿った素敵な作品ではあるものの、例えばペーパー1枚でもいいので、見に来た人だけが分かる、その作品を思い出すよすがが、一つでも欲しいと痛切に思った次第でした。

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