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『TENTH』(4)

2018.1.25(Thu.) 18:30~21:30
シアタークリエ 19列20番台(上手側)

2018.1.30(Tue.) 18:30~21:30
シアタークリエ 2列1桁番台(下手側)

シアタークリエ10周年記念公演『TENTH』3期です。

第1部は念願の『この森で、天使はバスを降りた』のショートバージョン。
日本初演は2009年、ヒロインのパーシーは大塚千弘さん、ちーちゃんが演じられていました。

今回のショートバージョンは第1期から第3期まで唯一、メインが初演キャストと異なっていて、つい少し前まで『ダディ・ロング・レッグス』でヒロインをされていた坂本真綾さん、まーやさんが演じられました。

作品として大がつくほど好きで、クリエの歴代作品を並べても確実に5本の指に入る好きな作品だけに、ちーちゃんじゃないことで少しくの残念な思いを抱えつつ、でもほぼ10年ぶりの再演を楽しみにしていて…結果、素晴らしかったです。

本編より短縮された70分バージョンですが、演出の小林香さんがエッセンスを巧みにまとめ上げ、作品の空気感をしっかり残しながら、ちーちゃんパーシーとまた違ったまーやさんパーシーが生き生きと存在していました。

主人公のパーシーはとある事情により服役。刑期が明けて向かおうとした先が、誰かが置いていった観光ガイドのとある写真、紅葉美しいギリアドの街。この森にバスで降り立ったパーシー、そこから物語は始まります。

パーシーの役作りはちーちゃんとまーやさんで大きく違って、はっきり違って感じるのはパーシーの他者へとの接し方の違い。

ちーちゃんパーシーは、『鋭利な刃物』ってイメージで、『触るもの皆傷つけた』ってイメージ。
まーやさんパーシーは、『重厚な鈍器』ってイメージで、『触るもの皆叩き壊した』ってイメージ。

ちーちゃんは可愛い子系の方向性なので、「あの娘がこんな言葉遣いで、こんな振る舞いで」というサプライズ感がありますが、まーやさんはどことなく影がある雰囲気を最初から出していて、訳ありな感じを見せている面、少しサプライズ感は薄かったかと。噂好きな田中利花さん(爆)じゃなくても何か気づくようなところがあって。

ちーちゃんは『やけっぱち』、まーやさんは『やさぐれ』ぐらいな違いはあります(笑)
他者と距離を置きながらも、実は他人との接点を欲している、という様はちーちゃんの方が強かったかな。まーやさんパーシーは、自らが他人から相手にされないことを自分の罪、と感じている様が強い感じ。

初演キャストに思い入れがあると、どうしても見る側からしても初見では冷静な目で見られないようなところはあるので、2回見てようやく、まーやさんパーシーの役どころを落ち着いて見られたかなと。その上、まーやさんも役を手の内に入れてきた感じがあって、カーテンコールで自ら両側のキャスト(土居さんと剣さん)に手を繋ぎに行っていたので、ご自身なりにも納得できた部分があったのではないかと思います(まさか、まーやさんがそうすると思わなくて、しばし気づかなかった土居さんと剣さんがあわあわしてる様も面白かったですが(笑))。

この物語を9年ぶり(初演は2009年)に拝見して思うのが、この物語に出てくる登場人物に共通するのが『不信』というところ。刑務所から出てきたばかりのパーシーは他人を信じられず、ギリアドに住む人々は自分を信じられない、『自信』を持っていないという対照的なさま。
そんな両者がお互い、自分の持つ良さに気づかないところから変わっていく様が何度見ても素敵。
パーシーのハートの温かさを最初から見抜いていたシェルビーだけでなく、町の皆(一名除く)がパーシーの前向きさに心奪われ、何もないと思っていた自分たちの街の素敵さに気づかされていく。

この物語で好きな歌詞に『なんにもないけどすべてがある』という歌詞がありますが、それはパーシーとギリアドに掛けているのかなと。身一つで塀の中から外に出され、たった一つの写真を頼りにギリアドにやってきたパーシーは、まさに『なんにもない』存在ながら、人が持つべき温かいハート『すべて』を持っている。ギリアドは住む人にとっては『なんにもない』存在だけれど、パーシーに言わせれば『すべて』を持っている場所。

パーシーはギリアドの森に触れて、ギリアドの人々に触れて、心が再生していき、ギリアドの人々もパーシーに触れて、自らの地の良さを認識して、失った自信を取り戻し、心が再生していく。

とりわけ、パーシーがハンナの息子であるイーライに語り掛ける様は強く印象に残って。
パーシーも罪人であり、イーライも罪人。

自らの罪ゆえにハンナの元に戻れないイーライに対して、パーシーは自分の過去を曝け出すかのように対する。パーシーはあけっぴろげな振りをしながらも、実際のところ好き好んで自分の過去を曝け出したいわけじゃないはずで。パーシーは自ら(本当は)触れたくない部分を明かして説得するからこそ、イーライの心も動く。罪人であれ、罪を償えば森が、光が、自然が赦してくれる、その空気感が変わらず素敵です。

パーシーが過去から逃げないからこそ、ハンナも過去から逃げないことを選べた。過去と向き合うからこそ未来が開けてくる。その様が短縮版でも余すことなく表現されていたことに拍手です。

・・・

第2部のガラコンサートは日替わり。

●1月25日ソワレ 2部セットリスト
1.Seasons Of Love/RENT
 (村井・藤岡・米倉・ソニン・宮本・田中・上木・Spi)
2.One Song Glory/RENT(藤岡)
3.Tango Maureen/RENT(村井・宮本)
4.Take Me Or Leave Me/RENT(ソニン・宮本)
5.I'll Cover You/RENT(米倉・田中)
6.I'll Cover You(Reprise)/RENT
 (村井・藤岡・米倉・ソニン・宮本・田中・上木・Spi)
7.What You Own/RENT(村井・藤岡)
8.Finale B/RENT
 (村井・藤岡・米倉・ソニン・宮本・田中・上木・Spi)
9.君に分かる?/ZANNA ザナ~a musical fairy tale~
 (渡部・高垣・上木・東山)
10.いつか来るかもしれない日
 /ZANNA ザナ~a musical fairy tale~
 (田中)
11.Extra Love/ZANNA ザナ~a musical fairy tale~
 (渡部・高垣・田中・上木・東山・Spi・岡田)
12.Love Heals(全員)

25日は「RENT」と「ZANNA」の混成で2作品のみで2部を構成。第1期、第2期はもっと多くの作品を組み合わせるパターンだったために新鮮です。「RENT」は正に作品の空気感そのものという感じで、作者のジョナサン・ラーソン氏がこの日が命日(NY時間なので日本時間ではずれるそうですが)ということもあり、作品のパワーが前面に漲っていました。

とりわけソニンちゃんの八面六臂の大活躍(ミミとモーリーンを役ごとにいったりきたり)で、特にM4「Take Me Or Leave Me」の宮本美季さんとのデュエット&絡みは最強すぎました。

作品後半は「ZANNA」からの曲。上演期間が短かった(1週間強)だったため、私も拝見していませんでしたが、このパートを担当された高垣(彩陽)さんの作品紹介MCが絶品で、本編も見たくなりました。作品紹介MCといえば第2期の新妻聖子さんの作品紹介MC(注:レミを除く)が絶品ですが、それに勝るとも劣らない滑らかさ、かつ作品への愛が感じられて素敵でした。お名前は存じ上げていたのですが声優さんの方なんですね。

この日の2部の構成は「愛」というテーマでトリビュート的につないだ構成で、いかにも小林香さん的な作り。第1期、第2期ではできなかったことなのかな、とふと思ったのでした。


●1月30日ソワレ セットリスト
1.幸せの秘密(Reprise)/ダディ・ロング・レッグス
 (井上・坂本)
2.世界で一番分からない人/ダディ・ロング・レッグス
 (坂本)
3.チャリティー/ダディ・ロング・レッグス
 (井上)
4.この世界を越えて/ハムレット(井上・昆)
5.Be Not Be/ハムレット(井上)
6.この世界を越えて2/ハムレット(昆)
7.海の見える広場/シェルブールの雨傘(井上・白羽)
8.Watch What Happens/シェルブールの雨傘(白羽)
9.もし君に告げたら/ウェディング・シンガー(井上・高橋)
10.一緒にトシとろうよ
 /ウェディング・シンガー(井上・高橋)
 ※芳雄氏ギター弾き語り
11.君の結婚式/ウェディング・シンガー
 (井上・昆・白羽・高橋)

30日は井上芳雄祭り(坂本真綾さんご命名(笑))ということで、今回の『TENTH』で芳雄氏に”どんな企画やりたいですか”という話があって、”今までご一緒した方(女性)とご一緒したい”とリクエストして、自称「ハーレム」状態に(爆)。

ということで曲順はまーやさんとのダディが前半3曲に。この日と31日のみ、ガラコンサートが前半で、作品が後半ですが、これはまーやさんの負担を考えてな気がします。「ここが終わったら『この森~』の準備に入りますのでもう出てきません」と仰っていたのでそうかなと。
棒読みの曲紹介なまーやさんに実に楽しそうにツッコむ芳雄さん。ビバ同級生ペア。

その次のパートは昆ちゃんとの『ハムレット』ペア。
『ハムレット』の思い出は、と昆ちゃんに振ったら「公演初日に芳雄さんが歌ってた歌詞が稽古とほとんど違ってた。意味は似てたのでプロって凄いなと思った」という巨大爆弾を落っことして芳雄さんがあわあわ(笑)。「それディスってるの?」とまで言った末に、「東宝の某先輩で作詞がお得意な方がいらして伝統を引き継いでいるんです(原文は実名)」とまで言わされました(笑)

芳雄さん「お昼のお客さんは拍手が控えめで」
昆ちゃん「夜のお客さんには拍手たくさんいただけて」
芳雄さん「じゃぁ昼夜両方ご覧になっている方はどうすれば」
昆ちゃん「拍手を先導していただければ」

・・・というやり取りに芳雄さん感嘆。

「昆ちゃん、MCの腕上げたよね」と言われてました(笑)。

その次のパートは白羽さんとのシェルブール(実際には日生でのペア。クリエでやった時は野々すみ花さん)。実は初見ペアだったのですが素敵な大人の雰囲気でした。
ちなみに、一昨年テレビドラマで共演された(TBS系『わたしを離さないで』)とき、他の共演の方に「実は共演したことあるんですよ」って話をしたら、主演の綾瀬はるかさんに「ここでやって見せてよ」って無茶ぶりされた挙句、「畳の上でできませんよー」って抵抗はしたものの、結局やってみせたそうです(爆)

WSのパートは高橋愛ちゃんと。愛ちゃんに「芳雄さんってMCも無茶苦茶お上手ですよね、どこに向かっているんですか?」って問われて「喋れちゃうんだよね」って返してたのも相変わらず(笑)。ギターは久しぶりということで自宅で弾いてみたら、思いっきり弦が切れたそうで、今回再調整してもらったとか。でも実は緊張してて、芳雄氏は緊張すると手に汗で出るそうで。愛ちゃんに「芳雄さんも緊張するんですね」って問われて「するよー」って答えてたのが面白かった。その距離感が。

1幕最後のWS「君の結婚式」は、まーやさん以外の女性3人(愛ちゃん、昆ちゃん、白羽さん)との共演で客席降りまでありのバージョン、女性陣のドレス可愛かった!
青の愛ちゃん、赤の昆ちゃん、大人っぽい白羽さんの組み合わせ。白羽さんのドレスはちょっとこの曲には大人っぽいかな?と思ったりもしましたが。

客席大盛り上がりで1幕をつつがなく終えて、2部『この森で、天使はバスを降りた』に入っていったのでした。

今回の『TENTH』、芳雄さんが真綾さんとのMCで語ったところによれば、全部で173曲あったとのこと。
TENTHバンドの皆さんにも拍手です。

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