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『野の花』

2018.1.28(Sun.) 16:30~19:00
ウッディシアター中目黒

以前から作品名だけは聞いたことがあったのですが、実のところこの日が初見。
中々都合がつかず、この回千穐楽にぎりぎり滑り込みました。
実際の到着もぎりぎりだった理由が、キンケロと勘違いしてたとは口が裂けても(以下略)…
キンケロのチケットもぎりのスタッフさん、ありがとうございます(←気づいてもらいました)

特段意識しているわけはなかったのですが、実はこの日は私、何十何回目(回数略)かの誕生日、ということでバースデー観劇というわけで、そのポジションに相応しい、心に残る観劇になりました。

この物語のメインは、リーザとルイーゼという二人の女の子。
ドイツ人のリーザと、ユダヤ人のルイーゼ、そして時はナチスドイツ直前からど真ん中の時期、となれば時代の波に翻弄される様が想像付くわけですが、それだけに、2人の心の強い強い結びつきが感動を誘います。

今回公演はWキャストですが、この回は星組。リーザは平川めぐみさん、ルイーゼは千田阿紗子さん。
生まれつき足が不自由で、学校でもいじめられているリーザのことを、ルイーゼはいつも気にかけて助けてくれる。なぜ自分を助けてくれるか分からないリーザは、ルイーゼになぜ助けてくれるのか聞くと、ルイーゼはこともなげに「他に助けたいと思う人がいないから」と宣う。もちろんルイーゼは興味半分でリーザを助けているわけではなくて、リーザのことを好きだからこそ助けてる。助けてほしいと言われていないけど、助けたいと思うから助ける。

一部前半、リーザの内気な様と、ルイーゼの勝気な様が上手くキャラクターとマッチング。はっきりしているのは千田さんのやりたい放題モード(爆)がルイーゼにぴったり。学校始まって以来の問題児っていうのは行動そのまんまですよね(笑)。この役はかつて岡村さやかさんと田宮華苗さんもされているとのことですが、たみーは想像付くんですが、さやかさんはずいぶん雰囲気違ったんでしょうね。でも親身になる感じはとっても想像付きます。

めぐみさんと千田さんとのバランスがとっても良くて、リーザはルイーゼがいてくれたから、少しずつ自信をもっていって、ルイーゼはリーザがいるから、学校の中でもぎりぎりはみ出さないでいられる。
そんな2人の様を時代が引き裂いていって、ユダヤ人であるルイーゼは、自らの居場所を名実ともになくしていくけれども、リーザはずっとルイーゼのために全力で動く。内気な様はどこへやら、ルイーゼのためならなんだってやる。

ルイーゼからリーザへの支えが決して打算でも憐みでもなかったと同じように、リーザがルイーゼのためにすべてを尽くした様も、これまた打算でも憐みでもない。大切な親友のために、できるすべてを尽くす。ユダヤ人にとってすべてを奪ったドイツ人であるのに、ルイーゼもリーザがいるから「全てを嫌いにはなれない」と話す。

内気な様から打って変わって自らの手で運命を切り開くリーザを平川めぐみさんが好演。「大切な人のためなら強くなれる」様は、役柄的に『アイのおはなし』のアイ役と被る部分もあったかも。

ルイーゼを演じた千田阿紗子さんはご自身のキャラクターであるサバサバチャキチャキという面を前面に出して1部で存分に笑いを取っていた反面、後者はいつもの役どころらしからぬ、憎しみに満ちた目で新鮮でした。その分、「らしくない」からこそ、めぐみさんのリーザの献身的な思いが、ルイーゼの凍った心を溶かす流れに説得力が増したように思えます。

リーザは本質的に賢くて、
ルイーゼは本能的に賢い。

リーザは本能的に優しくて、
ルイーゼは本質的に優しい。

2人のリーザとルイーゼを見て、そう思えて。

2人で1つ。かけがえのない親友。2人の奇跡のペアの様が伝わってきました。

この作品はミュージカル座の作品ですが、音楽は流れるものの、ラスト以外に歌はなく、かなり珍しい作品といえますが、実際のところ流れる音楽との呼吸は、やはりお2人がミュージカル女優であってこそ。

久田菜美さんが紡ぎ出した楽曲は、物語に流れ込んで溶け込んで、物語を前と進めていく。時にはゆっくり、時には激しく、時には間を置いて。その音楽の波(nami)に上手く乗れるのは、やはりお2人のスキルがあってこそと感じて。「音楽が物語を動かし、作品が心を動かす」という点で、やはりミュージカル座の作品なのだなと、感じさせられたのでした。

リーザが晩年に、孫であるイーダに言い聞かせた展開も素敵で、ルイーゼが生きた意味、リーザが生きてきた意味を両方とも感じさせる素敵なラスト。助けを拒んでいたルイーゼが最後の最後にリーザに頼みごとをできたのも感動的。ルイーゼがリーザを頼れたからこそ、2人は本当の親友になれたのだと思うし、リーザはルイーゼのためにも生き続けられることができたのだと信じられる素敵なストーリーでした。

お2人のことしか触れませんでしたが、他出演者も素敵な方ばかり。
とりわけこの作品のレジェンドであるリーザの父、森田浩平さんはとりわけ印象的。リーザの聡明さを導き出したと想像がつく知性、この時代の知識人としての苦悩、リーザへの信頼が深く感じられて。

2部制ということで中々ストレートプレイではない試みかと思いますが、作品の力と音楽の力と出演者の力で間延びを感じさせず、また拝見したい作品が1つ増えて嬉しかったです。

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