« 『メリーポピンズ』(1) | トップページ | 『馬車道プレミアムクリスマスサロンコンサート』 »

『Play A Life』(3)

2017.11.21(Tue.) 19:00~20:20
R'sアートコート(大久保)5列10番台(センターブロック)

『Play A Life』東京プレビュー公演。
来年1月に青森で公演が予定されている同作品(2組)のうちの青りんご組、唯一の東京公演がこの回。

会場のR'sアートコートは初めて行く劇場でしたが、駅から少しわかりにくい・遠いことを除いて、とっても見やすいステージで良かったです。「R」は東京労音さんの「R」なんですね(正式名称は労音大久保会館といいます)

3人ミュージカル(男性1名、女性2名)で描く物語。
男性の先生役、今回は染谷洸太さん。女性は奥さん役が水野貴以さん、教育実習生役が吉田萌美さん。

教育実習生がやってきた学校で、指導役を務める男性は、実は非常勤講師。教育実習生(彼女)は、そもそも面接で遅刻して失敗した自分の過失は認めつつも、常勤の先生が指導員につかないことに、多少なりともわだかまりを持っていて、最初は彼の話をきちんと聞こうとはしない。

それでも、彼は「非常勤の僕が指導員なんて申し訳ない」と言ってくれたこともあり、変わり者ではあるとはいえ、彼女は彼のことを少しずつ認め始めていく。

そんな導入部から始まっていく「学校」のパートと、彼の帰宅してからの「家庭」のパートが並行して走ります。彼の目の前には奥さんがいて、会話が通じるようで、どこか通じていない、あたかもすれ違いの夫婦のような空気を見せて進行していきます。

この作品は再再演ということもあり、今までのキャストと比べると今回は飛び抜けて”若い”印象を受けます。男性役の染谷氏は、今までの役者さんのイメージが野太い系が多かった(特に原慎一郎さんのイメージが強いからだと思いますが)こともあり、若くかつ少し頼りなげなところが特徴的。逆に言うと、とある事実から目を逸らせない、自分の殻に閉じこもる脆さは今までのこの役をされた方の中で一番強かったかなと。

奥さん役の水野貴以ちゃん。最初、びっくりするぐらい(精神的に)幼く見えたのですが、物語が進むにつれての変化が印象的。彼の中の彼女が「変わらない存在」ではなく、精神的に大人になっていく様が「彼」との対比で心に残りました。止まることでしかできない「彼」と、実は現実と彼から見た世界が乖離している「彼女」と。後半、彼女が醸し出す温かさがとても素敵。なんだか聖母のような、彼の苦しみを全部包み込むように思えたのは新鮮でした。

教育実習生役の吉田萌美(めぐみ)ちゃん。この3人の中では2演目なんですよね。安定感抜群に、若手伸び盛りの(勝手に通称)3枠で生き生きと動いていました。この枠、平川めぐみちゃんが演じたのが一番好きなんですが、萌美ちゃんもそれに匹敵するぐらい好き。この物語の中では、「押しつけがましくないおせっかい」をこの枠の役者さんがどう出せるかでこの作品の空気が変わるんですよね。それほどこの役を演じる方は大事で。利発過ぎない様がまた良かったです。

作品後半、「彼」の入られたくない空間に、教え子は入ってくる。その時の拒絶する空気は、染谷氏の芝居ではあまり見たことがない方向性で新鮮。どちらかというと受容型の役が多かったように思うので、新境地といったところでしょうか。その分、「拒絶したいのに、どこか少しだけ助けを求めている」感じが、後々の物語展開に生きてくるように思えました。

この物語の後半で「彼」は大事な人を亡くした過去を吐露して思いの丈をぶつけます。その大事な人とは彼の祖母。この設定は以前から変わっていないのですが、実は演じられている染谷氏は、先日おばあさまとお別れされたばかりなことを知っていただけに、今このタイミングで「彼」を染谷氏が演じられたことに、運命の神様とも称するべき何かがあったように思えて仕方なくて。

自分自身も大好きな祖母を亡くした経験があるので分かりますが、「自分の心に溶けていく」その様が、脚本と、演じられていた染谷氏とがリンクして、しかも個人的には私にとってもリンクしたのは、なんだかとても不思議な体験でした。

演出的には「彼」が心を閉ざした瞬間に照明を落として、「心の闇」を表現するようにしていたのが印象的。少しずつ心が開かれていくとともに少しずつ明るくなっていく展開が素敵でした。

「今を生きる」をテーマにしたこの作品。

未来ばかり見ていて、今を生きられていなかった教育実習生。
過去ばかり見ていて、今を生きられていなかった男性。

その2人が、共通する1人の女性によって、今を生きることの意味と大切さを知る。

その心の動きが、必要な先入観なしに感じ取れるこの作品は素敵だと思うし、今回のプレビュー公演で使われたセットが、地方公演として青森(1月)、浜松(3月)に持ち込まれて、全く新しい観客の皆さまに伝わることはとても意欲的で。来年の新作もそうですが、意図的に若い役者さんを迎え入れて、アグレッシブに動くエンジンにしようとしているのかな、ということを感じました。

ぜひ地方公演でも新しい出会いがありますように。

|

« 『メリーポピンズ』(1) | トップページ | 『馬車道プレミアムクリスマスサロンコンサート』 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/74093/66071368

この記事へのトラックバック一覧です: 『Play A Life』(3):

« 『メリーポピンズ』(1) | トップページ | 『馬車道プレミアムクリスマスサロンコンサート』 »