« 『Summer Station 新妻聖子ライブ』 | トップページ | 『beautiful』(3) »

『レプリカ』(4)

2017.8.5(Sat.) 13:00~14:40 Bチーム/D列1桁番台
        17:00~18:40 Aチーム/F列1桁番台
シアター風姿花伝(目白)

OneOnOne恋愛ミュージカル、早くも3演目(再々演)。
初演、再演からのキャストは全て卒業され(千田さんのみ役替わり)、新たな「レプリカ」。

今回はチケットが早々に人気でなくなるということもあり、少々慌てましたが日程も勘案してこの日にマチソワ。
急遽夏休みを入れたので、前日の新潟泊から新幹線で越後湯沢まで、そこから青春18きっぷを使用して池袋着がお昼。予定通り間に合って、両チーム観劇してきました。

昼はBチーム。マナト溝渕さん、ヤヨイ田宮さん、クピド千田さん。
当初は丸若さんがクピドを演じる予定でしたが、事情により出演できずということで、元々Aチームのクピドだった千田さんが両チームを担当されて。

田宮さん(たみー)と千田さん(あちゃこさん)はOneの共演常連ですが、私が観始めてからは舞台上であまりご一緒している印象がなく、それでいてヤヨイとクピドって、それほどまでに絡むシーンがないんですよね、というのを2人の姿を見ていて思い出しました。

ヤヨイとクピドが出会った時と、再び声をかける時と2回だけ。「お前が声を掛けてくれたのはあの時以来だな」の言葉を聞いてて、何だか『SHIROH』を思い出したり。クピドは、ヤヨイの人生を変えてしまっただけに、クピドからヤヨイには声を掛けられずに苦しんでいる。

たみさんと恋愛ミュージカルということだと、掛け合わせ自体がかなり意外にも思えるわけですが、実際、たみさんには珍しく、佇まいに迷いを感じたかな。Bチームはたみさんの迷いに引きずられていた印象もあり、「試行錯誤のBチーム」という感じでした。年齢層のこともあり「大人の恋愛物語チーム」でもあるわけですが。

それ故に、物語的には”悩み、苦しみ”という面が前に出ていた印象が強くて。
たみさんのいつもの役回りである「自由」が役柄上なかなか出せなくて、役者的に「不自由」になっている点と、ヤヨイの「精神的に不自由」な面がリンクしてか、自分の過去に縛られて動けなくなっている、そんなヤヨイをどうしていいか、マナトもクピドも困惑している、そんな感じに見えました。

両チームともクピドを担当されることになった千田さんですが、たみさんとは役者さん的にも近いところに入るせいか、たみさんのそんな感情をダイレクトに受けて、より自分の罪に対して否が応でも自覚させられているというか、過去の自分に対しての後悔が色濃く出ていました。

というのも、両チーム見たので今回のチーム毎の色の差がはっきり感じたのが、「同じクピドなのに、クピド自体も違うし、芝居の色も違う」ということ。やっぱりこの作品はヤヨイの色があってこそなんだろうなと。

夜のAチームはマナトが法月さん、ヤヨイが大胡さん、クピドは同じく千田さん。

ヤヨイの疾走感が凄くて、テンポがとっても心地よく、立ち方もとてもカッコいい。マナトに蹴り入れるあたりとか凄すぎる(笑)。それでいてやり過ぎることなく、後悔から小悪魔まで、幅広く展開するのが流石。
どんな作品でも、役者さん的な旬ってあると思っていて、合う役であってもその人の年齢や力量にちょうど合うことってなかなかなくて。でも今回の大胡ちゃんのヤヨイは、もうストライクゾーンど真ん中。

炸裂する豹変のイキイキさと、それを正当化してしまうちゃっかり感。マナトやクピドさえもに異議を認めさせない圧倒的な強引力。もっと若い頃にやったらやり過ぎになったろうなと思える、役との距離感が、「若くて実力もある伸び盛り」な今の大胡ちゃんにジャストフィット。彼女のさばさばとした感じが、悩みも苦しみもどこかさっぱりさせていて、いい意味で重くなかった(Bチームのたみさんは重さが癖になるぐらい重かった)。

千田さんも、元々はAチームでの稽古時間が長かったせいもあるのでしょうが、本領発揮しまくり。Bチームで拝見した時に「あれ、緊張してる?」と思ったのは気のせいではなかったようで、マナトとのシーンも、ヤヨイとのシーンも抜群のテンポ。ヤヨイとの2度目のシーンで、額縁から半分顔を出して、「『黄金の矢』を打ってもらえて本当に良かったです」とか声色変えて”経験者の声”をやりだして客席爆笑とか。

そういえばこの回、大胡ちゃんがクピード様とのやりとりで一台詞吹っ飛ばした(”はい?”が1回なかった)んですが、せんださんクピード様が通常比5割増し(当社推定)でぶったたいて、「ばちーん」とすんごい音がして(笑)、カテコで法月氏にツッコまれてました(爆)。

この作品は恋愛ミュージカルということで、「男性」と「女性」の関係性について物語は進んでいきます。

「現代は深刻な恋愛不足が叫ばれ」というところから大上段に語っていくと思わせつつ、音楽と演技との絶妙な融合で、OneOnOneらしく深くテーマを抉っていくわけですが、この日両チームを見てて感じたことは、それとは似ているような、違うようなこと。

恋愛あるあるキーワードとして、この作品には出てきませんが、「言ってくれなきゃわからないよ」というキーワードがあります。

でもじゃあ、言えば分かり合えるかといえばそうとは限らない。

そもそも、「言ってくれなきゃわからないよ」という言葉を発する人のことを、本当に心から信頼しているのかと。「言わなくても分かってくれる」ほどに人と人とは繋がれないけど、大事なことを打ち明けていいと思うかどうかは、そもそも「その人をどれだけ信頼しているか」にかかっていると思うのですね。

「言ってくれなきゃわからないよ」という前に、「なぜ自分は言ってもらえないのか」ということへの自省があるのかどうか。自分は大事なことを言ってもらえるだけの存在になっていられるのかどうか。

ヤヨイがこの物語の「過去」の部分で出している、「大事なことを大事な人に伝えられなかった後悔」、そこには相手をそこまで信じ切れなかった自分への自責の念があるように思えて。
だからこそ自分はクピドにあのお願い事をしたように思えて。自分は他人を愛することもできないし、他人から愛される資格もないのだと。

それからすればマナトだって、クピドだってそれぞれ過去の自分への自責を感じていて。その自責で、マナトは恋をすることはできないと思い込み、クピドは恋を見守ることもできないと思い込んでいる。

でも自分以上に苦しんでいるヤヨイを見て、それでもヤヨイの手を取って、一緒に進もうとすることで、自分自身への自責に対する、自分なりの答えを出そうとしている。

マナトはヤヨイのことを「人の心にずかずかと入り込んでくる」と評していますが、それは決して非難してのことではなくて。
人と人との気持ちのぶつかり合いが希薄になって、表面だけで人と人とが付き合っている現代に、相手のことを本当に思うことはどうすればできるのか、「恋愛」という一つのジャンルから切り込んでいるように、この作品は思えたのでした。

・・・

カーテンコール、昼の部は溝渕氏が絶妙に噛む進行で笑えましたが、面白かったのが、

溝渕氏「せんださん、はんださんは2人とも全部出られている、シングルキャストなんですよね」
千田さん「はい、シングルです…って、なんか違う意味に取れますね
たみさん「(笑)」

という(笑)

夜の部は本編のテンションそのままに明るく展開。
法月さんの最後の〆。
「マナトとヤヨイの成就した恋とかけて円周率と解く、その心は」→「ずっと終わりません」
きれいに決まって法月氏、ガッツポーズで捌けていかれたのでした(笑)。

|

« 『Summer Station 新妻聖子ライブ』 | トップページ | 『beautiful』(3) »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/74093/65625636

この記事へのトラックバック一覧です: 『レプリカ』(4):

« 『Summer Station 新妻聖子ライブ』 | トップページ | 『beautiful』(3) »