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『beautiful』(3)

2017.8.6(Sun.) 17:30~20:15
帝国劇場 2階L列30番台(センターブロック)

『beautiful』3回目。この日のキャロルは水樹さん。

前回感じた「パッションのキャロル」の印象そのままに、歌はよりキャロルに近づいて、芝居的にもとても良くなってた。この劇場サイズでの佇まいを手の内に入れてきた、そんな感じ。

水樹キャロルで好きなのは、年齢を重ねたときの居ずまいのリアルさ。
平原キャロルが、結局のところ成功を収める様が何となく想像できるのに対して、水樹キャロルは自分が成功できることを最後まで信じられていないように見える。
「『ふつうのおんなのこ』が『ふつうのおんなのこ』のための歌を作る」というキャラクターには、実は水樹さんの方が近い気がして。

ただ歌を作るのが好きだった”おんなのこ”が、気持ちが通じ合えたと信じた相棒と巡り合えて、次々とヒット曲を作っていくけれど、成功しても相手との気持ちは近くならない。むしろ遠ざかる。
心が通じ合って作ったはずの曲なのに、「One Fine Day」を挟んだ2人の想いは、交わることがなくて。

シュレルズが歌うシーンから、キャロルが歌うシーンに切り替わってキャロルが歌う「One Fine Day」は、水樹キャロルだとより絶望的に聞こえて深く心に沁みます。

・・

そろそろネタバレ入りますのでよろしくお願いします




今回の作品は、プリンシパルは芝居パートを担い、アンサンブルは歌パートを担う形ですが、アンサンブル中ちょっと異質なのが、びびちゃん(綿引さやかさん)の立ち位置。

彼女はソロパートこそ2か所ありますが、いわゆる歌い上げ系のパートには一切入らず、実際に女性アンサンブルでも声質的にパワフル系とは一線を画しています。

本役は2幕前半でキャロルとジェリーの関係に重要な役回りとして入り込むマリリン・ウォルド、彼女はジェリーの浮気相手。
1つ前のシーンで、新曲の歌入れをしているシーンからがマリリン役のパートですが、思い返すと、1幕2場、キャロルがジェリーと出会う直前に、キャロルの前でジェリーが鼻を伸ばしていた(爆)ナイスバディ―な金髪美女を演じているのがびびちゃん。

それぞれ別の役ではあるものの、”ジェリーのタイプの女性”という見せ方をして、キャロルにしてみればその彼女に対する”敵わなさ”を感じているように見えて。

キャロルはライブハウスで歌うように言われた時に「私はそんな可愛い、綺麗な女じゃない(ので歌い手には向いてない)」と答えていますが、それが女性としてのコンプレックスだったのかなと。

キャロルはマリリンのことを「とてもいい娘よ」と言っていたのに、とあることから判明したこと。
キャロルとマリリンが向かい合った一瞬の、目と目で通じ合った「こういう形で出会いたくなかった」やるせなさが深く胸に迫ります。

キャロルにとってはよりによってマリリンと、という面と、マリリンとは別の女性と会っていると宣言されていた(要は騙されていた)の両面でショックだったのだと思いますが。

・・・

この日は2階最後列からの観劇でしたが、2幕開演時間になっても私の前の2列ともがお戻りにならず、結果的に視界を全く遮られずにB席料金で観劇という、またとないお得感を感じたわけですが、逆に言うと今回、興行的に苦戦しているのはこの作品をA席料金以上で観る人をどう連れて来れるかに対する、策の薄さにあったのではないかなと。

2階最後列で聞いていても、真っ直ぐに伝わってくる音圧が凄い『so beautiful』。
キャロルの背後から聞こえるアンサンブルさんの一糸乱れぬコーラスが、実はたったこれだけの人数で作られていたことを、直後のカーテンコールを見て慄然とするわけで、直後のカーテンコールが帝劇らしからぬノリノリなスタンディングオベーションになっていることが、せめてもの救いと思ってはいるわけですが。

今回、どちらのキャロルでも客席は男性比率が通常作品に比べてかなり高く、逆に言うと女性比率が低いんですね。普段帝劇に通う層を取り込めていないように感じるし、本来は主人公のキャロル・キングが女性から支持されるタイプのキャラクターである以上、女性支持が強く出ておかしくない作品なはずなんですよね。

この物語のキャロルで印象的なのは、本人が1幕で語っている「分からないわ、自分で自分のことは見えないもの」という言葉。だからこそなのか、周囲からの想いにしなやかに答えている。頑なに自分の殻に閉じこもることもできそうなものなのに、最初は断っても、次には受け入れている。

「自分を持ち、かつ他人を受け入れるしなやかさを持つ」ことが成功の秘訣であること、それこそが「beautiful」を体現する鍵ということに思えてきます。

そんな話からすれば、現代の女性への応援歌って側面からもアプローチできたのではと思うのですが、それを考えるとなおさらに、やっぱりこの作品は帝劇じゃなくてクリエだったんじゃないかなと思うんですよね(クリエの開場時のコンセプトの一つに「働く女性のための劇場」というのがありました)。

今回、帝劇でやるにあたってオリジナルプロダクションからは「海外では3千人クラスの劇場でやっているから」という話があったそうなのですが、そもそも海外と日本ではキャロル・キングへの認識度が違うし、誰もが曲を認識できるほど、日本でみんながみんな洋楽を聞き込んでいるわけじゃない。

この作品の直前の帝劇が、名プロモーターであるムラタさんのレミだっただけに、開幕以来作品blogもできず、劇場の動向は伊礼社長をメインにしたキャストさんのtweetで漏れ伝わる姿が、本当にそれでいいのかと疑問です。

前からそうとはいえ、リピーターチケットもなぜか当日購入分しか対象にならないのも違和感です。
「当日限り」ということで我を忘れさせ(爆)ということなのかもしれませんが、「良かった」と思って翌日来ても、リピーターチケット対象にはならない。1席でも多くの席を売ろうと貪欲になるなら、そういうところから変えていかないといけないんじゃないかと思います。
(ちなみに博多座さんは後日でもリピーターチケット対象になりますし、電話予約分も半券持参で同様の扱いです。上限席数の設定はありますが)

・・・

かくいうプロモーション上の不満は多々感じつつも、ウェルメイドな作品の魅力は確かで、1人でも多くの人に良さが伝わるよう願うのみです。

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