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『王家の紋章』(3)

2017.4.9(Sun.) 18:00~20:55
帝国劇場1階P列30番台(センターブロック)

初演からわずか半年でのスピード再演。
『王家の紋章』新妻聖子さん初日に行ってきました。

再演としては昨日が初日でしたが、同じ東宝さんなのに初日が日生と帝劇でぶつかる(しかも今日はクリエも初日)という春の珍事もあり、今日がmy初日になりました。

初演は仕事の繁忙期とぶつかって、実質的に2回しか見られなかったので、脳裏にそれほどまでには焼き付いていなかったのが幸いしたのか、実のところ相当変わっている今回の再演を、かなりまっさらな気持ちで見られたのは良かったです。というか少数派だと思いますが、実は初演より再演が好きだったりします。

ネタバレも含みますので、お気になさる方回れ右で!!




全体的に、起伏が少なくなったというか、ドラマチック度は減った印象。

メンフィスの荒々しさも減って、キャロルはメンフィスに腕ポキされないし、早い段階でキャロルは「私エジプトに残るわ」になってるし。

流れ的に言えばメンフィスとキャロル、2人の関係が濃くなって、よりこの2人を中心に物語が成立していることがはっきりして、この作品で何を訴えようとしているかがはっきりしたように感じて、初演より再演が好きです。

初演を見たときに思ったのが、「『王家の紋章』を舞台化する」が目的になっているように思えて、それで何を表現しようとしているのかが分からなかったんですね。
初演はラスト、キャロルのソロ(+皆のコーラス)で終わりますが、ある意味MAを思い出すかのような、「みんな自分で自立しなきゃね」は、この作品の表現したいメッセージしては、ちょっとピントがずれているように感じて。

再演では、他の役の出番をがんがんに減らして(物語のストーリーもぶつ切れにしてまでカットしているのはちょっといただけなさすぎる)、2人のストーリーをメインに作っていますが、それだけに、メンフィスとキャロルの2人のストーリーが、2人だけのストーリーになっているわけではないところがポイントなのではないかと。

メンフィスとキャロルはお互い愛し合い、お互い唯一無二の存在。メンフィスはキャロルのためなら何でもする。が、この2人が結ばれることは2人だけの問題じゃなくて。
宰相イムホテップがいみじくも語っていますが、「ナイルの娘を娶ることが、エジプトの繁栄のために必要」なのです。

聡明であり知性に富んだナイルの娘。
がしかし、彼女はいきなりその立場になったわけでもなく。
メンフィスにただ一人公然と抵抗し、メンフィスの怒りに触れ労役に放り出されながら、奴隷に対してさえ、泥水を真水に変え、真摯に救おうとした。
メンフィスが死地をさまよった時、的確な指示と献身的な看護で、メンフィスを生還させた。

一つ一つの奇跡は、キャロルにとって自らを現代から遠ざけるものであって、兄との別れを意味するものでもあって。もちろんそんなことを周囲に言っているわけでもないけれども、キャロルは自らの行動で、期せずして自らをナイルの姫として、ある意味神格化していく。

現代からいきなり古代エジプトに飛んできたキャロルは、最初は『少女』。
容赦なく人を殺すメンフィスに対して、「人殺しは現代では罪」と咎める。

でも、自らの我儘で出かけた街中で、隣国ヒッタイトに捕えられ、自らを盾にされてエジプト軍に死者を出してしまう。
「人を殺すな」と言っていた自分が、自分の不用意な行為で大切な仲間の命を奪われてしまう。
そこで初めて知るわけですね。
「大切な人を守るために戦わなければならないことだってある」
「大切な人を守るために相手を殺さなければならないことだってある」

「人を殺すな」と言っていたのはただの綺麗事だったと。
本当に仲間を守りたいのであれば、自分も戦わなきゃいけないんだと。

初演を見たとき、メンフィスにキャロルが心を開いたのは、「メンフィスが国を守る『責任』から逃げていないから」と書いたのですが、再演を見て印象的だったのは、「キャロルもまた、国を守る『責任』を知った」ことがはっきり見えたこと。それが一番再演で好きなところなのです。

少女だったキャロルが、自分の責任を自覚して、はっきりとオーラを纏う瞬間。
そこが、もうこれ以上ないぐらい新妻聖子さんの独壇場。

役の責任を背負い、この作品の物語を背負い、責任から逃げない姿が、キャロルをぐんと大きくしていて。

キャロルがはっきりと責任を背負ったからこそ、責任に対して孤独だったメンフィスも、よき伴侶を得て、エジプトの繁栄という「未来」をしっかりと示すことができる

メンフィスとキャロルが結ばれることは、「愛」と「責任」という両輪をもって、エジプトに暮らす皆の幸せを保証するもの。
だからこそ、2人の幸せは皆の幸せである。

それが物語として繋がって見えたことが、何より今回嬉しかったです。

新曲はキャロルのソロが1曲、2幕中盤に。
いわゆるお買い物ソング(ものすごく『MOZART!』のナンネールの「あら、モーツァルトの娘さん」を思い出す(笑))ですが、後半が完全に”リーヴァイさん、これ聖子さんが歌うことしか考えてないでしょ”曲で噴いちゃいました(この日来られていました)。

メンフィスとキャロルのデュエットもバランス取れてて素敵でした。
それにしても、だれもが心配せず、だれもが期待し、そしてその期待に十二分に応える新妻聖子姫にただただ拍手。いやはや凄かったです。

少女の要素も、姫の要素も、どちらも聖子さんの中に持っている要素だと思いますが、それを使い分けて、必要な要素だけ確実に出す技術が素晴らしいです。

・・・・

この日は聖子さん、平方くん初日ということでご挨拶。

聖子さん「本日はありがとうございました。皆さんご存知かと思いますが私王族でございまして…本日は王族の皆さま、日本全国また海外からもおいでいただきましてありがとうございます(笑)。今回大好きな台詞も追加されまして、「愛いやつ(ういやつ)」がもう嬉しくて!!!(会場内笑)」

浦井くん「(会場に向けて)愛いやつ」

聖子さん「『愛いやつ』の安売りしないの!(笑)」

聖子さん「この作品を(演じ)させていただいて本当に幸せです。皆さま、素敵な初日にしてくださり、ありがとうございました

ちなみに平方くんは「8月まで頑張ります」と言って浦井氏に「8月は初演だよ」とツッコまれていました(笑)。

浦井氏が喋ってる途中、伊礼氏がツッコんで、
浦井氏が
「ツッコまないの!帝国劇場でいいこと言ってるんだから!」と返してて笑いました。

カーテンコールではテンション上がった聖子姫の両側に浦井氏と祐一郎氏、そして伊礼氏。
聖子姫が手を繋いだ浦井氏と祐一郎氏と一緒にぴょんこぴょんこ跳ねるものだから、2人と、そして隣の伊礼兄までぴょんこぴょんこ跳ねてて面白すぎる絵が見られて満足です(笑)

再演は初演よりは増やしてとったので、少し落ち着いて見届けられそうです。

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