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『月ノ原中学校音楽準備室』

2017.2.5(Sun.) 16:00~17:25
新宿シアターミラクル

初演で1日限り上演で好評だったそうな朗読劇の再演。
今回は2日間4回公演、上手く時間が空いたので見に行ってきました。

3つの短編が「月ノ原中学校」で過ごした過去で、登場人物ごとにちょっとずつずれて見えるのがとても興味深く、素敵な作品でした。

その3つの短編はそれぞれ約20分ごと。壇上に登場するのは全て女性。物語に登場する男性は全て女性の言葉を通じて表現されます。

1つ目の「面と向かって言えないけれど2」はかつての親友と女性が再会する話。

同じく中学校当時の2人も同時に壇上に現れて、現在と過去を2人×2で進行する流れが新鮮です。いつも相談する側だった彼女(綾子)の「現在」側を演じたのはキャラメルボックスの原田樹里さん。彼女の持ち味の「明るさ」「前向きさ」と、親友(しおり)に頼る甘えん坊さがキャラクターにぴったりで期待通り。芝居がしっかりしているので朗読劇でも安定感抜群。
中学生の綾子を演じた神崎亜子ちゃんとのシンクロがとても良かった。あぁ、確かにこのテンションは今は樹里ちゃんだなぁという部分が随所にあって(笑)

2人が再会したきっかけは、ある男性の死。
その男性は、今回の3つの短編を貫く軸で、それぞれの登場人物が多少なりともその人の存在に影響を受けているのが、後に上演される2つの短編で分かってくることになります。

2つ目の「合唱部部誌」は、合唱部で同じ時を過ごした3人の話。

清水彩花さん、皆本麻帆さん、宮菜穂子さんというミュージカル女優3人が演じて、しかも「合唱部」ですから当然のごとく歌があり、実際2曲も聞けて嬉しい限り。

1曲目は湘南乃風『純恋歌』
2曲目は湘南乃風『親友よ』

実のところ、仲が良いだけではないところも出てきたりはするのですが、歌のシーンではちゃんと気持ちが通じ合ってて、なんでこんなに歌ではぴったりなのに、気持ちは通じ合わなくなってしまうんだろうと思ったり。

彩花さん演じる部長のココロは、皆本さん演じるハル、宮さん演じるホノカと「合唱部部誌」で表面上は仲良く、事実上の交換日記をしているけれども、実はココロはハルに対して凄く黒い気持ちを持っていて。

彩花さんは他の作品でも「本心」を言わないキャラクターが多いので、これでもかというぐらい言いたい放題に本心を曝け出していて新鮮でした。
女性ならではの心情というか、実のところそれは先ほどの1話目で出てきた男性と幼馴染で、ココロは好きだったけど、ハルに取られたという話で…。

そしてそのハルも、今となってはこの世にいない。
彼女が去った今、ココロができることは今をしっかり生きることしかない、と。

ミュージカルを中心にやってきている女優さんは、朗読劇となると、なかなか勝手が掴めないのは良くあることのようで、彩花さんも御多分に漏れずのようでしたが(実際、歌い出すとかなりホッとしているように見えて(笑))、この日は千穐楽、4回シリーズの4回目だったこともあり、ようやく手慣れてきたように見えました。

そして3つ目は「フナムシ」。女性1人の朗読劇ですが、先の2話の話を受けた「彼」はここにも登場。

「彼」の最期までの期間を一緒に過ごした女性がこの方。
中学校時代、サッカー部のエースだった彼が彼女(サエ)の基に現れたとき、右手を失っていて、でもその理由は語られずじまい。
彼女は彼に寄り添い、時間を過ごすけれども、どことなく空虚な時間を感じたというか、むなしさを感じる作品でした。

その中でも『「.....というわけじゃないんだけどね」って口に出すときは、そういうことなんだよ』って台詞は印象に残ったな。そう、否定したい現実は、「そうじゃない」って最初に否定しておきたくなるもの。

「合唱部部誌」でココロがハルに対して語った「ハルが悪いわけじゃないんだけどね」という台詞ともリンクして、なんだか腑に落ちるものがありました。

「フナムシ」は、彼が中学時代、教師にちょっかい出すために音楽準備室に持ち込んだ「フナムシ」は、時を経てハルの葬儀のために戻った、彼とサエのもとに再び現れて。
ハルを失ったことで大泣きしている彼を見ていて、サエは心の中にぽっかり空いた穴を埋められずにいる。

自分が死んだら彼はこんなに大泣きしてもらえるだろうかと思うと、「それはない」ということを、(擬人化した)フナムシが自分に対して断言し、サエはたまらずフナムシを踏みつぶす。

フナムシは「現実」を表現していて、サエは現実と向き合う力を持てなかったのかな、と思ったりして。

3作品中、唯一「フナムシ」だけ女性の演出家さん(藤原佳奈さん)なこともあるのか、少しの違いですが容赦のなさを感じたりしたかな。

・・・・

3作品中の合間に入る歌が、「歌子の恋」というパートで、着物姿の”小玉歌子”さんが客席を沸かせます。

登場人物的には実はこの方、月ノ原中学校音楽準備室の合唱部顧問なので、各パートにそれなりに関わる人物ではあります。
が、「笑い」という点では確かに面白いのですが、ちょっと存在感が強すぎたというか、バランスからするとちょっと出すぎていた気がしました。本編と分けて頭を整理するのに苦労させられた感はあります。

・・・・

振り返ると、この作品は「中学校」だからこその色なのだろうなと。
小学生だとまだ自我に目覚めていなくて、感情のぶつかり合いといったものもそこまではない。
高校生以上だと育った社会が違う人たちが集まっているから、自分と他人との距離が自然にできる。

中学校での思い出と改めて向き合った時に、これからの人生にとってその思い出を引きずるか、それとも拒絶するか、それぞれの登場人物が様々な選択をする場面が、印象的な作品でした。

中学校という閉じた世界の中でいられた幸せと比べると、大人とはいかに面倒なものかと。
東京という街に出たときに、「ただ広がる世界」に直面するのを自由と捉えるか、「何をしていいかわからない」と迷うものなのかは、結局のところ自分で切り拓いていくしかないということなのでしょうね。

そんなことを感じた佳作でした。観られて良かったです。

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