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『Before After』(9)

2017.2.12(Sun.) 16:00~18:10
中目黒キンケロシアター B列10番台
(センターブロック下手側)

BA2017年2月公演もこの回が大千穐楽。
3ペア中、岡田&玉置ペアのみ都合で見られず、逆に石井&池谷ペアは2日連続2回目です。

前日の5列目から2列目に変わりましたが、見やすくなるかと思えば実はそうでもなくて。

1列目(A列)の視線が下手をすると舞台先端より下に来るので、見上げることになり、2列目のB列でようやく舞台先端とほぼ同じ。更に加えて実は今回、新たに作ったセットは八百屋舞台。

キャストの皆さんは劇場入りしていきなり八百屋舞台(斜めの舞台)で面食らったそうですが、結論は「丘だし(byやんさん)」でした(笑)

石井&池谷ペアはこの回が3回目ということもあり、肩の力はかなり抜けていて。
ベンが自由なのはどのペアでも共通なんですが、このペアの面白いのは、エイミーも自由(笑)

やんさん、コメディエンヌの才能を随所に発揮しまくりで、いわゆる、たみさん(田宮華苗さん)、びびちゃん(綿引さやかさん)の系譜を継いでいて。

パパの電話がかかってきた後の電話対応は、歴代エイミーでびびちゃんが一番神がかって面白かったですが、やんさんエイミーも決勝戦に進出するぐらい面白い。
「Keep Smiling」で、ヒロイン顔の鉄則を完全に無視して「ぷにゅっ」とおたふく顔をするやんさんが面白すぎて爆笑します。

それもあってか、やんさんエイミーって、いろんな意味で堅物感がしない(笑)
どちらかというとパパも適当にあしらって上手いこと言いくるめそうな感じがする(笑)
というところはあるにせよ、丘に連れてこられて目隠し(手)を取られた時の表情が凄く良くて。

あの丘の夕日は、エイミーの価値観を変えた瞬間だったんだな、ということを感じてとても印象的。

やんさんエイミーは、実のところ、それほどまでに自分が縛り付けられて生きていたわけじゃないように見えたけれど、それでもあの夕日は「自分の知っている世界が、実は狭い世界だったんだ」ということを知ることができたように見えて。

社会的に客観的に見て、何不自由なく生活しているように見えるエイミーが、実は充実して生きていなくて。
社会的に意義のある生活をしていないように見えるベンが、実はそれなりに自由に生きていて。

どことなく「今の自分に欠けたものがあるんじゃないか」と薄々気づいていた同士が出会って、「相手が自分の空いた”間”を埋めてくれる人」と思えたように見えて。その感じがこのペアでは特に良かったです。

動きといえば、BAはキャスト別の動きをとりたてて合わせないのが特徴。

やんさんエイミーで面白かったのは2幕頭の前回からの新曲(Daddy, I Met This Boy)、パパに電話をかけるシーンの曲でこれでもかというぐらい動き回るその動きがとっても良い!
不安だからじっとしていられない、だけどベンを好きな気持ちは曲げられない、でもパパは傷つけたくない、いろんな気持ちがまっすぐに伝わってきて、皆がエイミーを応援したくなる、とってもチャーミングなパートでした。

もう一つは石井ベンの個展前日のいじいじパート。丸椅子の上に体育座り。実は八百屋舞台に小さい丸椅子なので、びっくりするぐらい腹筋に力入れないと耐えられないんだそうですが(カテコ談。M座の若手の方に開演前に試しに座ってもらったら「無理です」だそうでw)、ベンのいじいじ姿に辛抱強く付き合うエイミーと、「ベン、あなたのこと大好きだけどいい加減腹が立ってきたわ」って言うエイミーの嘆きが説得力ありすぎて笑いました。

物語でははっきりと明言されていないですが、「絵は売り物にしない」といっていたベンは、エイミーの忠告を聞き入れて個展開催を承諾しているからこそ、前日に悩んでる。
エイミーはベンに対して、「絵画を認められる」ことで
「社会的に、自分が存在する価値のある人間だ」ということを知ってほしかったわけですね。

このペアで印象的だったのは、池谷祐子さんの芝居面での進化。
以前から『レ・ミゼラブル』や『ミス・サイゴン』では拝見してはいたものの、どうしても「歌の方」という印象が強くて。

ただ、一昨年に上演されたTipTap『Play A Life』の先生役で、明らかに彼女の芝居の機微が変わって深くなって。
『Play A Life』をやってから『Before After』のエイミーをやってくれて本当に嬉しくて。

役と役者の巡り合いは、なかなかすべてが上手くいくわけではないけれど、こういう奇跡があるから面白い。

この日の2幕のベンとエイミーのやり取りは深くて重くて、音楽と重層的に絡み合って胸の奥まで迫ってくる、すごい迫力でした。

カーテンコール後の大千穐楽記念ご挨拶は、石井さん(上手側)と池谷さん(下手側)がお互い「どうぞどうぞ」と譲り合った上で、結局池谷さんが先行。

池谷さん「ご観劇ありがとうございました。今までたくさんのベンとエイミーが紡いでくれた『Before After』に関われたことを嬉しく思います。おいでいただいたお客さま、演奏をしていただいた(バンドの)皆さま、スタッフの皆さまのおかげです。ありがとうございました」

石井さん「順番逆にすれば良かった(笑←池谷さん大ウケ)。そんな完璧な挨拶されちゃったら(どうすればいいの)(笑)。ベンという役は○○な役で正直共感できなくて(←この表現は演出上の都合により少しオブラートに包んでますのでご了承ください)、台本を投げまくってました。ゲネプロでようやくなんとか掴めた感じです」

池谷さん「私は(ベンを)褒めまくっていたのに」

石井さん「自分は自分の役を相手からどう見えるかを気にしちゃって、それが分からないと中々役作りできないタイプなので、池谷さんにはお世話になりました」

池谷さん「いえーい(と両手挙げて喜ぶ)」←会場内、意外性でウケてました(笑)

石井さん「なんか家が近いことが分かったんで遊びに行きますね」

池谷さん「じゃぁまたそこで『Before After』やりますか(笑)」

石井さん「(苦笑)」

…という漫談が(笑)

そんな感じで、綺麗に大千穐楽の幕が下りました。

今回の「Before After」、興行面から感じたことを少し。

今回、アフタートーク1回・アフターライブ2回ということで集客的にはかなり厳しかったことを窺わせます。
スターパインズが150席に比べて、キンケロシアターは133席、1年前の日暮里d-倉庫は100席でしたが、スターパインズカフェ(吉祥寺)にしろ、日暮里にしろ、そこまで集客難を感じた記憶はなくて。
※スターパインズは公式では椅子席150席ですが、たぶん実質100席ぐらいだと思います。

色々な巡りあわせはあれど、やはり経験者が1名もいないのは陣容として少し弱かったのではないかなと。
過去の公演でも1人も経験者がいなかったのは2015年8月の内藤さん・岡村さやかさんの時だけですからね(ちなみに私はこの回が初見ですが、そこで衝撃を受けて今に至ります。経験者なしでそれをやった内藤さん・岡村さやかさんは凄い)。

1ペアがいると、どうしても他のペアが真似してしまうので、デメリットもあるように思いますが、1名だけ残って次に引き継いでいく形の方が良かったのではないかなと。

というのも、作品が素敵なのは分かってはいるのですが、全員が新キャストだと、どこまで仕上がってくるか、観る側からは冒険になってしまって抑え気味になってしまう感じがあって。
経験者1人いれば、そこから前回観た人を取り込めて、1度見れば他のキャストも見たくなる作品だから、そんな意味でも循環があればよかったかな。

クラシカルミュージカルほど敷居が高くなく、ハイセンスな作品だからこそ、普段ミュージカルを見ない人にも「初めてのミュージカル」として見てほしい作品。
それだけに、会場にしろ価格にしろ、ちょっと敷居が高くなってしまった感があったことに少し残念な面もありました。
が、役者のみなさん、スタッフのみなさん、そして作品の力で変わらず感動をいただけたことは幸せでした。

またあの丘が発現しますように。

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