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『世界を繋ぐ方法』(1)

2016.12.4(Sun.) 17:00~18:50
アトリエファンファーレ高円寺
2列目1桁番台(上手側)

11月30日が初日の3人芝居。
元・演劇集団キャラメルボックスの近江谷太朗さんと、現・演劇集団キャラメルボックスの大内厚雄さん。
紅一点は高橋由美子さん。3人とも他の作品で拝見している安定の皆さまです。

実のところ、初日と2日目と続けてチケットを取っていたのにも関わらず、30日は銀座の(新妻)聖子さんと時間がぶつかって断念、2日目はシステム障害対応が長引いて(自分のチョンボも重なって)断念。ようやく念願のmy初日となりましたが、由美子さん出演の新作では、ここ数年では一番遅い、5日目の観劇となります。

作・演出は元アイドルの笹峯愛さん。アイドル当時は「笹峰」さんでしたね。とても懐かしいです。

この劇場は去年できたばかりの綺麗な劇場ですが、一応注意事項として、お手洗いが1つしかありませんので(男女共用)、ご来場の方は来場前にご用を済ませておくことをお勧めします(主催的ご連絡ごと)。そもそも舞台袖下手側に入口が張りついているため、上演中は使用できませんし、掲示も剥がされています。

素敵な舞台を見ると、皆さんに見てほしいと思うものですが、とはいえどこまでネタバレしないようにするかはいつも頭を悩ませるところで、ネタバレを省いて言うのだとしたら、

「芝居に嘘がない3人が、人生で嘘をつく人間を生きる物語。でも、嘘をつきたくなくなる相手と出会うって、きっとあるよね」、そんな物語でした。

近江谷さんのダメなのに愛らしいさま、大内さんのカッコいいのにどこか欠けてるさま、そんな兄弟と絶妙な距離で関わる由美子さんの明るいのに翳りを隠せないさま。
大人だからこそのもどかしさがたっぷりで、「大人もいいよね」って感じて帰路に着けるような温かい作品です。

それでは、若干のネタバレを含めた本編感想に参ります。

・・・

3人の登場人物のうち、メイン的なポジションなのは今回「yatapro」プロデュースという形で旗振りもされている近江谷太朗さん。演じるは夢ばかり追い掛けてきた、大人になり切れない大人。兄、中島正平役。

そしてその兄の弟を演じるのが大内厚雄さん。キャラメルボックスでは近江谷さんの後輩にあたるわけで、空気感ぴったりです。お医者さんということで、できる弟、といった空気を醸し出しています。ビバ白衣。弟、中島隆役。

その2人に関わるのが高橋由美子さん演じる岸部柚子。かつて東京でホステスをしており(正平曰く「ナンバーワンホステス」と言っているが、本人は否定している)、とあるお客さんとの出会いで中島兄弟が住むこの田舎町にやってきて、正平の隣室に住んでおり、隆が主治医である。

酒浸りな正平に対して、「酒やめなさいよ」と柚子が言って取り上げるわけですが、まぁ由美子さんがそれを言うとなかなか面白かったりはしますが(爆)、甲斐甲斐しく食事を差し入れているあたり、本人も語ってますが「惚れちゃうとどうにもならない」あたりの可愛さもあって。

由美子さんがホステス役をやるのは初めてではないですが、「口に出せないこともたくさんしましたよ」と語るのにも関わらず、心のピュアさが絶対消えないんですよね。これは最初に舞台でホステス役をやった『真昼のビッチ』(シアターアプル)以来一貫して消えないんです。

正平が言うに事欠いて「簡単な仕事だよな」と言い放った時に「簡単な仕事じゃないから」ときつい表情でいう辺りのプライドはもちろんあって、それでいてホステスで出会ったとあるお客さんとの思い出が、自分と他者を繋げる唯一の方法になっていたりする、不器用なところもあったりする。笑顔と明るさの裏にある、実は明かさない翳り、といった役どころは由美子さんの役の十八番の一つではありますね。

そしてそのお客さんと正平の、正平は意識していない共通点こそが、柚子にとっての今の唯一の他者との繋がり。

正平を叱ってみたり、すかしてみたり、ちょっとだけ甘えてみたり。喜怒哀楽がたっぷりです。
社交ダンスを隆と習ってみたりで上手いコンビネーションを見せたりしつつも、柚子にとっての視界の先には正平しか見えていないんですよね。

ただ、正平は妻を末期がんで亡くしており、その傷からまだ癒えていない。その時の主治医も弟である隆であり、声には出さないとはいえ、妻を救えなかったことを今でも悔いている。
兄は弟を思って口に出さないのかもしれないけど、それ故に兄弟の関係でありながら、2人の間には繋がりがあるようでない。

本当は心が繋がっているはずの兄弟が、どことなくぎくしゃくしているところに、2人に関わる関係性で柚子が入ってくる。柚子は正平とも繋がろうとし、隆とも繋がろうとする。正平とは能動的に、隆とは消極的にという違いはあっても。

この作品にとっての繋がりは「過去」と「現在」と「未来」のそれぞれでの繋がり、また「過去」と「現在」と「未来」それぞれの繋がりでもあって。

過去の妻との繋がりを忘れられない正平と心で繋がろうとする柚子にとって、その「過去」を否定しないことでしか正平と繋がることはできないのだろうなと思うし。
そうでないと正平はまた昔と同じ道を歩んでしまうのだろうなと思うし。

正平と亡き妻の「繋がり」は今も続いているし、
正平と柚子の「繋がり」は続けたいと柚子は願っているし、
正平と隆との「繋がり」が本当にできることを柚子は願っているし、
そのために柚子が何ができるかを願ったことが、少しずつ「繋がり」を太くしていくさまがとても印象的でした。

人が人を思うことに正解はなくて、
でも人が人を思うことそのものが大切で、
大人だからこそ目を逸らしたくなる現実はたくさんあって、
眼をそむけるからこそ生きていける面も実際はあるんだけど、
1人じゃ出せない結論は、2人では出せたりして、
弱音を吐けなくなった大人にとっても、弱音を吐ける相手は大切で、
血の繋がりと心の繋がりはきっとどちらも大切で、
願い続けることで叶うかもしれないことは大人になってもあって、
大人になるほど高望みはできなくなっても、
望みが叶うことで人間は生きていけるのかもしれない、
そんなことを思ったりしました。

ラストに進むにつれ、辛くなるシーンもあったけど、でも、最後のパートの由美子さんのあの姿は、願い続けて叶った一つの夢の現実化した姿でもありました。

約90人の小劇場、3人の生きざまがたっぷり伝わってくる素敵なお芝居でした。
11日まで、高円寺南口駅下車2分のアトリエファンファーレ高円寺にて。平日はまだお席に余裕があるそうですので、よろしければ是非に。

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