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『八犬伝-東方八犬異聞-』

2016.11.26(Sat.) 18:00~20:00
 全労災ホール・スペーズゼロ 14列20番台(上手側)

2016.11.27(Sun.) 16:30~19:00
 全労災ホール・スペースゼロ 12列1桁番台(下手側)

「南総里見八犬伝」をモチーフに女性側から描かれた原作「八犬伝-東方八犬異聞-」、初演は昨年8月(シアターサンモール)ですが、好評につき第二章が上演。新キャストとして岡村さやかさんが琥珀役を演じられるということで、見に行ってきました。

音楽と演出をOneOnOneの浅井さやかさんがされていて、初演でもパフォーマーにOneOnOneでお馴染みの千田阿紗子さんも出られていたので、初演時点で気になってはいたのですが、観られる機会がなく、今回が初見です。

とはいえ、今回の上演に先立って初演のニコニコ動画上映会をやっていただいたので、前日に滑り込みで見て、世界観は何となく把握して見に行きました。

音楽と演出は初演に引き続き浅井さやかさんなので、音楽が初演から一貫してぶれない、激しいシーンをもってしてもどこか安らぐ場所があるような様は、OneOnOneの世界観と通じるものを感じます。

どことなく、綺麗事で終わらせることをよしとしない、感情のぶつかり合いでしか相互理解は起き得ない、といったポリシーが、特に今回の第二章には強く感じます。

第二章の上演は千穐楽を迎えましたので、ネタバレ込みで参ります(最大のネタバレは避けますが)。




原作が未見なので、原作に触れないで書かざるを得ないので、原作から見ると的外れなことを書くきらいはあることをご容赦いただくとして、ただやはり原作を読まないで見ても理解できる造りかというと、そうではないなと。

本音を言ってしまえば、パンフレットに人物相関図は欲しかったです。ニコニコ動画見直しながら自分で人物相関図作っちゃいましたもん(笑)。

今回の作品のような場合だと、見る前に見ていい人物相関図に、透明のネタバレシート(OHPシートみたいな透明なの)を前頁から被せて、「実はこういうことだったんですよ」を”見終わってから見てください”バージョンが作れる、といったパンフレットに憧れるんですけどね。

実はこの人の”影”はここから派生してた、とか。この人に対して実はこういう感情を持っていた、とか。
この人は実はこういう意図で動いていた、とか。この人は実は同一人物だった、とか。

観る前に入れておいた方がいい情報、
観た後に入れた方がいい情報、
それをなしえるのはパンフレットが一番影響力があると思うので、初見の立場からすれば、その点はもう一工夫欲しかったと思います。
原作物を舞台化して、それが一回り成長するには、原作初見でも物語に入り込めるかどうかが重要かと思いますので。

という前提を置いたうえで、今回の第2章を俯瞰するに、言われていたように正に「琥珀編」と言われていた理由がしっかり伝わります。

どんな作品においても、「この人がいなければ物語が成立しない女性がヒロイン」と私は思っていますが、この第二章における琥珀、そしてその役を演じた岡村さやかさんなくしては、この第2章の物語が伝わりきることはなかったのではと思えて。それが何より嬉しかったです。

この物語の本流は「八つの玉を持つ存在を探すこと」であり、その中心にいるのが主人公である信乃<しの>(坂口湧久さん)。そして信乃にとってのかけがえのない存在である荘介(松村龍之介さん)。信乃の「本当の願い」の対象は荘介であり、荘介の「本当の願い」の対象は信乃。

その2人の深い結びつきが物語の主眼になり、2人を取り巻く八犬士がそれぞれ違った方向性で2人に対していくという、ある意味”閉じた世界”の占める部分が大きいこの作品。

その作品の中において、第2章に初めて登場し鮮烈な印象を残す琥珀。
琥珀の存在は、信乃にとって他の誰にも代われない存在であり、また琥珀にとっても信乃は他の誰にも代われない存在。

その意味で、本流で「どちらもが相手を求める」信乃と荘介の関係である太い幹。
信乃と琥珀も「どちらもが相手を求める」関係である太い幹。
後者は前者はリンクしているように見えました。

琥珀がとある気持ちから教会に向かい、そして信乃と出会う。

信乃に対する優しさと裏腹に、琥珀の心は枯れ果てて、自分が生きる意味を見いだせていなかった。それが信乃と出会うことで、まさしく幸か不幸か運命は変わり始める。
自分を必要としてくれている人たちが望む金色の眼。自分を求めてくれる人たちは自分の眼を求めているだけではないかという疑心暗鬼が、心の闇であり鬼への入り口でもあったのかと。

振り返ってみると、岡村さやかさんを初めて拝見した、OneOnOneの休止前の最終作であった『しあわせの詩』から、彼女の役柄はほぼ一貫して、温かさに溢れていたように思います。

『Before After』のエイミーの、ベンへの優しさ然り。
『BIRDMAN』の、”口は汚いが想いはピュア”なドロシー然り。
『ひめゆり』のふみの、妹への無償の愛、然り。
激することで特徴的な『ウレシパモシリ』の歌1役であれ、本質は「理不尽に虐げられる人々を愛するが故の、社会への怒りの表明」ですからね。

唯一今回の役と近そうなのが私が大好きな『Second Of Life』の”昔の彼女”役。自分を疎外され、居場所を見つけられなくなって魂が彷徨うような感じが、今回の役とどことなく通じる気がします。

というのも、普段あまりに「あらゆることに肯定的」なイメージが強いさやかさんにあって、今回の役は特に後半、傍目にはとても”綺麗”とは言えない心の中を、本意でなく曝されることになる。

子供は時に残酷で、大人が”隠していることで精神を保っている”そのバランスを、無邪気に無意識に壊すことがある。

琥珀が「子供なんて嫌いよ」と呟いた言葉は、正に琥珀の心の叫びであり、断末魔の叫び。
それでいて、ただの恨みには聞こえなかったのがさやかさんの凄いところ。
さやかさんが呟いた「子供なんて嫌いよ」の言葉の裏に、「私の苦しみに気づいてくれてありがとう」が見える、それが凄いなと。

-周囲を遠ざけたのは、自分の弱さだったのかもしれない。
自分と向き合わなかったのは、自分の弱さだったのかもしれない。

信乃は子供だったからこそ、琥珀の苦しみにまっすぐに向き合ってくれたのかもしれない。
自分は不幸だと思い続けていたけど、実は自分を不幸にしていたのは自分だったのかもしれない。
でも、自分は不幸だと思うことで、自分でい続けられてきたのかもしれない。

…信乃の存在によって、琥珀は初めて自分に向き合え、魂が救われたのではないかと思えて、素敵でした。

「本当の願い」と思い込んでいたことは、実は本当のものではなかった。
「本当の『本当の願い』」を気づけた琥珀は、荘介が言うように、信乃に感謝していると信じられて、胸がじんとなりました。

信乃に抱きしめられたときの琥珀の笑顔、本当に素敵でしたし。

そして、信乃にとっても、「ロザリオを渡す」という行為をもってしたことは、「過去の自分」と琥珀を重ね合わせているようにも見えて。今の自分がこうなってしまったことへの、”もっと何とか出来たんじゃないか”という思いを琥珀の再生にもつなげているようにも見えて。

自分から遠ざけておいて、孤独を怖れる琥珀。
心を無にしてでしか生きることができず、生きる意味を見つけられず、死を願う琥珀。

過去の自分と重ね合わせ、琥珀が生きた時間の間で”生きる意味”を見いだせたなら、信乃が生き続けることにも意味があるのではないか。そう信乃が思ったようにも見えて。

信乃が琥珀を変えたし、
琥珀が信乃が変えた。

そのお互いの関係性が深く深く伝わってきました。

信乃を演じた坂口湧久さんは『MOZART!』のアマデで拝見して以来なので、大きくなったなぁと。
去年の初演(を映像)で見たときよりも子供度は薄れたような気は少しして、本音を言えば、第2章を去年の彼で見てみたかったという思いはあります。

で、実は彼は、東宝ミュージカルアカデミー(TMA)の試演会で『ミス・サイゴン』のタム役を演じて、その時のキム役が岡村さやかさんだったそうで、それ以来の再会だったのだそうです。

今回も本編のシーンの中で、「あれ、これサイゴンだよね?」的なシーンが存在しますが、そのシーンを見ていると、あぁ、時空を越えて、出会うべくして再び出会ったんだな、と。

琥珀役での岡村さやかさんは、今まで積み重ねられてこられた魅力をあまた出されていて。
正の方向である愛らしさ、強さのみならず、負の方向である苦しみ、憎しみもダイレクトに伝わって。

浅井さんの掲げる、音楽的な難易度を超越する歌唱力と、心を表に出し切る表現力、その”技術”を自然に見せるところまで含めてさやかさんの”技術”。

役者なのか役なのか、その境目さえも見えない今回のさやかさんの琥珀は、ただただ美しかったです。
何だかいろいろな意味で別次元を生きていたように思います。

土曜日はDVD収録・ニコニコ生放送もあり、カーテンコールでのご挨拶は幸運にもさやかさんが登板。

「(第2章で)琥珀は昇天しましたので(会場内笑)、第3章・第4章は皆さんと一緒に客席から一ファンとして楽しみたいと思います。寒い日が続きますが辛いことは愚痴を吐き出して、元気にお過ごしください」

あれだけの演技をされて疲れ切ったろうにこのご挨拶。
誰よりも精神的に辛かったろうに、カンパニーの皆にエールを贈れるそのお人なり。
ハートの温かさを持たなくては、気持ちが伝わる演技や歌にはならないんだなと、改めて感じさせられるひとときは、何よりの至高でした。
岡村さやかさんの魅力をおそらく世界一知っているであろう、浅井さんだからこその配役に、ただただ感謝の念でいっぱいです。

ちなみにこのご挨拶で「八犬伝卒業宣言」をされたさやかさんですが、千穐楽のご挨拶で、驚きの「八犬伝卒業宣言撤回」。

八犬伝2千秋楽、岡村さやかさんご挨拶
「作品途中で片目で歩くことになるんですが、私どんくさいので、ただでさえ転んだりするので(苦笑)。でも片目が見えなくなった分、心で見えてくるみんなの景色が素敵でした。昨日は『琥珀は昇天したので次は客席から楽しみたい』とお話したのですが、荻野さん曰く『復活の呪文がある』とのことですので、次も他の役で出られればいいなと思っています

信乃を人知れず支えて、でも信乃には伝わってる新役とかいいなー。
「琥珀は今でも俺を支えてくれてるんだ」とかいう台詞が来たら泣いちゃう自信がある(!)。

さやかさんは一度口にされたことを翻さない印象があるだけに、千穐楽一番のサプライズで、ある意味、千穐楽の言葉が「本当の願い」だったのかなと。

本編を見ていても思ったことですが、「本当の願い」は自分一人ではたどり着けないものかもしれないなと。仲間と助け合い、必要とされあうことによって、本当の「本当の願い」にたどり着ける。

「死にたくない」じゃなくて「生きたいと願う」。
その前向きのエネルギーが渦を巻いて客席に向かってくる、そんな千穐楽を見られたことにただただ感謝。

千穐楽ご挨拶で皆さま口々に仰られていましたが、「八犬伝3」が実現する日が来ますように。

わっくん、「僕の本当の願いは”『八犬伝3』でみんなと会うこと”です」で締めて末恐ろしい15歳…。

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