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『Play A Life』(2)

2016.11.20(Sun.) 12:30~13:50
すみだパークスタジオ倉
E列10番台(下手側)

劇団TipTapの通称「Life3部作」の最終作。初演は去年2015年12月で、ほぼ1年ぶりの再演となります。
前回は2チーム制でしたが、今回は白猫チーム・青猫チーム・黒猫チームの3チーム制。
時間の都合もあり、今回、この回、白猫チームのみしか拝見できず。

「Life3部作」とは『Count down My Life』、『Second of Life』、そしてこの『Play A Life』の3作品。
いずれも「どう生きるか」をテーマにした作品群です。

この中では唯一『Second of Life』だけが再演されておらず、初TipTapだったことを差し引いても『Second of Life』が一番好きなのですが、この度TipTap10周年を記念して作成されたパンフレットの中の「TipTapすごろく」を見るとちょっと切なくなる本音が書いてあって淋しくなったり。

『Second of Life』は心の底まで感情に抉りこんでくるところが大好きなのですが、それに比べると、去年初演された時の『Play A Life』は、もちろんいい作品でありいい音楽だと思うものの、どことなくさらりと流れ過ぎた印象を持っていました。

その意味で、今回の『Play A Life』に対する自分の先入観は、どことなく前のめりになれていなくて、「どれか1組見る」想定で日程プランを立てたため、初演経験者が2人入っている白猫チームしか日程確保していなかったということになります。

結果からすると、素晴らしかったです。
終演時、涙が流れました。

白猫チームは、夫役が原慎一郎さん、妻役が木村花代さん、実習生役が田中里佳さん。
原さんは今作初登場、花代さんと里佳さんは初演から引き続きの登場です(初演の夫役は丹宗さん)。

極力ネタバレは避けますが、最小限のネタバレはご容赦ください。
無理な方は回れ右をお願いします。




今回、まず何といっても出色なのは実習生役の田中里佳さん。

初演では、実習生役は平川めぐみさんとのダブルキャストでしたが、初演時は正直言って、めぐみさんが完全に出来上がっていたのに対して、里佳さんはまだ発展途上な面が否めなくて。

やはり大きい役ということもあり、ともすれば必要以上に押し出そうとしたり、必要以上に委縮したりといういった面がどうしても埋め切れていなかった-というのが、今回の里佳さんを見るとはっきり見えてきます。

めぐみさんが初演で役を完成させていたのに対して、里佳さんは初演・再演で役を完成させた感じがしました。

夫と妻の間の、生まれてしまった隙間をどう埋めるか。
本来なら誰も入れない隙間に、実習生である彼女は、お節介でなく、ただ純粋に関わらずにはいられない。それは、自分が今ここに”こうして”生きていることの大きなきっかけとも関係しているから。

今回、この作品を拝見したのは劇場の最上段(最後列)でしたが、座席の段差が大きく(通常の階段の倍の高さぐらいありました。)、3人が並ぶ姿が自然に視界に一気に入る席。

下手側から夫役(教師)の原慎さん、妻役(女教師)の花代さん、実習生役の里佳さんが一直線に並ぶタイミングが複数回あったのですが、妻が夫に伝えたいことのコアに、実習生である彼女が触れたときの光景は忘れられません。

彼女は、花代さん演じる教師の心情に入り込んだかのように自然に言葉を紡ぎ、その瞬間、花代さんの表情が、彼女(実習生)への感謝と、自分がしてきたことが無意味ではなかったことへの安堵(彼女は、花代さん演じる女教師の最初の教え子でした)と、愛した夫が変わってくれるかもしれないという希望、そのすべて含んだ表情に変わって。これ以上ないほどの劇的な表情になったことに、胸を突かれました。

花代さんの出演作品は、四季退団後おおむね拝見していますが(はっきりと拝見していないのを覚えているのは『ラブ・チェイス』)、どことなくお芝居の形を綺麗に作ることに意識されすぎている印象を持っていました。
が、この日の花代さんの教師の表情、このシーンに限らずですが、まさに役に憑依されていて、夫への無条件の愛情、心配でいっぱいになっていて。

初演では、ダブルキャストだった池谷祐子さんに比べると、夫への憤りが見える部分がありましたし、責める空気を感じたりしたものですが、この日は微塵も感じず。
夫に「立ち直ってほしい」と思いながらも、でも触れられない「世界」、触れてはいけない「世界」があることも理解している、素敵な女性の姿を見せていました。

夫は芝居の道を諦めて教師(といっても非常勤講師)になっていて、その生き方が自分の生きるべき道と信じている。妻はそんなことを望んでいないのに、夫は妻への思い故に、それが最善と信じている。

それは自分の人生を自分の人生として真剣に向き合わないで済むということに、妻は気づいているけれど、夫は気づかない振りをしている。

夫は妻を思うあまり、妻を自分の世界に閉じ込めている。
妻は夫を思うけれど、夫を自分の世界から外に出せる術を知らない。

白猫チームはその夫と妻が四季の同期の2人。
恐らくは同期だからこそ伝わる部分と、同期だからこそ伝わらない部分があるように推察するのですが、それゆえ、「近いけど遠い、遠いけど近い」という微妙な距離感が絶妙でした。

その2人の関係に分け入る実習生が触れた、「ただ自分が生きていなくなることが怖い」という歌詞に不意を突かれて。

自分が今の道を生きる道だと選んだ、そのきっかけとなった人の今と向き合うことは、彼女にとって「怖い」こと。

夫が現実と向き合うようにさせるために、実習生である彼女は、先に「その怖い事実」と向き合っているんだ…ということに気づいて。
妻のチョークケースに描かれた猫がなければ、実は「その怖い事実」は起きなかったかもしれないのに、というところまで含めて、彼女はとても高いハードルを越えたのだということを感じて。
でも、その高いハードルを越えるヒントは、妻が彼女に与えていた。

だからこそ、彼女は勇気を出して教師に言うことができたのだし、教師も最後は妻の言葉としてその言葉を受け入れることができて、妻が望む「自分の人生」へ一歩踏み出すことができた。

この作品を貫き通すテーマは『生きる意味』なのだろうなと、初演を経て再演で改めて感じて。

夫にとっては、妻の世界の中で生きる道ではなく、本当の自分の人生の道を作ることが生きる意味だろうし。

妻にとっては、愛する夫を縛り付け続けかねない状況を、教え子が救ってくれた-それは自分が教師として、人間として、生きる力を教え子に与えられたこと。そして愛する人に自分の人生を生きてもらえる力を渡せたこと-それこそが生きた意味だろうし。

実習生にとっては、教師という道を選び、生きる意味を教えることそのものが、真の自分の生きる意味なのだろうし。

そんな物語を、隙なく見せて頂いた、そんな白猫千穐楽でした。

里佳さん、花代さんにしか言及しませんでしたが、原慎さんの受け上手なさまはこの作品初出演とは思えぬほどでした。
原さんと花代さんの四季同期の絆、花代さんと里佳さんの初演同期の絆がそれぞれしっかりと点でなく線で紡がれてきたからこそ、過去の歴史がこの日に結実したのだと、そう思えたのでした。

素敵な千穐楽を見届けられたことに、ただ感謝です。

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