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『レプリカ』(1)

2016.8.14(Sun.) 17:00~18:40
シアターグリーン Box In Box THEATER(南池袋)
C列10番台

one on one 27th NOTE、新作を見に行ってきました。

この日は実は昼間に帝劇『王家の紋章』を観劇してからの池袋入りの予定だったのですが、前日のシステム移行作業に一部ミスがあって急遽出社となって、その後も自分のミスが加わって果たせず。

結果的にはこの日、この作品のみになったわけですが、この作品だけでも見られて良かったですし、結果としてエジプトと混ざらなかったので頭の中が混乱しなくて良かったとも(爆)。

この作品は3人ミュージカルで、oneでは初めてだという『恋愛』をテーマにした作品。
3月のcordシリーズのライブの際のアンケートで断トツのトップだったそうです。そういえば私もそれを選択した記憶が。

前日が初日で、この日が千穐楽というあっという間の公演日程。この後の再演も期待できそうな作品。
one作品らしい優しさが根底に流れつつも、大人の本音を随所に織り交ぜる、心地よい『毒』とのバランスが絶妙です。


公演が終わったとはいえ、再演も想定して完全なネタバレは避けますが、多少のネタバレは混じります。ご希望なさらない方は回れ右で。

・・・・

ダブルキャスト制で、この日拝見できたのはBチーム。
男性「別れさせ役」(マナト)役は寺元健一郎さん。
女性「恋愛コンサルタント」(ヤヨイ)役は岡村さやかさん。
見守り(クピド)役は蔵重美恵さん。

Aチームとは完全にカラーが違うようで、特にヤヨイ役の千田阿紗子さんは拝見したかったです。
(CDは両チーム混在ですが、千田さんのヤヨイは漢前さが全開です(笑))

物語の実質的最初は、男性と女性の出会いから始まります。
その出会いは全く持って普通じゃなくて。

「別れさせ役」の男性が依頼を受けたターゲットが、女性のヤヨイ。
つまり、ヤヨイと付き合っている方から、「ヤヨイと後腐れなく別れたい」という申し出を受けてヤヨイに接近するわけです。

片やヤヨイの職業は恋愛相談所の恋愛コンサルタント。他人同士の恋愛をどうつなげるかを仕事にしているわけですが、実にはヤヨイには秘密があって…。

このヤヨイが、岡村さやかさんの一筋縄ではいかない感じを存分に発揮できている役で(笑)、さすが岡村さやかさんを熟知している浅井さやかさん(主宰・作・演出)らしいというか。
アンケートでそういえば「岡村さやかさんの小悪魔的な面が出ていたら面白いな」と勝手に書いたことを思い出しました(大笑)。

とあるタイミングからのヤヨイの豹変が面白くて面白くて。
マナトはヤヨイを手玉に取っているつもりでいたところが、まさかの「完全に見抜かれていた」でのどんでん返しで絡めとられ、(マナトにとっては)共謀を余儀なくされる『レプリカの恋』

『レプリカ』とは「複製品」のことですが、「偽の恋愛関係」とも言いかえられるようにも思えて、マナトの依頼者(ヤヨイの付き合っている相手)に依頼経費としてお金を出させて楽しんじゃおうという、さすがは作者が女性だなぁという思う作品。

劇中にマナトがヤヨイを指して『怖い女だなぁ』と言うセリフがありますが、『違うわよ、女だから怖いのよ』というのは全く持って男性としてぐーの音も出ないセリフという感じで(笑)

ヤヨイは恋愛関係にある男性との関係を清算できずにいながら、マナトとの”レプリカの恋”を存分に楽しむ。とはいえ奔放な感じではなく、どことなく「恋愛」へのトラウマを感じさせる心の動き、それが劇中中盤から徐々に吐露されていきます。

そこのキーが、3人目の存在である「クピド」。英語で「cupid」と表現した方が存在の理由が分かりやすいわけですが、「恋愛の神様」に見えて、自ら「レプリカのキューピッド」と称しています。
このクピドは矢を二本持っていて、「黄金の矢」と「鉛の矢」を持っている。
そして、ヤヨイは過去、「鉛の矢」を放ってとクピドに頼み、クピドはヤヨイに鉛の矢を放った…

ヤヨイが恋愛と訣別しようと思った理由、その理由を知りたくなってくるマナト、そして傍観者である客席からの私たち。

相手の過去を知れたなら何かが変わるわけではないけれど、相手の過去を知りたくなるのは恋愛の一つのプロセス。相手が恋愛に一歩二歩踏み出せない姿が見られたら、そこに自分の想いが何かの助けになれないか、と思う様は”恋愛”を先に進める(ある意味、一歩深みにはまる)一つの要因でもあるわけですね。

この作品で一つのキーになる「ヤヨイの恋愛へのトラウマ」は、自ら”恋愛”に対して課した枷。
さやかさんが演じたからということもありますが、『Before After』のエイミーと印象が被る部分が強いです。

過去の決断を仕方ないと思いつつーただし、後悔していないわけじゃないー、その過去の決断ゆえに先に進めなかった自分が、男性の出現(再出現)とともに、変わりたいと思う様が似ているかなと。

ただ、BAと違うのは、BAのエイミーは自ら再出発に対して能動的なのに対して、ヤヨイは自分の再出発に対しても煙幕を張っていることですね。
その意味ではより恥ずかしがりやというか、自分の再出発に対して「自分の想いからじゃなく、他人からの想い」で歩き出すことにより、正当化しているようなちゃっかり感が(笑)、女性による作品ぽいなと感じます。

レプリカの恋、ホンモノの心。
ホンモノの恋、レプリカの心。

「レプリカの恋」から見出されてくる自身の「ホントウの心」。自分を縛っていた「鉛の矢」から解放される術。「鉛の矢」を放ってしまった故に、トラウマとして苛まれる「レプリカのキューピッド」。

マナトの存在によって変わっていくヤヨイ。
ヤヨイの存在によって変わっていくマナト。

相手と過ごす時間に感じる楽しさだけでなく、相手が持っている苦しみを分かち合おうという思いが出てくることで、相手に隠していた気持ち「レプリカの心」が溶けだして、「ホンモノの恋」になっていく…

・・・

複数のどんでん返しのあまりの鮮やかさに笑わせられ、驚かされつつも、マナトとヤヨイ、そしてクピドも過去の気持ちの回収ができて、前を向けて終われるのが、さすがはone作品。

寺元くん演じたマナトは少し斜に構えた(自称)感じが魅力的。
振り回されることに抵抗する感じと、敵わないと白旗上げる感じがどちらも自然。
手玉に取ったつもりが、実はヤヨイの手の上で踊っていたと分かった時の反応が素敵です。
相手の手の上で躍らされていたことを知った時に、怒りより許しの気持ちが自然に湧くのが恋愛なのかもしれませんね。

さやかさん演じたヤヨイはさやかさん自身が普段はあまり見せない、いわゆる「黒い」部分が上手く活かされていて絶品です。それでいて嫌味や悪気を感じさせないものだから、「女性の一面」として、存在し得ているのだろうなと。結婚相談所に来た結婚寸前の方に対するアドバイスが、内容が内容だけに真に迫っていて、その真摯さに胸を打たれました。
いくら奔放に振る舞おうとも、誠実であり続けようとした思いから離れなかったのが、彼女がトラウマから逃れられた理由なのかと。

蔵重さん演じたクピドはさすがの茶化し役で客席からどっかんどっかん笑いを取っていましたが、笑いだけじゃない存在が、この作品に深みを与えています。2人芝居だと本当にBAとの類似点ばかり気になってしまったかもしれないのですが、クピドがいることで「2人だけじゃ進められない物語」というのが分かりやすくなっていましたし、いい意味でおせっかい過ぎないのが良かったなと。

クピドはあくまで傍観者であり、物語を進めるのは、あくまで2人それぞれの想いでしかない、という形で描かれたのは素敵でした。

・・・

役者さんの個性の違いでいろいろな空気が見えてきそうな作品。たった2日間で、DVDが出ないこともあり、ぜひ再演を期待したところです。今回の2ペアはスペシャルキャストでもいいので、もう1期はぜひ期待したいです。

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