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『Before After』(6)

2016.7.24(Sun.) 12:00~14:55
 石井・若井ペア(月組)

2016.7.24(Sun.) 16:00~18:00
 鯨井・岡村ペア(星組)

スターパインズカフェ(吉祥寺)

キャストに「井」が3人もいる今期のBA。ただの偶然でしょうが(笑)。
前日夜の星組に続き、この日はマチソワでの月組・星組観劇です。

最後は星組で締めたかったのと、両組観たかったのと、星組は2回観たかったという3条件を満たそうとするとこのスケジュールしか無理でした。

若井さんはこの日、夜に渋谷でコンサート出演のため、こちらの開演時間は早め。
前日20時公演の終演はほぼ22時、この日の開場は11時というハードさ。
10時30分頃に当日券が出る発表がありましたが、時間的にはこの時間だと来れる方は限られるでしょうから一考が必要かと。

公演も終わりましたので、ほぼネタバレなしで参ります。お気になさる方は回れ右で。

まずは月組、石井ベン・若井エイミー。
今まで見た中で一番オーソドックスで、原案に近いペアじゃないかと思います。
奔放なベンと、お嬢様のエイミー。

石井一彰氏は拝見するのは3度目。高橋由美子さんと組んだ朗読劇『苦情の手紙』で初見で、『虹のプレリュード』のロシア人将校役で2回目。
イケメン系ベンですが、殻を破り切っていない感じがします。
それこそ「あなたは自分をカッコいいと思っているのよね」(*)的なイメージ。
殻を破ってからこそ、エイミーがベンに惹かれる様がより光るような気がします。

(*)2002年に由美子さんが初共演した芳雄さんに言った言葉。『バタフライはフリー』にて。

相手役の若井久美子さんは、もちろんレミゼのコゼット役で拝見していますが、今までのエイミーで一番お嬢様風。RiRiKAエイミーほど強くなくて、びびちゃんエイミーほどコメディチックではない感じ。

興味深いのが、ただのお嬢様でなくて、お父様のあしらいも心得ていて。お父様からの電話に声色変えて「大人しいお嬢さん」を演じているあたりが絶品(笑)。意外や意外、百戦錬磨系で面白いです。

その中でも一番意外で面白かったのは、仲直りのなんちゃらを言われた時に、石井ベンの「胸ぐらをつかみ」、「時々本気で殺したくなるわ」と言ってたのが衝撃的過ぎて、背筋に冷たいものが走りました(爆)。

若井さんといえば音域がソプラノということもあり、歌声が硬質なところがあって、特に後半に行くにつれて、”感情に歌声をのせる””感情に歌声を纏わせる”といったところはまだ経験が必要な印象はありますが、若井さんらしいエイミーが見られて良かったです。そういえば、普段はピンクジャケットな「before」エイミーは、若井さんはベージュ系で新鮮でした。

BAはキャスト替わりで見ても別の世界が見えるというのはよく言われる話ですし、実際に感じますが、ベンにしてもエイミーにしても、それぞれのキャストの役への感じ方に任せている部分が大きいように思います。ベン役の役者さんがベンをどう思うか、エイミーをどう思うか、物語的に守るべき部分以外は自由に動かしているように思えて、しかも今回に至っては台詞もちょいちょい各組で変わっていたりしました。歌詞まで変わっていたところは事故ぽい感じがしましたが(爆)。

あと印象的だったのは今回の新曲2曲は、初登場同士の月組の方がしっくりきていたこと。曲の存在意義というか、曲のポジションがしっくり来ていて。
むしろ経験者だといきなり2曲入ったのは少しだけ違和感を感じました。

夜は2回目となる星組。鯨井ベンと岡村エイミー。

月組も素敵でしたが、経験者の岡村エイミーを擁する星組は、物語の厚みにさすが一日の長があります。
鯨井さんもベンとしての動きに小慣れた感じで、自由自在に動きながらも、それがベンとして、エイミーが求める「自由」とリンクしてきて、とっても濃い時間でした。

鯨井ベンはとにかく「身体動く」ベン。
上手に下手に動き回り、今までのBAにない動きをたくさん発明。多すぎて覚えていられないぐらいにオリジナル(笑)。台詞で岡村エイミーを笑いに引き込もうとする様も、どれもが憎めないキャラクター。「どうしてこの手に毎回引っかかっちゃうんだろう」って言うエイミーの感情に同調する観客(笑)。

それと対する岡村エイミーは「心動く」エイミー。
感受性豊かで、ベンの一挙一動に反応して惹かれていく様がとっても自然にわかります。自分にとって新しい世界を見せてくれる、鯨井ベンを見つめる岡村エイミーの眼はキラキラしていました。それでいて冷静さも忘れないのがさすがで、劇中、鯨井氏が台詞が完全にとっちらかってわけわかめになった時、じっと見て放ったアドリブ「落ち着いて」が、エイミーまんまで絶品すぎました。アドリブは苦手なさやかさんですが、役の中でのアドリブとして出てきたことが流石だなと。

「身体動く」ベンは、自分の存在意義を確立できていない。両親もおらず、ただ漂うだけの人生で、自分が必要とするものも、自分が必要とされることもない。いわば「心を持てない少年」なのですね。

それに対して「心動く」エイミーは、自分が父親の庇護から永遠に飛び立てないと感じている少女。"Before"においては父親からの束縛が、ただベンからの束縛に変わっただけの、いわば「檻から飛び立てない少女」

動くことはできても、
何のために動くかの意思が持てないベンと、
意思ははっきりしていても、
どう動けばいいかがわからないエイミー。

ベンとエイミーが心で結びつきを求めたのが何かといえば、自分が深層心理で欲しがっているものをまさに相手が持っていたからのように思えて。それを今回の星組で再認識できたことが嬉しかったです。

今回は特に思いますが、2組それぞれ2回でしたので、役にこなれてくるころには終わってしまうのは残念なところ。また作品人気と役者さん人気で、ほぼ事前に売り切れてしまうのも、本当のことを言えば「新しい人を受け入れる」という意味では一考の余地があるように思います。

何はともあれ、新キャストを迎えるたびに新しい作品の魅力を作り出していく『Before After』。
7月キャストでの収録ではないのに、次々とCDが売れていく様を横で眺めていて、CD作りに1枚噛んだ喜びを噛みしめたひとときだったのでした。

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