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『寝盗られ宗介』(3)

2016.5.29(Sun.) 15:00~18:20
新橋演舞場 1階13列20番台
(センターブロック上手側)

東京・シアター1010(プレビュー)から大阪、福岡、愛知、東京・新橋演舞場と続いたこの公演も、この日が大千穐楽(24公演目)。
東京公演から販売された舞台写真入りのパンフレットはこの日の昼の部で完売になったようで、意外なレアグッズとなったようです。

大楽を迎えましたので、当然ながらネタバレ全開で参ります。

この日の夜公演は、由美子さんが2009年1月以来所属した、
東宝芸能を窓口にした作品の最後の回でもありました。
(今年4月1日付で合同会社コニイ(こちら)に移籍済み)

後半期は作品に恵まれなかった面があったように思いますが、それでも東宝芸能さんが今回の松竹作品に由美子さんを出す選択をしてくれなければ、今回の思いを抱けるようにはならなかったわけで。
その意味で今回の作品を今回のメンバーで実現させていただいたすべての方々に感謝です。

まずは本編の話からで。

何回か見てようやくわかった「劇中劇『寝盗られ宗介』」の構造。

由美子さん演じるお志摩さんの心中相手は、歌舞伎役者の浪速屋音吉。
音吉は歌舞伎役者ということもあり、「贔屓筋をみんな相手にしてれば持たない」とうそぶき、お志摩の楽屋訪問も意に介さない。
お志摩を覚えている風もない。

ところがお志摩は深川で芸者をやっていた当時、大阪から来た役者の卵の面倒を見ていたことを告白し、それが音吉であると、つまり音吉はお志摩に対して借りがあるはずと仄めかす。

が、音吉は半ば半ギレとともに「過去のことを今さら話に出して何かを求めようとするのか」と。
「暖簾汚しをするつもりか」と。
「贔屓の芸の肥やしになるのが贔屓筋ってものじゃないのか」と。

そこでお志摩が持ちだすのが、「劇中劇『寝盗られ宗介』」の音吉が演じる役(宗介)を、「実は徳川家の跡取りである、後の家宣であると。先代の五代綱吉に傷つけた故に、(家柄もあって表立っての処分はできず)下取りを申し付けた」という流れにしちゃうという。無茶苦茶ですがな(笑)

そうすることで音吉が演じる宗介という人物の格を上げ、難しくする反面、役者として美味しい役にする、それが贔屓筋が贔屓に対して提示する「芸の肥やし」という「せめてもの暖簾汚し」なんですね。ようやく納得ができました。

3幕6場の音吉は最初は姜さんですが、宗介が切りつけて退場、その後は宗介(つまり戸塚さん)とお志摩(由美子さん)の2人芝居。
お志摩の気持ちを受けるわけにはいかない宗介と、宗介を繋ぎとめているわけにいかないお志摩との、「思い合っているのに結ばれない」ことの関係がもう壮絶で。
宗介は「徳川家の跡取り」ということを表現するかのような存在の大きさを見せて、「責任」の取り方を見せる。
対してお志摩は宗介の立場を理解し、愛するからこそ自ら自害する。
桜吹雪が柔肌に落ちる中、思いあった2人の、結ばれなかったからこその心が結ばれた物語

宗介を演じた戸塚さんはただただカッコよく、
お志摩を演じた由美子さんはただただ綺麗で。

「女一人が救えずに、なんで日本が救えるか」

宗介はお志摩という「女一人」を救えなかった。
でも、救えなかったことを胸に国を背負って生きていくなら、宗介の中にお志摩は生きているし、お志摩はそれを望んだし、お志摩が自ら死んだ意味もそこにある…その想いを強く感じることができて、この作品を見られて良かったと思ったのでした。

そこを越えてからのレイ子の白無垢は最高すぎます。
当初ははにかむような笑顔だったのですが、日々だんだん由美子さん演じるレイ子の表情が変わってきて、「たっぷり甘えちゃいますから」の時の宗介への表情が、本当に気持ちが近く見えて。
とっても幸せな気持ちになれたのでした。

大千穐楽記念、キャスト別感想。その後には大千穐楽特別カーテンコールも付きます。
つまり、ここからたっぷり長いです(笑)

●戸塚祥太さん/宗介役ほか
今回の作品で拝見するのが全くの初めてだったのですが、座長の必要要素をしっかり持っていて驚きです。カンパニーの空気はトップの居住まいで決まるとよく言いますが、「余裕がある様」と「余裕がない様」を両方持っているのが魅力かなと。前者の「どんと構える」ことで座が作られるのと、後者の「あわあわする」ことで周囲が座長を自然に支えようとするバランスが素敵だなと。この一座、本当に旅巡業の一座のようにいい空気で、見ていて心地よかったです。大阪松竹座で拝見しているので、後半の新橋演舞場で喉が涸れていたのは少し残念な思いがしましたが、座長としての戸塚さんを拝見できて良かったです。由美子さんとのバランスも絶妙な距離感。

●高橋由美子さん/レイ子役ほか
25年来拝見してきて、明らかに3本の指に入る当たり役(*)をこの作品で見ることになるとは、期待以上でした。緩急取り混ぜたセリフ回し、シリアスからコメディまで振れ幅が大きくも自然で、身のこなしも明らかに前とは違う軽々とした動き。今までの作品でそれぞれの技術は見ていたけれど、その集大成を見られたような感じです。
この作品がご本人にとっても「初めてのつか作品」であることもあり、ご本人の思い入れの強さもあっての成果じゃないかと思います。どうみても「裏座長」にしか見えなかった(爆)存在感が流石でした。今回の存在感が、次の作品に繋がりますよう願っています。

(*)個人的な残り2本は、
東宝ミュージカル『モーツァルト!』ナンネール役
東宝/劇団新感線『SHIROH』寿庵役
です。
『SHIROH』はゲキシネ(映画館上映)で、東京6/6、横浜・京都・大阪・広島・福岡・鹿児島が6/24です。

公式サイト

●福田沙紀さん/沙紀役
カンパニーの若手ヒロインとして、物語上では大変な目にあっているものの、ピュアさはそのままに表現されていました。白ドレスを着ての「甘えんぼ」(大塚愛さん)は特に素敵でした。実はエネルギッシュで、東京に行って帰ってきてみたり、メンバー先導して座長励ましたり、ポジティブさが全編に亘っていてとても心地よかったです。主にドラマで活躍していた当時には拝見したことがなかったのですが、また舞台でも拝見したい方です。

●姜暢雄さん/ノブオ役ほか
由美子さん演じるレイ子と本編上最初に駆け落ちする副座長(会計担当)。元JUNONボーイの長身さが、由美子さんのちんまりさと絶妙マッチング。「勉強させて・もらいまひょ」が好きでした(笑)。
「あーん、あーん、」…の次の日替わりネタを由美子さんが丈くんに太腿揉んでもらいつつネタ返ししてたところも毎回楽しみでした。ネタ的には「芦田愛菜」(28日夜、29日昼夜)が一人勝ちでしたね(爆)

●藤原丈一郎さん/ジミー役
劇団の若手売れっ子格というか歌手のポジションでしたが、座長に可愛がられる立場にして、2幕でのレイ子の駆け落ち相手という、なかなか素敵な立場で奮闘していました。「腹から声出せ」と言われるのがとてもしっくりくる役回りで、ジミーの成長物語として見えていた面も興味深かったです。カテコで由美子さんと(小川)菜摘さんのどっちかから(回によっては同時に2人から(笑))ツッコまれるのも見てて面白かったです。可愛がられやすいポジションって、若手としてとっても大事ですよね。

●酒井敏也さん/レイコの父役
舞台では「空中ブランコ」以来の共演ですが、ちゃらんぽらんな役をやらせたら酒井さん絶品ですよね(褒めてます)。それでいてレイ子と宗介に「他人行儀」といい、レイ子に「もっと甘えろ」と言っているのは、ラストシーンのレイ子の「もっと甘えますから」にもつながっていて、さすがは父親なんですよね。

●小川菜摘さん/リリー役
ベテラン女優でセクシー系担当。コミカルなオチというポジションが流石にぴったり。「ほったらかしかいー」のあたりで全員が興味なさそうに遊んでるのにわろた(笑)。一番印象的だったのは2幕で一座から去る時の「これからは自分のためだけに生きたい。誰かのために生きているとすぐ齢をとっちゃう」と言ってたこと。これ、実はレイ子にも通じるところがありますよね。「みんなは一人のために、一人はみんなのために」と宣言する座長の手前、自分の幸せを言い出せなかった結果の「10年経過」なんだろうなぁ。

●篠山輝信さん/花岡裕次郎役
バッグの「ビトン」というのが実は一番笑った(笑)。カッコいいように見せて稽古場男なあたりのみっともなさとの対比が面白い。松平伊豆守というとどうしても私なんぞは江守徹氏を思い出してしまうのですが(『SHIROH』)、若い頃ですからこのあたりの年代ですよね。切腹したら歴史が変わってしまう(爆)

●蔵下穂波さん/スズ子役
沙紀ちゃんが洗練された都会風なのに対して、どことなく田舎風な感じ。が、それがいい(爆)
ジミーを連れて行こうとしたレイ子を「女狐」呼ばわりしたらまさかの大反撃食らって、出生の秘密を明かされて、人生を360度変えるきっかけになってしまう件が面白すぎ。
そういえば、レイ子のお父さんが歌って登場するシーンのダンサーって彼女ですよね。消去法で行くと穂波さんしか残らないのですが、あの華やかさも好きでした。

●冨浦智嗣さん/トミー役
ある意味レイ子にとどめを刺すインパクトが大きすぎて、他の登場シーンがプロミスしか思い出せません(爆)。

●三浦祐介さん/三浦役
結構前半で東京に出て行ってしまうわけではありますが、沙紀を包み込む男の優しさなしには語れないですね。「座長が命」だった沙紀をも変えてしまう本当の優しさ。とても素敵でした。

●西井幸人さん/猿の彦次郎役
メイキングシーンだけかと思ってたら結構猿ばりに動き回ってて見てて楽しかったです。「みんなはひとりのために」の作文、単調な言い方だけにかえって伝わるというか、素敵です。

よーし、全員分到達(笑)

でここからカテコレポとか無茶過ぎる…(笑)
インパクトの大きかったみなさま中心に(記憶力の限界(笑))

座長の「今回をもってフィニッシュしましたー!」の笑顔とともにスタート。
実際には通常の座長挨拶→熊本・大分地震募金のお願いで捌けた後に、もう1回全員登場しての特別カテコです。

●冨浦さん
前作「出発」ではオオサンショウオでした。今回の本でそのネタが続いていて嬉しかったです。
全作では穂波ちゃんと恋人役だったり、そんな思い出が思い出されます。
去年厄年で、自分を見失っていたので(笑)、これからは自分を見失わず頑張ります(笑)

●篠山さん
24回も客席のお客様をトイレにしてしまって申し訳ありません(劇中の客席降りでそういうシーンあり)

●穂波ちゃん
前回に引き続き呼んでいただいて、今回のまさに家族みたいなカンパニーにいられて幸せでした。
凄い迫力の皆様の前でたくさん学ばせていただきました。ありがとうございました。

●菜摘さん
24回も乳首ドリルに付き合っていただいた皆様、ありがとうございました(笑)

●酒井さん
36年前に『寝取られ宗介』に出ました。その時はジミー役でした。36年後、今回のジミー役の藤原丈一郎くんがどうなっているのか楽しみです。

●藤原くん
36年後が楽しみな藤原丈一郎です(と、自分の頭を撫でながら)
…そこか!と会場内からツッコミ(笑)

●沙紀ちゃん
ありがとうございましたっ!(←意外にも一番あっさり)

(座長)え、もっとなにかないの(笑)

言いたいことは芝居で全部言いましたっ!(←さすが漢前)

●姜さん
JUNONボーイでここまでいじられたのは初めてです(笑)
心残りが一つあって…副座長として座長にキスを…(会場内ざわめき)

<以下実況>
1.間に入っていた沙紀ちゃんがすっと舞台下手側に移動
2.副座長と座長の間には空間しか存在しない
3.座長「ここ新橋演舞場だぞ、そんなことして…」と発言
4.座長、副座長との間に丈くんを差し出す(爆)
5.副座長、丈氏を退けて座長の唇をうば(以下略)
6.座長、呆然と舞台に倒れ込む
7.副座長、呆然と舞台に立ちすくむ
8.座長、立ち上がり由美子さんにキスしに行こうとして
9.由美子さん、嫌がって座長の勢いを止め(爆笑)
10.由美子さん、座長に蹴りを入れる(爆笑)

というとんでもないオチで終わりました(笑)

挨拶は上手→下手…と1人ずつ来たのですが、途中で上手側が少ないことに座長が気づいたようで、最後を由美子さんにしていただくのは決めていたようで、途中から下手3連続という流れになりました。

「北村宗介一座の看板女優、十手持ち、お志摩、奥さんと演じてくれました」と座長から紹介があり。

●由美子さん
何もないですもう(笑)

(座長)も、ちょっとなんか、せっかくなんで!

どうしたの急に(笑)なんかキャラ変わってきてない?

(座長)そうかもしんない…

いや、皆が怪我なく終われてよかったです。

『宗介にもう少し優しくしてください』というお手紙をいただきまして(笑)、ごめんなさい。

…由美子さんここでそれバラしますか(笑)

座長含めて座員一同もこの話は知らなかったみたいで、客席と壇上が両方ともびっくりしていました(笑)

「北村宗介一座はレイ子という看板役者でもってますが、本当に高橋さんがその通りにいてくださいました。ありがとうございました!」という座長の言葉は嬉しかったなぁ。
その言葉に劇場一体になって拍手を贈れる喜びといったら。

「えへん」ってしないで「いやいや」ってやってくれるのがさすがは由美子さん。

全てが終わり座長から

座長「2006年版『寝盗られ宗介』もこれで…」

ざわつく会場。

座長「え?」
由美子さん「2016年じゃなくて2006年って言ったよ」
由美子さん「タイムスリップしちゃってたよ(笑)」
座長「あぁぁ(撃沈)」

というオプショナルツアー(爆)もあっての幕。

そういえば、カーテンコール内でみんなで手を繋いで手を挙げる、ってやったのですが、
由美子さんと丈くんは2人とも上から手をつなごうとして、由美子さんは「君は下からっ!」ってバシっと(笑)
かと思えば座長さん、左手を精一杯上に上げたもんだから由美子さんが浮き上がってた(笑)。

由美子さんは普段の舞台のカテコではまず手を振らないのですが、今回は手を振った上に最後はVサインで捌けていかれました。それだけでもどれだけ充実していたかが分かるというものです。

最後のカーテンコールでは由美子さん珍しく泣きそうで、上を見上げて涙を振り払っていたかのように見えたのが、とてもじんわりきました。

大千穐楽に相応しいハプニングもあり、本編の出来も良くて、満足の北村宗介一座大楽。チームワークの勝利。見られて良かったです。

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コメント

読んでて涙が出ました。
私も錦織さん演出4回目で、この先どうなるのかという不安もある戸塚さんをデビュー前の舞台から10年見てきて
今回は高橋さんにいろんな面で支えられ千秋楽を迎えられましたある意味由美子劇場だったと思っております。
これからも由美子さんの舞台があれば足を運ばせていただきたく思いました。
とても丁寧な感想ありがとうございました。

投稿: とんとん | 2016/05/30 15:08

ひろきさんの、由美子さん愛が書かせた感想で、同じファンとしてうれしく思いました。
今回の寝盗られ宗介は、由美子さんにとって次へのステップになるべく、お芝居でした。
戸塚さんの人柄なのか、いいファンの方が多くて由美子さんを認めてくださっているように思います。
次回のお芝居記退位したいですね。

投稿: わたみさ | 2016/05/30 20:52

とんとんさん>
コメントありがとうございます!
座長の戸塚さんのお人柄で、いつも楽しく拝見させていただいたこと、とても嬉しかったです。
由美子さんがあれほどまでに伸び伸びと全力を出せたことは、戸塚さんはじめカンパニーの素敵さ故と思います。

ぜひ、由美子さんを見かける機会がありましたらご覧いただければと思いますし、何年か先に戸塚さんとの共演もまた拝見したいです。
ありがとうございました!

投稿: ひろき | 2016/05/30 21:55

わたみささん>
コメントありがとうございます。

お芝居を見ていても、blogを書いていても、皆さまの感想を拝見していても嬉しくなる素敵な作品でしたね。

由美子さんも今だからこそこれだけの存在感でいられたのだと思いますし、戸塚さんやカンパニーの皆さまとのご縁も、「一人一人がみんなのために」という感じでとてもほっこりしました。

今回の作品をきっかけに、ご自身も仰っていましたがまたひと花咲かせてほしいですよね。

投稿: ひろき | 2016/05/31 00:11

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