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『寝盗られ宗介』(2)

2016.5.25(Wed.) 11:00~13:55 3階1列20番台(正面)
2016.5.26(Thu.) 18:00~20:55 1階8列30番台(正面)
2016.5.28(Sat.) 11:00~13:55 3階左10番台

新橋演舞場

4月に大阪松竹座で幕を開けたこの公演も、福岡・愛知(刈谷)公演を経て、東京・新橋演舞場が最後の公演地。通っております。

当初はチケ難を想定していたものの、実のところ東京公演はちょっと残席があって、電話をかけてみたら意外に確保できての追加です(水曜・土曜)。正直良席と言いにくいものがありましたが、それでも見られて良かったです。予約は電話のみだとしても、売行き状況はWeb検索できるようにしてほしいなぁ。席があるか分からないのに勧めるのは難しいです。

もう今日が大千穐楽となりますので、内容のネタバレを存分に含めつつ、作品を振り返りたいなと。

「北村宗介一座」の旅巡業、座長が戸塚さんで奥さんが由美子さん、ということでその2人を中心に一座が物語を演じる「劇中劇」のパートがほとんどを占め、その上で「劇中劇」の演者が更に劇を演じるパートもあるという、理解しようとするとかなり頭を使う構成です。台本欲しかったなぁ。原作は買ってようやく理解できた部分もありましたが、それでも全部を理解しているとは言い難い…。

冒頭は一座のメイキング映像シーンで登場人物紹介してから、歌謡シーンで幕開け。福島・いわき市公演での終わり、由美子さん演じるレイ子は、一座の会計担当でもあるノブオ(姜さん)と駆け落ち。それをほくそ笑んで見送る旦那、宗介(戸塚さん)というパートです。音楽は『麦畑』(オヨネーズ)。

場は変わって劇中劇パート。ノブオと出て行ったまま、開演時間になっても戻ってこないレイ子。宗介が電話をするとレイ子はまだホテルで…。
沙紀(福田さん)が立候補して始めようとするも、ほどなくしてレイ子は到着。

「意地悪で言ってるじゃないわよ、あなたじゃ仕切れないからどいて」とレイ子。
そして始まるレイ子の口上は会場の空気をも一気に緊張感に持ち込む長口上で、レイ子の言った意味を皆が理解する。
沙紀にとってはむしろ意地悪で言われた方がまだましかもしれないですね。実力で「力不足」を思わせられる方が、女優としては辛いでしょう。

「下剃り宗介」ではレイコが吉原の女郎を演じ、いかにも上流遊郭の売れっ子風を上手く見せています。吉原女郎を演じた経験はそういえばNHKでありましたね。下剃りとは「人として表道を歩けない」裏稼業の者が、女郎のそういった場所を整える仕事のことで、宗介は江戸に何人といないやり手の一人。ところがこのご時世、江戸の大奥の女性の顔が切りつけられるという不穏な事態が発生し、それを宗介の業と見抜いたレイコ演じる女郎は、実は女郎十手持ちでもあり、宗介をひっ捕らえる機会を虎視眈々と狙っていた…

曲パートで由美子さんがソロで歌うのは『女はそれを我慢できない』(アン・ルイス)。赤の着物の艶姿と、エネルギッシュさがぴったりな選曲で素敵。ただ、演舞場は音の通りが悪く、それこそ「腹から声出さなきゃ」通らないせいか、音楽を声入りでスピーカーから流すので、席の場所によっては肉声とサウンドがコンマ数秒分かれて聞こえるので、ちょっと聞きにくかったです(特に1階8列が予想以上に音が良くなかった)。

十手持ちの啖呵切りと立ち回りは流石カッコよかった。『SHIROH』の追及シーンに匹敵するぐらいで、しかも追及側のトップですからね。「なんだなんだ、そんな目はご法度だったんじゃないのかい。この下取り風情が」ってあたりの起伏付けた責めぶりが絶品。今回特にそうですが、由美子さんのセリフ回しはあたかも音符に乗っかるように上へ下へ、強弱付けて流れるように回すところは、歌舞伎的なこのパートにもぴったり合ってますね。その追及を巧みに躱し、戸板を使った演出も見事に決めた宗介はさすがのカッコよさで(メイキングシーンではここは上手くいっていない)、そりゃ女郎演じたところでレイ子が素に戻ったかのように「宗介、あんた惚れたわ」と言うはずだよなと。

このシーンが終わってようやくレイ子と宗介は再会になるわけですが宗介曰く「男と逃げて帰ってくるとお前は凄味が増す」って言葉の説得力ときたら(苦笑)。「沙紀じゃダメだな」と言ってる横で沙紀が出てきているのに気づかず、宗介の回りを回る沙紀(沙紀にとっては当て付け)見て、「ま、回ってる…」とアドリブ入れるようになった由美子さん面白すぎ。由美子さんがアドリブ入れると、客席が湧いてくれるのが嬉しいです(笑)。アドリブ苦手なんです由美子さん。こんなにアドリブ入るのは楽しい証拠です(笑)。

ノブオが遅れて戻ってきて、上手側に逃げるレイ子。そこからは宗介とノブオのシーンになり、「奥さんを寝盗られた相手と仲良くなる」という、レイ子が憤慨して止まない事態が発生。宗介は奥さんを寝取った相手の面倒を見ることで、奥さんより自分、そして寝盗り相手より自分が精神的に上位になることで「満たされ宗介」になっているわけですね。

シーン変わって、3人衆の即席プロミスシーン(座長の「あいつらやっぱりプロミスだー」が新橋公演だと声の通りが厳しくなってて脳内補完(笑))だったり、時事ネタが意外なほどに受けていた「座長の奥さんをセンテンス○○○○○するんだ」→「このゲスの○○が」ってあたりは初見では爆笑だろうなぁ。ニッキ氏の笑パートが妙に古めかしいのが、でもなんだかクスッと笑えるのが面白いです。

姜さんと丈くんの「歌舞伎役者が大事にしてるところで何寝てんだ」下りのやりとりも毎回面白かった。
姜さんが元JUNONボーイであることをネタにするのが定番でしたが、木曜ソワレの姜さんの「37歳の元JUNONボーイというのが一番の公開処刑ですよっ」が大うけしてました(笑)

1幕後半は、戸塚さんが歌舞伎役者音吉(2幕ではノブオが演じます)、由美子さんがお志摩。音吉の襲名披露の際に楽屋を訪ねてくる元深川芸者だったお志摩。そのお志摩はかつて難波の歌舞伎役者駆け出しだった音吉の面倒を見た関係だったという…。

このパートは、劇中劇としては「3幕6場の大立ち回り」と繋がっています。女郎と芸者をはっきり分けるためか衣装も赤から青メインに変わり、内気な感じに変わりつつも、芸者のプライドというか、女性のプライドというか、許せない一線を越えた後の声色の凄味は流石。

1幕は歌謡シーン途中で幕。「35分の休憩になりますが、お芝居はひとときたりとも進みません。これぞ舞台の魔術」といった台詞により1幕エンディング。曲は本作オリジナル曲『男道』。

宗介とレイ子のデュエットなんですが、大阪公演とはっきり変わって聞こえるのは、2人の自然な寄り添い方。お互いの距離が自然に近づいていて、掛け合いが本当に自然で。2人の関係性を理屈じゃなく空気で見せてもらえて嬉しかったです。

2人は実年齢差大きいし、それもあって2幕では宗介自身が「出会ったとき自分は20歳、あいつはいくつだか分からなかった」と実年齢差をはっきりさせないようにしているし、正直評価が多少心配ではあったもの、今までの経験上「寄り添い由美子」ってぐらい、どんな年齢の男性ともつかず離れずの関係を見せるのが上手なので、今までの経験値が活かされて何より。

2幕は宗介とレイ子の喧嘩別れシーンが前半。ここは劇中劇ではなく宗介とレイ子の直接のやりとり。
いくつもの重要な言葉のやり取りがありますが、一番印象的なのはレイ子が言った

「私は愛されていたわけじゃなくて、許されていたのね」

ですね。
宗介のやっていたことがどれだけ残酷だったかをこの言葉が余すことなく伝えていて、この言葉は重かったなぁ。

このパート、レイ子が宗介のことを”分かっている”言葉ばかり出てくるんですよね。宗介が「座員の女に手を出した」と言うのに答えて「出せたんだ?出せるわけないでしょ」と吐き捨てるように言ってみたり。宗介がいない席でレイ子が自分をかばってくれなかったのを聞いて「俺をかばってくれるのはお前しかいないだろ」とか。ま、結局宗介はレイ子に甘えているだけなんですけどね。

売り言葉に買い言葉、宗介はレイ子を寝盗らせても、結局は帰ってきて自分の下に収まることをもってして優越感に浸っていることがここであからさまになるわけですが、レイ子の言う一つ一つが、真実を突いているんですよね。「女房に勝ってどうするんだよ」とか。
絨毯爆撃のようにエピソード投げつけて女房悔しがらせて、「悔しいっ」って言わざるを得ない状態に追い込まれるレイ子、上手に見せてますよねえ。

男と出ていく前に「3幕もやってけ」と言われて演じる「3幕6場」は、お志摩と宗介のシーン。
ここでの宗介の設定がまさかの○○家であることが判明して、お志摩はお国のために自害するという…
桜吹雪が柔肌に振り落ちる中、お志摩は自ら散っていく、宗介の腕の中で。

「女一人が救えずに、なんでお国が救えるか」

そんな言葉とともに散っていく様は、鳥肌が立つほどに綺麗でした。

いつもだったら出て行ったレイ子は、ちゃんと帰ってきていたのにかかわらず、今度という今度は帰ってこない。
レイ子の父親(酒井さん)が探すが見つからない。
代役を考えていたリリー(小川さん)は「そろそろ自分のために生きたい」といって脱退。

そんな時、東京に出て行ってさんざんな目に遭った沙紀が帰ってくる。
『甘えんぼ』(大塚愛さん)を歌いながら純白のドレスを着て帰ってきた沙紀ちゃん、抜群に綺麗でした。
由美子さんは「可愛い」なんだけど、沙紀ちゃんは「カワイイ」なんですよね。その棲み分けも素敵。

奥さんが帰ってこないことを嘆く座長に「しょうがないでしょ、自業自得なんですから」と言える沙紀、強くなったよね。奥さんとの出会いを沙紀に話したときの、沙紀の納得した表情と「男は正直が一番です」という言葉に納得。沙紀にしてみれば、先に言ってもらえていれば、自分の思いが叶わない夢だったってことが分かったという意味なんでしょうね。それはある意味「女も正直が一番です」と言っているように思えて、紆余曲折あっても自分の幸せを掴んだ女性だからこそ言えた言葉だったんだろうなと。だからこそ、座長を励ます言葉として「私たちは座長を好きなのは、最後はハッピーエンドで終わらせてくれること」を言えたし、弱気な座長を、先頭切って励ますことができたんだろうなと。

ラストシーン、レイ子がついに…という白無垢シーンは何度見ても感動的。
BGMに流れる『夢がさめて』(松田聖子&クリスハート)との相性も抜群。

宗介がレイ子にかけた言葉は、ある意味『ミー&マイガール』のラストシーンと被るところもあって。
戻ってくれて嬉しいのに、でも悪態つかずにはいられない。
そんな宗介の思いは、当然分かっているレイ子。
分かっているからこそ、ただ笑顔で、そしてまたいたずらっぽく微笑み、「これからはたくさん甘えちゃいますから」と、自分が言えてこなかった言葉を言えたことで、「他人行儀」な2人じゃない、「芝居の中だけじゃない相性」を確立できたのかなと。

2人は芝居の中ではどんな役でも心が通じ合い、唯一無二の関係性だったのに、実際の関係ではどことなく歪んだ関係で。
自分以外の男を引きずり込み、寝盗らせないと精神的に安定できない宗介も病んでいて。
誰よりも宗介を想っているはずなのに、正面から宗介に飛び込めないレイ子も踏み出す勇気が持てなくて。

お互いが相手に都合よく求めていた部分を、自分から踏み出せたことでようやく埋まった溝。

大団円の本編ラスト、たしかにラストはハッピーエンドなのでした。

カーテンコール、黒タキシードはとっても嬉しい。
由美子さん、背は娘役なのにお辞儀が完全に男役というのも興味深いです。

さて日が変わって今日はとうとう大千穐楽。
ラストスパート、楽しみです。

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