« 『新妻聖子 music is fantasy』 | トップページ | 『とっておきアフタヌーン』 »

『寝盗られ宗介』(1)

2016.4.23(Sat.) 11:00~13:55 2階2列1桁番台(下手側)
2016.4.23(Sat.) 15:00~17:55 1階右列2桁番台(中盤)
大阪松竹座

 5月の東京・新橋演舞場公演まで待つつもりだったこの作品。

 東京・シアター1010でのプレビュー公演、そして先週から始まった大阪松竹座公演の評判を聞き、由美子さんのポジションもはっきりしたことで遠征を決めました。急遽だっただけに日程調整に困難を極めましたが、金曜日、仕事を定時で上がり、渋谷での聖子さんコンサートを見た後に自宅に戻り、一風呂浴びてから4月開業のバスタ新宿へ。出発5分前にぎりぎり滑り込む慌ただしさ。

 終演後も松竹座を急いで出て御堂筋線に飛び乗り、最終の東京行きこだまに出発3分前に飛び乗るという慌ただしさ。その往復ともの慌ただしさをもってしても、でも見て良かったと思った大阪松竹座公演でした。

 内容的なネタバレを多少含みますので、お気になさる方は回れ右をお願いします。




 タイトルロールにして主役の宗介は、劇団「北村宗介一座」の座長。彼は妻であるレイ子を他の男に寝盗らせ、それでも最後は自分の元に戻ってくることをもって、ある意味悦に入る男。

 つかこうへいさんの作品、久しぶりのリバイバルということで今回の公演。

 宗介をA.B.C-Zの戸塚さん、妻のレイ子を高橋由美子さんが演じます。
 一座の主要登場人物として、若手のヒロイン格、サキが福田沙紀さん。ベテランの女性座員が小川菜摘さん。レイ子の父親に酒井敏也さん、といった皆さま。

 2幕(幕間35分)制で、かなりの部分を劇団「北村宗介一座」の作品世界が占める、いわゆる「劇中劇」。一座の団結力がとてもしっかり見えて、座長さんの人柄が窺えます。リーダーシップもあるし、いい意味でツッコまれるような隙があるのも素敵です。

 それにつけても噂には聞いていたものの、由美子さん演じるレイ子の台詞の膨大さときたら、拝見していてぽかーんとなってしまうぐらいの多さ。それでいて「台詞が多いからと言って、台詞には頼れない。その先に感情が見せられないと(と思っている)」とパンフレットで自身に喝を入れるかのように言っていた由美子さん。その覚悟がビシビシと伝わってくる、凄い存在感でした。

 大人の色気は下品になっていないし、殺陣も見栄切りも流石だし、コメディパートのコメディエンヌぶりもその浮かなさは凄いし。でも、今までどの作品でもやっていなかったものは、実はさほどないんですよね。

 実際、劇団☆新感線であれだけ見栄切りをやってきた方ですから(今回のは『花の紅天狗』が劇中劇ということもあり似ている感じが)、決めが決まるのは納得のうちではあります。実際、劇団☆新感線は主宰のいのうえひでのりさんが当初はつかさん作品を演じることで立ち上げたわけですから。

 が、そうは思ってもそういう役に巡り合えるかは別の話で。

 今回の演出である錦織氏は由美子さんと『ガイズ&ドールズ』で夫婦役で共演。今回、この作品でレイ子役に由美子さんを配役した理由は氏曰く、「共演したときに自分が放ったアドリブを、更に上から被せてきたことに(新鮮に)驚いて、凄いと思った」からだそうで。

 ここ数年、特に東宝芸能さんに移られてからは、どことなく消化不良な活動が目立っていた由美子さん。それがここにきて(4月から)事務所も変わり、それこそ『ガイズ&ドールズ』以来の当たり役、下手をすると代表作になるのではという今回のレイ子役。
 そんな役に巡り合えた奇跡は、どことなく前向きさをはっきりと感じ取られなかった最近の由美子さんへの、高いハードルだったように思えて。その高いハードルに立ち向かい、こういう形でまさに全身全霊で見せてもらえたことに、感謝の気持ちで一杯ですし、とても感動しました。

 何より、この役を今の年齢で出来たことには拍手しかなくて。元々若い役者さんがやれる役ではないですが(実際サキに対して「意地悪で言ってるんじゃない、あなたではここは無理」と言ってますし)、それでもつかさん作品でここまでのものを見せてもらえたことは、確実に次につながる気がします。

 頭が切れる宗介と、学がないレイ子。
 とはいえ、レイ子は何度も自分が寝盗られる様に、違和感を感じ始める。
 これは宗介の企みではないのかと。

 結局のところ、宗介は自分では浮気する度胸はない。
 その代わりに、レイ子を浮気させる度量があることに酔っている。

 宗介は一座の女衆からはモテモテではあるが、それでも彼女たちはレイ子の様子と自分の位置を見て宗介に忠告する。「女を大切にしなよ」と。
 宗介の態度は、レイ子に対して誠実ではないばかりか、自分たちにとっても誠実ではないと感じたのではないかと。

 宗介とレイ子の出会いは大学での学生と学食の賄いさん。「自分は20歳そこそこ、彼女はいくつかわからなかった」という呟きは実際の演者さんの年齢にも重なって見えたり。ここは菜摘さんがいみじくも言った「他人の心配ばかりしていると、歳ばかりとっちゃう」という表現が、まさにレイ子を指しているようにも思えて。

 いつもは幕開きまでに帰ってきたレイ子が、今回ばかりは帰ってこずに焦る宗介。
 何度ピンスポを当てても空振り、レイ子が帰ってこなければ代わりをお願いするつもりの女性にも逃げられ。

 そこからのラストへの流れ。
 宗介はレイ子へしていたことへの罪深さを知り。
 レイ子は拒んでいた宗介の”妹への気持ち”に寄り添い。
 どちらかが一方的にでなく、近づいたことによるエンディング。
 サキが言うところの『最後は必ずハッピーエンド』な空気。
 上下関係の「許す」ではなく、対等な関係での「赦す」、それこそが「愛」だと。

 そんな物語を描く、それぞれのストーリー。
 まだ戯曲の読み込みが甘いので、東京(新橋演舞場)公演までに読んでおこうと思いますが、座員1人1人が欠かせない要素として立っている姿はとても素敵で、作品としても、座組としても、そして役柄としても満足な観劇となりました。

 この後、5月に福岡、愛知(刈谷)公演を経て東京(新橋演舞場)公演へと続きます。
 ますます進化した姿が拝見できますように。

|

« 『新妻聖子 music is fantasy』 | トップページ | 『とっておきアフタヌーン』 »

コメント

遠征お疲れ様でした。
久しぶりに、観劇後のすっきりとした
気持ちになれた作品でした。
あれだけの長いセリフ立ち回りかっこいい
由美子さんを見られてよかったです。
東宝芸能に所属後、いいお芝居に出演はなく
歯がゆさを感じていましたが、今回の作品は
由美子さんにとって、代表作品になりそう。
主役さんのファンからも評判よくて
うれしい限りです。この作品に出演できたことは由美子さんの今後に期待できることと
思います。ニッキさんに感謝です。
あと5回行きますが堪能できるお芝居で
遠征も苦になりません。

投稿: てるてる | 2016/04/24 03:19

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/74093/63528129

この記事へのトラックバック一覧です: 『寝盗られ宗介』(1):

« 『新妻聖子 music is fantasy』 | トップページ | 『とっておきアフタヌーン』 »