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『オリーブ~心には花を、頭にはスクラップブックを~』(1)

2016.3.6(Sun.) 13:00~14:20
シアター1010ミニシアター 上手側角

陽なたpresentsは『ちっぽけなタイヨウ』以来、シアター1010ミニシアターは『マザーテレサ・愛のうた(コンサートバージョン)』以来、それぞれ2度目。

舞台を前にコの字型に組まれた2列の客席。整理番号順での入場で、正面は埋まっていたので、お勧めに従い上手側角に。とても見やすくて感謝。

今回は2組制で、この日はキンポウゲ組の初日。
もう1つのカルミア組との言葉の意味は本編で語られますので、ここでは省略しますがなるほどなぁと。

キンポウゲ組で主人公の大学生・レオを演じるのは染谷洸太さん。去年の観劇で最多作品数だった男性俳優さんですが、今年は初めて(『Marry Me A Little』では唯一拝見できなかった組み合わせ)。いつもは「いい人」役が多いので、前半はとても新鮮でした。

というのも、レオはホントにしょうもない若者で(爆)。
むしゃくしゃして、酔って隣の家の犬小屋を壊して、そのお詫びということで社会貢献活動に取り組む「羽目に」なるという。

「自分は悪くない」という気持ちに満ちているから、すべてを「自分のちっぽけな物差し」でしか図れない。「要領よく無難に生きよう」という思いが、どれだけ「自分以外と向き合っていないか、自分以外を相手にしていないか」に気づいていない。

「オリーブ」とは社会貢献活動で出向いた、「話し相手を求めている」老婦人。

オリーブとの距離の取り方が分からないレオはとにかくひたすら逃げようとする。
でもレオ本人は逃げている自覚がない。逃げているうちは何も前に進まない…ことを見せてくれます。

オリーブ役の高谷あゆみさん、偏屈そうな感じを上手く見せていて、しかも見せ場ではさすがの存在感と歌唱、そして主人公との対峙、さすがベテランの迫力でした。

主人公の恋人(未満)、アルミ役は水野貴以さん。煮え切らないレオを蹴り上げているところが相性ぴったりすぎ(笑)。ちょこまか動く感じが役どころにとても合っています。
レオが「自分だけが不幸だと思っている」かの態度なのに対して、最後まで自分の苦しみを吐露しないところが強いなぁ。レオとアルミは「子は親を選べない」という点で境遇を共有しているんですよね。

『BEFORE AFTER』の楽日と通し稽古が被って、何と本人不在で通し稽古をやったことがあったという、田宮華苗さんが演じたのがホーリー役。一番意外な役どころがこの方だったかも。たみーだからそんな小さい役だとは思ってなかったとはいえ、予想以上のキーパーソン。
ラスト近くで染谷さんと田宮さんが一緒に歌うパートもあり、『BEFORE AFTER』初演・再演のベンとエイミーだ、と観れなかったことをちょっと補完してみたり(染谷さんは綿引さんと、田宮さんは寺元さんと観ています)。

賑やかし担当、シーリア役・青山郁代さん。オリーブ家で催されるライブのパフォーマンスゲストの1人ですが、赤いドレスがとても似合っていて、とにかく踊り歌いまくる。郁代さんの良さはとにかく弾けているときに一番出るので、ぴったりすぎです。ご本人の念願の役だったとのことですが、「この役を演じられる喜び」が全身から漲っていて。全部の作品・役でそれが許容されるわけじゃないとしても、この作品・この役にはぴったりなポジションでした。相手役・ディークの篠田裕介さんとのバランスも良かったです。

ひときわ気になったのが、レオの母役を演じた鎌田亜由美さん。去年11月に綿引さんが主演した『悟らずの空2015』でアンサンブルとして出演されており、とても目を惹く存在だったので覚えていました。
今回は夫とうまくいかず再婚しようとしている、でも未来を見いだせないでいる母親の焦りを実にリアルに表現されていて良かったです。ちなみに鎌田さん、長年、新妻さんが所属されていたオーチャードの所属です。

ホームレス役の小西のりゆきさん。主演の染谷さんの師匠でもありますが、今作もレオの本質をすべて見通している感じが流石です。この方には嘘は付けない、って感じ。

陽なたの演出をされている丹宗さんと気心知れた仲間たち、という感じでの作品作りが、作品世界に自然に一体感を醸し出していて。そこにすっと入り込む桑原まこさんの、繊細で温かな音楽がとても素敵です。

主人公のレオは自分の境遇に嘆いて、他人の幸せを羨んでばかりいて、周囲にいるたくさんの、自分への愛情を自分から遠ざけていて。

でも自分が自分から変わらなきゃと気付けたことで、自分がどれだけ周囲に恵まれていたかを知っていく過程がとても自然で。

みんなが笑顔で終われた本編にとてもほっこりしたのでした。

本編終了後、染谷座長からご挨拶。

「本編で自分は『バカナス』って言われているんですが、花言葉は『嘘』と『真実』。それがなんだか芝居みたいだなって。芝居は『嘘』をつくことだけど、この距離感で『嘘(の気持ち)』では伝わらない。『真実』を伝えたい、伝えられるように頑張りたい

といった言葉があって、この物語のセンターに立てる理由を実感しました。

公演は2組制、カルミア組とキンポウゲ組。12日(土)まで、シアター1010ミニシアターにて。

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