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『tick...tick...BOOM!』

2016.2.13(Sat.) 18:00~20:00
シアター風姿花伝 C列1桁番台(上手寄り)

『RENT』のジョナサン・ラーソンの自伝的な作品、AKA Company第1弾公演としての上演です。
この作品は過去、ジョナサン役を山本耕史さんが出演・演出されていて作品名は知っていましたが、今回が初見です。

ダブルキャストでの上演でこの日のマチネがTeamLの初日、この回がTeamJの初日です。
「J」が「ジョナサン」で「L」が「ラーソン」ですね。

主人公のジョナサンは30歳を目前にして、まだ何も結果を残せていない自分に焦る。自分に常に聞こえているのは「tick...tick...」と鳴り続ける時計の様な音。

親友のマイケルは仕事に就き成功し順風満帆。ダンサーで恋人のスーザンはジョナサンの「夢を追う」姿に疲れ、現実的な将来としてNYから田舎に移り、新しい生活をしたいと思っている。

そんなストーリーで、TeamJはジョナサンを神田恭兵さん、マイケルをtekkanさん、スーザンを岡村さやかさんが演じています。

とはいうものの、1人1役なのは実はジョナサン役、つまり神田さんだけ。ジョナサンの人生をたどるわけですから当たり前ですが、tekkanさんは2役(マイケルと、ジョナサンの父親役)以上。その上、スーザンに至ってはメイン役としてスーザン以外に、ジョナサンが作った作品に出演する女優役(カレッサ)を含めて、恐らくは全7役を演じています。

ストーリーテラー兼主演というジョナサン役は、35歳で亡くなっていますが、夢を追い続けて生きているうちは評価されなかったところに、どことなくモーツァルト的なものを感じます(モーツァルトも35歳で亡くなっています)。
神田恭兵さんは『ミス・サイゴン』のトゥイ役ほかで拝見していますが、ここまで出ずっぱりの役を拝見するのは初めて。熱量熱く突っ走る姿は、やはり物凄いエネルギーが必要なようで、さすがに一本調子になってしまうシーンもありましたが、全体としてジョナサンの若さゆえの焦りにも見えて、自分の才能に自信を持ちきれない様に説得力がありました。自信家でありすぎない様がちょうどよかった気がします。

相手役にあたるマイケルにはtekkanさん。「30歳を目前にして焦る」というテーマはTipTapの『Count Down My Life(CDML)』とも被る部分があって、CDML初演で焦っていた(脚本家の)役を演じたのはtekkanさんだったので、「才能ある人間が、上手くいかず焦る」ことを見守ることへの無限の説得力を感じました。
作品後半、まさかまさかのカミングアウトを2つほどしていますが、作品のストーリー的に、「そのカミングアウト要るのかなぁ?」と正直思ってしまいました。メインのテーマにしたくなかったようにも感じました。「RENT」色が強すぎるからかなぁ。

恋人役のスーザンはダンサーの割に踊るシーンはほぼありませんでしたが(爆)、彼(ジョナサン)が自分の道を進むことに「付いていけない」という面がありつつも、「彼の道には自分はいちゃいけない」と能動的に身を引いたように見えたりしました。

スーザン以外にも、コミカルからやり手まで、両極端な役をおそらく全部で7役(スーザン役含め)演じられていますが、舞台の下手側から裏手に入って、すぐさま上手側から別の役で出てくるといった曲芸的な早替えを複数回演じられています。一番ツボなのはマイケルの会社に呼ばれてミーティングに参加する時のマネージャー格(キャリアウーマン)かな。自分の思い通りに動かないとそのメンバーを遠ざけるタイプ、おるおる(笑)。

印象的だったのはジョナサンが5年かけて作った作品の女優役・カレッサが歌い上げるM11「Come To Your Senses」。暗闇に響く、ジョナサンの心の叫び(ある意味、ジョナサンの心への叫びでもある)をカレッサが大切に歌い上げる。そしてそのカレッサはスーザン役の女優さんでもあるわけで。

スーザンはジョナサンのために身を引いたのかもしれない。
でも、スーザンはもう一人の自分・カレッサとして、ジョナサンの描きたい世界の、かけがえのない代弁者にもなった。

そのことをまざまざと感じさせられる岡村さやかさんの歌。
技術というハードに、気持ちというハートが裏付けられているからこそ、伝わるものがあるのだと思います。同じ女優さんがこの2役をやることの意味を感じました。

ジョナサンの生涯をたどりながら、どことなく伝えるメッセージの弱さに少し戸惑いますが、迷いし若者に対して夢を説く、夢を持つことの大切さと、夢を持ち続けることの大切さを感じさせる素敵な作品でした。

公演は16日(火)まで。

公演案内では最寄り駅は下落合駅(西武新宿線。高田馬場の次の駅)となっていることも多いですが、坂がかなり急なため椎名町駅(西武池袋線。池袋の次の駅)の方がお勧めです。なお、どちらの駅も各駅停車しか停まりませんのでご注意ください。

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