« 『I Love musical~』(1) | トップページ | 『若井久美子トーク&ライブ』 »

『Marry Me A Little』

2016.2.5(Fri.) 20:00~21:30 B-1 B列下手側
2016.2.6(Sat.) 20:00~21:30 A-2 A列中央
2016.2.7(Sun.) 20:00~21:30 A-1 C列中央
早稲田小劇場どらま館

TipTap10周年記念「Creator's Lab Tokyo」企画。
同じ作品を2人の演出家が演出したら、どう変わるのかの実験企画。
Aチームは藤倉梓さん、Bチームは上田一豪さん。
それぞれ1stと2ndキャストということでつまりキャストが8人。

ソンドハイムの楽曲の、「本番落ち」(諸々の理由で本公演で使われなかった)曲を寄せ集め、「男と女」というト書き以外に前提がなく、あとは演出家に委ねられたこの公演。

アフタートークで何度も話が出てきたのですが、何しろ元々「物語がない」ので、どう作るかは演出家(藤倉さんと上田さん)次第。それもあってか、正直、1回、しかもA・Bの片方を見ただけでは何を言いたいのかが正直分からないところがあります。歌は上手い方ばかりですし、耳福ではあるけれども。

Bの後でA(A-2)を見て、あまりの違いに絶句したわけですが、まず最大の違いは、Bは物語があるけど、Aは物語がない、これはアフタートークでもいの一に触れられていた点。Bの上田さん曰く「物語がないので何とかして物語を作ろうとした」、Aの藤倉さん曰く「物語がないので物語を作るのを諦めてソングサイクル形式(1曲で1ストーリとして、そのシーンを組み合わせる作品)にしようとした」。

今回のAとBの最大の違いは、演出家が女性と男性だったところにあるような気がします。

男性というのは良くも悪くも「枠組みがあることで初めて安心できる」ところがあるので、「物語がないと落ち着かない」という面がある気がします。
それに対して女性は「枠組みがなくても軸があれば安心できる」ところがあるような気がして(女性であったことはないので想像ですが)、「結果としてまとまればそれでいい」ように作られているような気がしました。

言い換えると、男性は前提重視、女性はプロセス重視というか。

それは作品に出てくる女性と男性の関係(ちなみに見ず知らずの関係です)の関係にも反映している気がして、Bの女性(B-1の木村花代さん)と男性(B-1の上野聖太さん)との関係は、どことなく急で、前触れも何もなく時を共有したように感じました。

それに比べ、Aの女性(A-1は清水彩花さん、A-2は青山郁代さん)と男性(B-1は西川大貴さん、B-2は照井裕隆さん)との関係は段階を踏んで近づいて時を共有したように見えて。
女性が男性からの攻撃(男性は攻撃しているわけでも、女性が攻撃されているわけでもないですが)に胸を射抜かれるようなセリフ(バンバンバン)は「女性はプロセス」なのかなと思わされるものがありました。

今回のAとBから受ける印象の違いと言えば、

A「ちょっと結婚してみない?って思うよね?」
B「ちょっと結婚してみない?ってこれでも思うの?」

ってぐらいの印象の違いがあるわけなんですが(笑)、
とにかく、Bは心のえぐられ度が半端ないです。

Aは役者の人生を曝されている感じ
Bは役者の人生を試されている感じ

の違いと申しますか。

Aはライブ寄りなところがあるので、「役」よりも「役者」の人生。
役者の人生が物語に色濃く出るので、役者の今までの人生が「曝されている」感じ。

Bは前提としてあくまで「芝居」なので「役者」よりは「役」の人生。
役の人生を深く出すためには、役者の今までの人生が「試されている」感じ。

B-2は残念ながら見られなかったので、B-1とB-2を比べられないのですが、A-1とA-2は特に女性役の色の違いがはっきり出た印象。A-1の清水彩花さん、A-2の青山郁代さんともにコゼット経験者という共通点はありますが、彩花さんは「女の子」、郁代さんは「女子」という違いを感じて。

たった1文字の違いなんですが、郁代さんはとにかく弾けたポップさが印象的で、かなりの点で男性役の照井さんを引っ張っていました。照井さんは以前『ミス・サイゴン』のクリス役で拝見していますが、勝気なキムとの相性が抜群に良かったので、今回もその引っ張られぶりがナイス組み合わせ。

それに対して、彩花さんは男性役の西川さんの提案に上手く乗っかるイメージで、美味しいところをちゃっかり持っていく上手さが抜群(笑)。Aチームだけで使われた絵をラストシーンで女性が回収しなければならないのですが、1枚回収を忘れ、アフタートークで突っ込まれて「てへっ」とやってる彩花さん最強(爆)。

そういえば女性の服装ではブラウンのコート着ると「あれ、エポニーヌ?」と思ったり、ピンクのカーディガン羽織ったら「あれ、『Second Of Life』の彼女?」って見えたりしました。
特に後者は当時、郁代さんが演じていましたので、Bチームで郁代さんが演じたらなおさら似た印象を受けたかもしれません。
(「見えない相手へ気持ちが伝わらず、最終的に諦める」という点では似ている感じ。)

Bチームは「物語」を通した「人生」で貫かれていたように思いましたが、AチームはA-1の彩花さんは「嬉しさ」で貫かれ、A-2の郁代さんは「楽しさ」で貫かれていたように思います。Aチームは2人の妄想の仕方の違いが興味深かったです。

今回のこの企画で無理だとは分かっていても、同じキャストでA、B両方でやるのを見てみたかった…と思ってはいました。と言ったら「役者さんに対して鬼だ」と言われましたけれども(笑)。実質1人2役やるのと同じですからね。

ただキャストは違えども、演出家さんが役者さんに求めるもの、また役者さんの持ち味をどこまで許容するかによって物語の作りがどう変わるのかを何となく理解できたのは収穫でした。

AとBを両方見ることが前提で楽しめるかどうかが変わる点はちょっと気にかかる節はありますが(日程的にAとB両方を見るのは実際のところ相当難儀でした)、実験的な企画に触れられたのは刺激になりました。

|

« 『I Love musical~』(1) | トップページ | 『若井久美子トーク&ライブ』 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/74093/63180173

この記事へのトラックバック一覧です: 『Marry Me A Little』:

« 『I Love musical~』(1) | トップページ | 『若井久美子トーク&ライブ』 »