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『BEFORE AFTER』(4)

2016.2.28(Sun.) 13:00~14:20 4列目下手側
2016.2.28(Sun.) 17:00~18:40 1列目上手側
スターパインズカフェ(吉祥寺)

3か月ぶりのBA、会場は前回(12月)公演の日暮里d-倉庫から再び、去年8月公演の当所に場所を戻しての再演です。

今回は2組体制で、この日のマチネは月組。ベンは寺元健一郎さん、エイミーは田宮華苗さん。
ソワレは星組で、ベンは上野聖太さん、エイミーはRiRiKAさん。

「BEFORE AFTER」3期目となる田宮さん(BAの「レジェンド」のお1人。もう1人は同じく3期演じた染谷洸太さん。初演・再演が田宮さんと染谷さんのペア)以外は全て新顔という、意欲的な配役です。12月公演はペア毎に少なくとも片方は経験者だったんですけどね。

個人的には初BAが前回の当所、ベンが内藤大希さん、エイミーが岡村さやかさんだったため、レジェンド田宮さんは初めて。結果、個人的には全てのキャストがBAでは初、という新鮮な組み合わせになりました。

月組の寺元ベンは、歴代ベンに比べても飛び抜けて「チャラく見えないベン」で、実にしっかり者。ベン役といえば、役者さんはともかく役としては「チャラい」が先にくるので(爆)、真面目過ぎるのではと思うぐらい。逆に田宮エイミーは、エイミーの役どころで言うところの堅物さは薄いというか、「自分で自分を縛っている」という面は薄いかも。

田宮エイミーのコメディパートはそこかしこに、綿引さやかさん(びびちゃん)のエイミーを感じたのですが、これは時系列的には逆で、びびエイミーが元々たみーの方向性に沿った形だったのでしょうね。個人的にはこの順序(びびちゃん→たみー)で見られてしっくりきました。

年齢の関係もあって田宮エイミーと寺元ベンだと、学校の教師と教え子みたいな空気に見えることが多くて(「BEFORE」の時のジャケットを着ると特にそんな感じ)。そう思って振り返ってみると、びびエイミーと染谷ベンが教育実習生と教え子みたいに感じます(←年齢は逆転しています…爆)。

寺元君の凄いなと思ったのが、後半のとあるシーンで歌詞を噛んでしまったところの対応。
何しろ凄い台詞量、凄い歌詞量ですので、こうなるとガタガタになりかけるのがベンなのですが、「感情が入りすぎてつっかえた」みたいに自分で1クッション入れてから再開したんですね。

『BEFORE AFTER』は2人芝居なので、相手に頼ろうとすれば頼れるのですが、そこを頼らないで戻そうという心意気が素敵でした。そんなベンを信じて立ち上がるのを待つ田宮エイミーの姉御肌さが素敵なバランスでした。

ともすれば、恋愛しなくても自立できそうな田宮エイミーではあるわけですが(そういえば岡村さやかさんのエイミーもそんな感じでしたね)、ベンの素直さに対する憧憬は強く感じました。自分が今のままじゃいけないと分かってはいるのに、自分からは動けない感じ。
「頭の中では分かっているエイミー、心の中では分かっているベン」という対比に感じて印象的でした。

この物語はエイミーとベンが、自分たちが漠然として感じていた「自分に足りないもの」を見つけ出して、それそのものを持っている相手だからこそ、エイミーにとってはベン、ベンにとってはエイミーが、「他の誰かではなく、その相手こそが大事」であることを認識していく、そういう面を持っていて。

田宮エイミーは自分の限界も相手の限界も分かって、その上で優しくベンを導く様が印象的。
予想といい意味で違ったのが、シリアスシーンの締まりの凄さ。
田宮さんはどうしてもコメディエンヌのイメージが強いですが、シリアスでの空気の締まり方がさすがでした。「昭和の女」というか、昼ドラチックなところを感じないわけではありませんでしたが(笑)。
ちなみにびびちゃんは朝ドラ、RiRiKAちゃんは二時間ドラマ(爆)。

マチネカーテンコールでは、『Before After』CDクラウドファウンディングのご説明。
説明用のチラシを読む田宮さん。そのチラシの真ん中が破れていることを指摘する寺元くん。
「先ほど破いちゃいまして…って、そこはツッコまなくていいのっ!」と反応する田宮さん。
寺元くんが一本取ったかと思いきや、バンドを紹介しないで「本日は…」と締めそうになって、田宮さんに突っ込まれる寺元くん。

両者、痛み分け(引き分け)です(爆)。

ソワレは上野ベンとRiRiKAエイミー。
事前に、「今までのどのペアとも違う空気」と聞いていましたがまさにその通り。
前半は慣らし運転みたいな感じでしたが、後半から一気に物語が動き出す。
どのペアも素敵と思えるのが『BEFORE AFTER』の良さですが、このペアの相性は奇跡的です。

とにかく、RiRiKAちゃんの怒りモードの嵌り方と来たら凄すぎて(笑)。
RiRiKAエイミーを一言で表現すると「ブチ切れエイミー」ってなるぐらい(爆)。
上野ベンへの責め立て方がこれでもかってぐらいにS気全開。
最初の丘のシーンからして、めちゃくちゃガン付けモードで、間違いなくBA史上一番怖いエイミーです(笑)。
「あん?」とか普通にヤンキー入ってる(爆)。

その上、テンポも抜群で。

木の下でベンに迫られた時の
「いっぺん・・・・死ねっ!!!!!」
を言うときに「・・・・」でめちゃくちゃ溜めて、
RiRiKAエイミーから波動砲が飛び出すかのような破壊力で会場中大爆笑。

いやぁ、『BEFORE AFTER』実用新案に認定ですよ、あれ(笑)

※元々は岡村さやかさんが発明した「いっぺん、死ね」ですが、
さやかさんはそのそっけなさが面白く、
RiRiKAちゃんはその破壊力が面白いです(笑)

ベンの先導でエイミーがくるっと回るはずのところも、エイミーが気乗りがしないと見て取るや、「はいはい、私が回りますよ」と言いながら”自分で”回った上野ベンの機転も絶妙すぎて、こちらも爆笑が舞い起こる。

明らかにソワレは2人の組み合わせでの”笑いの神”が舞い降りていました(爆)。

ただ、笑いも多ければ、感情のぶつけ合いもそれはそれは凄かったのがこのペア。
優しい人ほど、相手のことを思い厳しい言い方になるのかもしれない、というほどにRiRiKAエイミーの攻撃は凄かったです。

だからこそ強く感じたのは、エイミーのこの言葉の重さ。

「守るべきものもないのよね。絆も、家族も。だからいつも自分から逃げていた」

エイミーが放ったこの言葉は、思い返せば”持つ者”からの視線。

この時の上野ベンの表情は何とも言えない苦悩に満ちていて、胸を突かれました。

孤児である彼は、「守るべきもの」を知らずに育った。
自分で好き好んで「守るべきもの」を持たなかったわけじゃない。
それなのに、人生で初めて思った「自分で守るべきもの」だったであろう彼女に、そう言われた時の絶望はいかばかりだったか。

「自分はこれまで生きてきて、守るべきものを持てなかった、だけど初めて『君を守りたい』と思った」

という言葉はその時のエイミーには伝わろうはずもなかった。
だから、ベンは「もういい」と背を向け、酒に溺れた。

上野ベンは、今までのベン以上に、”弱さ”・”脆さ”を感じました。

エイミーがベンの何を傷つけて、エイミーが何ゆえに自分を責め続けているのかが、キャストごとに変わるのがこの『Before After』の面白さ。

それは、演じる役者さんの価値観が反映しているからに思えます。あえて完全な正解を提示せずに、キャストごとが感じる、「過去の自分に対してどういう後悔をするか」を表現させることをもって物語を作っている、それ故に、見る毎に変化を感じるように思います。

併せて、見る側にもそれは同じように思えて。”大人のミュージカル”というか、考える余白が適度にある作品こそがいい作品だと思うので、このBAはその要素をかなりの点において満たしている作品に思えます。

RiRiKAちゃんのエイミーに関して言えば、「怒り」の理由は、自分を変えられない自分への憤り・焦りが、ベンへの感情攻撃につながっているのかなと。

上野くんのベンはそんなRiRiKAちゃんエイミーが立ち直るのを待っている、とても辛抱強いベンに感じました。
かつてないほど強いエイミーだったので、ベンの包容力を感じて、今までと違ったペアに思えました。

今まではベンの脆さにたいするエイミーの包容力、というのが基本線でしたから。

次回公演は7月23日(土)、24日(日)。場所は同じくスターパインズカフェ(吉祥寺)。

このスペースはやっぱりBAにぴったり。音響もいいですし。日暮里d-倉庫だとこの作品にとってはちょっと横に広すぎて、空間を埋め切れないところがあるので。

役者の息遣いに寄り添い、役者の溜めに演奏が寄り添うだけに、何と20分も延びたソワレに驚き。
たしかに特に上野さんはかなり溜めて入っていたように思いましたが。

一度聞いたら何度も聞きたくなるこの作品、先述しましたが、CDのクラウドファンディングプロジェクトが3月末まで行われています→こちら

クラウドファンディングの説明を月組も星組もどちらも省略されていましたが(笑)、要は個人出資ですね。プロジェクト成立金額(今回の成立金額は140万円)に達しなければプロジェクト不成立になります(カード決済の場合、与信は申込時ですが、決済はプロジェクト成立確定後です)。

参加キャストは未発表です(スケジュールの都合で参加できない可能性のあるキャストもいるそうで調整中だそうです)が、ぜひBAの世界がCDになる夢、実現できますよう、願い、応援しています。

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