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『WORKING』

2015.10.2(Fri.) 19:30~21:10
新宿村LIVE C列10番台(センターブロック)

一般社団法人映画演劇文化協会「ハロー・ミュージカル・プロジェクト」の無料公演、行ってきました。
仕事が佳境なのでぎりぎりの会場到着。「10分前までに到着しない場合は…」の注意書きに戦々恐々としつつ、手にした座席券はセンターブロックというかセンターそのものでした(目の前の立ち位置番号が「0」なので)

様々な人たちの「Working」を語りつなぐオムニバス形式のミュージカル。輸入物ですが、音楽は今回用にかなり書き換わっているようで、小澤時史氏(某嬢曰くの「世界の小澤」)演奏で、演出は上田一豪氏なので、随所にTipTapぽいシーンもちらほら。

一番噴いたのは、伊藤俊彦氏が染谷洸太氏に「釣りはいらねぇ」というシーン。一部に大うけだったこのシーン、TipTap『Second Of Life』の、寝坊して会社に向かうときに捕まえたタクシーシーンのオマージュですね(染谷氏が乗客、伊藤氏がそれはそれはデフォルメされたタクシードライバーで、散々ドライバーにかき回された挙句、キレた乗客が『釣りはいらねーよ!』と降りるという)。

前半は自分が「Working」した後の「Working」だったせいか、集中力が続かないことも何度か。ひたすらに登場人物が早変わりで別々の「Working」を語るので情報量が半端ない反面、「共通点がどこにあるのか」を探そうとしていると存外に疲れました。正直、登場人物はもう少し絞った方が良いと思います(役者さんは今の人数でちょうどいい。ちなみに男性3名・女性3名)。

前半を見ていると「Working」そのものというより「Life」(人生)の側面を感じました。
タイプ的に分類すると「仕事があってこその人生」というタイプと、「人生のために仕事をしている」というタイプ。
前者は仕事に並々ならぬプライドを持っているけれども、”仕事を奪われたらどうしよう”という思いから意識的に目をそらしている感じがあり。
後者はドライに生きているけれども、その仕事を選んだことには理由は持っていて、どんな仕事でもいいわけじゃない。

登場人物の「Working」はほぼ交わらなくて、複数の登場人物の人生がただ並列に並べられる構成の部分は、歌はみなさんお上手でお芝居も安心して見られますが、実際に心揺さぶられるのは、複数の人が絡む部分なんですね。

一番惹きつけられたのは「石」を掘る仕事をしている男2(Aチームは染谷洸太さん)が「石はずっと残る」と言っているシーンで、舞台反対側の上から、男1(Aチームは川島大典さん)が優しく歌で包み込むシーン。
男2は人生を回想するという面で登場していて、染谷氏の年配役の説得力ときたら、それはそれは絶品なわけで(『I LOVE YOU, YOU'RE PERFECT, NOW CHANGE』通称「なうちぇんじ」で実証済み)、あれだけ若いのに、確かに人生の重さを伝える表現力が素敵です。

「ちっぽけな自分であっても、作られたものは残る。石は半永久的に残る。それは自分が生きた証」ということを表現していて。それを見つめる男1の優しい歌は、そんな男2への温かいエール。「君の生きた証、それは世間への影響力の強弱とかで測られるものではないんだ」ということをとても素敵に伝えていて、この1シーンを見られただけでこの作品を見て良かったというか、一番必要なパートだったんじゃないかと。

というのも、これがこの作品のラストパートのメッセージに直結していて、男3(伊藤俊彦さん)が語る、「この建物にかかわったすべての人の名前が建物に記されていたら、それは素敵なことだし、語り継がれることで息子や家族に伝えられていくことができる」という言葉には深く心に刻まれるものがありました。

以前、「地図に残る仕事」というキャッチコピーが某建設会社さんで出たことがあって、それと同質の感動を感じました。

「Life」でなくて「Working」である理由。
ただ生きるだけでは何も残せないかもしれない。
ただ働くことで何かは残せる。
それは誰かに軽重を測られるものではなくて、確かに自分が生きた軌跡であり意味。
だからこそわれらは「Working」するのだというメッセージが伝わってきて、胸に迫るものがありました。

見終わった後見上げた町は新宿の高層ビル群。かつては淀橋浄水場として使われた土地に、次々と建てられた高層ビルの1つ1つ、1階1階に、無数の人たちの労苦が刻まれていることを感じさせられて。

ただの偶然かもしれないけれど、この作品が「新宿」で上演されたことの意味を感じて、なんだかとても腑に落ちたものがありました。

登場人物としては伊藤俊彦さんと染谷洸太さん、原宏美さんのお3方が既に拝見済み。原さん長身活かしてせくしーでしたね。北村岳子さんのパワーに度肝を抜かれました。1つ心残りなのは折井理子さんがBチームだったので拝見できなかったこと。あの役をどう演じるのかは見てみたかったな。

このクオリティーが無料で見られることに感動しつつ、でも実のところアンケートがあっても良かったんじゃないかと思う。何を感じたかのフィードバックは無料だからこそ必要なものじゃないかなと思う。「ただ何かを持ち帰ってもらえればそれでいい」という観点も大事ですが、「何を思って見に来て、何を感じて帰ったのか」をリサーチして次のプロジェクトに活かす観点は必要なのじゃないかと思います。

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