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『はかた恋人形/石川さゆりオンステージ』

2015.9.5(Sat.)12:30~15:45 3階A列40番台
2015.9.6(Sun.)11:30~14:45 1階F列20番台

博多座2015年9月特別公演、石川さゆりさん主演公演、1日目と2日目を観劇してきました。

博多座に来るのは2005年11月30日の『MOZART!』大楽以来ですから、実に10年ぶり。
10年経ったんだっけ?と不思議になるほどに、街の空気が変わっていないのが不思議です。

今回の作品は博多座制作の作品ということで、現状では博多座以外の上演予定はありませんので、見たいとなると、必然的に博多座遠征ということになります。ほぼ1ヶ月間上演してはいるものの、やはり早期に見てどういったもとか知っておきたいのが心情で、ほぼ迷うことなくこの期間の遠征を決めました。

今回は九州(熊本)出身の石川さゆりさんの公演、というのが最初に決まり、テーマは実は後から決まったそうです。
「博多といえば」という話で最初は「博多めんたい」という案が上がったもの、それはさすがにということで(すでに3月公演が『めんたいぴりり』でした)、「博多人形」をテーマにしようと決めたのだそうで。博多人形の職人として有名な小島与一さんを岡本健一さんが演じ、その奥様・ひろ子(かつては芸者・梅丸)を石川さゆりさんが演じます。

その2人の関係に大きく影響を与える鉄鉱王・井筒伝五郎を西岡徳馬さんが演じ、その妻・令子を高橋由美子さんが演じます。

ここ4人の関係を中心に、博多に生きる人々の生活を描くのが1幕です。

腕利きとはいえ一介の人形師でしかなかった与一が、芸者でしかも売れっ子だった梅丸を、なぜ奥さんにすることができたのか、それを回想で描いていく形になっています。

結末以外のネタバレを多少含みますので、NGの方は回れ右をお願いします。




梅丸を贔屓にしていた伝五郎の座敷に、与一が石を投げ入れ、伝五郎は立腹するが、上に上がってきて直接話をしろと迫る。
あがってきた与一を前に、伝五郎は「俺は石炭で人を暖かくできる、国を豊かにできる。人形師であるお前に何ができる」と。
答えられない与一の前で、梅丸が代わって言う。「この人の人形は心を豊かにしてくれる」と。
面目をつぶされた伝五郎がまたもや言葉責めにかかろうとするところに響く、

「それぐらいになさってはいかがですか」

・・・天下の鉄鉱王、井筒伝五郎を前にこの言葉を言える女性、それが妻である令子。由美子さんが演じた役どころです。

何しろ演出のG2さん曰く、「西岡さん演じる伝五郎にも怖いものがある、それが妻、という形で由美子さんの役どころを決めたら物語がしっくりきた」と。

実は初日開演前にパンフレットでこのあたりをみたので、あぁなるほどなと合点がいきまして。

令子は実に巧妙に夫の泣き所を突きながら、上手いことプライドをくすぐって、夫の権力も上手く使って、「品評会での勝負」を持ちかけます。あの辺の逃げ道のふさぎ方が由美子さんがイキイキしすぎてて噴き出します(笑)。

それを受けて、伝五郎が言うには、「1位になれたら2人の仲を認める、1位になれなかったら俺が梅丸を身請けする」と。

・・・目の前でこれ言われて、一度は呆れつつもそれを認める令子さんかっこいいです。

ここのくだりで、「1位以外は負けなのですか」という梅丸の問いに「当たり前でしょう。あなたはさっき、この方(与一)を博多一、九州一、日本一と言ったじゃありませんか。」と答える令子はさすがです。異議も甘えも差し挟ませようとはしません。



時は流れ、品評会の結果発表から、ラストにいたるまでの流れは実に滑らかで、見ていて気持ちがよかったのですが、結局のところ、この物語で表現されている「一等の価値」とは、「一等にふさわしい存在であるか」なんですよね。

博多人形に”命を懸ける”と言っていた与一が、結果が発表されてからの言動がどうであったか。
与一に言葉を投げかける梅丸の姿は、与一の人形への真摯な思いを知っていたからこそ。
変節してしまったかのような与一に対する憤りは、梅丸の「まっすぐ」さを印象的に映し出してとても素敵です。

その後に来る訪問者、伝五郎と令子が2人に何をもたらすか。

与一が作ったことさえ覚えていなかった人形の存在(この人形は実は1幕前半に言及されています。街中のおばあさんを見てすぐ帰ってきた与一が瞬く間に作り上げた人形)がもたらした伝五郎の心の揺れ。

そしてその人形の存在をめぐり、与一と伝五郎という男共は知らないけれども、梅丸と令子という女たちの「言葉では語られない共有感情」。

男だけでは解決を見出せない、腹の据わった女同士がいてこそ、大団円を迎えるこの作品。
G2さんらしい仕上げ方だなぁと印象的で感動的でした。

「あるべき方向性に向けてどうピースを組み立てるか」みたいなところを感じるので、なるほどなぁと。


小島与一役、岡本健一さん。今回初見ですが、ただ向こう見ずなところから、人形師のプロとしての生き様を見せられるようになるまでを自然体で演じられていました。ひろ子を見送るシーンにより深みが出ればもっといいかなと。

梅丸・小島ひろこ役、石川さゆりさん。第2幕の歌謡ショーの絶対的な存在感に比べれば、恐る恐るされているようにも見えるにせよ、腹の据わり方が実にさゆりさんらしい佇まいでした。凛とした女性、素敵です。

井筒伝五郎役、西岡徳馬さん。前回拝見したときは新妻さんの父親役でしたが(「GOLD~カミーユとロダン」)、今回は威厳を纏う実業家を素敵に見せていました。威張っても頭を下げても、全てがカッコいい。流石です。

井筒令子役、高橋由美子さん。どの年齢の男性相手でも絶妙な距離で妻を演じきるマジックは今回も健在でした。相変わらず男を上手くコントロールする役の上手いこと(笑)。箱を上手く開ける特訓だけお願いします(そこだけが心配)。


2幕は石川さゆりさんの歌謡ショー。小学生のときに町内の喉自慢大会で『津軽海峡冬景色』を歌ったことがある自分にとって、初めて聞く生の『津軽海峡冬景色』は鳥肌が立つぐらい感動しました。『天城越え』も聞けて、やはりさゆりさんの曲の中でもこの2曲は別格だなぁと。『ウイスキーがお好きでしょ』も艶っぽくて良かったです。

2幕だけを収録したDVDが11月18日に発売予定、劇場で予約受付中です。
また、劇場窓口のみで発売される「ショーのみチケット」(定価の半額)も毎日発売されます(劇場販売のみ、1幕開演後から発売)。

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