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『Little Women~若草物語~』

2015.9.20(Sun.) 13:00~15:35
日暮里d-倉庫 C列1桁番台(下手側)

scoreさんの再演作品、Lilyチームで拝見です。

南北戦争の時代のアメリカを舞台に、4姉妹の成長と、彼女たちを取り巻く人たちを描いた物語。
主役は次女のジョーですが、「4姉妹」をテーマにしているだけに「Woman」ではなくて「Women」(複数形)なわけですね。

これだけ有名な作品なのに原作含めて読んだことがなく、この日が初見ですが、最近はいくら有名な作品でも事前に原作は読まないことの方が多くなりました。時間の都合もあるのですが、いっそ知らないなら知らないで見たときの感動の方を大事にしたくて。複数回観劇の時は一度見終わってから原作を読んで次に見る、という形が理想かなと。

Lilyチームの次女・ジョーを演じるのはダンドイ舞莉花さん。初見ですが、お名前は存じ上げていまして。というのも去年(2014年)春にKAATで上演された『イン・ザ・ハイツ』のヴァネッサ(本役は大塚千弘ちゃん)の稽古場代役だったんですよね。

なるほど拝見していると、ジョーの男勝りなところとか、なんかちーちゃんと被る面を感じて興味深いです。「小説家になるんだ!」と根拠のない自信で突っ走る様はパワフルでエネルギッシュで。
でも何というか男勝りが粗雑に見えるところはちょっと残念。Rose組の島田彩ちゃんだとTipTap『Count Down My Life』の弟役が鮮明に思い出されるから、想像がつくのですが。

1幕のジョーはそんな感じでちょっと感情移入できなかったのですが、辛さを乗り越えて一回り大人になってからの2幕のジョーはとても魅力的。
「自立心」だけしか見えていなかった少女が、「自立心」を軸にした女性になっていったさまがとても良かったです。

次女のジョーを見守る長女・メグを演じるのはRiRiKAさん。
舞台作品では今年1月の『TRAILS』に次いで2度目です。最近はテレビのカラオケ番組で超高得点(99点台)をたたき出すことですっかり有名になった彼女ですが、それもあって「歌先」の印象がある方なので、今回どんな感じなのかとても興味がありました。

今回、メグの衣装がとてもぴったりで。ブラウン系の落ち着いた感じで、いかにも「長女」という存在感を出しながらも、その実、情熱的なところもあったりで、期待通りの役柄でした。
4姉妹の取りまとめ方もとっても自然で、母はメグを頼りにしているんだろうなぁ、と思わせる佇まい。
ジョーのことを応援して、ベスのことも愛して、エイミーのことも忘れていない。それでいて自分の幸せも忘れていなくて、ちゃっかり乗っかっちゃうあたりがなんとなくRiRiKAちゃんぽい(笑)。

妹を思う姉、といえば「ウーマン・イン・ホワイト」で妹・ローラのことを思い続けて自分の幸せは置いてきぼりにしちゃったマリアン(笹本玲奈さん)を思い出しますが、自分のことを忘れないあたりがメグ、さすがです。

三女のベスを演じるのは水野貴以さん。今年に入っては『ひめゆり』に続き2作目です。
アクティブな役柄が多い印象がある貴以ちゃんですが、今回はとても落ち着いた女の子。
ピアノを弾くのが好きで、弾いているとひょんなところから隣家のローレンス卿に声をかけられ、本気でびくびくしている様が可愛い。
それでいて、踏み出した勇気がローレンス卿との壁を取り去って行って、素敵な笑顔でした。

役柄的にはジョーを演じた方がすっきりしそうな貴以ちゃん(現にRoseチームのベス、北川理恵ちゃんは初演のジョー)ですが、ジョーが外側に感情を突き上げるのとちょうど逆に、内側に感情をとどめるという意味で「ジョーはベスになりたかったのかもしれない」と、2幕のとあるシーンで思えて。

ジョーにしてみれば、メグには一目置いてたし、エイミーには敵愾心は多少あったとしても姉妹であることは「理解」していたし。でもジョーからベスへの想いは「理屈」じゃなくて「自然な感情」だったのではと思えました。

四女のエイミーは梅原早紀さん。意識して拝見するのは今回が初ですが、PGC(プロパガンダ・コクピット)で兵士役で出られていたとのことで、2回目と言えば2回目。
末っ子属性全開で、特にベスに対する敵愾心をあらわにして、『おさがりじゃなくて自分だけのものが欲しい』と叫ぶさまは、4人もいて、しかも特段裕福な家庭じゃなければ、そうなるよねと思うことしきり。でもこのエイミーは、マーチ叔母と一緒に過ごすことにより大人の女性にまさに「変貌」していきます。

マーチ叔母も4姉妹に対しては厳しく当たりますが、実はちゃっかりしているところもあって「自分を支えてくれる方には敬わなければなりませんよ。自分が手綱を取って歩いていけるようになるまでには」と言ってたりして。これ、逆に言えば「自分が手綱を取れるようになれば」そうじゃなくなるということなんですよね(笑)。「女性の強さ、しなやかさ」をじんわりと味わえるセリフですが、それを体現できているエイミーが凄いなと(爆)

その4人を束ねる母・マーチ夫人は木村花代さん。もともと花代さんって「歌」の方だと思うのですが、今年拝見している3作品、『ひめゆり』の上原婦長役、『アニー』のグレース役、そして今回のマーチ夫人役と、どれも”ハートの温かさと、時には厳しさ”を体現されるようになって、なんだかとても安心して見られるようになっています。
カンパニーにとってもベテランすぎず駆け出しでもなく、時に母として、時に姉として存在される様がとてもほっとします。

男性陣で出色なのはローリー(ローレンス3世)の染谷洸太さん。ある意味大立ち回りの妄想パートも、いやらしさぎりぎり未満のところで止めて、ただひたすらにカッコいい存在感。エンディングへの流れは意外なようでもあり、自然なようでもあり。ジョーもあの時からは大人になったし、エイミーもあの時より大人になっている。そして彼が何より「大人」になっている。彼が軸になれたことでジョーの変化もエイミーの変化も見えて、とても良かったです。

あとベア教授の菊地まさはるさんもチャーミングすぎて最高です。ジョーに振り回されてどうにかなりそうな教授が可愛すぎる。2幕のラストに向けてのあの可愛さは何なんだと(笑)。ただ、あのシーンは勢いに見えて、実はそうではないんですよね。

ジョーが大切なベスのために持っていたものと、ベア教授がジョーを思って手に入れたものが同じものだったというのは2人の先を暗示するに十分でしたね。世間一般で言われる「価値観の一致」なのでしょうね。あれが。

今回、ジョーが書いた作品を劇中劇として2幕最初で上演するのですが、物語のセンターにいる主人公はメグ。姫属性全開でぴったりすぎで笑えます。なんであんなに「あ~れ~」が似合うのか(笑)。ジョーは出演を渋るメグにとびっきりのいい役を充てて「メグにしかできない役なんだから、やってよ!」とか言われてまんざらでもなさそうな感じが浮かびます(笑)。

それ以上にすごいのがマーチ夫人の魔女(笑)。いやぁ花代さん楽しみすぎでしょあれ。長身で見栄えがするのもそうなのだと思いますが、マントが似合いすぎてて、それこそジョーに「お母さんにどうしてもやってほしいの、お願い」とか言われて「いやよこんな役」とか返しておきながら、当日は誰よりも楽しそう、みたいな(笑)。メグの油断ならない敏捷な短剣とか超似合ってましたねー。

この作品を見終わって思ったのは、『完璧なる大団円』ということ。

登場人物それぞれが、少しずつでも前に進む努力をしたからこそ、それぞれが自分自身にとっての「幸せ」を掴んでいる。

失ったものも得たものもあるけれど、過去より現在、現在より未来が自分にとっていいものであろうと努力した人たちだけが持つ輝きを、確かに舞台上に立っていた方々は感じさせてくれて。

他人からの評価だけに振り回されるのではなく、「自分にとって」どう生きるのか。
それに対する歩みの大切さを感じさせてくれる作品でした。観られて良かったです。

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