『時をかける少女』
2015.7.28(Tue.) 19:30~21:30
サンシャイン劇場 21列1桁番台(下手側)
演劇集団キャラメルボックス30周年記念公演Vol.3。
「時をかける少女」初の舞台化です。
キャラメル新作の初日観劇って記憶にないかも。
そして、この作品のヒロイン、マナツ役を務めるのは劇団員として史上最年少ヒロインになる木村玲衣さん(21歳)。”劇団員として”となっているのは、客演の史上最年少ヒロインが『雨と夢のあとに』の福田麻由子さん(当時11歳~上演期間中に12歳)だからなわけですが。
木村さんを見るのはこの日が初めてですが、最初の印象はそれこそ福田麻由子さんのイメージととっても被りました。利発で、大人顔負けのテンションで突っ走る。相手役だった太ってないほっくんと、今回の相手役の池岡くん(この方も初見)がだぶってみたり。
実は「時かけ」は一切の作品を見たことがなくて、この日が本当の初見。先日やってたアニメ版を見ておけばまた印象が違ったのかと思うのですが、前説の加藤社長曰くの「知ってる人は92%はいると思われるこの作品」の、「残りの8%」という、”この日が初見”というポジションでの観劇です。
とにかくこの作品の印象は一にも二にもまずはこの木村玲衣さん。
実は結構強者だと思ってまして、というのは先だって『パス・ファインダー』という作品でおかたつ氏(岡田達也さん)と共演していて、あのおかたつ氏を結構上手いこと振り回していまして。
実際には氏を頼りにしていた部分はとてもあったのでしょうが、それでもあの方をあそこまでいじれるのは過去、福田麻由子様と前田綾様と岡田さつき様しか記憶にないもので、お、面白いかもと。
※せりふがあまりに多くて、数えたというエピソードも笑えます。ちなみに454あるそうです(驚)。
若手ならではの勢い、あふれるばかりの元気さ、強気なようでなぜか嫌味にならない存在感。多少の緊張感が感じられたとはいえ、”この役を走りとおせるのか!”ということに驚きです。
劇団員さんの女性ヒロインの先輩格としては渡邊安理さん(『嵐になるまで待って』、当時24歳)と印象が被る面があります。気の強さって意味ではあんりちゃんがいままでで最強って感じがしましたが、玲衣ちゃんはそれを越えた感が(笑)
その辺は成井さんの好みなのか、ヒロインは結構高音で激しく叫びまくることが多いので、今回は新鮮味を感じてとてもいいですが、役柄的にちょっと違う方面も見ていきたい女優さんです。
今回の作品は『時をかける少女』本編のアフターストーリー的な位置づけで、当時のヒロインのその後は坂口理恵さんが演じています。彼女はヒロインのマナツから見ると伯母にあたります。”時をかけたことがある女性”と”時をかけている女性(マナツはとあるきっかけで過去にタイムリープ(時間移動)する能力を持つことになる)”との対比が印象的。
”過去に飛ぶ”ことがここまで当たり前のように表現されているというのもある意味凄いですが(笑)、”気持ちを知る同士”の存在がとても大きくて。
初めはタイムリープできたことを面白がっていたマナツが、何度も飛ぶことを通して”過去に飛ぶことの意味”を理解していく様が脚本としてきっちり作られていて流石です。”飛べば終わり”でもないし、”飛んで終わり”でもない。むしろ飛ぶことで問題は複雑になっている感さえある。
でもその力を、面白半分で使っていたときから、”大切にしなきゃ”とマナツが思い直したとき、マナツと和子(伯母)の時は、過去ではなくて未来に向くんですよね。
過去を引きずって、過去に行くことを考え続けた二人が、過去の出来事に前向きな区切りをつけて、未来に進もうとする姿。それは、1人だけでは実現できなかった、2人でしか作れなかった未来なのだろうなと。
それを表現していた最後5分は、いきなり来た感情の圧力に涙が浮かんで。
確かに残酷かもしれないけど、”生きるということは乗り越える”ということでしかないんだよな、ということを思わせる前向きなラストでとても良かったです。
2人のペアの”時”が交差したことで動き出した”時”がとても印象的なラストでした。
・・・
この日は初日ということでカーテンコールの最後でヒロインの木村さんからご挨拶。
『キャラメルボックスと時をかけていってください』
という言葉が、2時間全力疾走の後に出てくる凄さ。舞台上の全員と、客席の全員が明らかに「おおっ」とのけ反ったその言葉は、確かにこの作品のこの役を演じきれる役者さんだからこそ出せる言葉であったのでした。
※木村玲衣さんインタビュー
結構深い内容でお勧めです→こちら
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