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『Wonder Honey~あの娘は、可愛い魔法使い~』

2015.4.5(Sun.) 19:30~21:10
日暮里d-倉庫 Wonderチーム

teamFrogMan Vol.4のこの作品、今回は再演ですが初見です。
制作としてよくお名前を拝見する相澤祥子さんが作・演出、TipTapの音楽でおなじみ小澤時史さんが音楽のユニット。

会場は安心安定の日暮里d-倉庫です。
日暮里d-倉庫は行き始めのところは駅から遠いことばかり意識していて、「まだかなまだかな、エネオスまだかな」と思っていたものですが、今日歩いてみたら近いこと近いこと。気持ちの上のことではありますが、さすが3作品目ともなれば行き方も慣れたものです。

明日が楽日ですが、ネタバレ含みます
ご注意ください




ストーリーは魔法使いのメアリーアンが、自分の声も、魔法の力も失ったところから始まります。

魔法の先生から「自分のためにしか魔法を使ってはいけない」と言われていたメアリーアンが、シンデレラの境遇に同情して「他人のために魔法を使った」ことで、メアリーアンはその境遇に。自分の声と魔法の力を取り戻すため、魔法の先生がいそうな場所を転々とする。その場にいるのはそれぞれのおとぎ話の登場人物たち。メアリーアンがそれぞれの登場人物と出会うことで、お互いにどんな変化が起きていくか・・・という流れで物語は進んでいきます。

この作品の興味深いのは、「おとぎ話の中身を変えても構わない」というところ。メアリーアンが物語に介在するとき、物語はいい方向にも悪い方向にも動く可能性があるわけですが、メアリーアンの明るさ、前向きさは総じて物語をいい方向に進めていきます。そして、いい方向に進み始めた物語の登場人物の姿を見て、メアリーアンは自分の中に暖かい気持ちを得ていきます。

「自分のためにだけ魔法を使っていた」メアリーアンが、声を失い、魔法を失ったからこそ「安易な方向に頼らずに気持ちをぶつけていく」様がとても心地好いです。もともと前向きな少女ではあったのでしょうが、声を失い、魔法を失ったことで「より素直に気持ちが出せる」ようになったのかなと思えて。

物語の登場人物たちは、どことなくみんな一線を踏み出せずにいて。

物語の「結末」と言われていることに、どことなく全てには納得していないように思えて。

物語の中での心残りを、メアリーアンは消してくれたんじゃないかなって。

この作品は、各パートが「おとぎ話」である、という共通点しかほぼなくて、でもそれが最後にシーンですべてを取り込んでラストを迎えます。その最後のカタルシスたるや、ミュージカルの醍醐味といってもいいものだと思うんです。音楽なしでもできるかもしれないけれども、音楽なしではここまでの感動をすぐには作れないだろうなって。

別々の物語の登場人物が一同に会して、センターに立つメアリーアンに対して感謝をしている。
メアリーアンを見つめるみんなが笑顔で、そしてメアリーアンももちろん笑顔で。

登場人物がメアリーアンにどうしてそこまで笑顔で話しかけるのか、それを思ったときに「自分の心残りを消してくれたメアリーアンへの感謝の気持ち」がメアリーアンに対して伝わってくる、それが見ていて分かるからなんだなって。
そのみんなの笑顔を見た時に、「声を失ったことも、魔法の力を失ったことも」無駄じゃなかったと、メアリーアンが思えたことが素敵だなって。本当はそこで「自分に何ができるか、何をすべきか」を見つめたメアリーアンが素敵ということだし、それはきっと客席に対する、「メアリーアンのように生きる」ことの大事さというメッセージなんじゃないかなと思う。

作品の一貫性といえば、音楽をすべて小澤先生が作られているので、流れに違和感を感じることがないのがとても良かったです。TipTap作品でおなじみなので「重い」印象が多い氏の作品ですが、今回はとてもポップで軽快でした。

・・・

登場人物はみなさん素敵でしたが、印象的だった皆さまをつれづれに。
観劇はWonderチームだったので、対象の皆さまはWonderチームになります。

メアリーアン役、小島みゆきさん。出ずっぱりなのにソフトな感じで、過剰に前に出ない存在感がとっても心地好いです。作品をずっと貫く「ふわっ」とした感じは彼女の存在感からも大きく影響しているように思います。

アリス役、井坂茜さん。あの役の衣装ってなかなか着こなすの難しいと思うのですが、とても似合っていました。あの衣装で華麗にダンスされる様が素敵です。

赤ずきん役、勝目雪菜さん。役柄としての雰囲気もぴったりですが、狼役の荒田至法氏(今回の作品で数少ない、見たことがある俳優さんです。同所の『なうちぇんじ』で拝見)とのバランスが良いです。可愛さの中に、ちょうどいい気の強さをブレンドして、しほー氏を抑えにかかる感じが(笑)

ヘンゼル役、鈴木彩子さん。探偵事務所の”できる所長”さんの感じが絶妙。ポジションを面白くしようとせずに面白くできるのはテクニック故なのだろうなぁ。見ていてとても安心できる方でした。

グレーテル役、能條由宇さん。スタイル抜群、インパクト抜群で見たら忘れません。長身ということもあり、堂々とした存在感がこの役にぴったりでした。衣装もとても素敵でした。

ラッカム役、椛島歩さん。今回、この作品と出会わせていただいた方ですが、キャラが存分に立っていて笑えます。「ラッカム探偵事務所」勤務、もとい「ヘンゼル探偵事務所」事務員さんなわけですが、電話であれやっちゃう人いますねぇ(受話器の抑えておく場所が逆で、通話先に電話の内容筒抜け)。あぁいう「やらかしちゃうけど憎めない」キャラクターがベストフィット。

ピーターパン役、柴崎咲子さん。ピーターパンにぴったり。歴代では宮地真緒さんに雰囲気似てる感じ。ピーターパン役って、「どれだけ動きをピーターパンぽくできるか」がポイントな気がしていますが、柴崎さん、動きがちゃんと少年ぽくて良かったです。魔女と対するシーンの鏡の中の私、も印象強かったです。

・・・

今回、DVDが2チームとも出ることが決まっており、会場にて予約受付(1チーム2500円)。

パンフレットはA5判で、シンプルながら良い仕上がり(700円でとってもリーズナブル)。ダブルキャストということもあり、出番別の役一覧が見開きで付いて、とっても便利。2チームあると、この役はもう一つでは誰がやっているのかな?というのは良く気になるので、それを左右で対照できるようにしているこの作りは、他の作品にもお勧めしたいぐらい便利な構成です。

チラシを見た時に「なんか気になる」と思った直感に委ねて、この作品を観られてとっても良かったです。
普段は直感任せに生きにくい自分なのですが(爆)、たまにはそういうのもいいなぁ、と思えた日曜日でした。

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