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『左手を探しに』

2015.4.15(Wed.) 19:30~21:40
渋谷・ギャラリールデコ

OneOnOne活動再開第1弾の朗読ミュージカル。
場所は渋谷・明治通り沿いのギャラリー(ビル5階)。

小劇場以上に小劇場といった感じのコンパクトなブースの趣。
開場時間の19時ちょうどに会場入りし、無事最前列を確保。
演じるスペースを円形に囲んで3列しかないので、席数は多く見て50席といったところです。

主人公の福子を演じるのは岡村さやかさん。美大出身で現在はOLの女性。
さやかさんで白い服装というのは珍しい感じ。
かつては絵描きを目指した彼女も、今ではOLとして生活する日々。

その彼女の生きる日常は、ゲームをするぐらいの平凡な日々ですが、この物語の中ではそのゲームの中の世界と行ったり来たりするという構造になっています。そのゲームの中の世界は「ピーターパン」の世界で、ピーターパンを梶さん、ウェンディを田宮華苗さん、タイガーリリーを佐野まゆ香さん、フック船長は蔵重美恵さんが演じています。

ちなみに席は向かって中央付近を確保。ちなみに、岡村さやかさんはキャンバスに向かうのかと思いきや、(後述しますが)絵を描くのを諦めかけている女性なので、ほぼ客席側を見て演じる形になるので場所は正解でした。

さて、この辺からネタバレがちょっと入り始めますので、気になる方は回れ右でお願いします







福子にとって「”左手”を探す」ことがどういうことか、それがこの物語の大きなテーマになっています。
福子にとっての”夢を追いかけた日々”の象徴・実態が”左手”なのですね。実際、左手でキャンバスに絵を描いている訳なのですが、その左手をワニに食べられてしまう。
”ワニ”というのはピーターパンの世界でフック船長がワニに左手を食べられるというのと掛けていて、実際ワニを演じる千田阿紗子さんは実際の世界では丹羽という女性を演じています。
(ちなみに「わに」と「にわ」で名前も掛けています)

この丹羽という女性は劇中、福子に「ずっと君の左手が欲しかった」と語りかけていて、有り体に言ってしまうと、丹羽は福子の才能に嫉妬していたということなんですね。

で、そんな福子は自分の左手(才能という面もある)に対する”こだわり”というものがそれほど強くなくて、”左手”を失った後、日々を起伏なく過ごしている・・・
(ちなみに「ふくこ」と「ふっく」で名前も掛けています)

福子は現実世界とゲームの世界を行き来しながら、自分の人生を振り返りながらも、自分の人生をどうしていこうかという思いも前に出せていない。その”前向きになるきっかけがない自分”というポジションが岡村さやかさんによく嵌っています。

現実世界とゲームの世界がそれぞれ独立して動く中、人知れず近づいて来た2つの世界。
福子とフック船長の奇妙なシンクロナイズ。

フライヤーにある「フック船長はなぜ大人にならないあの島へ辿り着けたのか」というキャプチャーと、この作品の原題である『地図と砂時計』という言葉がぐぐっと繋ぎ合わさた時に、福子が表情を変えていく様は良かったなぁ。

自分の才能という「左手」を護る自信と「左手」で生きる覚悟が持てずに、現実の世界に閉じこもっていた福子。
丹羽(ワニ)に「左手」を食われることを、ただ呆然としか見ていられなくて、そんな辛い思いをしたくないから、「左手」の要る世界から自分から遠ざかったようなように見えた福子。
「地図があれば迷わない」と言っていた福子。

そんな福子が、あるきっかけを境に変わり、丹羽を地図もなしに見つけ出し、そして丹羽に「左手を差し出せる勇気」を持ち得た様は素敵だし、そのシーンの意味するところはこの作品の一番大事なメッセージですよね。

「地図があれば迷わない」のではなくて、「地図があるから自分の足で歩く方向を決められない」のだろうなと。

あのシーンは福子から丹羽への宣戦布告でもあって、「私はもうあなたに左手を食われることなんて怖がらない」という意思表示だし、それを言えたことで福子は確かに今までにないステージに立てていて。

福子が”地図にない”道を辿って丹羽を見つけ出したという点も大きな意味を持っていて。
つまるところ、この物語を通じて、福子という存在を通じて、”想いを諦めないこと”、”限界を自分で定めないこと”を感じさせてくれるようで、とても勇気づけられるものがあるのでした。
その物語を岡村さやかさんで見せてもらえたことも嬉しい限りでした。


回替わりのアフターライブは30分強の超サービスバージョン(これが毎回だそうです)。

その中でも自身唯一のOneOnOne体験だった『しあわせの詩』(岡村さやかさんを知ったきっかけの作品です)2曲は聞けると思っていなかったので嬉しかったです。初披露となるそうなWさやかさん(主宰の浅井さやかさん&岡村さやかさん)のデュエットの『本当の願い』と、メンバー全員による『しあわせの詩』、堪能しました。

ばたばたの日程の中に何とか詰め込んだ観劇日程でしたが、見られて良かったです。

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